2026年3月29日に開催したオンラインイベント「子供が自ら見通し、学び進める授業のつくり方〜自己調整を促す『目標設定』の実践公開〜」のレポートをお届けします!

今回は、東京都公立小学校教諭であり、自己調整学習を専門に研究・実践されている白杉亮先生にご登壇いただきました。

本イベントでは、自己調整学習のカギとなる「目標設定」について、半年間の実践の成果を余すところなくお話しいただきました。子供たちが自ら学びを進めるために必要な「見通し」を持てるようにするための支援や、目標設定シートの具体的な工夫など、明日からの授業のヒントを学ぶことができました。

終わらせることが目的?「タスクをこなすだけ」の授業からの脱却

近年、子供たちが自分のペースで学ぶ「自由進度学習」などの取り組みが学校現場で広がっています。しかし、白杉先生はご自身の実践の中で、ある疑問を抱いたと言います。

白杉先生のご発表資料より

※白杉先生のご発表資料より

振り返りシートに「〇〇まで終わりました」という記述ばかりが並んだり、早く終わった子供から「先生、やること終わりました。次は何をすればいいですか?」と聞かれたりすることはないでしょうか。 白杉先生は、これは 「自ら学び進めている」というよりも、「自らタスクをこなし進めている」状態 であり、本来の学習のあり方として本当にこれで良いのかと葛藤されたそうです。

学力向上に最も影響を与えるのは「見通し」

子供たちが本当に自ら学び進めるために欠かせないキーワード、それは 「見通し」 です。 世界中の800以上の教育研究を統合したジョン・ハッティのメタ分析によると、学力に最も影響を与える要因は「見通しが立つ指導と学習」であると結論づけられています。

ここで重要なのは、「先生が見通しを持たせている」と思っていることではなく、「子供自身が本当に見通しを持てているか」 という点です。そして、子供が見通しを持つための中核となるのが 「目標設定」 なのです。

※白杉先生のご発表資料より

※白杉先生のご発表資料より

また、自己調整学習とは、「より効果的に目標に向かうことができるよう、自分の学習方法を試行錯誤してブラッシュアップしていく学び」です。つまり、大前提として「達成すべき目標」が明確になっていなければ、自己調整は生まれません

目標の階層性:「どうなりたいか(BEゴール)」と「何をするか(DOゴール)」

では、どのような目標を立てれば良いのでしょうか。白杉先生には「目標の階層性」という考え方をご紹介いただきました。

私たちはついつい「これをやる」という行動レベルの目標(DOゴール)を意識しがちです。しかし、その上位には「最終的にどうなりたいか」というあり方の目標(BEゴール)が存在します。この「どうなりたいか」という「BEゴール」を実現するために「何をすべきか」という「DOゴール」が設定されるわけです。したがって、「タスクをこなす」だけというのは、DOゴールしか意識できていない状態です。大切なのは、「何のためにそのDOゴールに取り組むのか」という「BEゴール」への意識なのだと白杉先生は言います。

※白杉先生のご発表資料より

※白杉先生のご発表資料より

白杉先生の社会科の実践では、単元を通して、学習課題に基づいた「〇〇について自分の考えを説明できる自分になる」といったBEゴールを設定します。子供たちはそのBEゴールを達成するために、自ら「情報を収集する」「整理・分析する」「まとめ・表現する」といった枠組みでDOゴールに細分化します。さらに、DOゴールを実現するための調整(動作制御ゴール)として、それぞれの時間で何を使うか、誰とやるか、どう時間配分するかといった学び方の工夫を計画します。このように子供たち自身が学習の目標を階層化して整理することで、

  • 自分はどこに向かっているのか
  • そこに向かうために何をしなければいけないのか
  • それを効果的に実現するためにどんな工夫をすれば良いのか

といった見通しが明確になるということです。

そして、学習後には、「BEゴールにどれだけ近づけたか」「DOゴールは達成できたか/それはなぜか」「次回はどうするのか」といった振り返りを行います。一貫して目標を意識できる仕掛けをつくることで、子供たちの自己調整学習を促していくというのが、白杉先生の実践のポイントでした。

イベントでは、これらを仕組化した「目標設定シート」についてご紹介いただきました。

※白杉先生のご発表資料より

※白杉先生のご発表資料より

終わりに:子供の主体性を引き出すスクールタクト

イベントでは、参加者の先生方にもイベント用のアカウントに入っていただき、実際にスクールタクトの画面を使いながら子供たちが付箋機能を用いてBEゴールからDOゴールへと落とし込んでいく計画づくりの様子を疑似体験していただきました。

また、単元冒頭で子供たちがしっかり見通しを持てるようになるための工夫も多数ご紹介いただきました。

  • 発問や資料提示で子供たちが「学んでみたい」「調べてみたい」と意欲を高めるための導入の工夫
  • BEゴールを個別最適なものにするためのルーブリックの活用
  • 単元全体で出てくる用語や考えるポイントなどを一覧にした「必ず調べるキーワード」チェックリスト
  • 「DOゴール」や「学び方の工夫」がなかなか書けない子供への支援

このような実践を続けた結果、子供たちからは「今日やるべきことが見えてきて効率よくできた」「自分に合ったやり方で取り組めるようになって社会が好きになった」といった、自ら学び方を調整する力を実感する声が寄せられたそうです。

※白杉先生のご発表資料より

※白杉先生のご発表資料より

今回のイベントを通じて、子供たちに「見通し」を持たせ、目標から逆算して学ぶ力を育むためには、一人ひとりのBEゴールとDOゴールを可視化し、それをもとに先生が適切にフィードバックしていくこと が重要だということもわかりました。

 スクールタクトは、子供たちが自らの計画や振り返りを可視化し、先生や友達同士で互いの学びを参照しやすい のが特徴です。

本イベントの詳しい実践内容や、多様な学び方の実際の様子、また「『問い』は必ず子供から出ないといけないのか?」といった深いお話は、後日公開するアーカイブ動画でぜひご覧ください。