山形県にある私立山形城北高等学校は、2021年度に無償キャンペーンでご利用後、2022年度よりClassiNOTEを本格導入。教務課が推進し、朝学習や「総合的な探究の時間」においても使用し、すべての先生に活用が広がっています。各教科においてどのように生かしているのか、数学科の山村美和先生、理科の古内雅之先生、地歴科の和田貴博先生にお話を聞きました。

※ClassiNOTEは、Classiユーザー用に提供しているスクールタクトの別名称です。システム上の違いはありません。

 

学力層の幅の広さからリアルタイムの生徒把握を重視

―山形城北高校の特徴を教えてください。

山村:普通科と特進科があり、普通科はアカデミック探究コース・キャリア探究コース・スポーツ探究コースの3つのコースに分かれています。コースごとに学力も異なりますし、コースの中でも多様な生徒がいる状況です。教員は幅広い学力層の生徒たちに向けた授業づくりを意識しながら、取り組んでいます。

山形城北高校 数学科 山村美和先生
数学科 山村美和先生

―ClassiNOTE(スクールタクト)を活用するに至った背景を教えてください。

古内:双方向でリアルタイムにやりとりができるツールを導入したいと考えていました。従来の黒板とノートを使った授業方法をデジタル化しているツールも少なくありませんでしたが、せっかくICT化を図るのであれば「デジタルでしかできないことをしたい」と考えていました。

そこで、先生から生徒に、生徒から先生にも、すぐに共有がなされ、生徒の進捗もリアルタイムに確認できる一歩踏み込んだClassiNOTEを活用しようと決めました。それまでClassiを活用してきたので、負担感なく導入できることも決め手となりました。

理科 古内雅之先生
理科 古内雅之先生

山村:先ほど、生徒の学力層の幅が広いとお伝えしましたが、そういった状況ですと生徒把握が大変難しくなります。ClassiNOTEを使うことで、個々の生徒の状況を見て取れるので「どのタイミングで次の問題に移ろうか」や「そろそろ解答を解説してもいいかな」といった目星をつけられます。ClassiNOTEを生徒把握に活用し、それを授業展開に生かしています。

―現在どのくらいの先生がClassiNOTEを活用していますか。

古内:「総合的な探究の時間」や朝学習でも使っているので、クラス担任をしていれば必ず触れています。そのため、教科・科目ごとに活用にばらつきはありますが、「こういうことができる」といった基礎情報は全教員が理解していると思います。

「総合的な探究の時間」は複数の教員で受け持っています。そのため、教員間での目線合わせが不可欠なのですが、ClassiNOTEで全クラス共通のワークシートを配布し、随時さまざまなクラスの状況を確認していくことでそれが実現できています。

山村:ここ2、3年、教務課として「ICTを活用した協働的な学び」を目標にしてきました。ICTを生かした公開授業を実施し、ClassiNOTEの活用について前向きな意識が広がってきています。私が公開授業を担当するときには、「ClassiNOTEにはこんな使い方もあるのだ」という気づきにつながるような活用方法を入れられるよう工夫しています。

 

リアルタイムの進捗確認機能を生かし自由進度学習に挑戦

―古内先生は理科のご担当ですが、授業の中でどのように活用していますか。

古内:事前に動画を共有し、それをもとにスライドで穴埋めをするのが私の授業の基本スタイルです。「動画はいつ観てもいいよ」と伝えているため、生徒は自宅や隙間時間に観ています。授業の中では、活動をしながら興味関心につなげられるよう工夫しています。例えば、プラネタリウムに行くための事前準備では星座早見盤を作り、星座について調べる授業を行いました。活動ができた生徒から、動画学習とスライドを使った勉強に移っていくようにしています。提出状況や取り組み内容から、生徒の主体的に学ぶ姿勢などを見て取ることができます。

ClassiNOTEの画面
課題は動画とともに事前に配布。

ClassiNOTEの画面
生徒のペースで穴埋め問題を実施、紙に比べると見直しがしやすいと生徒にも好評。

本校の生徒にとって、紙のノートをきちんと見返して勉強することは難易度が高いことでした。しかし、ClassiNOTEはスマートフォンでパッと見られて、ビジュアルでまとまっているので見直しがしやすいと生徒からも好評です。

―ClassiNOTEを使ってどのような取り組みや工夫をしていますか。

古内:授業の導入ではゲームのような活動を入れて、生徒に関心を向けてもらえるようにしています。例えば、クラスの半分の生徒がお題を見て絵を描いて、残りの半分が何を描いたのかを当てるゲームをしました。最初はキャラクターを描くという遊び的なお題。その次に、理科の要素を交えて「熱運動という言葉を絵で描いて表しなさい」というお題にしました。

また、授業の最後に振り返りシートを配布して、「今日の理解度」を記入させています。今後は振り返りAI分析(β版)の機能を使って、より効果的なリフレクション(内省)につなげていきたいと思います。例えば、「この子は『意見』を書いているんだな」「この生徒は『結論』を書いている」と分類された状態のほうが教員は読みやすい。どのような振り返りをしている子が多かったかを確認できるので、教員としても次の授業に生かしやすくなります。


振り返りシートを使うことで、先生自身も次の授業へ生かすことができる。

ClassiNOTEの画面
振り返りAI分析(β版)の効果的な活用はこれから。

例えば、「こういうことをたくさんの人が書いていた」「少数派にはこんな意見もあった」と次の授業の導入の際に、前回の振り返りから始められると面白いのではないかとも思っています。

―ClassiNOTE導入時に重視していた生徒把握は実現できていますか。

古内:生徒把握はしやすくなりました。特に、教室に入れない子にも課題を配布し、学習の進捗を確認できることには大きなメリットを感じています。自宅や別室で学んでいる子も、教室で学ぶ生徒と同時間に学習することができます。そういった子は、教員のところを訪れることがハードルになっているケースもあるので、チャットでやりとりをしながらつながり続けられるのはありがたいです。

―今後挑戦したいことを教えてください。

古内:自由進度学習に挑戦していこうと考えています。研修に行った際に、複線型授業※を見させていただいて、本校の生徒にはこの方法が最も合理的だと感じたんです。以前、テストの直前に質問コーナーを設けたところ、びっくりするぐらい生徒が理解できていなかったということがありました。私は授業をよく理解してくれていると思い込んでいたのですが、実は定着にまでに至っていなかったんです。では、どこで生徒が実りある学習をしているかというと、テスト直前の自由に勉強できる時間でした。この事実から、私が一方的に教える時間は非常に無駄なのではないかと感じたのです。

テスト範囲のスライドと授業動画をすべて配布し、加えてClassiの学習動画も選択肢に入れながら、各生徒の取り組みたい方法で、進度も任せて学習を進めていくよう伝えています。そうすると、学習速度が速い子はどんどん進みますし、逆につまずいている子は復習に回っていくと思うのです。この学習を、紙で行おうとすると生徒の進捗の確認ができないので難しい。しかし、ClassiNOTEであれば、生徒がどこに取り組んでいるのかを把握しながら、適切なフォローをしていくことができます。

また、目標管理と自己評価のツールとして、ClassiNOTEのルーブリック機能も使っていけるとよいのではないかと思っています。

※複線型授業とは、一斉授業とは異なり、複数のゴール、複数の方法などから、生徒自身が各自の状況や興味関心に応じて主体的に選択しながら学びを進めていく授業形態。

―先生はどのような役割を果たそうと考えていますか。

古内:ファシリテーターといいたいところですが、最初は進捗管理の役割が主になると思います。授業のスタート時に、「今日はどこまで取り組むか」を宣言させ、最後には「今日は何を学んで、こんなことを理解した」という自己評価をさせていこうと思っています。私からは科目内容については教えないと心に決めて、相談役や管理人に徹していこうと思っています。

山形城北高等学校

―進度が遅れている生徒にはどのような声かけをしていこうと考えていますか。

古内:これまでは、「テストで全員80点とれるように頑張ろう」といった声かけをしていたこともありました。しかし、一律に同じ点数を目指す必要が本当にあるのかと疑問に思ったんです。一律の目標を目指すことによって、劣等感を抱く子が出ているのであれば、それは非常に嫌だと思ったんです。

最初に一人ひとり目標を立てさせる機会を設けて、「私は60点を取ることが目標です」という子もいれば、「私は90点を目指します」という子もいていいと思っています。そして、私は生徒が定めた目標に向かっていけるようサポートを検討していきます。

もし私が声をかけるとしたら、目標に向かってすべきことができていない子に対してです。そうした子には、「今日は何して過ごす?」と声かけし、目標に向かっていけるよう支援します。

答えのない問いに向かう力を養うために

―和田先生は地理の授業の中で、ClassiNOTEをどのように活用していますか。

和田:地理は複数の担当教員で受け持っているので、ClassiNOTEは内容の目線合わせや進捗管理として機能しています。また、振り返りシートを配布して生徒に記入してもらっています。

以前は、プリントを作ったり、教科書準拠のワークブックに取り組ませたりしていましたが、生徒に書かせて、提出させて、点検して……という作業が本当に大変でした。地理の場合にはカラーで見られることも重要ですが、コストがかかるためカラー印刷をしにくいという実情もありました。今では、デジタルで配信してしまえば、一斉に取り組め、教員が進捗を確認でき、回収も必要なく、提出状況も一目瞭然なので効率が上がりました。

地歴科 和田貴博先生
地歴科 和田貴博先生

―具体的にどのような授業でClassiNOTEを活用していますか。

和田:世界地図に国境線を引かせ、穴埋めで学んだ後に、領土問題について自分の考えをまとめる活動をしました。答えのない問題について記入し、共同閲覧モードにしてほかの生徒の考えにも触れて、刺激を受けた回答には「いいね」を押すようにしました。生徒たちは大人では考えつかないようなさまざまな発想を書いてくれました。例えば、「国境をそもそもなくそう」「オークションにしてはどうか」「均等に分けよう」など。

これからの時代を生き抜くには、こうした答えのない問いに向かっていく力が欠かせません。知識だけでなく、そういった力を養う時間にしてほしいと思い、取り組んでいます。

ClassiNOTEの画面

ClassiNOTEの画面
ClassiNOTEを活用し、答えのない問いに向かっていく力を育むことができる。

例えば、「こういうことをたくさんの人が書いていた」「少数派にはこんな意見もあった」と次の授業の導入の際に、前回の振り返りから始められると面白いのではないかとも思っています。

―ほかにはどのように活用されていますか。

和田:ワードクラウドを使って、クラスのみんなからどのような意見が出たのかを見て、考える素材にしました。パレスチナ問題や台湾の領土問題など単語を拾っていきながら、話し合う活動をしました。少数派の意見について考えることも面白い活動になると感じています。プリントを1枚1枚確認して意見を読み込むとどうしても時間がかかってしまいますが、ワードクラウドで小さな文字を拾えばすぐにそうした少数派の考えも取り上げることができます。生徒の考えや意見を生かした即興性のある授業につながっていると感じます。

ワードクラウド
実際の意見からワードクラウドを生成。生徒たちの考え方を可視化。

数学の本質的な学びに時間を使えるようになった

―山村先生は数学の授業の中で、ClassiNOTEをどのように活用していますか。

山村:基本的にはワークシートを配布し、それに生徒が記入するという活用をしています。数学はペンを使って数式を書くことが重要なので、直接画面に書き込めることは大きな利点です。ただ、ワークなど多くの問題を解く際には、紙のノートで解いたものを写真で撮影して提出させています。

ClassiNOTEの画面
数式はペンを使って直接書き込めるのが利点。

ClassiNOTEの画面
ワークでは紙に記入したものを写真で撮り、キャンバスに貼りつけて提出。

―実際に授業で活用し、どのような価値を感じていますか。

山村:生徒がどこまで記入できているかをリアルタイムで把握できるので、それを受けて授業の進度を調整することができています。「もっと問題の演習が必要かな」、あるいは「先に進めて大丈夫そう」などの判断をして、授業を展開しています。

授業中、生徒に考える時間をできるだけ作りたかったので、数学でいうならば問題を書き写す時間をなるべく省略したいと思っていました。実際に、板書を写すだけで時間を使ってしまう生徒もいたからです。こうしたことを防ぐために、プリントを配っていましたが、生徒の保管がうまく行かなかったり、印刷に手間がかかったりという課題もありました。ClassiNOTEの活用により、こうした課題が解決し、より数学の本質的な学びに時間を使えるようになりました。

また、教員による評価もスムーズに行えるようになったと感じています。授業後に、すべて一覧で見られるので提出物の評価が非常にスムーズになりました。提出してもらったノートをすぐに返せないと、生徒たちが次の授業や自宅学習で困ってしまいます。だから、これまでは必死になって添削をしていました。デジタルであればそうした細かな心配はいらず、教員自身のタイミングで点検や評価ができるメリットを感じています。

―さまざまな機能の活用にも挑戦していますか。

山村:先日、授業の導入で投票機能を使いました。出題に対して、生徒はABCDの投票ボタンを押します。その結果をもとに円グラフを作り、「この回答が最も多いね」「この回答は一番少ないけれど、大穴があるかも!」と声かけをしながら関心を喚起するような活動を行いました。挙手よりも投票ボタン式のほうが生徒が参加しやすく、授業にテンポも生まれると感じています。

また、ルーブリック機能も活用しています。例えば、下記のルーブリックでいうと「しっかり考え、グループのメンバーと協力して答えを導くことができた」まで到達していれば「S」と自己評価します。

ClassiNOTEの画面
ルーブリック機能では、生徒たちの自己評価を一覧で見ることができる。

これからは、共同閲覧モードにして、生徒が互いの意見や感想を見合い、「いいね」を押すような相互評価の活動も取り入れていきたいです。振り返りAI分析(β版)の機能も生かしていきたいですし、挑戦したいことはまだまだたくさんあるので頑張っていきたいと思っています。

東北文教大学 山形城北高等学校

所在地
山形県山形市

インタビュー対象者
数学科 山村美和先生
理科 古内雅之先生
地歴科 和田貴博先生

Webサイト
https://www.johoku.ed.jp/