スクールタクトを活用した道徳授業
「輝く笑顔と夢いっぱいの学校」と目指す学校像を掲げる埼玉県の八潮市立大曽根小学校は、在籍児童数596人の学校です。年度末の慌ただしい時期にも関わらず、取材を快く受け入れてくださいました。取材の人数を制限するなど感染症対策を十分に行い学校に到着すると、ちょうど休み時間を終えて授業へと向かう元気な子どもたちの「こんにちは!」という声が。マスク越しでも伝わる「輝く笑顔」に、学校で学ぶ楽しさや、友達と過ごす喜びが伝わってきました。
投票機能で心をつかむ導入
まず、3年生の道徳の授業を参観しました。
「Chromebook使うから、最初にログインしておこうね。」という千葉先生の声で、子供たちは手際よくパソコンの電源をつけて、まなびポケットの画面を立ち上げます。「スクールタクトに課題配ってあるから開いておいてくださいね。」と、子供たちの様子を見ながら指示が続きます。
慣れた手つきで端末を操作する子供たち。「最初にみんなに聞きたいことがあるんだけれど、A、B、C、Dのどれかを押して教えてね。」との先生の問いかけに、スクールタクトの投票機能を使って、子供達の投票結果がリアルタイムに可視化されます。「Aと答えた人が、クラスの3分の1いますね。」など、電子黒板に映し出される集計結果を見ながら、授業の導入が始まっていきました。
中心発問で考えを書かせる
範読の後、千葉先生の問いかけが続いていきます。子供たちは、手を挙げて考えを発表していき、みんながねらいに向かって考えを深めていきました。そして、いよいよ中心発問のタイミングで、「では、スクールタクトに自分の考えを書いてみてください。タイピングでもいいし、タブレットペンで書いてもいいです。」と声がかけられると、それまでの活発な発表の時間から、シーンとクラスは静まりかえり、自分の考えを書く時間が始まりました。
スクールタクトは、回答一覧画面で、子供たちが記入する様子をリアルタイムに見ることができます。書き終わった子、書いている最中の子、考えをまとめきれずに手が止まっている子。これまでは、机間指導で周りながら見取っていた子供たちの様子を、手元で把握することができます。また、児童生徒画面には「わかった」ボタンや「わからない」ボタンがあるので、声に出して助けを求めなくても、先生に簡単に意志を伝えることができます。
小学校3年生ですが、日頃からタブレット端末を活用してきた成果として、大半の児童がタイピングで自分の考えをまとめていました。先生は一人一人の回答を見ながら、「○○さん、もう少し言葉を付け足せそうかな。」「○○くんの考え、なるほどね。」など声をかけていきます。こうした一人ひとりが記入したキャンバスは、スクールタクトの共同閲覧モードに切り替えると、子供たち同士もお互いに考えを見合うことができます。
授業の途中には、隣の子が操作に困っていると、「書き終わったら提出ボタンを押すんだよ。」など、やり方を教える微笑ましい場面もあり、子供たち同士でICT機器を使いこなしていました。
心温まる授業は、あっという間に終わり、授業後に先生からお話を伺う時間をいただきました。
GIGA1年目を振り返って
先生のICTスキルを高めるために
授業を行ってくださった千葉先生は、大曽根小学校6年目の主幹教諭で、ICT教育の担当として、ICT教育を推進してきました。
タブレット端末が導入された2021年度当初は、子供達のタイピングスキルに個人差があり、多くの子供達がタブレットペンを使って手書き入力をしていました。スクールタクトは、手書き入力もタイピング入力もどちらも対応しているので、すぐに授業で活用を始めることができたそうです。また、まなびポケットに入っているコンテンツでタイピング練習をしたり、休み時間になると自主的に練習したりして、1年が経った今では、小学校3年生でもタイピングで入力する児童がほとんど。子供たちのICTスキルの習得の早さには驚かされます。
一方、先生方のICTスキルを高めるために、校内研修を工夫してきたと語る千葉先生。
「ICTは便利だというのはわかるけれど、慣れるまでは思ったような授業ができない」というICTを苦手と感じる先生にもどうやったら使ってもらえるようになるか、試行錯誤の日々が続きます。しかし、次第に校内で活用が広まっていくと、職員室ではタブレット端末の活用の話題が増え、先生同士で教え合う雰囲気が広がっていったそうです。
「そこで、校内研修で、それぞれの学年の実践をプレゼン形式で発表する機会を設けました。学年別に『こういうことをしました』という発表をしてもらうことで、先生方は『あぁ、2年生ではこんなことができるんだ』『4年生になると、ここまではみんなできるようになるんだ』というように、子供達がどこまで何をできるようになるかが把握でき、『じゃあ、私たちの学年ではこういうことに取り組んでみよう』というふうに、ICT活用のスキルや、ICTを活用していくビジョンを共有することができました」と、千葉先生。この1年間の校内研修の手応えを感じているようでした。
豊富なテンプレートで教材準備もスムーズに
また、校内で教科ごとに研究テーマを決めて取り組んでいる大曽根小では、今年度は算数の授業でのスクールタクトを使った研究を行ってきました。
「スクールタクトは主に課題とまとめで使っています。算数の場合、図形の学習では、画面をタッチして図形を動かしたり回転したりすることができるので、子供たちが夢中になって学習に取り組んでいます。これまでは、教科書の後ろのページにある図形をハサミで切って、それを使って動かしたりしていましたが、なかなか切るのが大変。肝心な学習にたどり着くまで一苦労でした。」
このような千葉先生のお話は、特に支援を必要とする児童を受け持った先生からもよく伺います。スクールタクトのムーブパーツ機能で図形を簡単に動かしたり、回転させたりすることができるので、敷き詰めたり合同の学習に使うことができます。
「こうした日々の実践を、スクールタクトは先生同士で簡単に共有できるのもいいですね。学年の中でお互いに作った課題を複製して使っています。もともと入っている課題テンプレートも豊富なので、こうした教材準備がスムーズにできるのがスクールタクトの大きな魅力です。先生方にとって、印刷の手間がかからないで、作ったら配るだけというのは、やっぱりいいですね。」(千葉先生)
スクールタクトには、弊社が公開している課題テンプレートと、学校現場の先生が公開してくださっているものなどを合わせると、1万点近い課題テンプレートが公開されています。手軽にスクールタクトで授業を始めるポイントは、こうした課題テンプレートを自分の授業に合わせて修正して、組み立てていくことだと千葉先生は語ります。
ICT担当として
とにかく自分が使ってみること
千葉先生は主幹教諭のため、受け持っている授業は「書写」のみですが、「まずは自分から使ってみよう」という姿勢を大切にしている千葉先生。スクールタクトで書写のお手本を配布し、子供たちにどんなところに気をつけたらよいか書き込みをさせてから、毛筆で練習をさせているといいます。
「先生方にスクールタクトを使っていきましょうと勧めていくにしても、自分が使ってみないと良さを伝えられません。また、授業で使っている中で、子供たちの様子から『あ、こんな使い方もできそうだ』というひらめきや、『こんな使い方ができるんだ』という発見があるんです。時には、子供たちから使い方を学ぶこともあって、やっぱり使ってみないとわからないものだなと感じています。」と話されていました。
最後に、スクールタクトを使ってよかったと感じる場面として、次のように話されていたことがとても印象的でした。
「これまでなかなか手を挙げて発表できなかった子が、スクールタクトを使ったことで自分の考えをキャンバスに書いて伝えられるようになったり、書くことが苦手だった子も積み重ねを通して自分の意見を伝えられるようになったことが、子供の成長を感じてとても嬉しかったですね。」
導入の2021年度から、活用の2022年度へーー。大曽根小学校の先生方のICT活用のビジョンは夢いっぱいに広がっていきます。
(所属・肩書き等は取材した2022年3月時点です)
<編集後記>
八潮市立大曽根小学校で活用が進んだ背景には、八潮市教育委員会の学校の特性を尊重し、活用を支援するバックアップ体制がありました。道徳の授業についてはこちらにも掲載しています。