茨城県立守谷高等学校では2022年よりClassiNOTE(スクールタクト)※を導入。生徒たちは主にタブレットを利用してClassiNOTEに接続し、授業内や長期休業期間中などにも活用しています。現在、研修や相互参観授業などにより多様な教科で活用が広がっています。ICT活用の推進などを図る学習指導部で英語科の横島真澄先生、「総合的な探究の時間」担当で理科の石川梓先生、そして地歴科の望月亜希子先生にお話を聞きました。
※ClassiNOTEは、Classiユーザー用に提供しているスクールタクトの別名称です。システム上の違いはありません。
効果的な活用方法が相互参観授業で教員間に波及
―茨城県立守谷高校の特徴とICTの活用状況について教えてください。
望月:本校は、大学進学希望者、専門学校進学希望者、就職希望者が1クラスに混ざり合う進路多様校です。教員としては、生徒把握やターゲットを絞ることなどがしづらい学校だと思います。
ICTの活用については、生徒や保護者への連絡はClassiを用い、職員で会議資料を共有するなどの場合には茨城県が導入しているGoogle Classroomで行っています。生徒たちは授業中はタブレットを使い、宿題などはスマートフォンも併用しているようです。
―ClassiNOTE(スクールタクト)を導入したきっかけを教えてください。
横島:Classiは以前から使用していたのですが、授業中に簡単に操作できるツールを探している中で、Classi連携サービスであるClassiNOTEに行きつきました。モニターとして1年間利用した後に、教員にアンケートを取ったところ、「来年度も使用したい」という意向が見えたため、本格採用しました。
学習指導部 横島真澄先生(英語科)
―どのように活用が広がっていきましたか。
望月:新しい学年になるタイミングで研修を実施し、すべての教員が触れるようにしています。また、新しい機能が増えたタイミングで勉強会を実施したり、スクールタクトの担当者への質問会を開いたりしています。
横島:本校には相互参観という教員間で気軽に授業を見合う期間を設けています。他校ではややハードルが高いと聞くこともあるのですが、本校の教員は全員「いつでも見にきてね」といっています。そこで、今年度は学習指導部からその相互参観の授業では、なるべくICTを使った授業を見せてほしいとお願いをしました。
実際に活用している授業を見ると、「こんな機能があるならば自分の授業でも使ってみよう」「これは私の教科ではどう取り入れたらいいだろう?」と興味を持つようになるのです。ClassiNOTEが便利だということは多くの教員が分かっているのですが、自身の授業でどう使うとよいのかがイメージできていないケースもあります。活用が上手な教員の授業を見ることは、ハードルを超える一番の勉強になるのではないかと思います。
望月:ClassiNOTEはほかの先生方の画面や生徒が提出した内容を見ることができますよね。ほかのアプリではこうはいきません。だから、「見せてください」とわざわざいわなくても、参考にさせてほしい先生の画面を覗くことができます。特に、本校のように若手の教員が多い学校ではすごく勉強になるのではないかと思います。
横島:さらに、本年度から「総合的な探究の時間(もりたんプロジェクト)」でもClassiNOTEの活用がスタートしたので、学年の先生は必ず使うことになりました。「総合的な探究の時間」での活用の経験から、自身の教科の授業へとつながっていくことは十分にあり得るでしょう。
望月:先に生徒が使えるようになってしまえば、教員の活用ハードルも下がるということも感じています。使い方が分からない生徒に、分からない教員が教えるとなるとハードルが高い。しかし、生徒が使えていれば、「やってみようかな」という気持ちになりやすいですよね。私の学年は2年目なので生徒が慣れていて、これまで使ったことがない先生も活用しやすいのではないかと感じています。
望月亜希子先生(地歴科)
どこにいてもリアルタイムで学びの状況を確認
―ClassiNOTEの活用メリットを教えてください。
望月:授業中生徒の取り組みを教員がリアルタイムで把握できることは大きな利点です。手が止まっている子がいたら、すぐに声をかけてあげられますからね。生徒把握のスピードが圧倒的に上がることに対してすごくありがたいと思っています。
横島:生徒が書いていることを記名でも匿名でもシェアできる魅力も感じています。切磋琢磨させたいときには記名で共同閲覧にし、生徒に自信がなさそうなときは匿名機能で共有するなどシーンによって使い分けています。
生徒たちはほかの子がどんなことを考えているかを知ることができ、学びへの刺激や手助けになります。共同閲覧だけでなく、教員がピックアップしてタブレット上で見比べさせることもできるので、授業中に考えを広げることに役立ちます。
石川:以前、急遽教室を離れなければいけなかったときに、ClassiNOTEへ課題を配布して、「教室にはいないけれど、見ておくから取り組んでおいてね」と伝えて、活用したことがありました。どこにいても生徒の状況を確認できるメリットを感じました。
横島:コロナ禍では、出席停止中で体調が回復しているけれど家にいるという生徒がおり、その時はどこにいてもClassiNOTEを使って授業に参加できるメリットを実感していました。ZoomでもMeetでも接続することはできますが、マイクやビデオをオフにしてしまうと生徒の状況が分かりません。ClassiNOTEならば画面上で取り組みが見えるので授業に参加していることが教員側も把握できます。学校外からつながって学びの痕跡を残せる利点も大きいですね。
石川梓先生(理科、「総合的な探究の時間」を担当)
【総合的な探究の時間】クラスを超えた活動を実現
―「総合的な探究の時間(もりたんプロジェクト)」ではどのように使用していますか?
石川:各学年の学習指導部が「総合的な探究の時間(もりたんプロジェクト)」の立案を任されています。私は2年生を統括しており、そこでClassiNOTEを使用しています。「総合的な探究の時間」では、興味関心や進路に基づいて「地域活性」「福祉・介護・医療」「子育て・教育」「防災」の4つのテーマに分かれて取り組みます。クラスの壁を取り払い、「地域活性」を選んだ生徒は1組に集まるといった活動になっています。
「総合的な探究の時間(もりたんプロジェクト)」では、クラスの壁を取り除いてグループワークを行う。
私からClassiNOTEに「自身の取り組みたいテーマを考える」や「調査したことを記入する」といった課題を配布し、生徒はそれに取り組みます。例えば、「防災」では「どんなことに困っているかを知る」というワークで、「『防災×守谷市×問題点』でそれぞれ検索し、地域の問題点を2つ以上見つけて書こう」という課題を配布しました。担当の教員が、生徒の様子を見ながら共同閲覧機能を使って刺激を与えるなど、ClassiNOTEをうまく活用しています。
ClassiNOTEで共同閲覧を活用
横島:石川先生がClassiNOTE 上に4テーマでクラスを作り、そこに各生徒がクラスコードで入るようにしました。教員側から招待をかけなくても生徒が自由にクラスに入れるので、テーマごとのグループ分けがスムーズでした。
石川:担当以外の教員も、ClassiNOTEを見るだけで、教科の授業では目立たない生徒が「探究学習の中ではこんなことを考えているのか」といった発見をすることもあります。全教員が多面的に生徒を理解できることは大きなメリットでしょう。
また、夏休みにはClassiNOTEに課題を配布して取り組めるようにしました。教員側は、生徒の進捗を確認して、途中段階でもサポートしていくこともできるでしょう。
―今後、さらに「総合的な探究の時間(もりたん)」でどのように活用したいと考えていますか。
石川:今年は個人での探究活動に取り組みましたが、来年度からグループにして生徒が相互に学び合うようにしたいと考えています。最終的には発表までつなげていきたいですね。
【地歴】匿名機能でICTならではの協働学習を実現
―地歴科でのClassiNOTEの活用について教えてください。
望月:私は地理の担当なので、生徒に教材となる写真を見せることが多いのですが公立学校では予算的にカラープリントをすることが難しい。そのため、これまでは白黒の写真をプリントで印刷するか、電子黒板に投影することしか選択肢がありませんでした。
例えば、気候ごとに作れる農作物が異なることを学ぶ学習として、熱帯地域の画像を生徒が探し、「自分で図鑑を作る」取り組みをClassiNOTEで行いました。具体的には、バナナがなっている写真や、アブラヤシとかココヤシの違いが分かる写真などを貼っていきました。こうした活動の結果、白黒プリントでは分かりづらかった農作物の細かいポイントまで見て取れるようになりました。
現在の教育課程では、用語を覚えるだけでなく、写真で見分けられるようになることが重視されているので、こうした活動は地理の学習目標に合っていると考えています。
植物の写真を見つけてClassiNOTEに自分の図鑑を作り、学びを深める。
―ほかにはどのような活用をしていますか。
望月:「夏休みにこんなことをしました」という写真と「地理っぽい景色」の写真を共有するというワークもしました。「花火は向きによって見方が変わる」ということや、「海の近くは天気が変わる」といった授業での学びにつなげて報告してくれる生徒がいました。こうした課題を通して、生徒の日常を知ることがコミュニケーションにつながります。今後は、修学旅行で撮影した写真を共有するという取り組みも実施したいと考えています。
―新たにグループ機能も使っていますよね。
望月:生徒が匿名の状態で私がグループを作り、その状態で課題に取り組むということをしました。つまり、生徒たちは誰と同じグループなのかが分かっていないんです。「スマート農業のメリット」のテーマで、ワークシートのそれぞれのスペースに自分が調べたことを記入していきました。同じ教室内で「誰が書いているのだろう」と思いながら、他生徒の書き込みに刺激を受けるというのが、このグループ学習の面白さです。私はチームの状況を確認しながら、「写真を貼ってみるといいよ」といったコメントを書いていき、取り組みを促していきました。
匿名機能を使ったグループワーク。机を合わせて行うグループワークにはない効果が得られた。
最後に匿名機能を解除して、誰と同じグループだったかを明かし、「意外!」「わ! あなただったのか!」といった盛り上がりがあり、クラスの関係作りにもつながったように思います。これは、ClassiNOTEだからこそできる活動であり、机を合わせて行うグループ学習にはない効果が期待できると感じました。
【英語】4技能を育む活動をテンポよく実施可能に
―英語の授業ではどのように活用していますか。
横島:ClassiNOTEにイラストを配布して、「この絵の中にある動作を現在進行形を使って、できるだけ多く作文しなさい」という取り組みをしました。匿名機能で回答一覧にし、電子黒板に投影して、そこで直しを入れていくようにしました。その後、各自で、たくさん書いている生徒の文章を参考にして付け足したり、修正したりしていきました。
共同閲覧を行い、ほかの生徒の文章を参考にすることが学びに。
ほかにもペアワークで、「印象に残っている授業とその理由」というテーマで対話をさせる活動にもClassiNOTEを活用しました。ワークの最後には、自分の解答と、ペアからヒアリングした内容をまとめて、提出させます。「家庭科でエコバッグを作ったこと」や「保健体育科でバレーボールをしたこと」といった授業を挙げている子がいました。「最低2人と話してみよう」と伝えていたのですが、たくさんのクラスメートとやりとりし、どんどんマスを増やしていく生徒もいました。最後は、生徒間で共有して「いいね」ボタンを押し、私もチェックをしてスタンプを押していきました。
ペアワークでヒアリングした内容をClassiNOTEに入力し、提出してもらう。
―ほかにはどのように活用をしていますか。
横島:ワードカウンターという「あるテーマに対して1分間に何語話せるか」を数える活動にも、ClassiNOTEを活用しています。ペアになって、1人はお題について話をし、もう1人は単語を数えていきます。例えば、「好きな映画」というテーマで、「1分間に37語を話すことができた」といったことを記録していくのです。
生徒はお題との相性によって、多く話せることもあれば、ほとんど話せないこともあります。生徒たちがどのようなテーマであれば話しやすいのか、逆にどのようなテーマは弱いのかということをリアルタイムで把握できるので、私の教材研究にもつながっています。
最終的には、生徒がコメントを書いて振り返りをします。提出してもらった後に、私からアドバイスを入れて戻しています。
記録と振り返りを記入してもらうことで、生徒それぞれの傾向を把握することができる。
本校では、生徒の音読に対してAIが採点してくれる音読のアプリを導入しています。2週間、毎日同じ内容の音読練習を続けます。1週目の授業で1回目の測定をし、その際に「自分の音読で気づいた点、練習する際に気をつける点」を書き入れます。その後の練習は、自身の振り返りポイントに留意して取り組みます。2週目の2回目の測定時に、「正確さ」や「流暢さ」がどう上がっているかを共同閲覧でシェアし、生徒同士で刺激を得られるようにしています。
4技能をバランスよく育てたいと考えてきましが、これまでは活動の盛り込み方が難しかったんです。しかし、ClassiNOTEによって、さまざまな活動がテンポよく行えるようになったと感じています。
音読の結果も共同閲覧でシェアすることで、生徒同士が刺激を得られる。
―先生方の業務効率化にもつながっていますか。
横島:テスト前に復習のポイントをClassiNOTEで配布しています。従来はプリントで配っていましたが、その場合はカラーにはできませんし、手間もかかります。ClassiNOTEによってペーパーレスが実現し、効率化にもなりました。
また、英語科は私以外に2人の教員がいますが、1人が作ったプリントを互いに共有して活用しているので、省力化が図られていると感じています。
先生同士で同じ教材を共有・活用することで、業務の省力化を実現。
職員研修や生徒会など学校のあらゆるシーンで活用を
―今後どのように活用していきたいと考えていますか?
横島:来年度で導入3年目となり、全校生徒がClassiNOTEを使うようになります。そうなれば、授業だけでなく生徒会活動や職員研修などでもClassiNOTEを使えるようになるのではないかと考えています。ClassiNOTEでグループ分けをして、意見を集めるようなことができると面白いですよね。
望月:生徒は授業ではうまく使えるようになってきていますが、復習としての活用はまだしきれていないと感じます。全ての教科において、ノートを見返すように、ClassiNOTEを使っていくことができるよう促していきたいです。
横島:ClassiNOTEにはもともとさまざまなテンプレートが用意されていますが、教員が守谷高校の生徒に向けに作った「守谷高校版」のテンプレートも増やしていけるといいですよね。それを教員間で共有したり蓄積したりしていけると、自然と業務負荷が軽減していくのではないかと考えています。
守谷高校公式キャラクタ-「コジュもり」と一緒に写真を撮っていただきました。
「コジュもり」とは生徒がデザインした守谷高校公式キャラクタ-。胸のハート模様は愛と平和なスクールライフを象徴しています。 |
茨城県立守谷高等学校
所在地
茨城県守谷市
インタビュー対象者
横島真澄先生(英語科)
石川梓先生(理科、「総合的な探究の時間」を担当)
望月亜希子先生(地歴科)