【事例発表・座談会&授業体験】 新学習指導要領に向けて 授業デザイン&評価を語り合おう!

  2022年4月19日  

3月5日、近畿大学附属広島高等学校・中学校 福山校の先生方と共に、新学習指導要領に基づく授業学習や評価のあり方について考える事例発表・座談会と授業体験会を実施しました。

『主体的・対話的で深い学び』の実現に向け、3名の先生がICTツールを駆使してどのような授業設計や評価設計を行っているのか、お話を伺いました。

考:近畿大学附属広島高等学校・中学校 福山校 スクールタクト導入事例

岡本 歩先生

国語:1人1台端末を活かした小・中・高横断型の対話的授業

国語では、地域も年齢も異なる学習者が、互いに作品(『100万回生きたねこ』と『竹取物語』)の共通点・類似点を探り、伝え合う活動をしました。

背景には、下記のような狙いがありました。

  • 知識を得るだけでなく、それを基に自身の考えを深め、他者に発信して伝え合う力を高めると同時に、作品を社会や自分との関わりの中で捉え、活かしていく観点を育てる
  • これからの大学入試を意識した「複数文章の比較」「授業場面での対話」の実践を試みる

発表スライドの作成過程では、スクールタクト上で教師やクラスメイトと活発にコメントのやり取りをし、ブラッシュアップ。普段生活を共にしない聞き手への発表は緊張感があり、皆より丁寧に、伝えるための工夫を重ねている様子が見られました。

スクールタクトを使うと取組みの様子をリアルタイムで一覧できるので、進捗把握やフィードバックがしやすいという利点もあります。

実際の発表では、愛の普遍性や自由の大切さ、また現代の作品や歌との共通点など、学習者自身が持つ視点や知見、そして作品を通した他者との対話を存分に活かした、多様な考察が展開されました。

1人1台端末の導入で、個々のアウトプットを教室外に開き、対話の可能性を広げることがしやすくなりました。

普段の授業でも、生徒自身が互いに考えや意見を交換する過程をより意識しており、これまでの教える授業とは構造が逆になってきています。

教師側の関わり方も、自由に発言したり発想を膨らませたりと、生徒の思考をオープンに開くための学習設計場作り、そしてそのような学びの過程を「面白い」と思ってくれるような言葉掛けを意識するようになりました。

梅村 隆継先生

社会:社会科における思考力・表現力の評価

社会では思考記述課題を課し、生徒同士でスクールタクトを用いて意見交流した後、回答をルーブリックに沿って評価するという取組みをしています。

ノートを提出すれば評価がもらえるといった評価観から脱却し、論理的思考力や表現力を鍛えることが狙いです。

授業では教師側の説明は簡潔に抑え、その代わりに授業に関わる課題… 例えば、自分がもしこの時代にいたらどちらの立場を取ったか?といった課題について考え、文章でまとめる時間を取ります。

はじめは友達の解答を写す生徒がいたり、提出しても評価が低いことに不満が上がったりもしました。そんな時は立ち返るべきルーブリックを示して、とことん対話。期限や課題についても試行錯誤し、クラス全体の評価点が次第に向上していきました。徐々に自ら思考する生徒が増加し、高評価を目指して論理的な文章の構築を試みる生徒も出てきました。

自分自身、特に学びに向かう姿勢等の評価について「これが答えだ」というものはなく、手探りの日々です。生徒から、「非効率的ではないか?」「なぜグループで取り組まなければいけないのか?」といった声が上がることもあります。

しかし、そういった生徒の疑問に向き合い、対話を通してほぐしていくこと、そして「できるようになった」ことを認めて丁寧にフィードバックを返していくことが、評価において大事なのではないかと感じています。

鳥生 浩紀先生

数学:どんなときでも変わらない自律的な学習の実現

数学では、教師による解説を最小限に留めて、生徒が自律的な学習を進めています。

このような授業は、スクールタクトとGoogleを活用しながら下記のような流れで行います。

  1. 教科書内容の解説
  2. スクールタクトで練習問題を解く
  3. 生徒の解答でのつまずきを個別・全体で対応
  4. 教科書範囲外の問題集の問題の解説
  5. リフレクションと形成的テスト実施

ホワイトボード上の板書はGoogle Classroomで配信するため、ノートを取る・取らないも自由。スクールタクト上でリアルタイムな学習状況が分かるので、つまずいている子、困っている子のフォローに回ることもあります。1人で取り組む・グループで取り組む等、どんな学び方も認めていますが、基本的に教師に頼りすぎることなく、自分達同士で疑問を解決します。

このような進め方をして良かったこととして、以下のような点が挙げられます。

  • 自律…授業を生徒に返すことができた
  • 定着…形成的テストの積み重ね
  • 緊急事態でも困らないことに気づいた

特に3番目については、緊急事態宣言下になっても特別な準備や変更をすることなく、普段通りの学習を進めることができました。対面でもオンラインでも形態を変えることなく学びを継続できることは、教師、生徒双方にとっての安心感と心の余裕に繋がります。

最初はこのような授業形態に戸惑いの声も上がりますが、生徒は慣れます。単に教師の説明を聞くだけの授業よりも参加度は確実に上がり、定着確認も常にできています。

結局は、育てるべき力を見据え、それに応じた授業を教師側が覚悟を持ってやるかどうか、ということだと思います。

授業体験

授業体験では、スクールタクトの機能を存分に活かした国語・社会・数学の課題に取り組みました。参加者の様々な解釈や意見が飛び交い、学び合うことの面白さをまさに体感できる、貴重な時間となりました。

互いの知識や経験、気付きを伝え合い、他者の発想に触れ、さらに自分の考えを編んで伝えていく岡本先生の授業。

絶えず対話しながら「あなたはどう考えるのか?」を突き詰め、適切なフィードバックを返していく梅村先生の授業。

本質的な変化と成長を見据え、覚悟をもって生徒に授業を返す、鳥生先生の授業。

 

お三方それぞれの授業実践から、たくさんの示唆をいただきました。

先生方、本当にありがとうございました。

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