埼玉県上尾市立西中学校では、上尾市教育委員会の「あげお学びのイノベーション推進プラン」を受け、ICTの効果的な活用を目指しています。
その取り組みの一つとして、生徒が日々の取り組みや思いを記録する「生活記録ノート」のデジタル化を、スクールタクトで実現。具体的な活動内容とほかの教育活動への波及効果について、教頭の髙栁隆寿先生、山崎駿先生、的場琢磨先生にお話を聞きました。
全教員が触れる機会として「生活記録ノート」をデジタル化
―なぜ、ICT活用推進に向けて、「生活記録ノート」をスクールタクトで記録しようと考えたのでしょうか?
―なぜ、ICT活用推進に向けて、「生活記録ノート」をスクールタクトで記録しようと考えたのでしょうか?
髙栁:目的の一つ目は、時間の短縮です。上尾市全体で取り組んでいる「生活記録ノート」には、毎日日記を書く欄があります。それを生徒たちに書かせ、教員がチェックをしてコメントを返すことに日々多くの時間が割かれていました。全員にコメントを返すまでに、1時間ほどかかっていたという感覚です。
また、帰りの会では、明日の連絡を全員が生活記録ノートに書き終わるのを待っている時間があり、その分、放課後の部活動などの開始時間に影響が出ていました。
二つ目は、欠席者と電話連絡がつかない時に、翌日の時間割や持ち物について確実に伝えられないことがあり、デジタルでの連絡ツールを必要としていたことです。
山崎:中学校では各教科の特性があり、本校だけでなく全体的にタブレットの使用率が低めです。まずは、全教員が関わる「生活記録ノート」をスクールタクトに置き換え、触れる機会を作っていくことで、「こんなことができるかもしれない」「この可能性もあるのではないか」といった感触を得るきっかけにするという目的もありました。
「生活記録ノート」での自己表現の幅が広がった
―実際に「生活記録ノート」をスクールタクトへ移行して、どんな手応えを感じていますか。
山崎:紙の時は枠が限られていたり、書くことが苦手な子が1行で終わってしまったりしていたのですが、スクールタクトに置き換えたことで、比較的細かく日記を書いてくれる生徒が増えました。行事の際にどんなことを思っていたのかなどを把握でき、生徒の見取りにもつながっています。
また、デジタル化に際して、「生活記録ノート」の運用の見直しも行いました。紙のノートの時には、毎日集めて点検してその日のうちに返却していましたが、デジタル化に際して、週末に生徒たちが1週間の振り返りを書き、教員もそこにコメントする運用に切り替えました。これにより、教員が毎日返却に追われるということはなくなりました。
的場:表現方法もさまざまになったと感じます。絵を描いてくる子もいれば、強調したい部分を大きくしてきたりする子もいます。感情を表現しやすくなった子も多いのではないかと思いますし、教員も読むのが楽しくなりました。
髙栁:毎日タブレットを持ち帰り、活用する生徒が増えました。また、「生活記録ノート」のやりとりでスクールタクトを使用するので、教員のタブレットやスクールタクト使用への抵抗感が低くなり、授業での活用の幅も広がっていきました。
―先生や保護者の方からデジタル化に際して何か意見はありましたか。
山崎:少数ですが保護者の方から、「字を書くことも大事ではないですか」という意見が寄せられました。また、紙のノートと違い、スクールタクトになると生徒が自分から保護者に提示しなければ何を書いているか分からないので、子供の把握ができずに残念に感じた方もいらっしゃったようです。
的場:運用上の課題ですが、本校では、校内におけるタブレットの活用は、教員がいるところでのみ使うというルールがあるので、どのタイミングで「生活記録ノート」を書かせるかが難しいです。本来であれば、学校の休み時間などに生徒個々の判断で書けると良いのでしょうが、その時間を取れません。そのため、基本は生徒が自宅で書いてくることになります。デジタル活用の過渡期なので、これから良い運用のスタイルを探っていきたいです。
―スクールタクトは「生活記録ノート」以外にも活用の幅は広がっていますか。
山崎:連絡板という黒板に、明日の時間割や持ち物が書かれており、それを各生徒が書き写していたのですが、今年から担当者がタブレットで撮影し、スクールタクト上に画像をアップする運用にしました。つまり、自宅でタブレットを開けば、明日の学習内容が分かるようになっています。休んだ生徒にもこの連絡が届くので、この置き換えは非常に便利だなと感じています。
数学の授業での見取りの深化 思考過程をリアルタイムで把握
―スクールタクトの使用は授業内にも拡大していきましたか。
山崎:昨年度までは学校で生徒のタブレットを保管していましたが、今年から持ち帰りを始めました。「生活記録ノート」を書かせるだけではもったいないので、スクールタクトで取り組む課題を出している先生も出てきています。夏休みの宿題をタブレットを使って提出させている先生もいました。授業全体でタブレットを使っていたり実験的に「この機能を使ってみよう」と挑戦したりする方もいます。
本年度、使用頻度ランキング上位の先生に、「こういう使い方がありますよ」「こんなテンプレートも使いやすいです」といったレクチャーをしてもらう校内研修も実施しました。
的場:デジタルの扱いが苦手な先生も、スクールタクトにはテンプレートがたくさんあるのでそれを使って授業をしています。「自分では作れないけれど、試しに既存のテンプレートを使ってみたら良かった!」といった声があがっていました。
―山崎先生は授業でどのように使用していますか。
山崎:僕は数学を担当しています。今年度2学期から、発展問題を解き終わったら、タブレットで写真を撮ってスクールタクトにアップして提出してもらう活動を始めました。授業の2回に1回はスクールタクトを使用しています。以前は、机間巡視で生徒の進捗を確認していたのですが、教員1人対生徒35人の状態で個々の状況を把握する難しさを感じていました。写真を撮ってスクールタクトに送ってもらっていれば、教員側で見返して、「この子はどこに躓いているのだろう」と確認していくことができます。
また、「簡単でいいので、感想を書いて提出しなさい」と伝えたところ、「ここが難しくて、次回はこんなふうに頑張りたい」と振り返りを書いてくれる生徒も出てきました。
―生徒把握がしやすくなったということでしょうか。
山崎:そうです。スクールタクトは生徒が解いている様子をリアルタイムに把握することができるので、机間巡視しながら、タブレットの画面も見て「◯◯さん、△行目から違うよ」といった声がけができるようになりました。
おそらく、これまでは教員側がその子が何に躓いているのかを取りこぼしたまま、先に進んでいたことがあったと思うんです。そうした課題を減らすことができているのではないかと思います。
―協働的な学びには活用していますか。
山崎:それぞれの画面を見られる共同閲覧モードにして、「わからなくなったら、ほかの子の解答をヒントにしていいよ」という活動を入れたことがありました。しかし、数学という教科の特性上、解答をそのまま写す生徒も出てしまいました。それぞれの意見に触れるような活動で、共同閲覧モードは使うと良いのかもしれませんね。
現在は、発展問題が提出されているかどうかステータスを確認させ、「提出済みの子は解けているから、難しいと感じている場合には相談しに行ってみてね」と促しています。タブレット上ではなく、直接対面で教え合う活動としているのです。ある種、デジタルとリアルを掛け合わせた学びになっているかもしれませんね。
道徳の授業で共同閲覧とワードクラウドを使い分ける
―的場先生は授業でどのように使用していますか。
的場:僕はスクールタクトは道徳の時間に多く使っています。道徳のワークシートをテンプレート化して、学年の全クラスで使用できるようにしています。先日は、渡辺直美さんやローランドさんなどの有名人のSNSとの付き合い方を参考にしながら、「デジタル機器の使い方」について考える授業を行いました。
最終的には、「どんなふうに使っていくかを宣言しよう」という活動としたので、その宣言内容は共同閲覧モードにし、全員が見えるようにしました。
ただ、道徳の場合は、どこまで生徒同士で閲覧できるようにするかの線引きが難しいです。生徒が葛藤していることや心情などは、共同閲覧にすることで、むしろ書きにくくなる子もいるかもしれません。配慮が必要な時には、ワードクラウド機能を使って、「どんな言葉を書いた生徒が多かったか」「こんなふうに考えている人がいるんだ」といったことをビジュアルで伝えています。そこから、自身の思いを話す生徒が出てくるケースもあります。教員側が授業内容によって、どうスクールタクトの機能を使い分けていくかが問われていると感じます。
―ほかにも、スクールタクトを使う場面はありますか。
的場:特別活動で、「合唱コンクールの歌詞でポスターを作ろう」という取り組みをしました。それまでは、紙に「歌詞からどんなメッセージを受け取ったか書いてみよう」といった活動をしていたのですが、せっかくスクールタクトが使える環境なのでデジタル機器で表現をさせたら面白いのではないかと思ったんです。
生徒たちは好きな歌詞を抜粋して、その内容に関連するような写真を貼り付けてくるなど、いろいろな工夫を凝らした作品を作っていました。
効果的な活用を模索していきたい
―スクールタクトを活用しながら、今後どう学びを深めていけると考えていらっしゃいますか。
髙栁:タブレットはあくまで文房具の一つです。紙のノートとタブレット、どちらの方が学習効果が高いかを見極めながら、今後もふさわしい活用について試行錯誤していけると良いのではないでしょうか。現在、生活記録ノートをデジタル化することで、端末の活用率は飛躍的に向上しました。今後は、各教科でどう使っていくかなどを検討していきたいと思います。
的場:スクールタクトで管理するようになったことで、「前の学期には何を書いていたか」などの振り返りもしやすくなりました。とはいえ、生徒がより自発的に振り返りを行えるよう、教員が必要に応じて声掛けし、生徒が自身の成長を実感できるよう促していきたいと考えています。



