2026年3月26日、オンラインイベント「学校が変わる!みんなで語り合いながら進める校内研修とは?【研究主任・研修主任の先生向け】西条市立神拝小学校の対話型校内研修の実践」を開催しました。本イベントでは、愛媛県西条市立神拝小学校で研修担当を務める山下楓馬先生(イベント実施当時)をゲストにお迎えし、先生同士の「対話」を土台とした校内研修のつくり方についてお話しいただきました。

なぜ、教職員に「対話」が必要なのか?

多くの学校で、校内研修は「資料を読めば分かる」ような一方向の知識伝達型になりがちです。山下先生は、こうした研修のあり方を見直し、参加する先生方が共に価値を創り出す場へと転換することを目指して実践を重ねてこられました。

その土台として重視されたのが、教職員集団の心理的安全性と、安心して語り合える対話的な風土づくりです。

山下先生は、子供の学びと大人の学びは相似形であると語ります。子供たちに主体的・対話的で深い学びを求めるのであれば、まずは大人自身がそれを体験し、実践していく必要がある。教員同士の「学び合い」が、そのまま児童の「学び合い」のモデルになるという考え方です。

また、校内研修はあくまで授業を変えるためのきっかけづくりであり、山下先生はその中で「概念化」を大切にされていました。

研修では、まず対話を通して大切にしたい価値や視点といった抽象的なテーマを共有し、それを授業という具体の場で確かめます。さらに、そこで見えてきた具体的な子供の姿や事実から、次の授業改善につながる視点を再び抽象化していく。
こうした抽象と具体を往還する概念化を、先生方の「対話」によって進めていくことを土台に、校内研修を対話型へと変えていく取り組みが紹介されました。

山下先生のご発表資料より

※山下先生のご発表資料より

「学習する教職員集団」にするために

山下先生は、まず関係性の質を高めていくことを重視されていました。

例えば、研修を行う「場」の工夫です。職員室から理科室へ場所を移し、パソコンやタブレットを持たずに、先生同士がしっかりと目を見合わせて対話できる環境を整えました。

さらに、「ダイアログカード(ニーズカード・感情カード)」を用いたアイスブレイクや、テーマの本質をみんなで言葉にしていく「本質観取」など、対話を促進するためのツールやワークショップも効果的に取り入れています。

山下先生のご発表資料より

※山下先生のご発表資料より

こうして関係性の質を高めることで、先生方の思考の質が高まり、その思考をもとに行動の質が高まり、さらに結果の質も高まっていく
山下先生は、このような好循環を生み出すことそのものが、「学習する教職員集団」をつくるうえでエンジンとなると語られていました。

対話型研修の実践例① 学校教育目標を「自分事化」する

年度初めに示される「学校教育目標」を単なるスローガンで終わらせないため、研修の中で各学年が学校教育目標の具現化に向けて対話する時間を設けたそうです。山下先生は6月の校内研修でこのテーマを取り上げ、各学年団でグランドデザインを見ながら、

  • 自分たちにできること
  • 大切にしたいこと
  • どんな児童に育ってほしいか

対話を通して言葉にし、6月から3月までのロードマップとして可視化していきました。

完成したロードマップは職員室前方に掲示し、日常的に見返せるようにしたことで、学校教育目標を常に意識しながら1年間を過ごせる環境づくりにもつながったと言います。

この対話による取り組みにより、先生方が学校の目標を自分として捉え、同じ方向を向いて教育活動を進める土台が作られました。

山下先生のご発表資料より

※山下先生のご発表資料より

対話型研修の実践例② 対話を通して「学び合い」の目線を合わせる

「学び合いを取り入れましょう」と言われても、新しく着任した先生や経験年数の異なる先生がいる中では、実践のイメージに差が生まれやすく、ハードルの高さを感じる声もあったそうです。山下先生は、そうした声を受け止めながら、校内研修で教職員の目線をそろえる対話の時間を意図的につくりました。

研修では、

  • 教員はどのような授業づくりをすれば良いのか
  • 児童のどのような姿が見られると「学び合い」ができていると言えるのか

という2つの問いについて、教員目線と児童目線の両面から対話を重ね、各学年で言語化・可視化していきました。

山下先生のご発表資料より

※山下先生のご発表資料より

さらに、2学期末には実践を持ち寄って再び対話し、そこから心理的安全性・課題・主体性という3つのキーワードが浮かび上がったそうです。
「学び合い」を曖昧なまま進めるのではなく、対話によって学校全体で共通理解をつくり、次の授業実践へつなげていくプロセスを大切にされていました。

対話型研修の実践例③ 「振り返り」の質を高める独自のフレームワーク作り

山下先生は、子供たちの対話の質(話し言葉)を高めるためには、振り返りという書き言葉の質の向上が不可欠だという仮説のもと、スクールタクトの振り返りAI分析機能を活用した実践を進めていました。

特徴的だったのは、この機能を先生方が使う前に、まず先生同士で

  • この分析にはどんな効果があるのか
  • 子供にどんな力がつくのか

を対話し、子供の目線に立って考える時間を設けていたことです。

そのうえで、なんとなくの振り返りを減らすため、事実・感想(なび)/考察(ぜ)/結論(なぐ)の頭文字をとった「まなつ」という独自の振り返りポイントを提案。これを一方的に下ろすのではなく、各学年で対話しながら発達段階に合わせた言葉へと修正し、学校全体の共通の振り返りポイントへと育てていったそうです。

山下先生のご発表資料より

※山下先生のご発表資料より

こうして、先生方の納得感を伴いながら学校全体で振り返りの視点が共有され、子供たちのなんとなくの振り返りが減り、振り返りの質の向上につながっていった実践が紹介されました。

対話がもたらした職員室の変化

1年間の対話型校内研修を経た2月のアンケートでは、「研修の内容が自身の授業改善につながった」と多くの先生方が肯定的に回答したことが紹介されました。

実践発表の全体を通して、山下先生は「こうすれば良い」という知識伝達型の研修は行わず、授業や子供の姿について先生同士が語り合う場を意図的につくってこられたことが分かりました。そこで生まれた気づきが、それぞれの先生方の授業改善へとつながり、このアンケート結果にも表れたのでしょう。

また、継続的な対話を通して、授業や学校教育目標に対する先生方の目線がそろってきた実感も語られました。そのうえで山下先生は、さらに対話型研修を深めていくためには、先生一人ひとりが「自分が心の底から解決したい問い」=当事者性を持ち、その問いを出し合いながら探究していく時間が重要だと振り返られていました。

校内研修の本質は、スキルアップだけでなく、教員同士が対話を楽しみながら学校文化そのものを更新していくことにある。そんな職員室の変化と、次年度への展望が伝わる実践でした。

イベントの詳しい内容は、アーカイブ動画でご覧ください!

山下先生が年間を通してどのように対話型研修をデザインし、スクールタクトを活用しながら先生方を巻き込んでいったのか。その具体的なノウハウなど、さらに詳しいお話は、ぜひ動画でご覧ください。