急速に進むICT教育
近年学校現場ではICTを用いた教育の普及が急速に進んでいます。ICTとは、Information and Communication Technology(=情報通信技術)の略称で、インターネットなどの通信技術を用いたコミュニケーションを指します。
加えて、文部科学省はGIGAスクール構想を2019年末に打ち出しており、ICTの普及スピードは更にアップしていくと考えられています。なかでも授業支援システムは一つの目玉となっています。本記事では、授業支援システムの理解を深めたい方や導入を検討している方向けに授業支援システムの概要・メリットやデメリットなどを解説します。
授業支援システムとは
授業支援システムとは、ICTで児童生徒の学びを促進しながら教師の授業運営をサポートする仕組みの総称です。呼び方については様々であり、「授業支援ツール」「授業支援サービス」「授業支援ソフト」「授業支援クラウド」といった呼称もあります。また、文部科学省の提唱する「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)を設計の理念に据えたシステムもあります。
授業支援システムの主な特徴
具体的に授業支援システムを使ってどのようなことができるのでしょうか。特徴をいくつかご紹介します。
(1)授業準備の効率化
授業支援システムを使うことで、授業用課題の準備を短縮化できます。多くの授業支援システムには初めから課題テンプレートが何種類も入っており、授業にすぐに活用できます。また児童生徒の端末に課題を即時に配信することができ、プリントを印刷・配布・回収する手間から解放されます。準備が楽になることで、児童生徒と向き合う時間や授業改善などの教師の本質的な業務に集中する時間を捻出することができます。
(2)授業の進行補助
授業支援システムは授業の進行補助に役立ちます。例えば、児童生徒の課題進捗状況をほぼリアルタイムに、簡単に把握できる機能をもつサービスなどがあります。多くの授業支援システムは、クラス全員の回答を大きめのサムネイル形式で表示したり、特定の児童生徒の回答を比較したりする機能を備えています。また、児童生徒同士がお互いの課題にコメント・いいねをつけられる機能も持つシステムもあります。したがって教員がいちいち机間巡視して児童生徒の課題の進捗状況を確認する手間が減りますし、学習に遅れている児童生徒の早期発見もしやすくなります。また、コメント機能の活用によって発言が苦手な児童生徒が意見を表明するハードルを下げることができます。このように授業への関与を促す機能がある点が授業支援システムの魅力といえるでしょう。様々な機能活用から得た手がかりを用いることで、授業をさらにブラッシュアップできます。
(3)評価を助けてくれる
授業支援システムは重要業務の一つである評価を効率的に行うことができます。授業支援システムを使うことで、課題の回答状況を一覧化したり評価のために活用する材料の検索性が大幅に向上します。課題への回答状況の確認に優れいているので、形成的評価・総括的評価のいずれにもすぐに活用できます。また、コメントやいいねの履歴も授業への関心・意欲・態度の観点での評価に含むことが可能です。授業支援システムの中には、受けた授業をポートフォリオ化することで、教師だけでなく児童生徒自身でも学習をふりかえって自己評価することもできます。
(4)オンライン授業 / 遠隔授業を行いやすい
授業支援システムを使うことで、オンライン授業や遠隔授業を手軽に行えます。特に一部の授業支援システムはブラウザさえあればすぐに使うことができます。このため、アプリのインストール、アップデートあるいはサーバの設置が不要いらず、より手軽に使えます。例えば、感染症による学校閉鎖という事態が生じても、児童生徒が各自宅から授業に参加することができます。また、不登校傾向の児童生徒の学習機会を確保することにもつながるでしょう。2016年に定められた教育機会確保法により、多様な学びを保証することは文部科学省からも要請されているのです。オンライン授業や遠隔授業を労せず行えることは、学習の多様化の流れにマッチするものでしょう。
(5)児童生徒の授業態度や人間関係まで分析してくれる機能も
授業支援システムのなかには、生徒の授業態度や人間関係を可視化できるサービスもあります。教師が見立てることにも役立ちます。例えば、どの児童生徒がどの児童生徒の課題を閲覧したりコメントしているかを自動的に分析し、結果をグラフ形式で把握できる機能を持つシステムもあります。児童生徒の人間関係は教師から見えづらい部分があり、いつの間にかいじめが発生しているケースも存在します。人間関係を分析する機能により、いじめの早期発見につながる可能性もあるでしょう。
授業支援システムのメリット・デメリット
授業支援システムのメリット
前述の特徴をふまえ、授業支援システムのメリットをまとめます。
- 教師の負荷を軽減してくれる
- 安定的なオンライン授業環境を作れる
- データ活用により、児童生徒をケアする選択肢が増える
このように、ICTならではの強みを生かして授業をより良くできる点が授業支援システムのメリットと言うことができます。
授業支援システムの課題
一方で授業支援システムにも課題があります。
- 慣れるのに時間がかかる
- ITの知識が必要である
- 児童生徒がいたずらしないためのルールづくりが求められる
うまく活用できれば便利な一方で、ルール整備やインターネットサービス活用に関する新たな知識取得など、導入に関する様々な準備が必要になります。これらの課題を解消するためには主に以下のポイントを整理する必要があります。
- 本格導入前に実際に授業支援システムを教員同士で使ってみて、疑問点や懸念点を出し合う
- 授業内でどのように児童生徒にシステムを使わせているか、他校での導入事例を参考にする
- トラブルが起きた際のヘルプページや連絡窓口を事前に確認しておく
- ICT支援員と協力する
一般的に学校全体のオペレーションを急激に変えることは現実的ではありません。すでに導入済の他校と情報交換をしたり、授業支援システムの提供会社のサポートをあおぎながら、関係者の知識や理解を深めて適応させていく工夫が必要になります。
おわりに
本記事を通じて、授業支援システムの概要についてご説明いたしました。ICTの普及過程において、児童生徒・教師双方にとってより良い授業を実現するために重要なシステムであるとおわかりいただけたかと思います。