2021年12月上旬、埼玉県蕨市にある、蕨市立北小学校の授業を参観させていただきました。

「私が校内を巡回していても、どの教室でも、スクールタクトを使った授業をしています。もちろん、全ての授業で活用しているわけではありませんし、プリントやノートによる学習も行っています。ですが、先生方も子供たちも、タブレット端末が文房具の一つとして活用できていると思います」とお話されるのは、北小学校の松原校長先生。明治3年に創立し、昨年、開校150周年を迎えたこの小学校は、特別支援学級を含め、600名を越える児童が在籍しています。
 
3クラスの授業を参観させていただき、その後、校長先生から北小学校でのスクールタクトの活用についてお話を伺いました。

<3年生>音楽の授業での活用~歌詞から思い浮かぶ絵を描こう~

スクールタクトの課題を説明します 音楽室に行くと、子供たちの譜面台には2本の大きな輪ゴムに挟まって、Chromebookがセットされていました。この譜面台は、音楽教諭のアイデアによりChromebookと教科書を落とさないように載せられるようにした優れものです。

大きな輪ゴムで固定します
今回、参観したのは、この日初めて学習する「帰り道」(作詞作曲:若松 歓)という歌でした。
「それでは、スクールタクトを立ち上げて課題を開いてくださいね」という、先生の声で、子供たちは譜面台に固定されたChromebookを操作し、素早い手つきでログイン。まなびポケットからスクールタクトを立ち上げると、先生から配られた課題を開きます。先生も、スクールタクトの回答一覧から、誰が課題を開いて、誰がまだ開けていないか確かめることができるので、授業を進めても良いかどうか簡単に把握することができます。
「皆さん、課題を開けたようなので、早速、今日から学習する歌を聴いてみたいと思います。1ページ目の歌詞を見ながら、情景を思い浮かべてみてくださいね」と言って、音楽を流します。その後、2ページ目に課題を移すと、「それでは、この歌を聴いて、歌詞の表す様子を絵に描いてみたいと思います」と説明すると、再びかけられた音楽を聴きながら、子供たちは思い思いに歌詞の様子を指で表現していきました。
「ペンツールの色だけでなく、マーカーペンの色など、工夫してみるといいですね」との先生の声かけに、子供たちはペンの色や太さなど、工夫しながら描き込んでいました。ワークシートであれば、色鉛筆を選んで描いたりする手間がかかりますが、スクールタクトであれば、手元で簡単にイメージを表現することができます。


<4年生>国語の授業での活用~冬の行事のカルタを作ろう~

Chromebookの文字認識ツールを使って入力 4年生の教室に行くと、静まりかえった教室で黙々と作品作りに取り組む子供たちの姿がありました。ある子はキーボードで文字を入力し、ある子はChromebookの文字認識を使って手書き入力をしていました。  作品ができあがると交流タイムです。「これから班のお友達の作品を見て、コメントを書き合いたいと思います。コメントを書くときに『いいね!』だけで、いいのかな。どんなところが良かったのか書くと、書いてもらった人は嬉しいですよね」と、子供たちとコメントを書くときの約束を確認。その後、「共同閲覧モード」に切り替えます。
交流が始まると、子供たちは同じ班の友達の作品をじっくり見ながら、「カルタの絵が上手だね!」「リズムよく書けているね」などコメントを送り合いました。中には、「僕の恥ずかしいから見て欲しくないな」と言いながらも、たくさんのコメントが届くととても嬉しそうな様子を見せる子もいました。

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授業の最後には、スクールタクトに学習や交流を通して気が付いたことをまとめる振り返りを書いていました。「一つの言葉から、こんなにもたくさんのカルタができて、見方が広がりました」「リズムがいいねと言ってもらえてとても嬉しかったです」など、一人ひとりが学びを振り返っていました。


<2年生>道徳の授業での活用~前と後の考えを比べよう~

スクールタクトで考えを一覧で表示 最後は2年生の授業です。「おかあさんとの やくそく」という教材でした。約束の時間になっても来ない友達に、「おそいよ、なにしてるの。もう なかまに入れてあげないよ!」というメッセージを送ろうとしますが、お母さんとの約束を思い出し、メッセージを打ち直そうとする内容です。
授業では、最初のメッセージを送ろうと思ったときの気持ちを、スクールタクトの課題の1ページ目に書きます。気持ちを色で表した「ハート」は青色に塗られていました。教室の前方にある電子黒板には、子供たちの考えが、回答一覧となって簡単に見ることができます。
その後、お母さんとの約束を思い出した後の気持ちを、スクールタクトの2ページ目に書き込み、気持ちの変化を考えます。スクールタクトだけを使って授業をするのではなく、途中には子供たちの意見を発表し、黒板に考えを書き出したり、ワークシートに記入する場面もありました。デジタルとアナログのハイブリットを、先生方も子供たちも自然と使い分けていました。


どうしてここまで校内で活用が進んでいるのか

スクールタクトを活用した授業が1年生から6年生、そして特別支援学級でも進んでいる北小学校。ここまで活用が進んでいる秘訣を校長先生に教えていただきました。
「本校の先生方は、非常に熱心で、新しいことに対して『まずやってみよう!』という思いにあふれています。タブレット端末の活用も、10分から15分のミニ勉強会のようなものを開催しています。具体的には、初級・中級・上級など3つに分かれて、それぞれのレベルに合わせた『この指止まれ 研修』といったものです。また、学年内でも教材研究をしっかり行い、みんなで使っていこうという雰囲気ができています」
そして、デジタルとアナログの双方の良さを理解し、使い分けているところがポイントだと話されました。
「算数の図形の学習の時に、スクールタクトでは、さまざまな考えに対して、色を分けながら子供たちが補助線を引き、それをみんなですぐに見合うことができます。これまでは、図形の書かれたプリントを印刷して用意し、子供たちも配られたらのりでノートに貼る。手がのりでベタベタになってしまって…と、本来の学習したいところにたどり着くのが大変でした。しかし、スクールタクトではボタン一つで簡単に学習を始められます。また、理科の授業では、考えをノートに書いていますが、タブレット端末で撮影してスクールタクトで共有することで、スムーズに学習を進められています」
校長室でお話を伺っている最中、校長室のドアがノックされました。ドアを開けると、校長室の様子が気になっている児童の姿がありました。
「本校には、特別支援学級もありますが、教室には支援を要する子供たちもいます。気持ちが落ち着かないと、校長室に来て、タブレット端末を操作しながら気持ちを切り替え、チャイムが鳴ると教室に戻っていくような子もいます。そうした子にとっても、タブレット端末は大切なツールなのかもしれません。みんなが生き生きと学ぶ、明るく笑顔あふれる学校にしていきたいと思っています」

蕨市立北小学校

<取材後記>
今回、授業を参観させていただき、多くのところで心温まる場面を見ることができました。先生方が自信を持ってスクールタクトを使いながら説明をする場面。子供たちが笑顔でコメントを送り合う場面。唇をとんがらせながら一生懸命に考えをまとめ、スクールタクトにまとめる場面。支援を必要とする子も、タブレット端末を通してクラスのみんなと同じように学習し、交流している場面――。そこには、蕨市立北小学校の目指すキャッチフレーズにある「明るく笑顔の北小生」の姿と、その子供たちに一丸となって向き合う先生方の情熱がありました。学期末のお忙しい中、訪問を快く受け入れて下さった、北小学校の校長先生、先生方、大変ありがとうございました。