スクールタクトを活用し、能動的に学び続ける子供たちを育む 2023.05.09 教育委員会

他自治体に先駆けて、2020年10月に児童・生徒一人1台の端末整備を実現した東京都港区。すべての教員・児童・生徒に端末が行き渡り、スクールタクトを活用したタブレット授業がスタンダードになった今、次なるステージへと上がろうとしています。港区のこれまでの取り組みと今後の展望について東京都港区教育委員会の富樫学指導主事にお話を伺いました。

他自治体に先駆けて日常的にタブレットを活用

―はじめに港区のGIGAスクール構想実現へ向けてのこれまでの取り組みについて教えてください。

富樫:港区では2018年3月に策定した「港区情報化アクションプラン」に基づいて、電子黒板機能付きの大型提示装置の設置やWi-Fi通信環境の構築など、各校のICT環境の整備を進めてきました。その後、2020年10月に児童・生徒一人1台のタブレット端末整備を完了し、翌年の4月から国語・算数・数学のデジタル教科書の活用をスタート。新型コロナウイルスの感染が拡大した9月には、すべての小中学校でハイブリッド型のオンライン授業を実施しました。コロナ禍でも学びを止めることなく安心して学べる環境を実現できたのも、スクールタクトの「使いやすさ」が大きかったと感じています。

―スクールタクトを導入された経緯を教えてください。

富樫:最初はICTモデル校の御成門中学校で実証的に導入しました。コロナ禍での手応えにより、その後港区全校で導入する運びとなりました。現在スクールタクトは授業に欠かせないものとして定着したように感じます。


東京都港区教育委員会 指導主事 富樫学氏

先生の役割は「教える」から「子供たちの考えをより深める」へ変化

―スクールタクトの魅力はどこにありますか?

富樫:ツールとして非常に直感的で、先生も児童・生徒も使いやすいところが一番の魅力だと思います。先生は児童・生徒の考えを瞬時に手元で確認できるので、授業を展開していく上でとても有効に活用することができます。

すでにかなりの先生が使われていますが、スクールタクトは各教科の課題テンプレートが充実しているので、ICTに苦手意識を持っている先生でもはじめの一歩として利用するのにとても便利です。

また、これまでは先生が板書したことを児童・生徒がノートに書き写すという時間が必要でしたが、スクールタクトで課題を共有することでそれらの時間が短縮されたのも大きなメリットになっています。

―スクールタクトを活用したことで、児童・生徒にどのような変化が見られるようになりましたか?

富樫:例えば中学生のケースで言うと、生徒一人ひとりの考えが把握できるようになったことが大きいと思います。中学生になると、思春期に入り、周りを気にして人前で発言するのを嫌がったり、ためらったりする生徒が増えてきます。けれど、そんな生徒もタブレットなら心理的なハードルが下がり、抵抗なく書き込めるようです。

これは小・中学校に限らずですが、これまでの集団授業では、発表することが好きな子や得意な子が多く発言をして授業を進める、という側面があったと思います。それがスクールタクトを活用することにより、普段なかなか発言ができなかった児童・生徒の声を拾えるようになったことは、とても大きな魅力に感じます。

また、児童・生徒にとっても、さまざまな考えや意見を共有できることは、多様性を育む点でとても有効です。特に港区の区立小中学校には、外国籍の児童・生徒も多く在籍することから、自分と異なるバックグラウンドをもつ友達がどのような考えを持っているのかを知ることができます。こうしたさまざまな考えや意見を共有し、認め合い、その上で自分はどう考えるか、というのが今の時代の教育には不可欠だと感じています。


スクールタクトで意見を共有する(サンプル画面)

―スクールタクトによる学びの変化はありましたか?

富樫:スクールタクトの活用によって、授業の進め方は大きく変わってきています。板書や発表の時間が短縮された代わりに、児童・生徒はじっくり考えたり、クラスメイトと話し合ったりする時間がどの教科でも必ず入ってくるようになりました。そういう点において、港区が目指す主体的、協働的な学びが実現しつつあります。先生の役割も「教える」から「子供たちの考えをより深める」へと変わり、より中身の濃い授業になっています。スクールタクトは先生方のスタンダードになってきているといえます。

―よくICTの活用については、先生の得手不得手で活用頻度の差が出てしまうと聞きますが、どのようにして活用を広めていったのでしょうか?

富樫:港区ではICT活用推進のために、令和3年度に「GIGA×TEACHERS港区推進チーム」を発足しました。港区の教員なら誰でも参加でき、参加表明した先生方でTeamsのグループを作り、各自の実践や研修内容を報告し合い、情報を共有しています。こうした情報によって、「こんなこともできるんだ」と授業のヒントになったり、「こんなことをやってみたい」「こんなことにも使えるのではないか」と新たなチャレンジにつながったりしているようです。現在は212名(取材時)の先生が参加していて、学校の垣根を越えた横のつながりが生まれています。

また、今年度からは教育研究会に新たに情報部会を作り、国語科や社会科といった教科部会と同じように授業実践の研究を行うことになりました。スクールタクトの活用についても多くの先生方に広がっていく機会になればと考えています。

新たな学校教育を目指し、能動的に学び続ける子供たちを育む

―タブレットを使った授業が当たり前になった今、新たに抱えている課題はありますか?

富樫:2021年12月よりタブレットの持ち帰りができるようになり、児童・生徒は学校だけでなく家庭でもタブレットが使用できるようになりました。これまで以上に情報モラルに関する指導が重要だと考えています。児童・生徒のみならず保護者や教職員を含めた意識啓発が急務となっています。各校で子供たちに指導をするのはもちろんのこと、保護者向けに講習会も実施しています。

このような活動を通じて、SNSなどの使い方といったインターネット利用におけるルールやマナーを身につけるだけでなく、私たちが情報に囲まれている世の中でどう生きていくか考え続けるきっかけになってもらいたいと考えています。

―今後の展望をお聞かせください。

富樫:港区では次なるステージとして「港区GIGAスクールタスクフォース」※による学びの支援体制を強化していく意向です。具体的には先ほどでた情報モラルを高めていくことと、授業改善のみならず教員の働き方改革の推進、ICT専門チームとの連携の強化が挙げられます。

先生方の校務でも積極的にICTを取り入れ業務を効率化することで働き方改革につなげていきたいと考えています。そのほかにも各学校の校長にも協力いただき意図的に教育活動に取り入れていくなど、より一層のICT活用促進につながる動きも広げていきたいです。

今後もスクールタクトをはじめとするICTコンテンツを活用しながら新たな学校教育を目指し、生涯に渡って能動的に学び続ける子供たちを育んでいきたいと思います。

※港区GIGAスクールタスクフォースについて
https://www.city.minato.tokyo.jp/houdou/kuse/koho/houdouhappyou/documents/20220426_tasukufo-su.pdf

港区教育委員会

所在地
東京都港区

区内学校数
小学校19校 中学校10校

インタビュー対象者
東京都港区教育委員会 指導主事 富樫学氏

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