2026/10/4に、オンラインイベント「デジタルvsアナログを越える授業デザイン―『何を使うか』より『何を育てるか』から逆算する」を開催しました。

登壇者は、前・埼玉県公立中学校教諭の増田翔太先生と、コードタクト教育実践研究フェローで、元東京都公立小学校教諭の白杉亮先生。お二人ともスクールタクト認定マスターゴールドとして長くスクールタクトを活用されてきました。

本イベントでは、デジタルとアナログのどちらが優れているかを考えるのではなく、「子供にどのような力や理解を育てたいのか」というゴールから、学習活動やツールの選択を考える授業デザインについて、小学校と中学校それぞれの実践をもとに語り合いました。

ツールを使うことが目的になっていないか

GIGAスクール構想が始まった当初、増田先生は、ICTを使って成果物を作ること自体が授業の目的になっていたと振り返ります。

さまざまなツールや活用方法を試す中で、次第に感じるようになったのが、「ツールを使うことが目的になっていないか」という問いでした。この問いは、生成AIの活用が広がる現在にも通じます。

増田先生は、ICT・生成AIを活用する先進校の実践を見て、優れているのはツールの使い方だけではなく、その前提となる授業づくりの土台であると感じたそうです。

増田先生のご発表資料

増田先生のご発表資料より

「今日、何をするか」から「何を育てるか」へ

増田先生と白杉先生に共通していたのは、教員になったばかりのころには、「今日の授業で何をするか」から授業を考えていたという経験です。

その後、「単元の最後に何ができるようになっていれば良いか」「今回の学びが、次の学びや日常生活にどうつながるか」という視点から、単元全体を見通すようになったそうです。

白杉先生からは、たくさんの意見が出ることだけが「深い学び」なのではなく、学んだ知識や考え方を、別の問題や次の学年でも使えるようになる、「概念的理解」の重要性が示されました。

事実的な知識と概念的な知識をどのようにつなぐのか、小学校と中学校ではどのような違いがあるのか。対談では、それぞれの校種が抱える難しさも踏まえながら、授業のゴールを捉えるための視点が語られました。

白杉先生ご発表資料

白杉先生のご発表資料より

誰にとっての「ベストミックス」なのか

学習のゴールが明確になると、そのゴールに到達するための活動やツールを考えられるようになります。

白杉先生からは、ゴールへの到達を妨げるバリアを減らすために、デジタルやアナログを選択肢として用意するというUDL(学びのユニバーサルデザイン)の考え方の紹介がありました。同じ1つのツールであっても、異なる子供に、異なる理由で役立つことがあります。

大切なのは、教員にとって便利かどうかだけではありません。子供一人ひとりにとって、今の自分に必要な方法は何かという視点も必要です。

子供自身が方法を選び、試し、振り返り、「今の自分にとってのベストミックスを見つける」ために、教員はどのようなゴールや評価基準を持っておく必要があるのかについても話がおよびました。

スクールタクトが広げる、参加と共有のかたち

増田先生は、さまざまなツールを試してきた経験から、スクールタクトについて、「デジタルとアナログを最も行き来しやすいツール」だと感じているそうです。

中学校では、学年が上がるにつれて、全体の場で手を挙げて発言することが少なくなる傾向があります。しかし、スクールタクトに考えを書いて共有すれば、声に出すことが難しい子供も、自分なりの方法で授業に参加できます。

何気なく書かれた言葉から、その子供の新たな一面や面白い考えが見つかることもあります。一方で、まだほかの人には見せたくない考えを、共有せずに残すこともできます。

全員が同じ方法で表現するのではなく、それぞれに合った参加や共有の方法を選べること。対談では、スクールタクトが授業の中で果たす役割について、具体的な場面を交えながら紹介がありました。

AIに何を任せ、何を人が担うのか

イベントの終盤には、子供たちによる生成AIの活用も話題になりました。

AIを使うと思考する機会が減るのではないかという懸念がある一方で、AIの支援があることで、学習を進められる子供もいます。また、AIが出力したものだけでは理解できず、教員や友達による直接的な支援が必要な子供もいます。

AIに何を任せ、その出力をどのように活用するのか。さらに、どの場面で教員や友達が関わるのか。デジタルかアナログか、AIを使うか使わないかではなく、学習のゴールから役割分担を考えることが求められているという話がお二人から出ました。

本イベントは、デジタルとアナログ、さらにはAIを「使うか、使わないか」という二者択一で捉えるのではなく、子供に何を育てたいのかというゴールから、学習活動やツールの選択を捉え直す機会となりました。

※スクールタクトでもAI機能をお使いいただけるようになりました。直接答えを教えるのではなく、ヒントや問いかけによって児童生徒自身の「書く・考える」力を引き出すよう設計された、スクールタクトのAI機能「TUNE(β版)」についてはこちら!

今後もスクールタクトでは、白杉先生がゲストの先生方と対談しながら、子供の主体性や学びを支える実践について考えるイベントを企画しています。ぜひ、今後のイベントにもご参加ください。