スクールタクトサマーキャンプ 〜みんなで創る未来(あした)の学び〜 イベントレポート
2022年8月19日、20日の二日にわたり、スクールタクト サマーキャンプ 〜みんなで創る未来(あした)の学び〜を開催しました。スクールタクトを通じて、全国の先生とつながり、これからの教育や学びについて一緒に考え、未来に向けてそれぞれの現場での実践につなげていこうと企画した本イベント。
Day1では『教育は変えられる』 著者の山口裕也氏と当社代表取締役 後藤による対談を実施。Day2では総勢21名の先生方にスクールタクトを使った実践を紹介いただきました。共に未来の学びを作っていきたい!そんな思いが重なり合った二日間のイベントの様子をスクールタクトのnoteに投稿しています。ぜひご覧ください!
スクールタクト サマーキャンプ(noteマガジンで連載中)
突撃!となりの活用校 〜2人目の活用者のつくり方〜 イベントレポート
2022年7月2日、小学校と高校でICT利活用を推進してきたお二人の先生をお招きし、体験談や仲間の増やし方、おすすめのスクールタクト(ClassiNOTE)活用法を語っていただきました!
□ 五十嵐 太一先生について □
栃木県宇都宮市のICTモデル校 陽東小学校の元GIGAスクール推進ティーチャー、コロナ休校中に試験導入したまなびポケット・スクールタクトを使用して学びを継続し、普及に貢献。
宇都宮市立豊郷中央小学校に異動後の現在も、ICTツールを活かした児童の主体的な学びを追究中。
□ 新庄 秀臣先生について □
箕面自由学園中学校・高等学校 情報部所属。Classi、ClassiNOTE、Google Classroom等のICTツールを駆使して授業を行う。
ClassiNOTEをほとんどの授業で活用し、意見の共有や学び合いを促進。各サービスの利点や違いを熟知し、校内の意思決定をリードしている。
※ClassiNOTE は、Classi ユーザー用に提供しているスクールタクトの別名称です。 名称が異なるだけで、システム上の違いはありません。
<導入体験共有>
【宇都宮市立豊郷中央小学校 五十嵐 太一先生】
今年度、ICT推進校から別の学校へ異動した五十嵐先生。GIGAスクール構想の進み具合が地域や学校によって大きく異なることを実感し、新しい場所でも学校全体の巻き込みに挑戦しました。
ーーー異動先の校内の課題
まずは、学校としての活用ポリシーの相談・共有から。活用について様々な不安の声が上がりましたが、前任校での実践について紹介し、皆で課題を共有してそれを乗り越えてきたことをお話ししました。
最初から厳しく制限するのではなく、児童が使える場面を増やし、どんな風に使っていくのか見守ろう。その中でスキルやモラルが身に付くように、課題を共有し、その都度考えて対応しよう。そんな姿勢を先生方が共有することで、本格的な活用のスタートを切ることができました。
ーーー仲間を増やそう!
とはいえ、急に自分で実践をやってみせたり、何かを求めたりするのではなく、まずは周りの先生と丁寧にコミュニケーションを取ることから始めました。
管理職を含む専科の先生方は、校務の基盤となる先生方。ICTに関心がある反面、「本当は使ってみたいけど、使い方が分からない」という悩みを持っていました。そこで、空き時間を使って一緒に簡単なアンケートを作って配付するなど、小さなチャレンジをサポートしました。
「学校の様子を外に発信してほしい」という意見もあったため、せっかくならICTを活用している様子を保護者や地域の方にも知ってもらおう!と、先生の活躍振りを学校のホームページで発信しました。
同学年の先生方は、「使いたいと思っているけれど、自分と児童のICTスキルが不安」。
そこで、授業参観の機会を使って、皆でスクールタクトを使った同じ活動をすることを提案しました。スクールタクトはPDFの添付や課題の複製、テンプレート登録ができるので、とても簡単に課題を共有することができます。
「こんなに簡単に使えるんだ!」「簡単に自己表現ができて良いね。」最初の一歩を踏み出した後、学年内でこんな声が広がっていき、活用が進みました。
他の学年主任の先生方には、使い方に不安がある中でも、なるべく学年全体で進めていきたいという意向がありました。
そこで朝の時間に教室にお邪魔し、簡単なお絵かきや道徳の振り返り活動をサポート。朝の時間20分程度でも子供たちはすぐ使い方を習得し、子供たちがのびのびとICTを活用している姿を先生に見てもらうことができました。活用の流れや使い所が分かったことで、先生達は自然と端末の使用に前向きになっていきました。
そして、推進全体でとても大切な存在となったのが、ICT推進に意欲的な仲間の先生方ICT推進に意欲的な仲間の先生方。
まずは情報主任の先生を巻き込んで、朝の時間でのサポートや、スクールタクト実践事例の研修会といった取り組みを一緒に進めていき、輪を広げていきました。
ーーー加速する学校
関心の高い若手の先生のチャレンジを後押しし、「ICTを使っていい」という雰囲気になってくると、先生達はどんどん自走します。スクールタクトは「全授業」から他の先生の取り組みを見られるため、今では「今スクールタクトでこんなことやってるの?」「この課題いいね。頂戴!」といった声が交わされています。皆でシェアし、ブラッシュアップができる職員室の雰囲気は、学校の働き方の改善にも繋がっているように思います。
活用は授業だけでなく校務にも広がり、若手の先生の働きかけから、クラブ活動の計画や振り返りを、一律でスクールタクト上で行うことになりました。
ICTを広げていくためには、自分がどんどん実践すること以上に、仲間を増やしていくこと、そのためにコミュニケーションを取って、それぞれの立場や想いを知ることが大切だと感じています。
【箕面自由学園中学高等学校 新庄 秀臣先生】
箕面自由学園は幼稚園から高校まである大きな学校で、職員室はなんと8つ!
そんな学校で、新庄先生がどのように全体を巻き込んで活用を浸透させていったのか、その軌跡をお話しいただきました。
ーーー導入経緯と現在のICT環境
ICTの導入が本格的に検討されたのは、今から5年前。
そも そものきっかけは、新指導要領・新しい学びのかたちへの対応でした。従来の学びを効率的に圧縮し、探究やアクティブラーニングといった新しい学びを載せるという部分に、ICTを有効活用できると考えたのです。
人数が多く、生徒情報の共有が難しく習熟度の幅が広いといった少し特殊な環境のため、まずは「どのような目的で、どのツールを使うか」という共通認識づくりが必要不可欠だと考えました。
導入と定着の仕掛けとして、まずは「なぜICTを使うのか」という目的を明確化しました。次に、その目的に合ったツールの検討とマニュアル作り。さらに、元々使っていたサービスの棚卸しと使い分けの明確化、仕組みの可視化などを進めていきました。
今、ICTを通してどのように生徒同士が繋がり、学校と保護者が繋がっているのか?混乱しがちな様々なツールとその用途を、分かりやすく図にして伝えていきました。
スクールタクト(ClassiNOTE)の活用については、各教科の事例共有研修をリードする教科イノベーターを任命。「教えたい!」という気持ちを持っている先生に、積極的に前に出て活躍してもらう仕組みを整えていきました。
定着以前は、ICTニュースレターを作成して全教員に配付するなどといった、地道な取り組みも行っていました。このような取り組みが功を奏したのか、自分が研修を設計しなければならないような体制から、今は完全に手を離れ、それぞれがICTを活用してくれる状態に移行することができました。
ーーー目指す学びのかたち
ICT活用の定着の次に目指しているのが、学びのシームレス化。
スクールタクトを用いたアクティブラーニングの後には、Webテストや自動採点を使って学習の定着を促します。それらの学びをポートフォリオに記録し、さらに難しい問題を教員が提案していきます。そのサイクルの中で、知識伝達型の学習を挟みつつも、生徒達がそれぞれのタイミングで「調べたい!」「解きたい!」と思った時に、いつでもどこでも情報にアクセスし、取り組めるような環境整備をしたいと考えています。
スクールタクトの、どこにいても課題の配信や受け取りができ、課題がいつも生徒の手元にも教員の手元にもある点、提出しなくてもリアルタイムに取り組みを見取ることができる点は、目指す学びのかたちにとてもフィットしていると感じます。
<実践紹介>
【五十嵐先生】
一番使いやすいのは、図工。自分の作品の写真を撮ってアップロードし、見どころなどを加えていきます。高学年になると、作成日記のような形で過程を記録していくこともできます。
校務には、Googleやまなびポケットをフル活用。校務サイトを作り、分散しがちなICTツールにワンタッチでアクセスできるような情報設計をしました。
【新庄先生】
一番最初に先生方にオススメしていたのは、板書の多い内容を、虫食いスライドにすること。
教員がスクリーンに同じ課題を映しながら、生徒は自分の解答を友達のものと比べながら解き進めることができます。
個人的に好きなのは、カンニングペーパーづくり。自分が大事だと思う内容を1枚のキャンバスに詰め込んでもらい、それを見ながら難しいテストを解いていきます。
他の人のぺーパーを見られる「カンニングタイム」を作り、いいなと思ったところを自分のものに取り入れる時間を設けることもあります。
実践事例:カンニングペーパーを作ろう
質疑応答
<ICT導入期の悩みと解決策を知りたいです>
(五十嵐先生)先生によってICTのスキルや意欲はそれぞれ異なりますが、強制しないことは意識しました。「使ってみたいから、使ってみる」を、少数から始めてみるのが良いのではないかと感じています。何が何でも全員が使う状況を、と思うと、苦しくなってしまうので。
(新庄先生)特に校務では、使わざるを得ない状況を作ることもまた、大事だと思っています。何せ職員室が8つある学校なので、情報共有や連絡は全てICTに移行するという方針があったからこそ、コロナ以前から端末の利用が浸透しました。
スクールタクトに関しては強制ではなく、「これを使ったら紙を配らなくても使えますよ!」「こっちの方が便利ですよ!」といったアプローチから始め、自然と「使わないと無理!」という状況を作っていきました。
<良い事例と、先生のモチベーションを上げる方法はありますか?>
(新庄先生)自治体が生徒の利用の仕方に不安を持っており、ICT活用に大して消極的とのことですが、想定外のことは100%起こります。でも、その都度対処していくしかないと思います。「安全な場で失敗できること」も、学校の大事な役割なのではないかと思っています。テクノロジーが急速に広まり、困ったことは当然起こるけれど、それでも生徒のアウトプットやICTで加速する学び合いの姿を見ていると、きっとテンションが上がります。ぜひ色々、試してみてください。
<モチベーションの高い先生がスクールタクトを活用できるようになるまでに、どのくらいかかりましたか?活用研修はどのくらいやりましたか?>
(新庄先生)イノベーターの先生を教科ごとに任命し、学期ごとなど定期的に実践発表してもらうことで、若い先生方を中心に少しずつ広まっていきました。
一番先生方に使ってもらいやすいのは、「あんな事やこんな事もできます!」ではなく「これでプリント配れます!」といったシンプルな入り口。簡単なことからでも、まずは知ってもらうことが大切でした。
(五十嵐先生)小学校の方が、試しに使ってみるというハードルは低いのかもしれません。写真を載せてみる、絵を描くなど、ごく簡単な使い方から入る先生が多かったと思います。
***
校内のサポートに徹し、学び合い・助け合いのコミュニケーションの中で活用を推進した五十嵐先生。前向きに進めてくれる同僚や先輩の先生方や、そんな先生方からの提案が、とても素敵だと語っておられる姿が印象的でした。
また、多数かつ多様な先生方の意識を束ねるために、目的や用途の可視化、仕組みづくりに努めた新庄先生。「何のためにICTを使うのか」という本質に基づいた、骨太の推進の軌跡を聞かせていただきました。
参加者の方々はもちろん、お二人の校種が異なる登壇者の先生も、お互いに参考になる部分があったようです。
校種や現場ごとに様々な状況がある中でも、それぞれに合った活用の仕方を探り、学校全体で前進していけるといいですね。
先生方、ありがとうございました!
【事例発表・座談会&授業体験】 新学習指導要領に向けて 授業デザイン&評価を語り合おう!
3月5日、近畿大学附属広島高等学校・中学校 福山校の先生方と共に、新学習指導要領に基づく授業学習や評価のあり方について考える事例発表・座談会と授業体験会を実施しました。
『主体的・対話的で深い学び』の実現に向け、3名の先生がICTツールを駆使してどのような授業設計や評価設計を行っているのか、お話を伺いました。
参考:近畿大学附属広島高等学校・中学校 福山校 スクールタクト導入事例
目次
岡本 歩先生
国語:1人1台端末を活かした小・中・高横断型の対話的授業
国語では、地域も年齢も異なる学習者が、互いに作品(『100万回生きたねこ』と『竹取物語』)の共通点・類似点を探り、伝え合う活動をしました。
背景には、下記のような狙いがありました。
- 知識を得るだけでなく、それを基に自身の考えを深め、他者に発信して伝え合う力を高めると同時に、作品を社会や自分との関わりの中で捉え、活かしていく観点を育てる
- これからの大学入試を意識した「複数文章の比較」「授業場面での対話」の実践を試みる
発表スライドの作成過程では、スクールタクト上で教師やクラスメイトと活発にコメントのやり取りをし、ブラッシュアップ。普段生活を共にしない聞き手への発表は緊張感があり、皆より丁寧に、伝えるための工夫を重ねている様子が見られました。
スクールタクトを使うと取組みの様子をリアルタイムで一覧できるので、進捗把握やフィードバックがしやすいという利点もあります。
実際の発表では、愛の普遍性や自由の大切さ、また現代の作品や歌との共通点など、学習者自身が持つ視点や知見、そして作品を通した他者との対話を存分に活かした、多様な考察が展開されました。
1人1台端末の導入で、個々のアウトプットを教室外に開き、対話の可能性を広げることがしやすくなりました。
普段の授業でも、生徒自身が互いに考えや意見を交換する過程をより意識しており、これまでの教える授業とは構造が逆になってきています。
教師側の関わり方も、自由に発言したり発想を膨らませたりと、生徒の思考をオープンに開くための学習設計や場作り、そしてそのような学びの過程を「面白い」と思ってくれるような言葉掛けを意識するようになりました。
梅村 隆継先生
社会:社会科における思考力・表現力の評価
社会では思考記述課題を課し、生徒同士でスクールタクトを用いて意見交流した後、回答をルーブリックに沿って評価するという取組みをしています。
ノートを提出すれば評価がもらえるといった評価観から脱却し、論理的思考力や表現力を鍛えることが狙いです。
授業では教師側の説明は簡潔に抑え、その代わりに授業に関わる課題… 例えば、自分がもしこの時代にいたらどちらの立場を取ったか?といった課題について考え、文章でまとめる時間を取ります。
はじめは友達の解答を写す生徒がいたり、提出しても評価が低いことに不満が上がったりもしました。そんな時は立ち返るべきルーブリックを示して、とことん対話。期限や課題についても試行錯誤し、クラス全体の評価点が次第に向上していきました。徐々に自ら思考する生徒が増加し、高評価を目指して論理的な文章の構築を試みる生徒も出てきました。
自分自身、特に学びに向かう姿勢等の評価について「これが答えだ」というものはなく、手探りの日々です。生徒から、「非効率的ではないか?」「なぜグループで取り組まなければいけないのか?」といった声が上がることもあります。
しかし、そういった生徒の疑問に向き合い、対話を通してほぐしていくこと、そして「できるようになった」ことを認めて丁寧にフィードバックを返していくことが、評価において大事なのではないかと感じています。
鳥生 浩紀先生
数学:どんなときでも変わらない自律的な学習の実現
数学では、教師による解説を最小限に留めて、生徒が自律的な学習を進めています。
このような授業は、スクールタクトとGoogleを活用しながら下記のような流れで行います。
- 教科書内容の解説
- スクールタクトで練習問題を解く
- 生徒の解答でのつまずきを個別・全体で対応
- 教科書範囲外の問題集の問題の解説
- リフレクションと形成的テスト実施
ホワイトボード上の板書はGoogle Classroomで配信するため、ノートを取る・取らないも自由。スクールタクト上でリアルタイムな学習状況が分かるので、つまずいている子、困っている子のフォローに回ることもあります。1人で取り組む・グループで取り組む等、どんな学び方も認めていますが、基本的に教師に頼りすぎることなく、自分達同士で疑問を解決します。
このような進め方をして良かったこととして、以下のような点が挙げられます。
- 自律…授業を生徒に返すことができた
- 定着…形成的テストの積み重ね
- 緊急事態でも困らないことに気づいた
特に3番目については、緊急事態宣言下になっても特別な準備や変更をすることなく、普段通りの学習を進めることができました。対面でもオンラインでも形態を変えることなく学びを継続できることは、教師、生徒双方にとっての安心感と心の余裕に繋がります。
最初はこのような授業形態に戸惑いの声も上がりますが、生徒は慣れます。単に教師の説明を聞くだけの授業よりも参加度は確実に上がり、定着確認も常にできています。
結局は、育てるべき力を見据え、それに応じた授業を教師側が覚悟を持ってやるかどうか、ということだと思います。
授業体験
授業体験では、スクールタクトの機能を存分に活かした国語・社会・数学の課題に取り組みました。参加者の様々な解釈や意見が飛び交い、学び合うことの面白さをまさに体感できる、貴重な時間となりました。
互いの知識や経験、気付きを伝え合い、他者の発想に触れ、さらに自分の考えを編んで伝えていく岡本先生の授業。
絶えず対話しながら「あなたはどう考えるのか?」を突き詰め、適切なフィードバックを返していく梅村先生の授業。
本質的な変化と成長を見据え、覚悟をもって生徒に授業を返す、鳥生先生の授業。
お三方それぞれの授業実践から、たくさんの示唆をいただきました。
先生方、本当にありがとうございました。
当社代表の後藤が日本教育心理学会2021年度公開シンポジウムに登壇しました~オンデマンド配信にてご覧いただけます~
日本教育心理学会の公開シンポジウムは、教育心理学に関する研究の振興と研究成果の社会への還元を目的に毎年行われています。
今年度は「withコロナ時代における子どもたちの資質・能力を育成する協働学習の工夫ー 教科指導と生徒指導を統合するチーム学校の教育実践 ー」というテーマで行われました。
当社代表後藤は「ICTを活用した協働学習」というテーマで登壇いたしました。
シンポジウムは2021年12月25日よりオンデマンド配信にて無料公開されており、どなたでもご覧いただけます。
詳細は日本教育心理学会サイト内2021年公開シンポジウムについてをご覧ください。
今年で4回目!長野県伊那市のICT カンファレンス「ICT Conference 2021 in NISHIMINOWA」 ~公開授業や意見交換などでスクールタクトを活用〜
ICT活用を積極的に進めている長野県伊那市が毎年開催している「ICTカンファレンス」。4回目となる今年は11月17日に西箕輪小学校・西箕輪中学校を舞台に、会場とライブ配信のハイブリッド型で開催されました。
今年のテーマは『未来を生き抜く力を育む』。市内外の教職員約100人が参加し、ICT活用教育の実践発表や現場研究を通じてさらなる学びの可能性を切り拓くことを目指しました。
このカンファレンスでは第1回からスクールタクトを使った公開授業を実施していましたが、見学者が事前質問や授業の感想をスクールタクトで共有しあうのは今回が初めてでした。
スクールタクトを介して「公開授業」の実践や「出張教育DXお悩み相談室」、「授業研究会」での意見交換など、オンライン・オフラインの垣根を超えてイベントを盛り上げるお手伝いをさせていただきました。
実際の公開授業では、西箕輪小学校6年生の社会と西箕輪中学校3年生の数学が行われ、双方でスクールタクトを活用した授業構成で進められました。
西箕輪小学校での授業の様子
また出張教育DXお悩み相談室では先生方から事前にお悩みをスクールタクトに記入、それをもとにアドバイスをリアルタイムに回答するという形で活用いただきました。
出張教育DXお悩み相談室の様子
授業研究会でも参加された先生方が公開授業の指導案に対しての質問を事前にスクールタクトに記入し、それをもとにこの日の授業の進め方や意見交換などが活発に行われました。
授業研究会の様子
このようにスクールタクトは授業だけでなく、イベントやカンファレンスなどにも活用いただくことで双方向のコミュニケーションを活性化することができます。今回カンファレンスに活用いただいたことで、スクールタクトの新たな使い方の可能性を見出すことができました。
今後もスクールタクトは、ICTの活用促進とよりよい授業の実践に貢献してまいります。学校や自治体等でスクールタクトの導入をご検討される方は、お気軽にお問い合わせください。
<関連情報>
【実践共有・質問会】評価を自律的・効率的に! 学習計画・ルーブリック・ポートフォリオによる指導と評価の一体化
中津第二小学校の菊池先生を講師にお迎えして、自律的な学習指導と評価に関する実践共有会を行いました!
【菊池先生の学習観】
デンマークへ教育視察に行き、現地の「よき納税者をつくる」という教育の目的、そして脱落者を生まない「対話」と「選択」を大事にした学習のあり方に、感銘を受けたという菊池先生。
これからの社会で活きる力を育むために、帰国後は「対話」と「選択」、そして過程を重視した評価を念頭において、学習設計をされているそうです。
学習指導要領も引用しながら、三観点評価を総合して「のぞむ姿」に向かうこと、その中でも基盤として「主体的に学習に取り組む態度(粘り強さ・調整力)」があること、数値評価をする部分・しない部分等についても整理してお話しいただきました。
【学習計画・ルーブリック・ポートフォリオを用いた実践】
学習の過程では、単元を通してめあてや観点ごとの評価基準を示します。そして、それを授業ごとにこまかに振り返り、自己評価するという仕掛けが徹底されています。
ただめあてを示すだけでなく、「この単元を通して身につく力は、社会や学校外でどんなことをする時に役立つと思う?」と、自分ごと化できるよう児童と対話されているエピソードが印象的でした。
評価の段階では、スクールタクトの機能がフル活用されています!
例えば算数では、「先生コース」「動画コース」「どんどんコース」という、自分に合った学習スタイルを、児童自身が選択。
そして、授業ごとにスクールタクトで「自分の選択、今日の学習はどうだったか?」を振り返り、次回に向けて修正していきます。
また、単元の最後にはルーブリックで自己評価をします。リアルタイムで結果が見える・自動で集計されるのは、スクールタクトを使う利点とのことです。
(算数の単元計画表、国語の自己評価ルーブリック)
発表後の質疑応答では、小学校だけでなく高校の先生からも具体的な実践に関する質問が飛び、どのような活動・評価をしていくとよいか、互いの実践も共有しながら活発な話し合いがなされました。
チャットやアンケートには、
「今までとは違う観点からものごとを捉えられるようになりました」
「ポートフォリオやルーブリック、使ったことがなかったのでぜひ使ってみたい」
「進めていきたいが、価値観のアップデートが必要そう」
といった声が寄せられました。
改めて、熱心な先生方にスクールタクトをご活用いただいていること、大変ありがたく思います。
菊池先生、参加者の皆様、ありがとうございました!
【授業体験会】お互いの視点を活かし、良さを見つける社会科授業/学級活動 〜 公立小学校先生 坪木 有大先生 〜
スクールタクト歴2年、デイリーユーザーの坪木先生を講師にお迎えして、実践事例紹介と授業体験を行いました!
当日の様子は動画で御覧いただけます。
【スクールタクト 導入・活用体験談】
学校生活の様々な場面で、スクールタクトを活用している坪木先生。
スクールタクト上に『自由帳』という課題を用意して、児童同士が活発に交流をしているそうです。
また、社会・理科・国語・道徳の授業での使い方を紹介していただきました。
【社会科授業体験 〜くらしを支える食料生産〜】
家にある食料品やチラシを元に、生産地を調べてスクールタクトにまとめます。
個人作業の部分は宿題に、協働的な活動を授業で行うことで、限られた時間を効果的に使うことができます。
<Banshot 授業事例>
【学級活動紹介 〜TTP〜】
朝活動や学級活動の時間を使って、友達の良いところ・自分に取り入れたいところを記入します。
友達を見習って自分を高めるだけでなく、友達から見た自分の良いところを伝えてもらえる・保護者の方に共有することでお子さんの良いところを伝えることができる、一石三鳥の活動です。
【簡単・時短の課題作成】
多くの場面でスクールタクトを使っていくためには、課題準備時間を削減することも重要です。
リーグ表や数直線を簡単に作る方法のほか、既存のプリント等をうまく用いるコツを教えていただきました。
【事例共有・質問会】小学校低学年でもできる!スクールタクト・まなびポケットを活かした学級づくりと学力向上
小学校1・2年生と一緒に、毎日まなびポケット・スクールタクトを使っている鎌崎先生。
気になる関係づくりや学力向上、ICT活用に対する姿勢など、盛りだくさんの事例共有をしていただきました!
当日の様子はこちらよりご覧ください。
(Youtube リンクが開きます)
【学力向上も自己調整力も、人間関係づくりから】
タブレットを活かして人間関係づくりや見取りを行うことで、学力や自己調整力の育つ基盤ができると考える鎌崎先生。
小学校2年生でも毎日朝ノートを行って、皆みるみるうちにタイピングができるようになっていったそうです。
お互いのことを知り思いやることのできる関係から、教え合いや学び合いが生まれ、次第に「わからない!」「教えて!」と言い合えるクラスになったそうです。
【学力向上のための仕掛けやツール】
まなびポケットには解説動画や自動採点をしてくれるドリルアプリがあるため、自由な時間に児童が主体的に勉強に取り組めるよう、先生が使用を促します。
タブレットがノートや鉛筆とともに、児童の文房具の1つになると良いという鎌崎先生。トラブルが起こった時も、すぐに先生が禁止するのではなく、クラスでの対話のきっかけにします。
ツール以上に大事なのが、主体的に学習に取り組むための意識付け。
児童は毎授業、自分がどれだけ頑張りたいかという「自分のめあて」、そしてそれに対する「振り返り」をスクールタクトに記入し、鎌崎先生が丁寧にフォロー・評価をします。
【校内のICT活用促進】
ICT利活用において課題になりがちなのが、先生による熟練度やモチベーションの差。
その差を埋めるために鎌崎先生が意識したのは、「必要感」と「お得感」を感じてもらい、なるべくデザインをシンプルにすること。
図工の鑑賞をスクールタクトで行う活動は、児童・先生・保護者の一石三鳥の取組み!作品の写真や工夫した点をまとめて、児童同士がコメントし合います。先生はどこからでも閲覧・評価ができる上、保護者面談で児童の取組みの様子を簡単に紹介することができます。
同時に、デザインに凝らずになるべくシンプルにすることで、他の先生には「これなら簡単にできそう!」「今まで大変だった作品管理や評価を、効率的にできそう!」と思ってもらうことができます。
最初はできなくて当然なのだから、失敗を恐れずとにかくやってみよう!と児童の背中を押す鎌崎先生は、自身も日々挑戦を続けられています。ICT活用に関しても、過度に恐れず禁止せず、児童と一緒に使い方を模索していくとよいのではないか、とおっしゃっていました。
鎌崎先生、ご発表ありがとうございました!
【対談レポート】オンラインでも自ら学ぶ子どもたちの育て方 後編
大盛況だったイベント『【出版記念対談】 教師はICTを使った指揮者<コンダクター>!~オンラインでも自ら学ぶ子どもたちの育て方~』のレポート 後編です。
後編では、著書に収まりきらなかったスクールタクトの具体的な活用方法をお伺いしています。また、質疑応答部分ではアナログとICTの使い分けや、なぜスクールタクトを選んだのかについても語っていただいています。
そのほか、機能面ではスクールタクト開発者の後藤が機能ごとの裏にある想いを少しだけお話しさせていただいています。蓑手先生、秋山先生から皆様へのメッセージもございますので、ぜひ前編に続けてお楽しみください。
登壇者紹介
※ 蓑手先生はイベント後の現在、理想の学校を設立すべく、来年2022年4月開校予定のHILLOCKのスクールディレクタ(校長)を務めていらっしゃいます。
対談の様子(後編)
ーーワードクラウドについて
後藤:コメント機能の他に、たとえば「この機能はこう使ってよかった」「この機能は全然使ってない」などありますか?
蓑手:いいね機能は使いやすいですね。ちょっとした投票でよく使っていて、集計は回答画面をいいね順に表示しています。ワードクラウド機能はあまり使ってないので、秋山先生におすすめの使い方があれば教えて欲しいです。
秋山:ワードクラウドは観察をするときに使うことが多いです。先日も、「地域の移り変わり」という単元で洗濯板を観察した際に、気づいたことを書いてもらいました。ワードクラウドに「ギザギザ」が大きくでてきたので、みんなでギザギザについて考え始めたり、あとは、「ギザギザ」と似た言葉があると、「こういう表現もあるんだね」といった気づきが出てきます。なので、一つのものを見てみんなで考えるといったときに利用します。
▼ワードクラウド
(参考事例:道徳授業でのワードクラウド活用)
後藤:ワードクラウドは、道徳のような「答えがない問い」を投げかける時に向いていると思います。
子どもたちの回答に即座に反応して、なんらかのフィードバックを返してあげるというのが一番良いと思うのですが、クラス全員のものに対応しようとすると、大変ですし、タイムラグが発生してしまいますよね。ワードクラウドを使うと「全体はこう考えているんだね」とすぐに反応することができます。また、ワードクラウドの中心部分はもちろんですが、まわりにある小さな意見も拾いあげたいと思って作っています。
ーースクールタクトの分析系の機能について
蓑手:そうですね。道徳の授業でいうと、私もいつもスクールタクトを使っています。そうすると時系列でデータがたまっていくので、例えば「生命尊重」という同じ価値項目で、2か月前と比べて考えが深まっているかどうかなどを分かりやすく追うことができます。
後藤:なるほど、ポートフォリオのように活用しているのですね。
蓑手:はい。紙でこれをやるのはかなり大変ですよね。あと、スクールタクトのいいところは、リアルタイムでどんどん子どもが書いていくのが見えることですね。私は授業中ずっと児童の回答の様子を見て、コメントしながら授業を進めています。
友達同士で回答を見合えることもいいところですね。なかなか書き始められない子が、友達の回答を参考にして書き始められるというのが、ICTならではの良さだなと思っています。
秋山:私もポートフォリオ機能を非常にいいなと感じています。科目でソートすることもできるので、子どもたちの成長をログとして簡単に見返すことができるんですよ。ノートを写真にとってスクールタクトのキャンバスに貼ることもできるので、ノートでもデジタルでも残す工夫ができる点がいいですね。
後藤:ありがとうございます。そのほかの分析系ですと、先生だけが見られる機能に「発言マップ」というものがあります。これは、誰が誰の回答を「見たり/見られたり」しているのか、いいね・コメント「して/されて」いるのかについて、グラフやネットワーク図であらわしたものになります。こちらは活用されていますか?
▼発言マップ(graph)
(参考事例:成績評価・所見の記入への活用)
蓑手:発言マップ機能は、子どもたちも存在を知っていて、よく見せてほしいといわれるので、大画面に映して見せたりしています。誰が自分にいいねをしているのか気になるみたいです。
秋山:私の場合はスクールタクトで実証実験を行っている関係もあり、発言マップはよく見ています。相互でコメントしている子どもはもちろん、発言マップに普段に出てこない子がたまにコメントしたときに、どういうコメントをしたのかなども追いやすくなります。私の学校では3~6年生までクラス替えがないので、その中で人間関係がどう変化していくのか、先生とコミュニケーションをとっていない子が友達同士だとどういったコミュニケーションをとっているのかも見ていたりします。なので、子どもたちには発言マップがあることを伝えておらず、客観的なデータとして学級経営に活用しています。
後藤:機能の捉え方も先生によって異なるのですね。私も大学で講師をする際にスクールタクトを使っているのですが、あまり活性化していない学生を把握して指導に活かしたり、授業への参加度など評価の手段として活用しています。
ーームーブパーツについて
後藤:最後に、スクールタクトの他にない特徴として「ムーブパーツ」があります。配布前の課題で作成した図形や文字、切り取った写真などに編集権限を付加しておくと、児童が授業時に図形の移動や回転をすることができる機能ですが、使われたことはありますか?
蓑手:私はかなり使っています。漢字の成り立ちの分類をクイズにしたり、円の面積の求め方を動かしながら体感できるようにしたりといった使い方です。また、紙だと回答欄は固定されてしまいますが、私は回答欄自体を拡大・縮小できるようにしています。全体レイアウトを児童が自分自身で変更できるのがいいなと思っています。
秋山:私自身が作成することはあまりないのですが、校内の他の科目の先生が作ったパズルなどの動く課題を含む導入系の課題テンプレートを活用することがあります。
後藤:ありがとうございます。ここまででいただいたご意見を今後の参考にさせていただきます。
質疑応答
司会:ここからは質疑応答に移りたいと思います。
冒頭で蓑手先生から宿題の回収をオンラインでしているというお話があったと思いますが、その場合のチェック・丸付け・コメントなど宿題提出後の対応についてどうされてますか、という質問です。
蓑手:私の学年では”自学”と言って、自分で課題を決めて宿題をするスタイルを取っています。
始業30分前に学校に行ってスクールタクトを開くと、提出された課題がずらっと並んでいますので、児童が学校に来る前に目を通して、コメントを返しています。もちろん登校後に紙で提出する児童もいますが、量が少なく済むのでスムーズにコメントを返せます。1on1ではありませんが、個別にアドバイスや助言、励ましができるため、今までの宿題観が変わると思っていますね。
司会:次の質問です。「秋山先生と蓑手先生に質問です。アナログとICTの使い分けをどのようにされていますか?」
秋山:そうですね、今質問を読みながら直感的に思ったことをお話します。
紙は、子どもたちが自由に発想したり、強い思いをすぐに書きたいときにつかっています。あとは協働的に大きなものを作るというときです。ICTは記録としてログを残す、積み重ねるというときに使うケースが多いですね。
蓑手:私は迷ったらまずICTを使うようにしていました。気づかなかったことに気づけるためです。その中でアナログが向いていると思ったのは、覚えなきゃいけないものや、隙間時間を使うときですね。
そのほかだと、画面の大きさが限られているので、全体図を書き出しながら作業する際などは、子どもたちはノートを使っています。また、大人もそうですが、画面上だけで活動していると疲れてくるので、ちょっと体を動かしたりするときには、あえて紙を使うこともあります。
漢字は紙じゃないと覚えられないですし、計算メモも紙が便利。そのあたりの使い分けは、だんだん子どもが自分で判断できるようになってきます。
司会:子どもが自分で判断できるというのは素敵ですね。
続いて「後藤さんに個人的な要望ですが、複数のキャンバスがある時に、キャンバス別に採点や提出ができると使い勝手がよくなります」とのことです。
後藤:そうですね。よく言われることで、例えば、スタンプを押したり採点をするのをキャンバスのページごとにできるようにして欲しいというものがあります。この背景の考え方として、学習ログとの連携があります。
スクールタクトには学習ログの一つとして「成績CSVダウンロード」ボタンがあり、この機能を使うと「誰がどの課題で何点だった」という集計ができます。そこまで考えると、課題単位で整理したほうが良いかと思ってこのような設計にしています。
▼要望:キャンバスごとに採点したい
▼設計:課題ごとに採点できるように配布すると集計が楽
(参考ヘルプページ:評価確認、提出状況ダウンロード)
司会:考え方の発信が足りてないのかもしれないですね。
後藤:そうですね。「課題とは」「キャンバスとは」という部分をきちんとお伝えして、それでもご要望があるようでしたら、改めて考えていきたいと思います。
司会:続いて「先ほどの宿題の話を聞いて、宿題への認識が変わりそうです。」というコメントをいただいています。
後藤:お二方の著書を読んでいると、宿題の概念が変わるなと思いましたね。
特に秋山先生の理科の実験のページにはオンラインだと家でも実験ができるということが書いてあって、学びというものが学校と家庭でシームレスになっていることを感じました。そうすると「宿題とは何なんだ」「全てが学びでいいじゃん」と思いますよね。
司会:本当ですね。それでは、最後の質問になります。
「数ある授業支援ソフトの中から、秋山先生と蓑手先生がスクールタクトを選んだ理由を教えてください。」ということですが、いかがでしょうか。
蓑手:私はスクールタクトの導入にこそ携わっていませんが、スクールタクト自体は6年ほど前から使用しています。
使い続けている理由としては「使いやすさ」や、「こちらが望む機能を反映して常に進化いしていくところ」、そして一番は「ビジョンへの共感」です。
授業支援ソフトはそれぞれ似ているようでいて、作り手の想いによって使いやすさやユーザーインターフェースが変わって来ると思います。スクールタクトは教育や授業に対しての熱い想いがあり、そこに親和性を感じられるところが大きいですね。
司会:進化していくところ、考え方というところ、とてもうれしいですね。ありがとうございます。秋山先生はいかがですか?
秋山:私は本校の授業研究会で、前原小学校の元校長先生に講師をしていただいた際にスクールタクトを勧めてもらって導入を決めました。
導入の早い段階から後藤さんとお話ができ、ビジョンや使い方についてもフランクに相談ができるソフトだなと感じています。距離が近く、風通しの良い関係が築けるところが使い続けている理由ですね。
機能の背景が見えるので、この部分はスクールタクトを、この部分はGoogle Workspace for Educationを、といった使い分けができるのもいいですね。
今回参加いただいた方へプラスの情報としては、授業支援ソフトを導入するとクラウドベースで子どもの情報がすべて蓄積されていくんですよね。
導入後に別のソフトに乗り換えたいと思っても、それまでに溜まった情報の引き継ぎができないので、導入前ににしっかり比較検討をする必要があります。その判断基準としては、「子どもたちのために自分たちがどのような学習を提供すべきか」です。これをしっかり考えることが、授業支援ソフトを選ぶ時の重要なポイントかなと思っています。
後藤:ありがとうございます。
そうですね、授業支援ソフト一つとっても、それぞれにキャラクターがあり、たくさんの良さがあるのでその選択は難しいと思います。
スクールタクトの一つの特徴としては、教育学、教育心理学をベースにし、実際の授業者への寄り添いが一番強いものなのかなと思っています。
ーーイベント参加者へのメッセージ
秋山:本日はありがとうございました。貴重な機会を皆さんと共有できたこと、うれしかったです。
私としてはこれからも実践を研究し続けていきたいです。引き続きみなさんからも学ばせていただければと思っていますので、また素敵なご縁をいただければと思っています。
蓑手:ICTを使うことが目的ではなくて、「どういう授業をしたいのか」があることが大事ですよね。
選んだツールが、これからの教育や授業のあり方を決めていくものになるので、その選択はとても重要なんだと改めて思いました。そのような観点でも私はスクールタクトが好きで毎時間使っていますし、みなさんにもおすすめしたいと思っています。
おそらくこれからICT教材がどんどん決まってくると思います。現場の教師には決定権がないことが多いため、後悔のないよう、どんどん声を上げていくことが大切だと思います。
スクールタクトを使っていると、何年も使っているのに、いまだに新しい気づきや発見があります。まずは使ってみること、そしてそれを共有することが大事だと思います。本日はありがとうございました。
【対談レポート】オンラインでも自ら学ぶ子どもたちの育て方 前編
秋山貴俊先生、蓑手章吾先生をゲストスピーカーにお招きした『【出版記念対談】 教師はICTを使った指揮者<コンダクター>!~オンラインでも自ら学ぶ子どもたちの育て方~』
大盛況に終わった当日の様子を、前編後編に分けてインタビュー形式でご紹介します。
イベント概要
約1時間半にわたって行われた本イベントでは、秋山先生、蓑手先生が進めている新しい取り組みについて伺いました。
2020年春に休校措置が取られた際の対応や、ICT教育の特徴や大切にしていること、活用例など多岐にわたってお話しいただいています。
お二人に共通していたのは、紙とICTの長所・短所を把握し、子どもたちのための教育を常に模索していることでした。
動画でご覧になりたい方は、YouTubeよりご覧ください。
登壇者紹介
※ 蓑手先生はイベント後の現在、理想の学校を設立すべく、来年2022年4月開校予定のHILLOCKのスクールディレクタ(校長)を務めていらっしゃいます。
対談の様子
本ブログ前編の対談では、2020年春からの休校対応やICT教育の特徴、大切にしていることをお伺いしています。蓑手先生の「学びの楽しさを取り戻す」お話や、秋山先生の「デジタルでのコミュニケーション」への考え方は必読です。是非ご一読ください。
ーー2020年春の休校対応について
後藤:まず最初に、何年生の担任を持たれていたのか、休校対応時の状況などを教えてください。
秋山:そうですね、休校対応となった昨年は小学校6年生を担任していました。本校のICT環境は少々特殊で、私のクラスだけChromeBookが40台ありましたので、休校になりそうなタイミングで児童に持ち帰ってもらいました。今年担任をしている3年生には、必要に応じて貸し出している状況です。
蓑手:私は昨年5年生の担任で、そのまま持ち上がりで現在は6年生の担任をしています。休校開始当初は端末の貸出が出来なかったのですが、徐々に貸し出せるようになっていきました。現在は小金井市全体の決定で、端末の貸出ができなくなっている状態です。
後藤:そうなんですね。では、蓑手先生がオンライン対応をされていた時期は、具体的にいつ頃でしょうか。
蓑手:一応、(2020年春の)休校が終わるまではZoomを活用し、オンライン対応をしていました。ただ現在も「宿題はオンラインで提出していいよ」と伝えていて、児童の半分弱はオンラインで提出していますね。また、Zoomを使って、学校に来られない子と教室とを繋ぐこともしています。
後藤:秋山先生はいかがですか?
秋山:ちょうど1年前の休校初日からZoomやスクールタクトを使ったオンライン授業を実施していました。6年生が卒業し、3年生の担任になったあとの5月頃から6月末までは完全にオンラインのみでした。
休校期間が終了した後も、学校の中でICT端末を使ったり、長期休みには持ち帰らせて週に一回のフィードバックを求めたり、毎日インターネット上での課題を出したりしているので、ずっとオンラインといえばオンラインな感じです。
後藤:去年の3月~1学期あたりは、小中だけでなく高校も含めてオンライン授業を行っている学校が多くありましたよね。
オフラインに戻ると”いつもの学習”に戻ってしまう先生方が多い中、お二人は継続して新しい取り組みを進めていると思うのですが、休校前後でなにか変化はありましたか?
蓑手:休校時にZoomの使い方がわかったので、オフラインに戻った今も同じ教室内にいながらZoomを使ったりしていますね。そうすると、たとえば外部講師の話を聞くときなど、1つの画面をみんなで見る時よりも子供たちの主体性が出てくる効果がありました。また、チャットならたくさん喋れる子がいるのでチャットを活用したり、学年合同での授業を体育館に集めて行うのではなくZoomを使ったりと、新たな可能性を感じますね。
秋山:現在担任をしている3年生はオンラインから始まっているので、なにごともオンラインの方がスムーズなんですよね。なので、全て紙にするよりは、目的に応じて使い分けています。みんなで意見を共有したり、考えをまとめたりするのはデジタルのほうがやりやすく、もちろん一部紙に戻ったものもありますけど、オンラインがやりやすいものはオンラインのまま残っているという感じですね。
ーーオンライン授業・ICT教育の特徴について
後藤:先ほど蓑手先生の話にありましたが、オンラインの特徴として、クラスという単位で区切る必要がなくなる点があると思います。学年合同での取り組みは今も継続して行っているのですか?
蓑手:そうですね、そもそも前原小では、休校前からスクールタクトで朝の会「朝ノート」を行っていました。朝ノートとは、その日の健康状態や、昨日の出来事、今日楽しみなことなどを書きあってコミュニケーションをとる、という取り組みです。朝ノートに取り組み始めた当初はクラス単位で行っていたのですが、昨年担任した5年生は(コロナ禍前の2019年4月)当初から学年全体で行っていました。
なので、休校時のオンラインでの取り組みも、必然的に全て学年合同になりました。その後、クラス替えもありましたが、みんなお互いに知っているので、クラスはあって無いような感じがあります。
秋山:本校はまだ1人1台環境が整っていないので、(1人1台環境となる)来年度からは学年合同の取り組みも増えると思いますが、今は基本的にクラス単位で行うことが多いですね。
後藤:少し話が変わりますが、一般的に「ITを学校教育で使う」というと、”AIドリルで速く学べる”といった「学力」という観点もあると思います。しかし、お二人の実践は学力面もさることながら、学級経営といいますか、グループエンカウンターやソーシャルスキルといった「子どもたちが主体的に学びにいく」ところにITを使っているのが特徴だなと思っているのですが、その点で心がけていることを教えてください。
蓑手:そうですね、私はICTで学力をバリバリ上げたいというわけではなく、どちらかというと本人の学びやすさを保証してあげることが一番純粋で持続可能な学びの形だと思っています。
「授業についていける/いけない」「褒められる/怒られる」といった、学校にある学びを嫌いになってしまう要素を取り除いてあげれば、基本的に学びは楽しいはずだ思っていて、それを私は「学びの楽しさを取り戻す」と表現しています。学びの楽しさを味わわせなきゃいけないと思うと、パフォーマンス的な授業になりがちなところもありますが、本来学びそのものに楽しさは全部含まれているはずなので、それ以外の要素を取り除いて学びやすくできる実践を日々模索しています。
秋山:そうですね、私も蓑手先生のおっしゃる通りだと思います。あと、私はコミュニケーションをとるということを意識しながら活用していますね。クラス全員が一人ずつ発表すると、それだけで多くの時間がかかるし、全員が全員とコミュニケーションをとれているわけでもありません。しかし、ICT、例えばチャット機能などを使うと、普段あまり話さない子とのコミュニケーションや、”意図しない衝突”も生まれます。子どもたちが大人になるにつれ、デジタルでのコミュニケーションは絶対増えていくと思うので、そういったコミュニケーションを安心して体験できる場が学校にあることが大切だと考えています。
ーーオンラインやデジタルでのコミュニケーションについて
後藤:今の秋山先生のお話は、私がスクールタクトを作る際に考えていることにつながる点なので、少しお話しできればと思います。
例えば何かの課題を出したとき、先生が机間巡視をしたり、手を挙げた児童を指名したりして、一人の児童に発言してもらうことが通常だと思います。その時、発言者以外の児童がきちんと聞いているかはコントロールできません。私はそこに課題感をもち、「みんなが主役になるためにはどうすればよいか」を考えています。そこで、先生が選んだもの、加工されたものを見せるのではなく、児童が自身で選んでコメントしていく、興味関心を持つようになることを目指してコメント機能を設計しました。
このコメント機能はお二人もよく使っているかと思いますが、どのように捉えていますか。
蓑手:コメント自体を好きでしている児童が多い印象ですね。子どもたちから「コメントしていいですか?」と聞かれて、「いいよ」と答えると、自分の気になったものや、友達の作ったものにコメントしあっていることはよくあります。お互いにいろいろ見ているな、ということを感じますね。
秋山:回答一覧をコメント数順に並べ替えることができるので、「コメントが多い子から発表」とすると、「こういうことを書くとコメントがたくさんもらえる」などを学んでいきます。また、はじめのうちは注目するようなものへのコメントが多かったりしますが、使い続けているうちに内容を見て「教科書以外のことが書かれている」など、どのような回答にコメントを付けたら良いのかも育っています。そうやって、資料や他人が作ったものに対する見方が養われていくので、コメント機能は面白いなと感じています。
後藤:確かにそうですね。コメント機能は、先生によっては「喧嘩がおこる」とか「変なことを書かれたら困る」という理由から、禁止してほしいという声が出ることもあります。
ただ、さきほど秋山先生もおっしゃったように、最初は荒れることもあると思いますが、一度乗り越えると「共感してもらうためには」を考えていきますよね。紙で回答を提出し、先生=わかっている人からしかフィードバックをもらえないところから解き放ちたいという思いがあるので、非常にありがたい意見でした。
ー後編へ続くー
後半では、より具体的にどのようにスクールタクトの機能を授業で活用していたかをお伺いしています。また質疑応答部分にて、アナログとICTの使い分けや、これからICTを使っていく先生へのメッセージもありますので、ぜひ続けてお楽しみください。