兵庫県西宮市に位置する報徳学園中学校・高等学校は、明治時代から続く歴史ある私立男子校です。校名の由来は、二宮尊徳の教えである「報徳」に基づいており、文武両道を掲げ、クラブ活動も活発に行われています。
同校では、全生徒に1人1台のiPadを整備し、2017年より教育プラットフォームとしてClassi、授業支援ツールとしてClassiNOTE※1を導入することで、学習や学校活動に効果的に活用しています。今回、ICT活用を推進する国語科の小林裕貴先生、理科の木下和生先生に、ClassiNOTE導入の決め手や具体的な活用シーン、そして「振り返りAI分析(β版)※2」の可能性について伺いました。
※1.ClassiNOTEは、Classiユーザー用に提供しているスクールタクトの別名称です。システム上の違いはありません。
※2.振り返りAI分析(β版)とは、ClassiNOTEの回答欄に入力された振り返りのテキストを、独自開発のAIにより、客観的かつ瞬時に振り返りの5観点に分類する機能。
利便性と機能性でClassiNOTEを採用、「報徳講話」が活用浸透のきっかけに
―ClassiNOTE導入の背景について教えてください。
小林:本校では、2017年に中学1年生からiPadの導入を開始し、年次で順次1人1台の環境を整えてきました。導入当時、アクティブ・ラーニング※3 のための授業支援ツールを比較検討したところ、ClassiNOTEの利便性と機能性が優れていたため、採用を決めました。
利便性の主なポイントは、ウェブブラウザからクラウドで利用できる点です。生徒はiPadを使用しますが、教員はノートパソコンを使用しているため、デバイスやOSが異なっても同じ環境で使えることは大きなメリットでした。また、リアルタイムで生徒の画面を共有できる手軽さは、機能面での決め手となりました。
※3.アクティブ・ラーニング:児童生徒が能動的に学ぶ教育の手法。現在の学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」につながる。
国語科 小林裕貴先生
―ClassiNOTEの活用は校内でどのように広がっていったのでしょうか?
小林:本校には「報徳講話」という授業が月1回あり、建学の精神である二宮尊徳の報徳思想について学んでいます。この報徳講話で使用する資料を、紙のプリントからClassiNOTEのテンプレートに落とし込んだので、担任の先生は必然的にClassiNOTEを使う状況になりました。これが、利用が浸透するきっかけになったのではないかと思います。
報徳講話をClassiNOTEに移行したことで、生徒間の意見交換も非常にスムーズになりました。以前はプリントに意見を書き込ませて回収してチェックした上で良いものは次回発表させるということをしていましたが、ClassiNOTEを使えば、生徒間での意見共有も簡単にできますし、その場で電子黒板に映して発表させることもできます。
ClassiNOTEのテンプレートで作成した報徳講話の資料
教科の授業でも、資料の配布や生徒間での意見共有に大変役立っています。特に、生徒が書いた内容をリアルタイムで確認できるため、授業の進度を調整しながら進められる点が魅力です。また、ポートフォリオ機能で過去のデータが参照しやすいので、生徒の成長や理解度の変化を長期的に把握することができます。
生徒と先生に新たな気づきをもたらす「振り返りAI分析(β版)」の実践例
―「振り返りAI分析(β版)」はどのような使い方をされていますか?
小林:私が担当する国語科では、単元ごとの振り返りで使用しています。
例えば「言葉がつなぐ世界遺産」という単元では、題名に着目して本文の内容を捉え、日光の社寺の技術や情報が代々受け継がれていることを学習した上で、最後に「振り返りAI分析(β版)」を使用しました。
この機能を使うと、生徒が書いた振り返りが観点別に分類されて一覧になるので、各生徒が「事実」、「感想」、「考察・要因」、「考察・推論」、「結論」をどのくらい書けているのかすぐに分かります。例えば「事実」には授業で理解できたことが多く、「結論」には「こうしていきたい」と今後につながる主体性が感じられる内容が多いので、評価する際に参考にすることができます。
分析対象となる回答欄を設定し、そこに振り返り内容を生徒が記載する
先生画面からは観点別の分析結果が一覧で確認することができる
また、生徒は自分が書いた文章がAIの分析で数値化されてレーダーチャートで確認できるため、「どうしたらもっと良い内容になるのか」と考えて文章を何度も書き直すこともできます。やはり国語では文章を書くことは大事なので、単純に書く分量が増えるだけでもいい効果だと感じています。
―文章表現の練習になりますか?
小林:そうですね。例えば、箇条書きをつないだような短文や、感想だけしか書けていないと、AI分析でも偏った結果になります。すると生徒たちは結果を参考に適切な接続語を使ったり文末の表現を工夫したりするので、文章がどんどん良くなっていきます。
特に仮説を立てるのが苦手な生徒が、まずは単純に「もし〜なら」という言葉を使って文章を書くということから始めてもいいと思います。それでAI分析の「考察・仮説」が伸びれば、次第に文章の型に慣れていくのではないかと思います。また、文章表現の練習として、「振り返りAI分析(β版)」の5つの観点を網羅した文章を書くというような使い方もできそうです。
生徒の傾向はレーダーチャートや分析結果で可視化され、ひと目で把握することができる
木下:理科ではまだ「振り返りAI分析(β版)」を活用していないのですが、活用価値がありそうだと感じています。例えば実験のレポートや自由研究では、考察が重要でそこをしっかり書いて欲しいのですが、生徒の文章を見ていると、感想になっていたり事実しか書けていなかったりすることが多いのです。考察とは何なのかを理解させるのが非常に難しいと感じていたので、生徒にこの「振り返りAI分析(β版)」機能を使用させることで、どのように書いたら考察になるのかという法則が分かるようになるのではないかと期待しています。
―生徒の反応はいかがですか?
小林:生徒の反応は非常に前向きで、「先生今日はAI分析で書かないんですか?」と言われることもよくあります。一瞬で自分の文章が分析された上に、それをもとに試行錯誤できるので、生徒にとっては気軽で良いようです。教員の評価ではなくAIが採点するというところが、生徒の抵抗感を減らしているようです。
教員にとっても、AI分析の客観性は良い効果があります。国語の教員として生徒の文章を評価するときに、どうしても文章の好みに左右されたり、普段の生徒の印象が影響してしまったりすることがあり、意識していても完全には避けられません。ですから、自分以外の客観的な評価としてAI分析の結果を見て参考にするのは良いことだと感じています。
授業や活動で広がるClassiNOTEの活用
―普段の授業や活動でのClassiNOTE活用例を教えてください。
木下:理科では夏休みの自由研究にClassiNOTEを活用しています。以前は模造紙にまとめさせていましたが、ClassiNOTEだと写真やイラストも簡単に挿入でき、レイアウトも整えやすいので、非常に見やすくまとめられます。発表用スライドとしてもそのまま使用できるため、生徒の自由研究のクオリティーが向上しました。
見やすくまとめられた夏休みの自由研究
また、実験のレポート作成にも活用しています。実験中に写真を撮り、その場で記録できるので、後から考察する際に役立ちます。特に、実験結果と教科書の内容を照らし合わせて考察する際に効果的です。
クラブ活動の理科研究部でも「チンアナゴの生息と砂の高さの関係性」の研究結果をClassiNOTEでまとめるよう指導したところ、生徒たちは自主的に分かりやすい研究記録を作成していました。この記録をそのままプレゼンテーション資料として使用し、中高生向けの研究発表大会では高評価を得ることができました。
理科研究部の研究記録はそのままプレゼンテーション資料として活用
小林:国語ではクラス全体の意見を把握するのにワードクラウドを使用することがあります。学習の前後で生徒の見方がどのように変化したかを把握するのに非常に便利です。
竹取物語の授業で利用したワードクラウド
また、古文の「伊勢物語」の授業では、現代語訳を併記せずに本文のみを掲載したテンプレートを配布し、生徒がスライドのコメント欄に現代語訳を書き込めるようにしています。これにより、生徒は自分でコメント欄の表示・非表示を切り替えながら古文を効果的に学習することができます。
古文の授業ではコメント欄に現代語訳を書き込むことで、効果的に学習することができる
もっとシンプルな使い方では、問題集の問題をClassiNOTE上で解かせることもあります。紙のように回収せずに添削でき、よく間違えるパターンの解答をその場でスクリーンに表示して解説できるので、非常に効率的です。これは最も簡単で便利な使い方の1つだと考えています。
ClassiNOTEを活用した授業の様子
授業効率化からAI活用まで、学校全体への拡大を目指す
―あらためて、授業をする先生にとってのメリットについてお聞かせください。
小林:教員にとってのメリットは多岐にわたります。まず、板書の代わりに資料を瞬時に提示できる点や、生徒の意見共有が迅速にできることが非常に便利です。また、過去の授業データが年度別・個人別に自動で保存されているので、先輩の回答例を簡単に参照できるのもいいですね。
木下:自由研究においても同様のメリットがあります。他校の優秀作品よりも、同じ学校の先輩や同級生の良い研究例を見せることで、生徒たちに「自分もできそう」という前向きな姿勢が生まれます。また、実験のレポート作成時にも、その場で写真を撮って記録できるので、後から考察する際に非常に役立ちます。
小林:さらに、リアルタイムで生徒の理解度を確認できるため、授業の進度調整が容易になります。これにより、生徒の理解度に応じて指導方法を柔軟に変更することができます。
そして教員間でのテンプレート共有も非常に便利です。同じ単元の授業を行うほかの教員の進め方や生徒の回答を参考にできますし、私のテンプレートをほかの教員の参考として共有することもできます。これにより、教員間の情報共有や指導方法の改善にもつながっています。
木下:特に導入初期は、同じ教科のほかの教員のテンプレートを参考にすることで、効果的な授業設計のヒントを得ることができました。
ClassiNOTEの活用について語る木下和生先生と小林裕貴先生
―今後の活用の可能性についてお聞かせください。
小林:今後の活用については、「振り返りAI分析(β版)」を学校全体に広めていきたいと考えています。具体的には、「報徳講話」のテンプレートをリニューアルしてAI分析を組み込むなど、工夫を重ねていく予定です。また、探究学習用の共通テンプレートを用意することで、教員が新しい学習方法に安心して取り組めるようにしたいと思います。
せっかくClassiNOTEを中学高校で一貫して使用しているので、授業以外での活用も含めて、学校全体で生徒の目的に応じた多様な用途で活用していきたいと考えています。特に、AIによる客観的なフィードバック機能は、教員の主観に頼らない公平な評価を可能にするため、今後さらに活用の幅を広げていきたいと思います。
※「振り返りAI分析(β版)」の機能について、より詳しい内容を知りたい方はこちらをご参照ください。 https://schooltakt.com/reflection-ai/