導入前の課題 | |
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1 | 一斉課題で各自がどこまで理解できているのか把握しにくい |
2 | 発言する生徒だけでなく、発言をしない生徒も含めたクラス全体の思いを可視化することが難しい |
導入後の効果 | |
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1 | 生徒一人一人の理解度を一括画面で把握でき、すぐにフォローできるようになった |
2 | ワードクラウドにより抽象概念を可視化、学級経営の向上に効果があった |
静岡県沼津市にある私立・加藤学園暁秀初等学校では「子どもたちにどう学んでもらいたいのか」を軸に、先生たちが授業を設計しています。そのため先生が教材を自作することも多く、やりたい授業を実現できると感じたのがスクールタクトでした。「スクールタクトのおかげで、授業準備の時間が大幅に削減でき、授業内の学習量も増えた」という活用方法を、コンピューター科の中原悟先生と1年生の担任の加藤祐也先生に伺いました。
子どもたちの主体的な学びをつくる学校方針とスクールタクトがマッチ!
ースクールタクトを導入するきっかけを教えてください。
中原:2019年にイベントでスクールタクトを知り、授業での活用事例を見て、「これは本校の教育に合う授業支援クラウドだ。ぜひ取り入れてみたい」と思ったのが最初でした。そのポイントは大きく3つ。
1つ目は、本校では子どもたちが、より楽しく、さらに理解を深めることができるようにと考えて先生が教材を自作しています。そうした教材や授業自体のデザインに最適だと思ったこと。
2つ目は、子ども同士でコミュニケーションが取れることです。互いの取り組みが見られたり、コメントを書き合えたりできることで、互いに気づきが生まれます。
3つ目は、子どもの思いや学びが可視化できることです。これはワードクラウドの機能が特に長けていると思います。子どもたちの中には、話すのが得意な子もいれば、書く方が気持ちを伝えられる子もいます。ワードクラウドを活用することによって、話すことが得意な子だけではなく、クラス全体としての思いを可視化することができます。子どもたちの間に共感が生まれ、学級経営にも良い影響が出ると感じたからです。
コンピューター科での授業の様子
そうしたポイントが素晴らしいと思い、4年生のコンピューター科の授業から導入を始め、徐々に学年を広げていった時に起きたのが、コロナによる一斉休校でした。
オンライン授業もインストール不要ですぐに対応!
―2020年2月末に一斉休校となった時は、どのように対応されましたか?
中原:休校以前からコンピューター科の授業を中心に全学年でICTを用いた授業を行っており、スクールタクトも使い始めていました。
休校が通達されたのは2月末でしたが、子どもたちがIT機器に慣れていたこともあり、各家庭の端末を使ったオンライン授業を3月には始めることができました。授業はZoomで行い、先生が教材を配布したり、子どもたちが作品や課題を共有したりするプラットフォームとしてスクールタクトを活用しました。ここから先生たちの中での活用度も一気に増えましたね。
スクールタクトはブラウザで使えるので、アプリをインストールする手間も必要なく、各家庭の端末からすぐにアクセスしてもらえました。これは、休校中の授業のベストソリューションでした。
―新1年生は入学後一度も登校することなくオンライン授業が始まったということですが、どのようにスクールタクトを活用していただいたのでしょうか?
加藤:スクールタクトの魅力の1つは、キーボードを使わなくても自分の考えが表現できるところです。まだ字を書いたりタイピングをすることができない1年生でも、スクールタクトなら「ムーブパーツ」という機能を使って画面上のものを動かして学ぶことができます。
本校では、「具体操作活動」と言って、子どもたちが体や物を動かすことで、実感を伴った理解ができる授業を行っています。算数ではおはじきなどを使うことが多いですが、スクールタクトでもイラストを指で動かして数えるなど同様の操作ができるのです。休校中の4・5月の新1年生には、ものを動かして考える機能が非常に合っていました。
※「ムーブパーツ」機能を用いた加藤先生の小学校1年生算数の実践事例はこちらからご覧いただけます。
さらに、本校の授業で大切にしている個人で考える時間、友達との話し合いの時間、その両方をオンラインでも実施できるのがスクールタクトでした。例えば「枠の中に書かれた数だけキリンを入れてみよう」と言ったような課題を作成し、前半20分は全体での活動を話し合いを行いながら進め、後半20分は各自問題に取り組むという形で、教室でやっていることに近い授業が、そのままオンラインでできました。
オンライン授業でのキリンの課題では、オフラインと近い内容で取り組むことができた。
生徒一人一人の理解度や悩んでいる様子を、一括画面で把握
加藤:スクールタクトは、対面授業に戻ってからも有効なソフトの1つだと感じています。全員一斉に課題に取り組んでいると、各自がどこまで理解できているのかが把握しづらいことが現場の課題でした。しかし、スクールタクトだと課題を解いている最中の子どもたちの動きまで見えるので、一人一人の理解度を簡単に把握できます。それを見て、勘違いしている子や手が止まっている子には、席まで行って相談に乗るなどすぐに手が打てるのもいいところですね。
対面授業の課題だった生徒の一人一人の理解度を把握できるようになった。
ペーパーレスで授業時間内の子どもたちの学習量が増えた
―現在は、授業ではどのようにスクールタクトを活用されていますか?
加藤:本校では、授業を通して「子どもたちにどう感じてもらいたいか、子どもたちに学びをどう楽しんでもらうか」ということを軸に置いて、各先生が授業を設計しています。スクールタクトはそれにぴったりだと感じています。例えば「7はどうやって作れるか」という算数の問題に、「ムーブパーツ」機能を使って各自が丸を動かし、数字を書き入れてスクールタクト上で答えられる教材を作りました。すると、「4と3で7」と答える子もいるし「2と5で7」という回答もあります。カードを印刷して切って、それを配布する方法で行っていた時と比べ、授業の準備時間がかなり削減されました。子どもたちにとっても教材の管理がしやすいので、授業内の同じ時間での学習量が増えていると感じます。
ムーブパーツを使った算数の授業。生徒は楽しみながらも学習量が増えた。
それに、これまで子どもたちは回答後のチェックのために先生のところに並ぶ必要がありましたが、スクールタクトなら問題を解き終わった子が先生の画面上で分かるので、すぐに丸をつけてあげられます。自分が解いたものにすぐ丸がついて、子どもたちはパッと顔が明るくなります。最初の数問は、理解の定着のためにみんなで取り組み、慣れたらあとは自分の進度で解けるように問題を用意しておくと、子どもたちはどんどん解いていくことを楽しむようになりました。スクールタクトのおかげで「45分の中で結構勉強しているな」という感覚を持っています。
様々な答えが考えられる課題は、共同閲覧モードをオンにして私のiPadからプロジェクターに映しています。すると「そういう考え方もあったのか」と互いの刺激になるようです。また、操作に慣れた子は、手書きを加えたり、コピー&ペーストしたりと回答の仕方もアレンジしてくれるので、授業内容の学習だけでなくiPadやスクールタクトの操作も全て説明しなくても互いに見て使い方を広げてくれるのもいいですね。
操作に慣れた生徒は自身で使い方を広げていくことも。
発達段階や学年の特性に合わせた多様な使い分けができる
中原:加藤先生からは低学年での使い方をお話ししましたが、私が担当している高学年ではまた違った使い方を考えています。例えば国語の授業では、説明文を段落や要旨ごとに分けた文章構成図(文章の設計図)を子どもたちと一緒に作成してみようと企画中です。同じ「ムーブパーツ」機能を使い、段落ごとにブロックに分けた説明文を動かして、線で繋いだり、要旨やキーワードをでつないで、1枚の文章構成図や関係図として表現する内容です。また、小学校のプログラミング授業でも、子どもたちの思考を可視化するフローチャート図としても活用してみたいです。このように、スクールタクトは教材作りの自由度も高い点が魅力ですね。
低学年には手を使ったり物を使ったりした取り組み方、高学年には言葉や図などを活用して抽象概念を可視化していく取り組み方、というようにそれぞれの学年の発達段階に合わせて活用できる授業支援クラウドであることは、本当に優れていると感じています。
クラスの士気を高め、学級経営にも効果あり
―学級経営では、どのように活用されていますか?
加藤:4年生を担任している時に、長縄跳びのチャレンジに取り組んでいました。学習発表会という目標を定め、それに向けて回数を伸ばしていきましたが、うまくいかないこともありました。そこで、「どうして今回はうまくいかなかったのか?」「回数を増やすためにはどんなことが必要だと思うか?」という議論のために、スクールタクト上に子どもたち一人一人の考えを記入してもらったのです。その言葉をワードクラウドにして、スクリーンに映し出すと子どもたちから「おー!」と声が上がりました。
一人一人の思いが可視化できたことによって「協力が必要だね」「やっぱりみんな昼休みに練習した方がいいと思ってるね」ということを改めて互いに認識し、士気が上がりましたね。
4年生の長縄跳びの取り組みでは、ワードクラウドを使い一人一人の思いを可視化。
中原:今の例はまさに、抽象的な言葉・概念を可視化し共有できる高学年ならではの使い方ですよね。ワードクラウドやコメント・いいねなど、思考や感情の可視化、気持ちの共有ができることは他社にはないスクールタクトの魅力だと思っています。
導入当初に5年生がMinecraft(マインクラフト)*で街づくりに取り組んだ際にもスクールタクトを使い、話し合いの場として活用しました。ネットワーク上でどういう街を作りたいかを書いて、ワードクラウドを使って表示をし、みんなで街のテーマを決めていく。また各チームの作業の連絡手段に使うと、互いの作った街に「もっとこうするといいよ」「こんな建物も必要だね」などとフィードバックが始まりました。
※3Dブロックで構成された仮想空間の中で、ものづくりや冒険が楽しめるゲーム。通称“マイクラ”と呼ばれ、教育的な効果も得られると注目されている。
5年生はワードクラウドの活用し、みんなでマインクラフトのテーマを決めていった。
「いいね」が押せるというのも子供たちは喜びましたね。SNSに近いということと、ポジティブな反応が嬉しかったのでしょう。多感な高学年のコミュニケーションにも適しています。「先生も“いいね”押してよ」とよく言われます(笑)。
実現したい授業像に合わせて自由度の高いスクールタクトを活用していきたい
―今後はどのような教育活動をしていきたいと考えられていますか?
加藤:ツールありきで考えるのではなく、まずは「子どもたちにどうなってもらいたいか」「どんな経験をさせたいか」「どんな気持ちになってもらいたいか」からスタートすることは引き続き大事にしていきたいと思っています。その上で、実践したい授業を実現するにはどうすべきかと考えたときに、スクールタクトは選択肢の1つとして活用が増えていくと思っています。
中原:教材作成の自由度が高いスクールタクトを、実現したい授業づくりのために有効なツールとして広めていきたいと思っています。
生徒の発言の頻度や生徒間の関係性が発言から見えてくる発言マップ機能も先生からの評判がよく、先生同士で情報交換をしながら、子どもたちの「声にあがらない感想や思い」を汲み取って、学級経営やオンラインも含む授業づくり、評価などに、どんどん応用していきたいですね。
左:加藤祐也教諭 右:中原悟教諭
加藤学園暁秀初等学校
静岡県沼津市にある加藤学園暁秀初等学校は、日本で初めて教室を区切る壁のないオープン・プラン・スクール。壁がないことで学習や活動に合わせて自由な学習活動を可能にすると共に、先生と生徒同士の心の距離が近いあたたかな学校です。机上だけでなく体を使ったり、端末や具象を使ったりしながら、子どもたちが体感しながら学べる授業を先生たちがデザインしています。