2026年5月26日に開催したオンラインイベント『その自己調整学習、間違っていませんか?誤解の「タイプ診断」と「処方箋」』のレポートをお届けします! 

本イベントでは、中部大学准教授の樋口万太郎先生と、コードタクト教育実践研究フェローの白杉亮先生が登壇。学校現場で関心が高まっている「自己調整学習」について、よくある誤解をタイプ別に整理しながら、実践に生かすための視点を対談形式で深めていきました。

当日は、学校の先生方、管理職の先生方、教育委員会の先生方など、大勢の方にご参加いただきました。今回はアーカイブ配信は行わず、リアルタイム参加の先生方と深める場として実施しました。

自己調整学習にまつわる「よくある誤解」

近年、学校現場でも「自己調整学習」という言葉を耳にする機会が増えてきました。

子供が自分で目標を立てること。学習の進め方を選ぶこと。計画を立て、振り返ること。自分のペースで学びを進めること。

こうした実践は、自己調整学習と深く関わっています。一方で、形だけが先に広がることで、「自由進度にすれば自己調整学習になる」「振り返りを書かせれば良い」「子供に委ねれば良い」といった誤解も生まれやすくなります。

そこで本イベントでは、自己調整学習にまつわる誤解を、次の6つのタイプとして整理しました。

  • 自己調整=自由進度でしょタイプ
  • 計画と振り返りを書かせればOKタイプ
  • 委ねる=丸投げタイプ
  • 選ばせれば主体的タイプ
  • 子供主語なら全部正解タイプ
  • 深い学びは別物でしょタイプ
自己調整学習にまつわる6つの誤解のタイプ

自己調整学習にまつわる6つの誤解のタイプ

当日は、これら6つのタイプを手がかりにしながら、樋口先生と白杉先生がそれぞれの視点から対談を行いました。参加者からの質問も交えながら進行し、自己調整学習をめぐるさまざまな悩みや論点について、幅広く話が展開されました。

この記事では、その中から特に話題になった内容の一部をご紹介します。

「委ねる=丸投げタイプ」をめぐって

対談の中で特に関心が寄せられたテーマの1つが、「委ねる=丸投げタイプ」です。

自己調整学習では、子供に任せることや、子供が自分で学びを進めることが重視されます。一方で対談では、それが教員の支援をなくすことと同じではないという点が話題になりました。

樋口先生からは、目標や課題設定が子供たちの中に十分に落ちていないまま、自由進度で学習を進めたり、振り返りを書かせたりすることで、かえって子供たちが困ってしまうことがあるという指摘がありました。

また白杉先生からは、自己調整学習を支えるうえで、子供たちとゴールを共有することや、困ったときに使える方略を用意しておくことの大切さが語られました。

当日の対談では、「委ねる」とは何か、教員がどこまで支え、どこから子供に任せていくのかについて、具体的な実践場面も交えながら話が深められました。

「選ばせれば主体的タイプ」をめぐって

もう1つ、参加者の関心が高かったテーマが、「選ばせれば主体的タイプ」です。

自己調整学習の実践では、子供が学び方を選ぶ場面が取り入れられることがあります。しかし対談では、選択肢を用意することだけで、子供の主体性が育つわけではないという点も話題になりました。

白杉先生からは、子供が何かを選ぶときには、「なぜそれを選ぶのか」という意図が大切になるという視点が示されました。また、子供が選択肢を選べるようになるためには、それまでにさまざまな学び方を経験していることも重要だという話がありました。

樋口先生からも、自己調整学習だからといって教員が教えてはいけないわけではなく、必要なことは教員がしっかり教えて良いという考え方が語られました。

対談では、「選ばせる」ことそのものではなく、子供が選べるようになるまでの経験や支援をどう設計するかが重要な視点として扱われました。

参加者とのやりとりを通して、さらに深まった対談

今回のイベントでは、上記の2つ以外にも、「計画と振り返りを書かせればOKタイプ」や「子供主語なら全部正解タイプ」、「深い学びは別物でしょタイプ」など、6つのタイプそれぞれをめぐって多様な論点が扱われました。

また、参加者から寄せられた質問をもとに、学校現場で実際に起こりやすい悩みについても話が広がりました。自己調整学習をどのように捉えるか、教員はどのように関わるか、日々の授業の中でどこから始められるか。リアルタイムの対話だからこそ、その場で問いが深まり、考えが広がっていく時間となりました。

樋口万太郎先生と白杉亮先生の対談の様子

樋口万太郎先生と白杉亮先生の対談の様子

自己調整学習を、実践に生かすために

今回のイベントでは、自己調整学習を特定の授業形式や活動に限定して捉えるのではなく、子供の学びを支える視点として見直すことが大切だというメッセージが共有されました。

自由進度学習、計画、振り返り、選択、子供に委ねること。
それぞれは、自己調整学習と関わる大切な要素です。

しかし、それらを取り入れるだけで自己調整学習が成立するわけではありません。対談では、子供たちが目標に向かって学び方を見直し、必要に応じて調整していくために、教員がどのような環境をつくり、どのように関わるのかが繰り返し話題になりました。

本イベントは、自己調整学習を「流行している実践方法」としてではなく、日々の授業づくりや子供との関わり方を見直す視点として捉え直す機会となりました。

今回のセミナーは、お二人のご著書である『その自己調整学習、間違っていませんか?失敗しない考え方』(明治図書)の出版にちなんで開催されました。自己調整学習について詳しく学びたい、さらに深めたいという方はこちらの書籍をぜひご覧ください!

 

今後もスクールタクトでは、白杉先生がゲスト講師の先生方と対談しながら、子供の主体性や学びを支える実践について考えるセミナーを企画しています。

次回は、成城学園初等学校の秋山貴俊先生をゲストにお迎えし、『先生のための「子供の主体性を引き出すコーチング」入門 〜言葉かけ・関わり方をアップデート〜』を開催予定です。

「子供に考えさせたい」「主体的に動いてほしい」と思いながらも、つい口出ししてしまう。そんな先生方と一緒に、子供の思考・意欲・行動を引き出す関わり方について考えていきます。

ぜひ、今後のイベントにもご参加ください。