2022年7月2日、小学校と高校でICT利活用を推進してきたお二人の先生をお招きし、体験談や仲間の増やし方、おすすめのスクールタクト(ClassiNOTE)活用法を語っていただきました!

□ 五十嵐 太一先生について □
栃木県宇都宮市のICTモデル校  陽東小学校の元GIGAスクール推進ティーチャー、コロナ休校中に試験導入したまなびポケット・スクールタクトを使用して学びを継続し、普及に貢献。
宇都宮市立豊郷中央小学校に異動後の現在も、ICTツールを活かした児童の主体的な学びを追究中。

□ 新庄 秀臣先生について □
箕面自由学園中学校・高等学校 情報部所属。Classi、ClassiNOTE、Google Classroom等のICTツールを駆使して授業を行う。
ClassiNOTEをほとんどの授業で活用し、意見の共有や学び合いを促進。各サービスの利点や違いを熟知し、校内の意思決定をリードしている。

※ClassiNOTE は、Classi ユーザー用に提供しているスクールタクトの別名称です。 名称が異なるだけで、システム上の違いはありません。

 

<導入体験共有>

【宇都宮市立豊郷中央小学校 五十嵐 太一先生】

今年度、ICT推進校から別の学校へ異動した五十嵐先生。GIGAスクール構想の進み具合が地域や学校によって大きく異なることを実感し、新しい場所でも学校全体の巻き込みに挑戦しました。

ーーー異動先の校内の課題

まずは、学校としての活用ポリシーの相談・共有から。活用について様々な不安の声が上がりましたが、前任校での実践について紹介し、皆で課題を共有してそれを乗り越えてきたことをお話ししました。

最初から厳しく制限するのではなく、児童が使える場面を増やし、どんな風に使っていくのか見守ろう。その中でスキルやモラルが身に付くように、課題を共有し、その都度考えて対応しよう。そんな姿勢を先生方が共有することで、本格的な活用のスタートを切ることができました。

導入体験1

ーーー仲間を増やそう!

とはいえ、急に自分で実践をやってみせたり、何かを求めたりするのではなく、まずは周りの先生と丁寧にコミュニケーションを取ることから始めました。

管理職を含む専科の先生方は、校務の基盤となる先生方。ICTに関心がある反面、「本当は使ってみたいけど、使い方が分からない」という悩みを持っていました。そこで、空き時間を使って一緒に簡単なアンケートを作って配付するなど、小さなチャレンジをサポートしました。

「学校の様子を外に発信してほしい」という意見もあったため、せっかくならICTを活用している様子を保護者や地域の方にも知ってもらおう!と、先生の活躍振りを学校のホームページで発信しました。

同学年の先生方は、「使いたいと思っているけれど、自分と児童のICTスキルが不安」。

そこで、授業参観の機会を使って、皆でスクールタクトを使った同じ活動をすることを提案しました。スクールタクトはPDFの添付や課題の複製、テンプレート登録ができるので、とても簡単に課題を共有することができます。

「こんなに簡単に使えるんだ!」「簡単に自己表現ができて良いね。」最初の一歩を踏み出した後、学年内でこんな声が広がっていき、活用が進みました。

導入体験2

他の学年主任の先生方には、使い方に不安がある中でも、なるべく学年全体で進めていきたいという意向がありました。

そこで朝の時間に教室にお邪魔し、簡単なお絵かきや道徳の振り返り活動をサポート。朝の時間20分程度でも子供たちはすぐ使い方を習得し、子供たちがのびのびとICTを活用している姿を先生に見てもらうことができました。活用の流れや使い所が分かったことで、先生達は自然と端末の使用に前向きになっていきました。

そして、推進全体でとても大切な存在となったのが、ICT推進に意欲的な仲間の先生方ICT推進に意欲的な仲間の先生方

まずは情報主任の先生を巻き込んで、朝の時間でのサポートや、スクールタクト実践事例の研修会といった取り組みを一緒に進めていき、輪を広げていきました。

ーーー加速する学校

関心の高い若手の先生のチャレンジを後押しし、「ICTを使っていい」という雰囲気になってくると、先生達はどんどん自走します。スクールタクトは「全授業」から他の先生の取り組みを見られるため、今では「今スクールタクトでこんなことやってるの?」「この課題いいね。頂戴!」といった声が交わされています。皆でシェアし、ブラッシュアップができる職員室の雰囲気は、学校の働き方の改善にも繋がっているように思います。

活用は授業だけでなく校務にも広がり、若手の先生の働きかけから、クラブ活動の計画や振り返りを、一律でスクールタクト上で行うことになりました。

ICTを広げていくためには、自分がどんどん実践すること以上に、仲間を増やしていくこと、そのためにコミュニケーションを取って、それぞれの立場や想いを知ることが大切だと感じています。

【箕面自由学園中学高等学校 新庄 秀臣先生】

箕面自由学園は幼稚園から高校まである大きな学校で、職員室はなんと8つ!

そんな学校で、新庄先生がどのように全体を巻き込んで活用を浸透させていったのか、その軌跡をお話しいただきました。

ーーー導入経緯と現在のICT環境

ICTの導入が本格的に検討されたのは、今から5年前。

そも そものきっかけは、新指導要領・新しい学びのかたちへの対応でした。従来の学びを効率的に圧縮し、探究やアクティブラーニングといった新しい学びを載せるという部分に、ICTを有効活用できると考えたのです。

人数が多く、生徒情報の共有が難しく習熟度の幅が広いといった少し特殊な環境のため、まずは「どのような目的で、どのツールを使うか」という共通認識づくりが必要不可欠だと考えました。

導入と定着の仕掛けとして、まずは「なぜICTを使うのか」という目的を明確化しました。次に、その目的に合ったツールの検討とマニュアル作り。さらに、元々使っていたサービスの棚卸しと使い分けの明確化、仕組みの可視化などを進めていきました。

今、ICTを通してどのように生徒同士が繋がり、学校と保護者が繋がっているのか?混乱しがちな様々なツールとその用途を、分かりやすく図にして伝えていきました。

スクールタクト(ClassiNOTE)の活用については、各教科の事例共有研修をリードする教科イノベーターを任命。「教えたい!」という気持ちを持っている先生に、積極的に前に出て活躍してもらう仕組みを整えていきました。

定着以前は、ICTニュースレターを作成して全教員に配付するなどといった、地道な取り組みも行っていました。このような取り組みが功を奏したのか、自分が研修を設計しなければならないような体制から、今は完全に手を離れ、それぞれがICTを活用してくれる状態に移行することができました。

ーーー目指す学びのかたち

ICT活用の定着の次に目指しているのが、学びのシームレス化

スクールタクトを用いたアクティブラーニングの後には、Webテストや自動採点を使って学習の定着を促します。それらの学びをポートフォリオに記録し、さらに難しい問題を教員が提案していきます。そのサイクルの中で、知識伝達型の学習を挟みつつも、生徒達がそれぞれのタイミングで「調べたい!」「解きたい!」と思った時に、いつでもどこでも情報にアクセスし、取り組めるような環境整備をしたいと考えています。

スクールタクトの、どこにいても課題の配信や受け取りができ、課題がいつも生徒の手元にも教員の手元にもある点、提出しなくてもリアルタイムに取り組みを見取ることができる点は、目指す学びのかたちにとてもフィットしていると感じます。

<実践紹介>

【五十嵐先生】

一番使いやすいのは、図工。自分の作品の写真を撮ってアップロードし、見どころなどを加えていきます。高学年になると、作成日記のような形で過程を記録していくこともできます。

校務には、Googleやまなびポケットをフル活用。校務サイトを作り、分散しがちなICTツールにワンタッチでアクセスできるような情報設計をしました。

【新庄先生】

一番最初に先生方にオススメしていたのは、板書の多い内容を、虫食いスライドにすること。

教員がスクリーンに同じ課題を映しながら、生徒は自分の解答を友達のものと比べながら解き進めることができます。

個人的に好きなのは、カンニングペーパーづくり。自分が大事だと思う内容を1枚のキャンバスに詰め込んでもらい、それを見ながら難しいテストを解いていきます。

他の人のぺーパーを見られる「カンニングタイム」を作り、いいなと思ったところを自分のものに取り入れる時間を設けることもあります。

実践事例:カンニングペーパーを作ろう

質疑応答

<ICT導入期の悩みと解決策を知りたいです>

(五十嵐先生)先生によってICTのスキルや意欲はそれぞれ異なりますが、強制しないことは意識しました。「使ってみたいから、使ってみる」を、少数から始めてみるのが良いのではないかと感じています。何が何でも全員が使う状況を、と思うと、苦しくなってしまうので。

(新庄先生)特に校務では、使わざるを得ない状況を作ることもまた、大事だと思っています。何せ職員室が8つある学校なので、情報共有や連絡は全てICTに移行するという方針があったからこそ、コロナ以前から端末の利用が浸透しました。

スクールタクトに関しては強制ではなく、「これを使ったら紙を配らなくても使えますよ!」「こっちの方が便利ですよ!」といったアプローチから始め、自然と「使わないと無理!」という状況を作っていきました。

 

<良い事例と、先生のモチベーションを上げる方法はありますか?>

(新庄先生)自治体が生徒の利用の仕方に不安を持っており、ICT活用に大して消極的とのことですが、想定外のことは100%起こります。でも、その都度対処していくしかないと思います。「安全な場で失敗できること」も、学校の大事な役割なのではないかと思っています。テクノロジーが急速に広まり、困ったことは当然起こるけれど、それでも生徒のアウトプットやICTで加速する学び合いの姿を見ていると、きっとテンションが上がります。ぜひ色々、試してみてください。

実践事例:英語・時制の授業をしよう

実践事例:英語・最強のノートを作ろう

<モチベーションの高い先生がスクールタクトを活用できるようになるまでに、どのくらいかかりましたか?活用研修はどのくらいやりましたか?>

(新庄先生)イノベーターの先生を教科ごとに任命し、学期ごとなど定期的に実践発表してもらうことで、若い先生方を中心に少しずつ広まっていきました。

一番先生方に使ってもらいやすいのは、「あんな事やこんな事もできます!」ではなく「これでプリント配れます!」といったシンプルな入り口。簡単なことからでも、まずは知ってもらうことが大切でした。

(五十嵐先生)小学校の方が、試しに使ってみるというハードルは低いのかもしれません。写真を載せてみる、絵を描くなど、ごく簡単な使い方から入る先生が多かったと思います。

***

校内のサポートに徹し、学び合い・助け合いのコミュニケーションの中で活用を推進した五十嵐先生。前向きに進めてくれる同僚や先輩の先生方や、そんな先生方からの提案が、とても素敵だと語っておられる姿が印象的でした。
また、多数かつ多様な先生方の意識を束ねるために、目的や用途の可視化、仕組みづくりに努めた新庄先生。「何のためにICTを使うのか」という本質に基づいた、骨太の推進の軌跡を聞かせていただきました。
参加者の方々はもちろん、お二人の校種が異なる登壇者の先生も、お互いに参考になる部分があったようです。

校種や現場ごとに様々な状況がある中でも、それぞれに合った活用の仕方を探り、学校全体で前進していけるといいですね。
先生方、ありがとうございました!