はじめに

近年の教育改革に伴い、「双方向授業」という言葉が使われつつあります。また、昨今の情勢の中で「オンラインでの双方向授業」を謳い文句にしたサービスも登場しつつあります。本記事では、双方向授業のねらいや登場した背景などに触れつつ、オンラインでの双方向授業を支援するシステムを紹介しながら、今後の授業設計のあり方を検討する材料を読者の方に提供いたします。

双方向授業とは

双方向授業(あるいは双方向型授業)には、明確な定義はありません。しかしながら、以下の3点は共通していると言えるでしょう。

  • 教師から児童生徒へ一方的に知識を伝える形式の授業(一方向型授業)ではないことが強調される。
  • 児童生徒と教師、または児童生徒同士の双方向のコミュニケーションを取り入れている。
  • 児童生徒の主体的・能動的な学習を生み出すことを目的としている。

こうした点は、「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)を生み出す授業とも重複します。しかしながら「主体的・対話的で深い学び」が提唱される以前から、授業の展開として双方向授業は存在していたと言えるでしょう。双方向授業が現在求められる背景としては、知識の詰め込みだけの教育では、社会の急激な変化に対応できる人材を育めないといった危機感があるように思われます。

双方向授業のメリットや気を付ける点

双方向授業のメリットとしては、主に以下の3点が挙げられるのではないでしょうか。

  1. 一方向型授業では受け身な態度を強いられ児童生徒が退屈しがちだったが、その退屈さを解消できる。
  2. 授業の展開に幅を持たせることで、児童生徒が自らの持ち味を活かしやすい。
  3. 一方向型授業と違い、汎用的なスキル(コンピテンシーと呼ばれることもあり、問題解決能力やコミュニケーション能力などを指す ※1)を培う授業展開を自然に取り入れられる。

逆に気をつける点としては、特に以下の2点が挙げられます。

  1. 双方向授業において、児童生徒の発言や行動を事前に全て想定するのは不可能である。そのため一方向型授業に比べ、教師は授業中に臨機応変な対応が求められる。
  2. 対人不安がある児童生徒や障害を持つ児童生徒にも配慮し、全員が参加できるような工夫が必要である。

例えば、社会科の双方向授業で「学校近くの商店街の名店を班ごとに発表する」活動を取り入れるとします。情報収集能力に長けた児童生徒、班の意見をまとめることに長けた児童生徒、といったように一人ひとりの良さは、班内での双方向のコミュニケーションにより活きることでしょう。また試行錯誤して活動していく中で、汎用的なスキルが身につくことも期待できます。

一方で、活動に飽きたり上手く関われない児童生徒が出てきてしまった、あるいは班の中でトラブルが発生してしまったなどの事態に、教師はその場で柔軟に対処しなければなりません。児童生徒が学びとして得るものが大きい分、教師にかかる負担も大きくなる傾向にあるでしょう。

オンラインでの双方向授業のポイント

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、学校が長期間休校になりました。そしてその際の学習を保証するための施策は、各自治体あるいは各学校によって差異がありました。ただ課題のプリントを児童生徒の自宅に配布するだけの学校もあれば、オンライン授業を実施した学校もありました。しかしながら上述した双方向授業の概要を踏まえると、オンラインでの双方向授業が学習を保証する方法として最も理想的ではないでしょうか。

ポイントは、ビデオ会議システムなどの活用により、登校しないでも児童生徒と教員、あるいは児童生徒同士の双方向のコミュニケーションを取りつつ授業を行えることです。教室と全く同じ授業展開にはできませんが、児童生徒の主体性を引き出しつつ、汎用的なスキルを培うことが工夫次第で実現可能でしょう。

ただし気をつける点として、ビデオ会議システムだけでは児童生徒の学習成果が見えづらいという点が挙げられます。発言や表情などは教師が画面越しに確認できますが、児童生徒が出した解答などをチェックすることは難しいでしょう。学習の評価がなおざりになる可能性もあります。

その解決策としては、「授業支援システム」(「授業支援ツール」「授業支援サービス」「授業支援ソフト」といった呼称もあります)を導入することが最も手軽ではないでしょうか。児童生徒の学習状況をリアルタイムで把握でき授業中は柔軟に対応しやすく、授業後は評価の材料にもなります。相互コメント機能を持つシステムもあり、ビデオ会議システム上だけでなく、授業支援システム上での双方向のコミュニケーションも可能です。

以上から、休校時に学習を保証するための最適解は、授業支援システムを活用したオンラインでの双方向授業だと言えるのではないでしょうか。

おわりに

本記事を通じて、双方向授業についてご説明いたしました。授業支援システムを活用しつつ、児童生徒がコミュニケーションを取り合い汎用的なスキルを磨いていくことで、社会の急速な変化に負けない人材に育っていくことを願う授業形態であることがおわかりいただけたかと思います。

※1 文部科学省(2014).育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会― 論点整理―について
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/095/houkoku/1346321.htm