愛媛県西条市ではGIGAスクール構想以前からスクールタクトを試験的に導入、2021年9月より全ての小中学校で正式導入しました。また同市は「スクールタクト認定マスター※」を取得している先生の数が多く、スクールタクトの活用に積極的です。西条市教育委員会 学校政策課 指導主幹 吉岡健二氏と西条市教育委員会 学校教育課 戸田修治氏にスクールタクト導入の背景や活用状況について伺いました。
学級経営にも生かせるコミュニケーションツールとしての魅力
―西条市でスクールタクトを導入した経緯を教えてください。
吉岡:GIGAスクール構想が始まる以前に、当時の情報化推進委員会でいくつかの授業支援ツールを比較検討していました。スクールタクトに関しては、ほかのツールではあまり見られない発言マップやワードクラウドの機能が、教員にとって単に学習支援だけではなく学級経営に役立つのではという期待から2019年に試験的に利用を開始しました。
その後GIGAスクール構想が始まり、2020年度中に1人1台のChromebookやネットワークの整備が完了し、2021年度から全面的に端末活用をスタートしました。スクールタクトは試験導入で活用のイメージがついていたので、2021年の9月より全ての小中学校で正式に導入が決定しました。
西条市教育委員会 学校政策課 指導主幹 吉岡健二氏
戸田:当初は先行して使っていたGoogle ClassroomなどGoogle関連のツールに慣れたばかりで、スクールタクトの導入には一部の先生方から抵抗がありました。しかしスクールタクトを授業で使い始めると、先生方は子供たちの意見がリアルタイムで分かることに良さを感じ、すぐに受け入れてくれました。
吉岡:最初はGoogle関連ツールと使い分けていましたが、今では授業で使う学習支援ツールはスクールタクト一本になっています。スクールタクト内でチャットやコメントのやりとりなども気軽にできるので、コミュニケーションツールとしても好評です。
戸田:実は7〜8年前に研修でスクールタクトを活用している福島県新地町の小中学校の授業を見学しました。そのときリアルタイムで子供たちの声が見られるアプリがあることを知り、ぜひこれを授業で使ってみたいと感じていました。当時私は小学校の教員だったので、スクールタクトが導入されたときは大変ありがたかったです。
西条市教育委員会 学校教育課 戸田修治氏
多様な意見の共有が子供たちの自信につながる
―スクールタクトを使うことで、授業にどのような変化がありましたか?
戸田:ノートを使った授業の場合、45分という限られた時間では一部の児童しか発表ができず、多くの子供たちの意見を紹介できません。ノートに書いた意見を共有する場合も、数人に見せることができたとしても、全員で見せ合うことはできませんでした。
その点、スクールタクトならば端末上でクラス全員の意見を見ることができ、簡単にお互いの意見から学び合うことができます。それまでは教員から児童への一方通行の授業だったのが、双方向になりました。考えが共有しやすく子供同士で意見を交わせるということが、非常に教育的効果が高いと感じています。
吉岡:コロナ禍でグループでの話し合いやペア学習ができなくなった際に、スクールタクトが協働学習のツールとしての役割を果たしてくれました。オンライン上でいいねボタンを押したり、コメントや授業チャットでコミュニケーションを取ったりすることができます。共同編集もしやすく、ほかのツールに比べて使いやすいという実感がありました。現在はリアルな話し合いもできるようになったので、コロナ禍よりも使う機能や場面を選びながら引き続き活用しています。
―子供たちの学びの姿に変化はありましたか?
戸田:スクールタクトならば全員の画面が見えるので、「私の考えに似ている」とか「私の考えと違うな」などさまざまな考えに気付くことができます。自分の書いた意見に「この考え方すごいね」と反応をもらえると、子供たちの自信にもつながります。自分が考えたことに自信を持つようになることで、より学習意欲が増していくように感じています。
吉岡:子供の思いに沿った授業を行うために、西条市では以前からICTを活用した「学びあい学習」を掲げ、対話的な学びに取り組んできました。
「学びあい学習」では教員がつなぎ役となり、子供たちの思いやつぶやきに沿った授業、子供たちが対話を通して学び深める授業を展開します。子供たちが互いの考えを聴き合いながら、分からないときには「教えて」「いいよ。一緒に考えよう」と言えることが大事です。
このような多様な考えを受け入れながら互いに学び合うような場面で、スクールタクトは非常に親和性が高いと感じています。学級経営にも授業づくりにも活用できるので、今後はさらに「主体的・対話的で深い学び」による授業改善につなげていきたいと考えています。
戸田:以前担任をしていた学級で、欠席していた児童がスクールタクトを使ってオンライン授業に参加しました。スクールタクト上では教室のみんなと同じように見えるので、家にいながらも自分の考えを書いたり、ほかの人の意見を見たりすることができました。欠席していても一緒に学べることをクラスで共有できたのは、スクールタクトがあったからこそだと思っています。
「スクールタクト認定マスター」の取得を推進、活用の後押しに
―西条市では「スクールタクト認定マスター」を取得した先生が多いですね。どのような経緯があったのでしょうか。
戸田:スクールタクトを有効活用してもらいたいという思いがあり、「スクールタクト認定マスター」の取得を推奨しました。先生方が認定マスターという資格にチャレンジすることで、より使いこなすきっかけとなるのではないかと。教育委員会としても後押ししたことで多くの先生にチャレンジいただき、資格を取得していただきました。
資格を取得した先生に送られる認定書(サンプル)
―認定マスターの取得をきっかけに、先生の変化はありましたか?
戸田:多くの先生が効果的に使いたいと考えるようになり、さまざまな工夫をするようになりました。具体的にはスクールタクトを使って公開授業を行い、先生同士が動画で使い方を共有しています。それぞれの使い方を教え合う機会が増えたことで、授業の仕方もどんどん上手になっています。またICTを活用した授業実践事例集を作るきっかけにもなり、そこにはスクールタクトを使った授業実践が多く掲載されています。
吉岡:現場の先生が普段から活用しているのは、スクールタクトの課題テンプレートです。公式に用意されているものだけでなく、ほかの先生が作ったテンプレートを参考にすることも多く、学校の垣根を越えた先生同士の学び合いにつながっています。
スクールタクトの活用をきっかけに、先生同士の学び合いが活発に
ICT活用の底上げとより深い学びの実現へ
―今後の展望を教えてください。
戸田:まだ先生の間でも活用の個人差があるので、スクールタクトのより効果的な使い方を提案しながら広げていきたいと考えています。ただ使えばいいというのではなく、子供たちが自信を持つことができ、友達同士で学び合い支え合う力がつくような使い方を提示していきたいです。より多くの教員が上手に使う力をつければ、子供たちの目が輝くのではないかと思います。
吉岡:西条市が目指している「学びあい学習」は、子供たち同士はもちろんのこと、先生と子供たちもつながり合い、対話を通してさらに学びを深めていくことです。学びを深めるというのは、子供たちが主体的に学びたいと思い、学びにどんどんのめり込んで、学ぶ楽しさや達成感を得られることです。
どのようにしたら授業で深い学びにつながるのか、これからも考え続けることは大切です。教育委員会としても目指す学びの姿をあらためて示し、その実現のためにスクールタクトをどのように活用すればいいか、その親和性の高さを伝えていきたいと思います。
※スクールタクト認定マスターについて 詳細はこちら。https://schooltakt.com/certification/certified-master/ |
西条市教育委員会
所在地
愛媛県西条市
市内学校数
小学校 25校
中学校 10校
インタビュー対象者
西条市教育委員会 学校政策課 指導主幹 吉岡健二氏
西条市教育委員会 学校教育課 戸田修治氏