「Boys,Be Ambitious!」で知られるクラーク博士の精神を教育理念に受け継ぐ唯一の教育機関として1992年に開校した、クラーク記念国際高等学校。北海道深川市に本校を設置し、全国50を超えるキャンパスで1万人以上が学んでいます。通信制でありながら全日制と同様に毎日制服を着て通学して学ぶ「全日型教育」という新たな学びのスタイルを開発・導入していることも大きな特徴。カリキュラムの柔軟性を生かし、生徒のニーズに合わせたさまざまな特徴ある授業を展開しています。

毎年、海外大学や国公立、有名私立大学などへの進学者も多数輩出しているクラーク記念国際高等学校では、2017年4月よりスクールタクトが導入されています。今回は、スクールタクトの導入に尽力された細窪大吾先生、牛込紘太先生、現場でスクールタクトを活用しているという横山栄悟先生、笹原圭一郎先生に、導入の経緯や活用方法を伺いました。

上段左から:細窪先生、笹原先生、下段左から:横山先生、牛込先生

リアルタイムで考えが共有できる面白さに惹かれ、スクールタクト導入を決意

生徒が書き込んだ考えがリアルタイムで反映される

ーはじめに、スクールタクトを導入したきっかけを教えてください。

細窪:きっかけは、2015年の年末、松田孝さんという有名な校長先生(当時)のセミナー内で紹介され、興味を持ったことです。サービス内容はもちろん、教員自身の授業の幅が広がるように思いました。そして何よりもWEBブラウザがあれば利用できるため端末を選ばないところにも魅力を感じ、学校に持ち帰って「導入したい!」と話を持ちかけました。

ー他には、スクールタクトのどのようなところに魅力を感じたのでしょうか?

細窪:即時性と共有性に魅力を感じました。スクールタクトには「共同閲覧」「共同編集」のモードがあり、課題に対する他の人の意見を閲覧したり、それに対して「いいね」やコメントをし合うことができます。教員の画面にもそれがリアルタイムで反映され、生徒の回答を一覧で確認することもできます。そのため普段はあまり積極的に発言をしないような生徒にもスポットを当てられるところもいいなと思いました。

私が最初に見たのは小学生の国語の授業でした。「鳥獣戯画」を見てセリフを書いていこうという授業で、私たちも端末を使って参加させていただいたのですが、自分の書いた回答が他の人の画面で見えること、前の画面に写し出されていることはもちろん、それに先生役の方がコメントをくれたときに「クイズ番組のようで面白い!」とビビッときました。

私は、知識を詰め込むためだけの授業ではなく、学ぶ理由が見つかる授業が生徒たちには必要だとずっと思ってきました。発問することで生徒が自発的に授業参加できる賑やかな授業が理想なので、スクールタクトは理想的なツールでした。

ー牛込先生は、最初にスクールタクトを知ったとき、どのような印象を受けましたか?

牛込:私がスクールタクトを知ったのは、ちょうど個人・グループワークを織り交ぜたキャリア学習の授業を検討していたときでした。「やってみて」とデモアカウントをいただいて試したのが始まりでした。そのときは、学内のICT化も進んでいない段階だったので、革新的で衝撃を受けました。

ー最初はキャリア学習の中でスクールタクトを活用されていたのでしょうか?

牛込:「協働学習中心」というコンセプトでのキャリア学習を検討していく中で、「これはICTを使わないと活性化しないだろう」と感じており、スクールタクトを活用することにしました。次第に、それは「教科学習にもいかせるのではないか」という動きになっていきました。

細窪:私たちが実現したかったキャリア学習とスクールタクトとの親和性が高かったことで、結果としてキャリア学習の中にふんだんにスクールタクトを入れる形になりました。それと同時に、活用方法を限定するわけではなく、全教科での活用をイメージして進めていました。

キャリア学習での生徒の回答一覧画面

ーそもそも、スクールタクトを導入することでどんな課題を解決したいとお考えでしたか?

細窪:私は生徒が主体性を持たない限り、学びはうまくいかないと考えています。そのため、これまでも授業内で生徒に質問を多く投げかけていたのですが、実は積極的に参加している生徒は限られているという課題がありました。一斉講義型の授業では、双方向の対話はなかなか上手くいきづらいのですが、発問することで授業に参加させるような自分の理想とする授業がスクールタクトでできるかもしれないと思っていました。

それぞれの活用方法とは

授業でスクールタクトを活用している様子

ー現状はどのような場面で活用いただいているのでしょうか?

細窪:私は授業に緩急をつけるためにスクールタクトを活用しています。講義形式の時間が続いた後には、スクールタクトで質問を出して脳を切り替えるという使い方です。例えば、歴史上の人物がなぜその行動をとったと思うかと問いかけます。私は社会科を担当していますが、社会科は暗記科目と思われることがとても残念なんです。「なぜ?」を考えることで自分ごととして考え、初めて自分の知識になると考えています。考える機会を創出し、知識と出会ってもらうためにスクールタクトを活用していますね。

あとは、テスト対策にも活用しています。授業ではノートをとるのではなく話を聞くことに集中してもらい、まとめをスクールタクトで配布するようにしています。そのまとめを穴埋め形式にした小テストを定期的に行なっています。

ー笹原先生は実際にスクールタクトを使ってみていかがでしたか?

笹原:私は入職してまだ3年目なので、着任したときには既にスクールタクトが導入されている状況でした。そのため実は黒板を使った授業を体験していません。正直なところ、スクールタクトがないと授業をするのが難しいと感じるくらいです。

ースクールタクトネイティブですね!どのように授業で活用されていますか?

笹原:プリント類をPDFにしてスクールタクトにアップロードして「この問題を解いてね」と生徒に配布し、生徒の回答を確認するという使い方をされている先生も多いですが、私は入ったばかりだったので元々準備しているプリントなどの教材はありませんでした。そのため、プレゼンテーションをイメージして、スクールタクトのキャンバスに1枚ずつスライドを作って授業を進める使い方をしています。授業1回あたりのキャンバスの枚数は、他の教員と比べて多いかもしれません。

生徒はそこに私が話した内容や自分の調べたことを書いていきます。手書きでの文字入力もできるので生徒にとっては入力しやすいようで、スクールタクトに情報が蓄積されています。このような使い方で、スクールタクトはポートフォリオにもなると感じています。例えば1年前の授業のことが会話に出てきた際には、生徒が簡単にスクールタクトで見返すことができるようになりました。

先生が用意したシートに生徒が各自書き込みを行う

ー横山先生はどのように活用していただいていますか?

横山:私は社会科を担当していますが、資料の絵や写真、地図などを生徒に見せる際にスクールタクトが活躍してくれています。以前はA3サイズで印刷したものを黒板に貼って見せていました。今は一人ひとりが手元のスクールタクト上で確認できるようになったので、今までの授業では気づかなかったような細かなディテールに生徒が気付くようになり、授業に深みが出ました。その点は特に社会科を教える身として画期的だと感じています。

また、私自身、スクールタクトによって、「生徒が考える時間のある授業」が容易にできるようになり、授業の構成も変化しました。まずは生徒の反応を見るために質問を投げてみようという発想になり、以前より発問の回数が増え、生徒とのキャッチボールが多い授業、対話が多い授業を作れるようになりました。

スクールタクトを使った世界史の授業。世界地図も各自の手元で確認できる

授業への参加度が上昇。生徒たちの小さな変化にも気づけるように

スクールタクトを使って課題に対する回答を書き込む様子

ー導入後、どのような変化がありましたか?

細窪:授業中にはどうしても集中力が切れてしまう生徒が出てきますが、スクールタクトを使って手を動かすという行動によって、授業に能動的に参加する生徒が増えたように思います。

もちろん中には「スクールタクトに書いて」と言ってもすぐには書けない生徒もいますが、私は書けないことも許容しています。スクールタクトは生徒が課題を開いたことが教員画面で確認できる仕組みになっているので、参加していることが確認できていれば、「その生徒なりに考えている最中なのだろう」と、こちら側が状況判断しやすいところも良い点だと思っています。授業内では、いいコメントはピックアップして褒めることは意識しています。

ピックアップする意見を選択し、大きく表示することが可能

笹原:私も、生徒が主体的に授業に参加していることをとても感じています。

細窪先生は書かないことも許容していると仰っていましたが、私は書いていない生徒がいることをスクールタクトで確認すると「その生徒は何の情報がほしいのか」と考えるようにしています。そして、その生徒だけではなく全体にヒントを投げかけてみる。すると、書けなかった生徒も少しずつ書けるようになることがあるのです。生徒たちのそのような変化がリアルタイムで分かるところが、スクールタクトのいいところだと感じています。

横山:書けるようになったことを褒めることで生徒の自己肯定感が上がり、次回も書くようになります。そこは、スクールタクトを導入してからの生徒たちの大きな変化だったのではないかと思います。

今の3年生はスクールタクトを3年間継続して活用した学年なのですが、回答の質が向上したことを感じます。当初見られたWikipediaのコピーのような回答から、自分の意見や考えを述べられるようになりました。また、相手のことを思いやった建設的な批判も交えながら回答できるようになっています。

複数のキャンパスでスクールタクトを活用

ー先生方は横浜、所沢、秋葉原と異なるキャンパスで教員をされていますが、キャンパスを越えてスクールタクトをご活用いただいているんですね。

細窪:最初は首都圏に設置するキャンパスのみでスタートし、パイロット運用として10キャンパスで使用しました。

牛込:スクールタクトは操作がわかりやすく、すぐにワークに入ることができたんです。ストレスなく使い始めることができて、それが当たり前になっていきました。試験的にスタートした後、来年度のICTをどうするかという判断をする際に、全キャンパスが「スクールタクトは外さない」という結論を出しました。

教員よりも生徒の方が慣れるのも早く、自発的にいろいろな使い方を見つけていったのですが、そのような生徒の主体的な行動がまさに実現したかったことだと感じます。

横山:私はスクールタクトのテンプレートの機能をよく利用しています。私の所属する所沢キャンパスには、社会科の教員は私一人しか在籍していません。そのため、授業を作る際に行き詰まると、他のキャンパスの社会科の先生が登録したテンプレートを見てみることにしています。こういう切り口で発問している先生がいるのかと参考になるんです。スクールタクトにより、キャンパスを越えてアイディアを交換し、授業をブラッシュアップすることができています。

各教員が登録し、校内で共有されている課題テンプレート一覧

今後の展望

ー今後は、スクールタクトを活用してどのようなことを実現したいとお考えですか?

横山:自分に自信を付ける1つのツールとして生徒に活用してほしいと思っています。スクールタクトを利用した生徒が将来、どんどん発言をして自分の能力を認められ、評価されていくと嬉しいですね。

牛込:私はスクールタクトが生徒の3年間の学びのまとめになるような使い方をしていきたいと考えています。学びを可視化することは大切だと思っていますが、ノートだと3年分の学びを一つにまとめることは難しいです。デジタルにすることで一つにまとめることができます。スクールタクトは生徒の取り組んだ課題をPDFでダウンロードできるので、卒業の際には1冊の本のように、「学びの財産」として生徒に渡せたらいいなと思っています。

ー最後にスクールタクトにメッセージを!

細窪:スクールタクトは私たち教員の声をもとに常にアップデートされていくので、教員にとってのストレスも日々解消されていき、痒いところに手が届く開発をしてもらえていると感じています。こうしてほしいというアイディアは常に伝えています。

牛込:どんどん使いやすくなっているのはありがたいですね。

ー本日は貴重なお話、ありがとうございました!

※記事内の所属等は全てインタビュー当時のものです。