仲綾子准教授
導入前の課題 | |
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1 | 学生同士で互いの作品を見合ってコメントする活動をスムーズに実施できるツールを求めて試行錯誤していた |
2 | 提出された作品に手書きで赤入れして返却するため、印刷やスキャンの手間がかかっていた |
導入後の効果 | |
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1 | スクールタクトの高い一覧性とコメント機能を生かして学び合いを実現 「書く力」も向上 |
2 | スクールタクト上で作品提出して赤入れも実施することで省力化 導入前よりも指導に時間をかけられるように |
今回お話を伺った東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科仲綾子先生の研究室(ゼミ)は、こどもの成育環境と医療福祉建築計画設計をテーマとしています。今回は、スクールタクトと仲先生の意外な出会いから、建築系ゼミでの活用方法、「良いコメント」を促す秘訣や、スクールタクトによって生まれた変化などについて伺いました。
学ぶ側としてスクールタクトを体験、ゼミ導入へ
-さっそくですが、仲先生はどこでスクールタクトと出会われたのでしょうか?
仲:元々は教える側ではなく学ぶ側としてスクールタクトと出会いました。「本質的な知」をさまざまな観点から学ぶ、EMS(エッセンシャル・マネジメント・スクール)という場で、年齢や環境問わず誰もが自由に学ぶことができます。普段は教える側の立場にいる私ですが、EMSでは学ぶ側として在籍していました。そこで使われていたのがスクールタクトです。とにかく一覧性の高さに衝撃を受けたのをよく覚えています。他の参加者が記入した内容が自由に閲覧できる設定になっていることで、「同じ講義を受けたのに、人によってこんなにも違う捉え方ができるのか」という驚きがありました。さらに、自分の感想に対して他の参加者からコメントをもらえるとモチベーションにつながるという気づきがあり、非同期でも議論ができました。学びが深まることに加えて参加者同士の親睦が深まっていく実感もあり、「これはぜひ自分のゼミにも取り入れたい」と感じました。
ゼミ生の作品
-スクールタクト導入前に抱えられていた課題と、導入の流れについて教えてください。
仲:ゼミでは学生同士の学び合いを促そうと試行錯誤していましたが、なかなかベストなやり方が見つからないという状況でした。例えば、作品を教室に並べ、学生がそれを順に見て回って付箋にコメントを書いていく、という方法です。これでは手間も時間もかかってしまうので、どうにかしたいと思っていました。また、LMS(学習管理システム)を使って作品を共有しようとしたら、テキストはアップできるのに画像はアップできなかったり、コメントを付け合うことができなかったりという問題がありました。さらに、画像をアップできるLMSも使ってみましたが、一覧性がなく、他の人の作品を見るためにその都度、学生の名前をクリックする必要がありました。この一手間で面倒になってしまうのか、学生は自分の作品をアップするだけになってしまい、作品の共有・学び合いは実現できませんでした。EMSでスクールタクトの一覧性とコメント機能を体験し、ゼミの課題を解決できると感じてすぐに導入を希望しました。しばらく準備期間がかかりましたが、コロナウイルス感染拡大防止でオンライン授業が進められていたこともあり、導入を認められました。
コメント機能を積極活用、学生同士の学び合いが活発化
-実際のゼミではどのようにスクールタクトを使われているのでしょうか?
仲:通常のゼミの流れは以下の通りです。
①作品の事前提出
ゼミの事前準備として、学生が自分のスケッチ、図面、論文をスクールタクトにアップしておきます。スクールタクトは「共同閲覧モード」に設定しておき、お互いの進捗状況が分かる状態にしています。
②ゼミでのエスキス(建築のコンセプトを修正していくこと)
スクールタクトに提出された作品をエスキスしながら、仲が書き込みを入れていきます。
事前に提出された学生の作品をエスキスしつつ、その場で書き込みを入れる
③学生同士でのコメント
スクールタクトのコメント機能を用い、学生同士で、互いの作品にコメントします。
④リフレクション
その日のゼミの振り返りをスクールタクトに記入します。
毎回のゼミ後にはリフレクション(振り返り)も実施
-スクールタクト上に作品を提出し、学生さん同士で作品へコメントをし合っているんですね。コメント欄では具体的にどんなやり取りがされていますか?
仲:学生の作品をエスキスする際、気になる点があっても、私から全てを指摘するわけではありません。そんなときコメント欄を見てみると、学生同士でとことん指摘し合って議論していることがあります。学生同士だからこそ、「あなたならきっとできるはず」と信じ合えているようです。「学生にも指導力あるじゃん!」と思うこともありますよ。すごくありがたいですね。
学生同士でお互いの作品にコメント(右側)
-一人一人の「書く力」を伸ばすために心がけていることはありますか?
仲:コメントとリフレクションは毎回のゼミで実施していますね。文章の上達には「何度も書く」という訓練がとても重要なのだと感じます。初めは表面的なコメントが多かったですが、毎週繰り返していくことで、書く力が向上していきました。継続していく中で、良いコメントをもらう経験が増えると、自分のコメントでもそれを真似することができます。もう少し頑張って欲しいと思う学生に対しては、私から直接働きかけることもあります。その学生に対して、質も量も十分な読み応えのあるコメントと、単純に「よかったです」というようなコメントをします。「自分だったらどちらが学びになる?」と問いかけると、「そりゃいっぱい書いてもらった方がいいですね」と返ってきます。すかさず「だよね!それやってみよう!」という感じですね。
ゼミ全体として作品の質が向上、みんなが「ヒーロー」に
-ゼミの前に作品をスクールタクトに提出、互いに閲覧可能にしておくことによる良い効果はありましたか?
仲:ゼミ全体の作品のクオリティが上がりました。締め切りギリギリまで制作に励む学生がほとんどなのですが、ある学生が「自分は心配性なので」と、いつも早く作品をアップするんです。それが毎回良くできているんですね。共同閲覧モードに設定していますから、提出前の他の学生はそれを見ているわけです。すると、「これくらいのクオリティは出さないと」と刺激になるようで、明らかに全体の質が上がりました。良い影響を及ぼし合っていますね。事前提出の方法は私にとっても良かったです。スクールタクト導入前は、ゼミの場で初めて学生たちの進捗を知るので、良くも悪くも「開けてびっくり」な所がありました。スクールタクトを使うことでゼミ全体の状況をひと目で把握でき、一人一人の進捗状況も分かりやすくなりました。
ゼミ全体の状況がひと目でわかり、学生同士の刺激にもなっている
-その他に、良い点はあるでしょうか?
仲:ゼミの「ヒーロー」が毎回違う、という状況が生まれたのがいいなと思っています。ゼミは90分2コマの長丁場です。学生が自分の作品を順番にプレゼンしていきますが、聞いている側は常に集中力を保つことは難しく、聞き逃しや見逃しもあります。すると、何となく「いつも優秀なあの子が今回も良かったかな」という雰囲気になり、毎回同じ学生がフィーチャーされてしまうことがあります。しかし、スクールタクト導入後は、「今回は〇〇さんのここが良かった」「△△さんのここを見習いたい」など、以前と比べて解像度の高いコメントが出てくるようになりました。プレゼンはどんどん次の作品に移っていくので、どうしても流れていってしまいます。スクールタクトで適宜、自分のペースで他者の作品を見返しながら考えを深めることができる、という点が良いのかもしれません。
作業効率がアップし、ゼミ生一人一人に目が届く
-スクールタクト導入により、仲先生ご自身に何か変化はありましたか?
仲:なによりも、学生へフィードバックするときのプロセスが減り、省力化が図れたことが大きいです。例えば、中間や最終発表前の梗概(概要)もスクールタクトにアップしてもらうようになりました。スクールタクト導入前は、学生が作成した梗概をメールで送ってもらい、印刷したものに手書きで赤入れ、それをスキャンしてメール返信、という流れでした。今では、スクールタクトに提出してもらった梗概に直接書き込んで赤入れするだけで済むので、とても楽です。また、ゼミ生全員をフラットに見ることができるようになりました。以前はどうしても、すごくできる学生と、サポートが必要な学生ばかりに目がいってしまいがちだったんです。真ん中に位置する学生たちへなかなか時間を使えていませんでした。スクールタクトの画面上では、全ての作品がフラットに目に入るので、それぞれの良いところがよりクリアに見えるようになりました。全員をよりしっかりと見られるようになった一方で、全体の作業効率が上がっているので、負担が増えた感じがしないのがとても良いです。自分自身も楽しんで学生の作品を見ていますね。過去の作品もいつでも簡単にアクセスできるので、必要に応じて見返すようにもなりました。
梗概に手書きで赤を入れる
-スクールタクトを使用する時に気を付けている点はありますか?
仲:2点あります。1つ目は、「必ず私が目を通している」ということを、学生に伝わるようにすることです。これは、スクールタクトで作品を提出させるにあたり、自分の中で絶対に守るルールになっています。学生が何か提出したら必ずコメントを入れるということですね。私がどうしても忙しい時にはひとまず星マークだけつけておきます。すると学生は「先生今忙しいんだな、あとで見てくれるな」と理解してくれます。2つ目は、モチベーションが下がってしまった学生のフォローです。優秀で制作スピードの速い学生の存在が良い刺激になる学生がいる一方で、自分の力不足を感じてモチベーションが下がってしまう学生もいます。自信をなくす学生がいたら、個別面談をしてシフトチェンジできるように働きかけています。
「学ぶことは楽しい」をみんなで体験できる場
-学生さん達はスクールタクトの導入をどのように捉えているのでしょうか。
仲:みんな若いので飲み込みが速いですね。マニュアルなしでもすぐ対応できます。コロナ禍でなかなか互いに顔を合わせることができなくても、スクールタクトに入れば、みんなと会えたように感じられると言っていました。スクールタクトを開くとすぐに学生たちのカラフルな作品がパッと目に入るので、私も明るい気持ちになります。私のゼミでは元々、チームワークを大切にとよく伝えていますが、スクールタクトはまさにチームワークを実現できる場であると感じます。
ゼミ合宿の行き先検討でもスクールタクトを活用
(合宿はコロナ禍で中止)
-今後、スクールタクトで実現したいことについて教えてください。
仲:学生たちには自律して学び続ける人間になってほしいと願っています。私は EMSでは学ぶ側の立場でしたが、この歳になってもやっぱり学ぶことが楽しいんですよね。仲ゼミでは、私が一方的に教えるのではなく、学生同士みんなで学び合ってほしいと思っています。スクールタクトを通じて学生が楽しく学べる環境づくりができるといいですね。
ゼミ生の作品
東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科
1887年に創立された東洋大学は、東京都文京区に位置する白山キャンパスを中心に赤羽台、川越、板倉、朝霞にキャンパスを構えています。ライフデザイン学部人間環境デザイン学科では、プロダクトデザインからまちづくりまで、人間を中心としたデザイン教育を行っています。
東洋大学赤羽台キャンパス実験工房(学生がデザインした椅子)