schoolTaktが支える生徒同士の対話が生まれる授業 2018.02.13 教育現場レポート
2017年11月13日に佐賀県武雄市立北方中学校でschoolTaktが使用された授業の様子についてのレポートです。
武雄市立北方中学校(佐賀県武雄市)は、より質の高い「主体的・対話的で深い学び」の実現をめざして、ICTの効果的な活用に取り組んでいる。授業支援ツールにはschoolTaktを選び、生徒同士のスムーズな意見交換や、生徒の思考を見える化する手段として活かす。
(武雄市立北方中学校 外観)
ー ストレスフリーの使用感、リアルタイムのやり取りがメリット
武雄市立北方中学校(佐賀県武雄市)は、ICTを活用した教育を先進的に進める同市のパイロット校だ。2014年度から3年間、総務省の「先導的教育システム実証事業」や文科省の「先導的な教育体制構築事業」に採択され、タブレットなどのICTデバイスを活用した新たな学びに挑戦してきた。個別学習や協働学習など授業中の活用はもちろん、他校との交流学習、家庭へのタブレット持ち帰りなど、さまざまな実践に取り組んできた。現在も、全生徒170名に対して、一人1台のタブレットを整備し、授業にICTを活かしている。
同校では2015年度から「主体的・対話的で深い学び」におけるICT活用の研究に力を入れている。現在も同様のテーマで授業デザインの研究を重ね、2020年度から施行される新学習指導要領に向けて、より良い指導方法や評価方法などICTの効果的な活用を高めたい考えだ。同校の德永貞康校長は、「先生が話す授業ではなく、子供同士が対話をする授業を作っていきたい。そのためのツールとしてICTを活用していきたいです」と想いを語る。
schoolTaktが同校で活用された経緯は、先導的教育システム事業で提供された教育クラウド・プラットフォームがきっかけだ。schoolTaktは同事業で教育サービスのひとつとして採択され、新たな授業スタイルの可能性を探るツールとして実証研究校で利用された。北方中学校もそのひとつだったというわけだ。德永貞康校長は「schoolTaktは、軽いのが良いですね。武雄市の学校では、インターネットにつながりにくいこともあるのですが、そうした時でもschoolTaktは動くのでストレスフリーで使用しています。また教師と生徒が授業中にリアルタイムなやり取りができるのも重宝しています。生徒たちの考えも把握でき、思考が動いているのが分かります」と語っている。
これまでの授業スタイルでは、発言の少ない生徒の意見を拾い上げることは難しかった。同校ではschoolTaktを用いて、全員参加型の授業を実現している。
ー 誰が、どの解き方で解いたのかを全員で共有し、意見交換へ
見学した中2数学の授業では、「図形のくぼんだ角の大きさを求める方法を考え、説明しよう」をねらいにschooTaktが活用された。同授業を担当した堤 賢二郎教諭は、 宿題の内容を解説するところから始め、角度の求め方を全員で復習。その後、本時のねらいについて言及し、自分の解き方を説明できることが重要であると強調した。
(堤 賢二郎教諭)
続いて生徒たちは、 schoolTaktにアクセスし、図形の問題が提示されたシートを開いた。堤教諭はまず、自分ひとりの力で課題に向き合う時間を設け、生徒たちはシート上で縦や斜めの補助線を入れたり、色を変えたりしながら自分の解き方を考えた。なかには、この後の活動を予測して、先に説明するポイントをテキストにまとめる生徒の姿も見られた。
堤教諭は生徒が一人で考えている間に、手元のタブレットで全員の進捗状況を確認していた。リアルタイムで生徒の解き方が把握できるため、つまずいている生徒には、個別で声をかけて助言した。また、ある程度の答が出そろうと、今度は一覧表示で全員の画面をモニターに写し、同じ解き方をした生徒のシートを移動して分類した。誰がどのような考え方で解いたのか、生徒の目からも一目瞭然だ。
その後は、生徒同士が互いの考えを説明し合う時間が設けられた。生徒たちは、モニターに提示された一覧表示の画面を見ながら、自分とは違う解き方をした生徒のところへ行って、意見交換をした。「なぜ、その補助線を引いたの?」「こっちの方が簡単じゃない?」など、生徒たちは会話をしながら、自分の意見との違いに気づく。その間、堤教諭は全体の流れを見守りつつも、自分から話しかけるのが苦手な生徒のフォローに入り、生徒同士のコミュニケーションをサポートした。
一般的に、生徒同士が意見交換を行う時は、グループ形式で実施されることが多いが、堤教諭は「すでにschoolTaktで誰がどの意見を持っているのか生徒は分かっているので、グループにする必要はありません。むしろ、生徒が自由に動くことで、主体性を伸ばせると考えています」と語る。生徒たちはタブレットを持って教室内を歩き回り、図形を指で指したり、式を書き込んだりしながら、より分かりやすく相手に伝えようする姿が見られた。
意見交換をした後は、もう一度全体で解き方を共有した。堤教諭は解き方の異なる生徒のシートを提示し、「2人の違いは何かを比べよう」と問いかけた。実際に生徒が書き込んだシートを見せながら、図形の性質をどう活かせば解けるのかをまとめた。最後は、今日の授業の感想をschoolTaktのシートに書いて終わりとなった。
schoolTaktを活用した授業について、生徒たちはどのように感じているのだろうか。中学3年生の3人の生徒に話を聞くことができた。
schoolTaktを活用するメリットについて生徒たちからは、「みんなの意見を知ることができて良いです。人の意見を知って新しい意見も出てきます」「授業中に何もしない人がいない。全員が授業に参加できるので積極的になる人も増えてきたと思います」といった意見が聞かれた。生徒たちは1年生からschoolTaktを活用しているというが、現在も主体的に授業に取り組んでいる様子が伝わってきた。
堤教諭もschoolTaktについて「生徒たちがどんな風に考えたのか、リアルタイムで思考が見えることが一番のメリットです」と述べた。答だけでは、どのような考えなのか分からない場合もあるが、schoolTaktは思考の途中経過も可視化できる点を評価した。「たとえ外れている意見も題材にできますし、一覧表示で全員の考えが分かるので次の展開も見通しを持てるようになりました」(堤教諭)
生徒の変化については、「意見交換したり、自分の意見を説明したりする場面が増えたため、生徒の伝える力が伸びてると感じます」と堤教諭は手応えを語った。授業でも対話の場面を作りやすく、生徒たちが抵抗感を感じずに発表できているというのだ。実際に生徒からも「発表するときに書き込んだりしながら伝えられるところが良いです」「schoolTaktでは友達の意見にコメントしたり、自分の意見にコメントをもらえたりして楽しい」といった意見が聞かれた。ほかにも「賛成意見と反対意見に分かれてディスカッションもやってみたい」など、仲間の意見や反応に関心を持ち、考えることや伝えることに主体的に取り組む姿が見られるようになってきたというのだ。
北方中学校では今後も継続してschoolTaktを活用しながら、主体的・対話的で深い学びの授業実践を重ねていく考えだ。生徒たちの主体性を引き出すツールとして、schoolTaktが活かされている。