導入前の課題 | |
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1 | 先生のICTスキルにばらつきがあり、導入前はハードルを感じる先生も |
2 | 授業中の生徒の課題取り組み状況が把握しにくい |
導入後の効果 | |
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1 | ICTが苦手な先生も直感的に操作でき、スムーズに導入 生徒に向き合う時間が増加 |
2 | 生徒がつまづいている点をリアルタイムに把握できるようになり、意見交換も活発に |
2020年にスクールタクトを導入した神奈川県横須賀市の三浦学苑高校。今回は川北徹先生(理科主任)と伊藤知香子先生(英語科)から、日々の授業でのスクールタクト活用方法を中心にお話を伺いました。
実証実験をきっかけにiPadを導入、先生によって反応は様々
―元々どのようなきっかけでスクールタクト導入に至ったのでしょうか?
川北:本校に端末が導入されることになった一番最初のきっかけは、2019年度から始まった実証実験の協力校となったことでした。授業中の生徒の脳活動を計測し、タブレットなどの端末を利用した学習による学習への集中度や理解度を明らかにする実験のため、本校にiPad200台が貸与されることになりました。その後、2020年度入学の新1年生の代からは一人一台iPadを導入することになりました。
伊藤知香子先生(英語科)、川北徹先生(理科主任)
―スクールタクトの第一印象はいかがでしたか?
川北:私自身は、初めてスクールタクトのデモを見たとき直感的に「面白い授業ができそうだ」と思ったのを覚えています。クイズ番組のパネルのように、生徒の解答が先生側の端末で一覧表示でき、生徒が何を書いているのかをリアルタイムに確認できる。さらに、生徒同士で互いの解答に「いいね」や「コメント」をつけられる機能も印象に残りました。
伊藤:私は元々ICT全般が苦手で、学校としてタブレット導入をする方針が決まったときは「自分には難しいな・・・」と思っていました。学内向けにスクールタクトの紹介があった際も「使えたら便利そう」とは思ったのですが、正直なところ「自分はそんなに使わないだろう」と思っていました。
ICTが苦手な先生も直感的に操作可能
―現在はどれくらいスクールタクトを使っていただいているのでしょうか?
川北:現在は私が担当しているすべての授業でスクールタクトを使用しています。生徒が問題を解く過程を手元の端末からリアルタイムに確認できるので、どこでつまづいているかがすぐにわかるようになりました。生徒同士の議論を深めるのにも役立っています。
伊藤:使い始める前は「自分には難しい」と思っていた私も、現在ではスクールタクトなしでは授業がやりづらいと感じるほどに活用しています。直感的に操作できる点が一番大きいと思います。印刷や配布の手間が減ったことに加え、生徒の間違いの傾向がひと目でわかるので、授業時間を有効に使えるようになりました。
―生徒さんはスクールタクトに適応できたのでしょうか?
伊藤:やはり生徒が適応できるかどうかが心配だったので、はじめは従来通りのプリント配布も選べる状態でスクールタクトを取り入れていきました。しかし、生徒たちがスムーズにスクールタクトを操作できているの見て、早い段階で「紙を配らなくてもやっていけそうだ」と感じました。現在では、タブレットを使いこなせる子とそうでない子の差もほとんどありません。
投票機能で診断的評価を実施 クラス全員で意見共有
―実際の授業でどのようにスクールタクトを活用いただいているかを教えてください。
川北:新しい単元に入る際は、スクールタクトの投票機能を使って診断的評価を行います。〇✕や4択の形式で問いを投げかけ、投票結果をグラフで示して共有しています。手を挙げてもらうよりも生徒が参加しやすく、楽しめるようです。
スクールタクトの4択投票機能を利用した診断的評価
物理の授業は、スクールタクトに私が書き込みをして解説しながら進めていきます。これまで板書していたものがスクールタクト上に置き換わったイメージですが、図や問の文章などはあらかじめスクールタクト上に記載しておけるので便利です。
手書き部分は授業の川北先生の書き込み
生物の授業では、「オリジナルの細胞小器官を考えよう」という課題で、架空の器官の機能や名称を生徒に考えてもらいました。スクールタクトの共同閲覧モードを使ってお互いのキャンバスを見合ってもらい、自分が良いと思った生徒の回答に「いいね」をつけるという取り組みも行いました。
スクールタクトを使った授業を始めてから、意見交換の時間など、生徒同士の交流が活発になったように感じています。スクールタクトで回答を共有すると、近くの席の人だけでなく、クラス全員の考えを知ることができ、議論が深まる場面が多くなっていますね。
オリジナル細胞を考える課題では共同閲覧モードで互いの作品を見合い「いいね」をつける
また、授業の最後には振り返りを行い、その日の授業でわからなかったことなどをスクールタクトに記載してもらっています。
机間巡視の時間が増加 端末と合わせて生徒の様子を把握
伊藤:英語の授業ではpdf化したプリントをスクールタクトで配布して進めていきます。全員分の回答を確認できることで、私からの説明が必要なところとそうでない部分が明確化されたことで、授業時間を有効に使えるようになりました。クラスによって間違いの傾向が違うこともあり、重点的に説明が必要な問題をその場で判断できるのはありがたいです。
さらに、スクールタクトを導入してからは、板書のために生徒に背を向けている時間がほとんどなくなりました。生徒の方を向きながら、あるいは机間巡視しながら授業をする時間が増え、生徒の様子がよくわかります。スクールタクトの「わかった」「わからない」スタンプも役立っています。「わからない」を押してくる子がいるとつまづきに気づけますし、反対に「わかった」を連打されるとうれしくなります。
発表者の当て方も大きく変わりました。私の手元で生徒の回答を確認した上で、正解している生徒、良い間違いやよくある間違いをしている生徒を選んで当てることができます。生徒側もそれを分かっているので、自信を持って答えてくれるようになりました。
英語の授業風景
英語が苦手な生徒も楽しんで取り組めるワークを実施
伊藤:また、生徒に関心を持って取り組んでもらうために色んなやり方を試しています。例えば、英文の内容を絵で表現するという取り組みです。文字で書くよりも個性が出るので、共有すると教室全体が盛り上がります。普段は英語に苦手意識を持っている生徒も楽しんでくれました。
英文をイラストで表現する課題
英文の要約を書かせ、共同閲覧モードで生徒同士が3つずついいねを付けあって、「ベストサマリー」を決めるという取り組みも実施しました。いいねが多かった回答を取り上げて、プロジェクターに映しながら解説をしていきます。このような取り組みは、教室が盛り上がるだけでなく、生徒の自己肯定感やモチベーションの向上にもつながっていると感じます。
顔を合わせられない夏休みも生徒同士が学び合う
―夏休み中の取り組みについて教えてください。
川北:夏休み中もスクールタクトを活用しました。決まった回数のオンライン英会話クラスを受講するという課題で、毎回の振り返りをスクールタクトに記録してもらいました。途中から共同閲覧モードに変更したのですが、それが生徒同士の刺激になったようです。私から特に声かけなどは行わなかったのですが、お互いのキャンバスを見られるように設定した後の方が、全体の記入量が増えました。
夏休みのオンライン英会話受講の記録
また、進路指導の場面でもスクールタクトを活用しました。2年生を対象に、自分の志望校と試験内容を調べ書いてもらいます。紙で実施していたときよりも管理が楽になりました。
志望校に関する情報をまとめて記入
―最後に、今後どのように活用されていきたいかについて教えてください。
川北:生徒たちには、既存のものに対する思い込み、決めつけのようなものに囚われないでほしいと願っています。今回、スクールタクトを授業に取り入れた経験は、まさに「学校の授業とはこういうもの」というスタンダードが変わった経験になりました。今後は教員間でのシェアなどにも力を入れていきたいです。
伊藤:今後も自己肯定感やモチベーションの向上を意識した活用ができるといいなと思います。ICTが苦手な私ですが、なんとか使いこなそうと頑張っている姿を生徒が認めてくれたことがすごく嬉しかったんです。これからも、生徒と一緒に新しいことに挑戦していきたいと思っています。
三浦学苑高等学校
2021年に創立91年を迎える三浦学苑高等学校。2020年からはIB(国際バカロレア)コースを新設し、「個性と自主性を持った国際人の育成」を目指して、ワールドスクールとしてのあゆみを始めました。部活動がさかんな学校としても有名です。