授業や進路指導でスクールタクトを積極活用し、「1/1の教育」を実現
導入前の課題 | |
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1 | オンライン授業中の生徒の学びの進捗や様子が把握しにくい |
2 | 生徒が安心してアウトプットできるツールがほしい |
導入後の効果 | |
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1 | 生徒のアウトプットをリアルタイムに確認でき、テンポよく授業を展開したり適切な進路指導を行ったりできるようになった |
2 | コミュニケーション方法が多様化し、生徒が授業に安心して臨むようになった |
広域通信・単位制高校として全国53キャンパスをもち、通学と通信の学習スタイルを組み合わせることができる第一学院高等学校。早くからオンライン化に舵を切っている同校は、授業だけでなく、多様な指導でスクールタクトを活用しています。実際の導入とその手応えについて、宇賀神千秋先生(教育運営部 教務ICT支援室)と校舎で実際にスクールタクトを活用した松宮梨紗先生(現在は教育運営部 人材支援室所属)にお話を伺いました。
「1/1の教育」を実現するオンラインツールを求めて
―ICT活用を進めた背景を教えてください。
宇賀神:2015年から生徒に1人1台iPadを用意してもらい、オンラインでリアルタイム授業を行うようになりました。本校は広域通信・単位制高校で、全国にキャンパスがあります。ICT活用以前はそれぞれのキャンパスがオリジナルの良さを活かして、授業を行っていました。ICTを活用すると各キャンパスの良さをオンラインで共有し学び合うことができるので、学校としてより充実した教育を行っていけるのではと考えました。
―スクールタクトを導入した経緯を教えてください。
宇賀神:2016年からスクールタクトを導入しました。選んだ理由は、アクティブ・ラーニングを実現できる双方向性あるICTツールを取り入れたいという思いからです。オンラインでも一方通行では録画をした動画と変わりません。生徒とのコミュニケーションをオンライン上で円滑に行うことができたのが、スクールタクトでした。そこで、全国の配信型の授業でZoomとスクールタクトをセットで使うこととしました。
宇賀神千秋先生(教育運営部 教務ICT支援室)
―どのような成果がありましたか。
宇賀神:Zoomでは、誰が授業に参加したのか履歴が残りません。そのため、当時は出席表のように手書きで誰が参加していたかのメモを取っていました。スクールタクトで、授業の課題を出してもらえれば、そうした出欠確認をする必要がありません。
本校は、不登校を経験したりスポーツなどに熱中したりと多様な生徒が多く、「1/1の教育」を理念に掲げて、寄り添うことを大事にしています。スクールタクトは、一人ひとりの生徒把握に役立ち、かつ教師と生徒、生徒と生徒の双方向性あるコミュニケーションを実現できるツールでした。
コロナ禍となり進路指導でスクールタクトを活用
―具体的にどのようにスクールタクトを活用しているか教えてください。
松宮:1年前まで、私はキャンパスで各学年の進路対策講座を担当していました。本校は、卒業させるだけでなく、生徒たちがその後の人生を自立して歩んでいけることを重視しています。そのため、進路指導にも力を入れ、大学、短大、専門学校、就職という幅広い志望を叶えています。
私が所属していた仙台キャンパスは、7~8割程度の生徒が大学進学を希望していました。例年であれば、3年生になってすぐのタイミングで面談し、進路を考えたり受験に向けた指導をしたりしていました。しかし、昨年の2020年4月は1回目の緊急事態宣言真っ只中。そのため、従来の指導ができなくなりました。
松宮梨紗先生(教育運営部 人材支援室所属)
―コロナ禍になり、どう進路指導を変えたのですか。
松宮:進路対策講座をオンラインで開催し、進路対策シートの記入の仕方を説明後、スクールタクトを通じて取り組んでもらいました。生徒たちは、進路目標を掲げて、「何月までにどの教科・科目をどこまで終わらせるか」といった学習スケジュールを記入しました。そのスケジュールをベースに、1日ごとの学習計画にも落とし込んでいきました。
生徒とは定期的に電話やLMS(学習管理システム)を活用したメッセージのやり取りで連絡を行うのですが、スクールタクト上で記入したシートをもとに生徒の状況を把握し、進路指導を行いました。「スケジュールではここまで学習を進める予定になっているけれど、進捗はどう?」「進路志望に○○大学と書いてあるけれど、理由は?」など担任教員が掘り下げていくことができました。
―生徒への効果はいかがでしたか。
松宮:スクールタクトがなければ、進路に向けての意識付けは難しかったと思います。学校からの働きかけを止めなかったからこそ、自分が受ける大学について調べてウェブのオープンキャンパスに参加したり、自宅学習をコツコツ続けたりすることができたのだと思います。
教員も面談の前に生徒が「何を目標にしているか」を知ることができるので、サポートをしやすくなりました。コロナ禍でスクールタクトがなければ、生徒の状況をリアルに把握することは難しかったと思います。
―先生方の指導を効率化することへもつながりましたか。
松宮:スクールタクトを活用したことで、指導の効率化にもつながったと考えています。例年は、生徒が進路対策シートに手書きをして、教員が生徒分のシートを1枚1枚チェックしていました。スクールタクトの場合は、一覧で同じページを確認していくことができます。最終的には全員分をじっくり読むのですが、提出時にザッと見るだけで、「この子は気になるな」「この子は順調だな」とチェックをし、すぐに声をかけることができます。
また、リアルタイムで生徒の記入状況を把握できるため、「この子は手が止まっているかも」といった見取りができ、生徒把握の速度が上がったと感じています。
安全安心の場をつくり、入学当初の生徒の不安を和らげる
―通信の授業ではどのように活用していますか。
宇賀神:1年生全員が履修する「セルフケア講座」という授業を例にとってご説明します。この授業は、全国から600人を超える生徒がオンラインで参加するため、スクールタクトなしには考えられません。この授業の目標は、入学したてで不安な気持ちを抱えている生徒を安心させることです。人の目が気になってしまう子も多いので、自分自身にフォーカスを当てて、その上でスクールタクトという場で自己表現を促すことを大事にしています。本当は深い考察をしているのに、手を挙げて意見を言うことはできない生徒にとって、スクールタクトというアウトプットツールがあることは非常に重要です。
―実際に、どのように活用していますか。
宇賀神:おもしろさを感じなければ生徒は授業に参加しなくなってしまいます。そのため、授業の講師が工夫し、15分に1回程度の頻度で、スクールタクト上で生徒が手を動かし、アウトプットするような展開を作っています。
例えば、「今週今日まででよかったことを3つ挙げてください」というお題を与えます。生徒たちは、スクールタクト上に、飼い猫の写真や朝からスターバックスに行ったことなど、各々好きなことをアップしていきます。こうした活動を毎週重ねていくと、「この子はゲームが好きなんだな」「猫を可愛がっているんだな」といった個々の生徒のキャラクターが表れるようになります。子どもたちは「自分を出してもよいのだ」という安心感を得て、その上で他の生徒の理解にもつなげていくこともできます。
―授業の効果効率化にもつながっていますか。
宇賀神:先日、人間の優位感覚には「視覚=Visual」、「聴覚=Auditory」、触覚・臭覚・味覚を合せて「体感覚=Kinesthetic」の3種類があることを説明する授業が実施されました。そこでは「3つそれぞれの感覚が優位な異性が喜ぶデートプランを考えましょう」という課題を出されました。
生徒たちは、スクールタクトを使ってとてもおもしろいプランを挙げてくれました。生徒たちの作業をリアルタイムで確認できるので、講師がどんどん「いいね」を押していきます。授業で取り上げる際には、その「いいね」を押した中からピックアップすればよい。講師が提出物を確認する時間を最小限にし、大人数に対しても格段にテンポがよい授業を行うことができています。
―生徒の取り組みの途中経過がわかり、授業にプラスの効果が生まれているのですね。
宇賀神:そうですね。東京のスタジオから全国のキャンパスに向けて遠隔で授業をしているので、スクールタクトがなければ、生徒が課題に取り組む時間が十分に足りているのか、延長すべきなのかもわかりません。作業が終わっていないのに、「はい、終了」と打ち切ってしまえば、生徒の取り組む意欲をくじいてしまうことになります。そして、逆もまた同様で、ほとんどの生徒が書き終わっているのに時間を延長すると、授業時間中に暇な生徒が出てきてしまいます。スクールタクトにより、生徒把握を十分に行え、適切な時間配分が可能になり、生徒の授業への意欲を高めていくことができているのです。
オープンスクールで入学希望者の安心感を醸成
―授業「セルフケア講座」以外にも、スクールタクトを活用していますか。
宇賀神:海外短期体験留学のガイダンス参加前に、スクールタクトに「自己紹介を書こう」と促し、交流する機会を設けました。イベントに行く前の緊張感をほぐすことがその狙いです。共同閲覧モードにし、他の子の自己紹介を見て、「英語はどのくらいできる?」「どこから参加するの?」といったコミュニケーションが生徒間で生まれて安心感を生むことができました。
―入学希望者向けのオープンスクールにも、スクールタクトを活用しているのですよね。
松宮:本校を志望する中学生向けにオープンスクールを月数回実施しています。体験授業への参加を楽しみにしている生徒がいる一方で、不登校経験などから「先生に指名されないかな」や「きちんとコミュニケーションを取れるかな」といったことに、不安な思いを抱えながら足を運んだ子もいます。本校のオープンスクールでは、学校や対人関係への不安を軽減させることがとても重要なのです。
そこで、オープンスクールではスクールタクトを使って「クイズ甲骨文字」を行いました。本校の在校生と中学生がペアになって、スクールタクト上で配信されたクイズに回答していきました。挙手して解答するハードルが高い中学生でも、先輩にサポートされながらタッチペンで書いて回答することならばできます。スクールタクトを使用することで、安心感を持ってオープンスクールに参加することができたようです。
―オープンスクールでのスクールタクト活用には、どのような効果がありましたか。
松宮:参加した中学生も保護者の方も、本校について「安心安全の居場所である」と感じてくださったようです。スクールタクトを含め様々なコミュニケーションの方法があると感じてもらうことができ、「これならば頑張れそうだ」と手応えを感じてくれる中学生が多かったようです。実際に、オープンスクール後のアンケートでは、「来る前は緊張して不安だったけれど、参加したらすごく楽しかった!」という声が多かったです。
このオープンスクールを機会に本校へ入学した生徒も多いですし、なかには「オープンスクールで自信がついたので全日制の高校に通う」と決めた生徒もいました。本校を選んでくださっても他の道を選んだとしても、中学生が前向きに進路を選択する機会となったのであれば、こんなに嬉しいことはありません。
生徒が意見を活発に交わす使い方を模索
―スクールタクトを今後どのように使ってみたいですか。
宇賀神:講師と授業について話したところ、大きくは2つの方法が挙げられました。1つ目は、共同閲覧モードの活用です。生徒が数百人規模で参加するので、どうしてもシステムが重くなり、共同閲覧モードを使うことができませんでした。今後は、共同閲覧モードを駆使して、「私もこんなふうに書けるようになりたい」「こんなおもしろい子がいるんだ。自分も頑張ろう!」といった全国の生徒どうしが相互に学びにつなげていくという方針で検討しています。
2つ目は、グループで何かを作りあげる体験的な学習を実施することです。これには「進行役を誰にするか」といったグループ編成の問題や、スクールタクトとどのコミュニケーションツールを使いアクティブ・ラーニングを行うかといった検討が必要です。多様な可能性を模索しながら実現を目指します。
松宮:スクールタクトには生徒の声の拾い上げ方がたくさんあるので、様々な方法を試していきたいです。例えば、生徒が投票するとどのような意見が多かったのかグラフで表せる機能はすぐにでも使ってみたいです。こうした機能であれば、なかなか自分の意見を言いにくい生徒もアウトプットしていくことができますよね。教員側も生徒の傾向を一瞬で掴み取ることができます。
自分の意見を表現する方法がたくさん用意されていることで、自信がない生徒も自分に合った方法でアウトプットしていくことができます。とはいえ、それでも自分の意見を伝えにくい生徒は一定数います。「1/1の教育」を目指し、授業改善や授業以外のフォローを続けながら、一層生徒に寄り添う教育の充実を図っていきたいと考えています。
第一学院高等学校
全国に53拠点を持つ広域通信・単位制高校。中学生まで不登校であった生徒や、スポーツ、芸能といった専門性の高い道を目指す生徒など多様な生徒が在籍しています。高卒資格取得だけでなく、自身の進路や興味関心に合わせてコースを履修。大学・専門学校・就職など、一人ひとりの希望進路の実現をサポートします。
Webサイト:https://www.daiichigakuin.ed.jp/
スクールタクト導入3ヶ月で学び合いや個別最適化学習を実現
導入前の課題 | |
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1 | 一人一台ノートPCを用いたICT授業を更に発展させていくためのアプリが欲しい |
2 | 生徒の学びをより個別最適化するための支援アプリが欲しい |
導入後の効果 | |
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1 | 一人一台ノートPCを用いたICT授業がスクールタクトにより深化及び進化した |
2 | 生徒の学習進捗を把握し、教員からの適切な声かけが可能となり、個別最適化が図られた |
2021年に100周年を迎える惺山高等学校は、ICTを軸に学校改革を実施しています。ファーストステップとして、教務システムを導入し教員の業務効率化を図り、生徒に一人一台ノートPCを所持してもらい教科指導へのICT活用を進めました。 続いて一人一台ノートPCを用いたICT授業を効果的に進めるために、2021年4月にスクールタクトを導入。改革のステップや具体的な授業での「スクールタクト」活用方法、今後の展望などについて、髙山篤先生(数学・教務主任)と佐藤千絵先生(英語・進路指導部)にお話を聞きました。
教務と授業の両輪でICTを活用し、学校改革を推進
ーICTを軸にした学校改革のステップを教えてください。
髙山:本校は今年100周年を迎えます。この節目に向けて、4年前の2017年から学校改革に踏み出し、コース改変や校舎の改築などを行いました。3年前の2018年からは、ICTを改革の軸に据えています。
改革の背景には、山形県の少子高齢化が大きく関わっています。年々人が減り、街からも活気がなくなってきています。本校がある山形県を少しでも元気にしたい、そのために「本校は何ができるか」「社会に求められている人材とは」「本校の良さを活かした学校改革は」といった本質的な議論を重ねました。
また、本校の生徒の6~7割は山形県に残り、地域社会発展のために貢献しているという特徴があります。本校がより地域社会に貢献できる人材を育成できるよう魅力を高めることも必要であると考えていたのです。
髙山篤先生(数学・教務主任)
佐藤:山形県は公立志向が強い県です。最初から私立を第一希望に考える生徒が決して多くない状況でした。以前から公立・私立関係なくフラットに選んでほしいと思っていました。この面からも、学校の魅力を高めていくことは急務だったのです。
佐藤千絵先生(英語・進路指導部)
ーなぜICTを学校改革の核にしようと考えたのでしょうか。
髙山:本校のある山形県山形市は全国的にみれば田舎の地域です。首都圏に比べればモノもなければ人もいません。何かしようとすると一人で何でもしなければいけません。このハンデを克服するためのツールの一つがICTではないかと考えました。ICTがあれば、どこにいても世界と繋がれるので地方にいながら世界を相手に仕事をしてくことが可能になるのではないかと考えたのです。
ーICTの導入はどのように実現していったのでしょうか。
髙山:先生方はそれぞれの信念と豊富な経験から教育活動を行っています。そこでいきなり「ICTを活用した教育を展開しよう」と言ってもすぐに協力は得られません。「ただでさえ忙しいのに、更に新しい業務をしなくてはいけないのか」といった切実な声も上がってきていました。
まずは教員の多忙化を解消し、かつ教員のICTスキル向上を図るために「教務システムのICT化」を行いました。これにより教員多忙化の大きな部分をしめていた出欠や成績、帳票管理の業務時間を大幅に減らすことが出来ました。
そして今まで紙で行っていたこれらの業務をICT化するにより、ICTがとても便利なものであるという認識が広まり、教員のICTに対する垣根が低くなっていった効果もありました。
全生徒へ1人1台Chromebookを配布、授業でのICT活用に着手
ー授業におけるICT化はどのように図っていったのですか。
髙山:教務へのICT活用が浸透したところで、生徒に一人一台Chromebookを配りました。しかし、Chromebookを配っただけでは単なる「箱」を渡したにすぎません。そこでICTツールの出番です。いくつかのICTツールを使ってみたのですが、授業中の使いにくさなどが課題となりICTを活用した授業の展開に行き詰まりを感じていました。そこで、行き着いたのがスクールタクトです。本校では2021年4月に導入しました。スクールタクトは学校の現場に即した機能が揃っており、「これで本校のICT教育に必要なものが全て揃った!」と思うほど、使い勝手のよさを感じています。
ー生徒さんたちはもともとパソコンには慣れていましたか。また、スクールタクトの使い勝手はいかがでしたか。
佐藤:中学生までにパソコンやタブレットにある程度触れてきている生徒もいれば、片手タイピングからスタートといった生徒もいます。しかし、得意な生徒が初心者の生徒に教えるといった教え合いが自然に生まれ、気づけば全員が問題なく使えるようになっています。
生徒たちは、画面をパッと見ただけで感覚的に機能がわかると言っていました。使用し始めて3ヶ月ほどですが、あっという間に使いこなしています。
髙山:ツール導入後の検証として、スクールタクトの感想を生徒に書いてもらいました。手書きができる点がよいし、添削してもらうために教員にならぶ手間もないなど、ほぼ全員がスクールタクトのよさを答えていました。
【授業実践 数学】「共同閲覧モード」で他の生徒から自然と学ぶことを重視
ー数学科ではスクールタクトをどのように使っていますか。
髙山:授業中、スクールタクト上で問題を解かせ、生徒の解答をクラスでシェアしながら私が丸付けをしたり解説をしたりします。教科書の問題を白紙の画面に書かせているのですが、先生によっては今まで印刷していた授業プリントをPDFにしてそこで取り組ませているケースもあります。
ー宿題でも使用していますか。
髙山:ノートに問題を解いてもらい、それを写真に撮ってスクールタクトにアップし、提出させています。スクールタクト導入前は、朝、係が全員分のノートを集めて、それを私が受がけ取ってから添削するという慌ただしい流れでした。今では、回収の手間なくすぐに添削が行え、余裕を持って授業に臨むことができています。
また、問題を解く際には、「共同閲覧モード」にして他の生徒の解法を見られるようにしています。数学はひとりで唸っていても解き方はわかりません。必要に応じて友人の解答を見て、自身の勉強の手助けにしていくことが重要だと考えているからです。大人しく中々周りに声をかけられない生徒でもこの機能を活用して安心して学習を進められています。
ースクールタクトの利用にどのようなメリットを感じていますか。
髙山:学びの途中経過を見られることが最大のメリットです。今までは机間巡視をしながら声がけをしていましたが、スクールタクトの画面を見れば、誰が順調に進んでいて、誰がつまづいているかがわかりますので、瞬時に効果的な指導が可能です。授業の進度と生徒の底上げの両立がとれており、現場ではすごく助かっています。
また、目の前に生徒がいなくても、その生徒が何を考えているのか課題が見えます。職員室に戻ってからも生徒たちの学習履歴を見て、「今度はこの問題を出そう」「ここはもう一度解説が必要かな」などと検討し、次の授業につなげていくことができます。
【授業実践 英語】生徒の学びをリアルタイムに把握し、個別最適化学習を実現
ー英語の授業でのスクールタクトのご活用方法を教えてください。
佐藤:3年生の授業では、一般常識として入社試験の過去問を毎回授業で配信しています。英語の問題をICTを通じて配信する上で必要なことは、手書き機能があること。タイピング機能しかないと、予測変換で単語が出てきてしまうため、それでは生徒の学習にはなりません。
生徒たちは、授業開始の時間になるとすぐにChromebookを開き、スクールタクトにその日に配信された英語の問題を解いています。問題用紙を配布するなどの導入の時間を削減できるので、時間を効率化でき、よりスムーズに授業に入ることができています。
ー導入の時間以外にもスクールタクトを使用していますか。
佐藤:表現活動でも活用しています。「There is 〜」の構文の学習の際に、実際に構文を使い「自分の理想の部屋を説明しましょう」という課題を出しました。絵で表現をして、「どんな家具が置かれているのか」などを英文で説明します。絵が上手な生徒は部屋のインテリアを自分で描きましたが、苦手な生徒は写真画像を貼り付けて作成しました。私からヒントは出していないので、生徒は自ら考えて活用方法を編み出していたんです。
定期テストでは、こうした授業や宿題で学んだ内容を出題します。これまでは「テスト範囲はプリントの何番から何番まで」と伝えると、「プリントなくしました」という生徒も多少いました。しかし、スクールタクトではすべての学びが蓄積されているので、画面を開けばすぐにテスト勉強ができます。生徒にとっても教師にとっても効率的ですよね。
ースクールタクトの利用にどのようなメリットを感じていますか。
佐藤:紙で提出させた時も他のICTツールを使っていた時も、生徒が提出した完成品しか見られませんでした。スクールタクトになり、リアルタイムで経過を見られるので「点数には結びついていないけれど意欲がある」や「ここで手が止まっているということは、この部分がわかっていないのかな」といったことが把握できます。
これにより、授業中の声かけも変わりました。すでに解き終わっている生徒には発展的な内容で追加課題を出すこともできますし、手が止まっている生徒には机間巡視の途中で直接ヒントを伝えることができます。つぶさな生徒把握から個別最適化学習が実現できることが最大のメリットといえるでしょう。
ー生徒と先生の信頼感も増しそうですね。
佐藤:そう思います。人前で発表して、間違うのは避けたいですよね。しかし、今までは生徒に当ててみなければ、解けているか否かがわかりませんでした。スクールタクトは生徒の試行錯誤している様子を把握できるので、生徒が間違っているポイントを先にキャッチし「こういうところは間違えやすいから気をつけて」と声を掛けることによって、生徒はもう1回見直すことができます。自信を持って表現活動ができることで、発表をよりプラスの体験にしていくことができると感じています。
授業中の佐藤千絵先生
【部活動での活用】自身のイメージを他者に共有、作品作りの効果効率化に
ー佐藤先生は部活動でもスクールタクトの活用をスタートしたのですね。その背景を教えてください。
佐藤:私は華道部の顧問です。これまでは作品の条件や花の種類などの花材のラインナップが書かれたプリントをカラーコピーで提示していました。華道は色合いが非常に重要なので、カラーで見せたいのですが学校で毎回カラーコピーするのは気が引けてしまいます。
さらに、華道には実際に花を活けたり作品を作ったりする前にデザイン画を描くという場面もあります。今まで生徒は、「こんな感じでデザインをします」というデッサンを手描きしていました。手描きなので、失敗するとやり直し。そのため、試行錯誤がしにくかったのです。
ースクールタクトを使い、どう変更したのでしょうか。
佐藤:私が発信していた情報はすべてスクールタクトに集約しました。当然ながら、カラーコピーは不要となり、花材や素材の色や形をよりリアルに伝えられるようになりました。生徒も自分のデザインを「まず描いてみよう」と、トライ&エラーをしながら組み合わせていくことができるようになりました。次の長期休暇には「共同閲覧モード」を使って大作品をみんなで描くという挑戦もしてみたいと思っています。
部活の華道部で配布する情報もスクールタクトに集約
他教科の先生から実践を学び、新たな活用へとつなげる
ー他の先生から活用のヒントを得ることはありますか。
髙山:スクールタクトの良いところは、他の先生の授業の実践記録も気軽に見ることができるところです。授業の合間のちょっとした時間に、他の先生のスクールタクトを見て学んでいます。例えば、ある先生は授業のプリントをPDFにしてスクールタクトで配信し、授業ではそれを電子黒板に表示しながら説明をしていました。電子黒板の場合には説明が終わるとデータが消えてしまいますが、スクールタクトに配信していれば、授業後も見返すことができるというメリットがありますよね。
佐藤:私も他の教科科目の先生のスクールタクト活用法を見るのが好きなんです。商業科の商品開発の授業では、スクールタクトでテンプレートを配信し、そこに生徒が自分の意見をまとめていくという活動をしていました。発表をする際に、ゼロからスライドを作っていくと、フォントやテンプレートこだわってしまい、学習の本質ではない作業に時間を取られている印象がありました。テンプレートを配信しておけば、アウトプット内容を練ることだけに集中できるので、私の授業でもこの手法を取り入れていきたいと考えています。
髙山:別の商業科の授業では、地域の街作りのレポート作成を行っていました。発表前にスクールタクトの「ワードクラウド機能」を使い、どのワードが多く使われたかを視覚的に整理し、全体の論点をまとめ生徒に提示していました。このように自分にはない視点で活用されている部分も多く見ることができ、自らの授業の深化と進化に役立たせています。
ICTを軸とした学校改革で主体的な生徒たちが増加
ーこれからスクールタクトをどう活用していきたいですか。
佐藤:古典の先生がスクールタクトに配信した長文を電子黒板に投影して、品詞分解を説明していました。英語も長文読解の時にSVOCや構造を書き込んでいくので、早速取り入れてみました。まだ始めたばかりなので、生徒の反応を見ながら、より良い活用方法を探っていきたいです。
あとはコロナ禍で話し合いの活動がしにくくなっているので、「共同閲覧モード」で画面を見て気付いたことをコメントし合いながら生徒同士で発表に向けた成果物を一緒に作っていけるような学び合いの場面を作っていきたいと思っています。
なお現在は担任をしていないのですが、今後クラス担任をする時にはLHR等で活用し、クラスの話し合いにも活用したいと考えています。
髙山:数学でもスクールタクトを用いて、グループワークを活性化させて行きたいと思っています。現在はコロナ渦で、授業中もグループワークが出来ない状態が続いています。スクールタクトがあれば、コロナ渦でも効果的な交流を行えるのではないかと模索しているところです。
授業中の髙山篤先生
ー4年間に及んだICTを基軸にした学校改革で変化はありますか。
佐藤:目標や目的意識を持って、前向きに本校を選んで入学してくる生徒が増えたと感じます。私は進路指導室にいるのですが、1年生のうちから「この進路に進みたい」「入りたい企業があるのでインターンシップに行きたい」と相談にくる生徒もいます。
髙山:本校のICT教育が地域にも評価され、2年前からは志望する生徒も増え、選ばれる学校になっていると感じています。しかし、まだまだ改革が必要であると感じています。スクールタクトを導入して3ヶ月しかたっていませんが、お陰様で以前とは違う学校になっているような感覚を抱くほど変化したと感じ、大変うれしく思っています。今年100周年を迎えましたがこれからもさまざまな挑戦を続け、生徒の学びを実現していきたいと考えています。
惺山高等学校(旧校名:山本学園高等学校)
県都山形市に1921年に開校した歴史ある私立学校。「普通科特進コース」「普通科普通コース」「商業科ビジネスコース」「商業科クリエイティブコース」「衣創科ファッションデザインコース」の3学科5コースを擁している。ICTを軸にした5年間の学校改革を続け、100周年を迎える2021年4月にスクールタクトを導入。2022年には、惺山高等学校と校名も刷新し新たな挑戦へと漕ぎ出していきます。
生徒同士での学び合いを実現!教員の役割はティーチャーからコーディネーターへ
導入前の課題 | |
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1 | 他のICTを導入したものの、リアルタイムで生徒の学びを把握できなかった |
2 | 生徒の主体的な学びを促進したい |
導入後の効果 | |
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1 | 生徒の学習進捗をスムーズに把握でき、授業での活用イメージが広がった |
2 | 「共同閲覧モード」の活用により、生徒間で学びや考えをシェアできるようになった |
学校法人市川学園 市川中学校・高等学校は、千葉県の創立85年を迎える進学校です。生徒の多くが、国公立大学や難関私立大学の進学を目指す中で、一人一台タブレットを配布。授業、ホームルーム、自宅学習でICTを導入、生徒の学習をサポートするツールとして活用している。ICT導入の経緯と授業でのスクールタクト活用方法について、笹尾弘之先生(社会・教育研究部部長)と飯高匡展先生(物理・教育研究部副部長)にお話を聞きました。
※市川学園中学校・高等学校様でご利用いただいているサービスの名称はClassiNOTEです。ClassiNOTEは、Classiユーザー用に提供しているスクールタクトの別名称です。システム上の違いはありません。
※授業風景の写真は分散登校時のものです。
段階的にICTを導入し教員の目指したい授業に合わせて活用
ーICTの導入の背景を教えてください。
笹尾:本校の生徒のほとんどが大学進学を目指しています。2020年の大学入試改革が発表された当初は、議論の中にCBT(Computer Based Testing)の活用なども含まれており、準備が必要だと考えていました。結果的にその導入は見送られましたが、これからの社会ではITを活用する力は欠かせません。遅かれ早かれ学校教育の中でのICT活用は不可欠であると考えて、2016年から現場教員主導のもと、ボトムアップで導入を図っていきました。
本校の教育を支える方針として、「第三教育」という考え方があります。家庭で受ける教育を第一教育、学校で受ける教育を第二教育、そして自分で自身を教育することを第三教育と呼びます。第二教育の充実のために、授業ではスクールタクトを、ホームルームでClassiを導入しました。さらに、第三教育ではLibry(リブリー)という自学自習ツールを活用しています。
笹尾弘之先生(社会・教育研究部部長)
ー授業での活用をスクールタクトにした決め手を教えてください。
笹尾:他のツールも試してみましたが、当時生徒が画面に書いている内容をリアルタイムに確認できるのはスクールタクトだけでした。生徒の学習進捗をスムーズに把握でき、授業での活用イメージを具体的に持つことができました。
ー導入のステップを教えてください。
笹尾:導入1年目は、特別教室3教室分にタブレットを126台用意し、スクールタクトを利用した授業実践を積み重ねていきました。なぜならば、タブレット本体の性能も含めて研究する必要があると考えたからです。各教科で一人エバンジェリスト(伝道師)を決めて、スクールタクトを活用したアクティブ・ラーニングの授業を実践していきました。国語科、英語科、社会科(地歴・公民科)が先行し、続いて数学科と理科が検討を重ねていきました。
2年目の2017年には、中学3年生にタブレットを貸与して活用をスタート。現在は紙とペンで書くことを学ぶコンセプトの中学1・2年を経て、中学3年生から高校3年生まで約1700名がタブレットを所有しています。さらに、各教室に電子黒板付きのプロジェクターを配備して、授業での活用の幅を広げていきました。
ー教科・科目によって導入のバラツキは出ましたか。
飯高:物理は、紙とペンで数式や図を書いて解いていく学習が多いです。時には、タブレットの限られたスペースの中で計算式や図を書ききれないという課題がありました。
また、理科では動画や写真を共有するのではなく、実験など実際に実物を観察する体験が大事だと考えています。五感を使って実物を見て興味関心を持ち、学びに向かう気持ちを高めていくことが重要です。とはいえ、私は今ではスクールタクトを毎時間使用しています。教科・科目の特性だけでなく、個々の教員が授業の目的に合わせてICTを活用していくことが必要だと考えています。
飯高匡展先生(物理・教育研究部副部長)
【実践事例 物理】授業で得た知識と日常を結びつける振り返りの機能として活用
ー物理の授業ではスクールタクトをどう活用していますか。
飯高:私は物理を日常生活と関連づけて学んでほしいと考えています。そのため、授業の最後の5分間を使って、スクールタクトで振り返りシートを配信し、「日常的な事柄や既有知識と本時の内容を関連づけて、考えたことを記述する」ことに取り組ませています。例えば、「スキージャンプの滞空時間が長いのは空気抵抗が関係しているのでしょうか」と、物理で学んだことをスポーツ競技と結びつけている生徒などが出てきます。
生徒のこうした問いを次の授業の導入にもつなげています。冒頭の5分間、「共同閲覧モード」で、他の生徒のコメントを読み、考えたことを記述させます。私も授業内でいくつか振り返りを取り上げて、学びを広げていきます。こうした活動により各授業がつながりますし、生徒は他者の多様な考えと自分の考えを関連づけて視野を広げていきます。
ー実際に生徒さんからはスクールタクトを使った振り返りについて、どのような感想が聞かれますか。
飯高:「わかっていたつもりでいた内容を、他者の疑問を見て改めて考えることができた」「さまざまな日常との結びつきを見て、納得する機会が複数回あり、深い学びにつながったと思う」といった意見がありました。
ーこの振り返りの手法はあらゆる授業で応用できそうですね。他に、どのような活用をしていますか。
飯高:単元の導入の時間に、物理の用語からイメージすることを書かせた上で、「ワードクラウド」の機能で整理をしています。例えば、「波」について学ぶ際に「波と聞いて連想するものをたくさん挙げよう」と促すと、「電磁波」「超音波」といった物理の用語だけでなく、コロナ禍特有の「第3波」などもありました。私が思いつかないような言葉も出てきて面白いです。スクールタクトがなければ、一人一人の考えをここまで瞬時にすくい上げることはできません。個別に指名していったとしても無難な回答に終始する可能性があります。このような導入を行うことで、生徒の関心を足がかりにした授業を展開できました。
生徒に波と聞いて連想するものを挙げてもらい、ワードクラウドで整理。生徒の生の声を可視化して共有。
少し話はそれますが、生徒が自己の内面を表現しやすい環境を作っていくことは重要だと思っています。考えていることをどんどんアウトプットし、生徒同士が授業を共同構築していく。「間違ってもいい。それが他の生徒にとっての学びにもなる」ということを知ってもらえる雰囲気を作るのにスクールタクトは有効だと考えています。
【実践事例 地歴・公民科】「共同閲覧モード」で生徒がリアルタイムで相互に学び合う
ー地理の授業ではスクールタクトをどう活用していますか。
笹尾:私が作ったパワーポイントのスライドをスクールタクトで配信し、そこに生徒が記述する問題演習をしています。これまではプリントで配布していたのですが、地理はどうしてもカラーで見せたい資料が多く、悩ましいポイントでした。スクールタクトではその問題がクリアできますし、生徒が自分の学びを蓄積していける点にも魅力を感じています。定期試験や入試前には、簡単に復習することができます。
今までプリントで配布していたものをスクールタクトで配信。試験前の復習も簡単に。
もう一つ重要なポイントは、生徒同士学びをシェアできるという点です。例えば、東京大学の論述問題を配信して、それを生徒が解く活動をしたとします。生徒の解答にどんどん私が赤字でコメントを入れていくのですが、「共同閲覧モード」にしているのでクラスメイトが何を書いているのかどんな指摘を受けているのかを全員が確認できます。その添削を見ながら自ら学び、自分の解答に生かしていく。これは、まさに本校が大事にしている「第三教育」にもつながる姿勢だと考えています。こうした取り組みは、2020年のコロナ禍の休校措置期間にも実施し、遠隔で協働学習ができる手応えを得ることもできました。
ー自身の学びにつなげるだけでなく、生徒が相互に協力しながら学びに向かう姿勢も生まれていきそうです。
笹尾:そうですね。例えば、東京大学を目指す生徒たちのクラスでは、同じ目標に向けて頑張っているので、「あの子は頑張っているから、これだけの文章を書けるんだ。自分も頑張ろう」と励まされます。互いに問題へ挑戦する姿勢が見えることで、生徒同士で学び合い、モチベーションを高めていけるメリットは大きいと感じています。さらに、前年度同じ授業を受けた先輩が作成した論述が蓄積されているので、それを提示することも生徒同士の学びを加速させるポイントになると思います。
ー公民分野でも活用は進んでいますか。
笹尾:私は法教育に力を入れています。中学3年生では、一つの事案に関して、有罪か無罪かを論理的に説明するという学習をします。「なぜ有罪と書いたのか」の理由を書くだけでなく、生徒間で有罪・無罪相互の主張を見合い、「この無罪の論理に対してどう説得したらよいかを考える」ところにまで学習を広げています。
他にも、社説を読んで自分の意見をスクールタクトに記述するといった活動も行なっています。スクールタクト導入以前は、私がチェックして、シェアしたい意見をプリントにピックアップし、生徒の人数分印刷して配るという工程がありました。その手間がなくなったことは、私にとっては大きな省力化でした。
生徒の学びの履歴のシェアや相互評価に活用し、生徒をコーディネートする存在へ
ー今後、スクールタクトをどう使っていきたいですか。
飯高:大きく2点あります。1点目は、振り返りの記述の蓄積を生かすことです。例えば、私自身が生徒の興味関心や日常生活での経験、つまづくポイントなどを捉えて授業を組み立てるのに役立てることができます。過年度生の振り返りを授業で紹介することもできますね。データの有効活用の視点です。
2点目は、生徒の学びをシェアしていくことに使いたいと思っています。休校期間中、動画を配信していましたが、観る生徒もいれば観ない生徒もいる状態でした。学校から「観てね」と伝えることも重要ですが、生徒に動画を見た感想をスクールタクトに記述させれば学習の履歴を残すことにもなるし、生徒間での学びのシェアにもなります。
笹尾:私は生徒同士の相互評価に用いたいと考えています。最終的には教員が評価しますが、仲間のスピーチを聞いてそれを正統に評価するということをスクールタクト上で行なっていきたい。そのためには、生徒が評価の意味や設計を理解しなければいけませし、仲の良し悪しといったバイアスがかからないようにしなければいけません。導入には何段階かステップが必要ですが、スクールタクトの機能があれば実現しやすいと考えています。
ー学校全体として、スクールタクトを導入したことによる変化はありますか。
笹尾:スクールタクトだけの要因ではありませんが、教員の役割がティーチングからコーチングやファシリテーションへと移行していることはひしひしと感じます。生徒のアウトプットを教員がコーディネートして意見を拾い上げて議論に落とし込んでいく。スクールタクトはそれを補助する有効なツールになりうると考えています。各教員が目指す授業を実現する道具として、うまく活用していきたいと考えています。
学校法人市川学園 市川中学校・高等学校
1936年に開校した千葉県にある進学校。教育の基本方針として、「真の学力」「教養力」「科学力」「国際力」「人間力」の5つの力の修得を目標としています。SSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定され、リベラルアーツ教育に力を注ぎ、教科横断的な探究的な学びも重視します。
ICTが苦手でも大丈夫 生徒と向き合う時間を増やす活用術
導入前の課題 | |
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1 | 先生のICTスキルにばらつきがあり、導入前はハードルを感じる先生も |
2 | 授業中の生徒の課題取り組み状況が把握しにくい |
導入後の効果 | |
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1 | ICTが苦手な先生も直感的に操作でき、スムーズに導入 生徒に向き合う時間が増加 |
2 | 生徒がつまづいている点をリアルタイムに把握できるようになり、意見交換も活発に |
2020年にスクールタクトを導入した神奈川県横須賀市の三浦学苑高校。今回は川北徹先生(理科主任)と伊藤知香子先生(英語科)から、日々の授業でのスクールタクト活用方法を中心にお話を伺いました。
実証実験をきっかけにiPadを導入、先生によって反応は様々
―元々どのようなきっかけでスクールタクト導入に至ったのでしょうか?
川北:本校に端末が導入されることになった一番最初のきっかけは、2019年度から始まった実証実験の協力校となったことでした。授業中の生徒の脳活動を計測し、タブレットなどの端末を利用した学習による学習への集中度や理解度を明らかにする実験のため、本校にiPad200台が貸与されることになりました。その後、2020年度入学の新1年生の代からは一人一台iPadを導入することになりました。
伊藤知香子先生(英語科)、川北徹先生(理科主任)
―スクールタクトの第一印象はいかがでしたか?
川北:私自身は、初めてスクールタクトのデモを見たとき直感的に「面白い授業ができそうだ」と思ったのを覚えています。クイズ番組のパネルのように、生徒の解答が先生側の端末で一覧表示でき、生徒が何を書いているのかをリアルタイムに確認できる。さらに、生徒同士で互いの解答に「いいね」や「コメント」をつけられる機能も印象に残りました。
伊藤:私は元々ICT全般が苦手で、学校としてタブレット導入をする方針が決まったときは「自分には難しいな・・・」と思っていました。学内向けにスクールタクトの紹介があった際も「使えたら便利そう」とは思ったのですが、正直なところ「自分はそんなに使わないだろう」と思っていました。
ICTが苦手な先生も直感的に操作可能
―現在はどれくらいスクールタクトを使っていただいているのでしょうか?
川北:現在は私が担当しているすべての授業でスクールタクトを使用しています。生徒が問題を解く過程を手元の端末からリアルタイムに確認できるので、どこでつまづいているかがすぐにわかるようになりました。生徒同士の議論を深めるのにも役立っています。
伊藤:使い始める前は「自分には難しい」と思っていた私も、現在ではスクールタクトなしでは授業がやりづらいと感じるほどに活用しています。直感的に操作できる点が一番大きいと思います。印刷や配布の手間が減ったことに加え、生徒の間違いの傾向がひと目でわかるので、授業時間を有効に使えるようになりました。
―生徒さんはスクールタクトに適応できたのでしょうか?
伊藤:やはり生徒が適応できるかどうかが心配だったので、はじめは従来通りのプリント配布も選べる状態でスクールタクトを取り入れていきました。しかし、生徒たちがスムーズにスクールタクトを操作できているの見て、早い段階で「紙を配らなくてもやっていけそうだ」と感じました。現在では、タブレットを使いこなせる子とそうでない子の差もほとんどありません。
投票機能で診断的評価を実施 クラス全員で意見共有
―実際の授業でどのようにスクールタクトを活用いただいているかを教えてください。
川北:新しい単元に入る際は、スクールタクトの投票機能を使って診断的評価を行います。〇✕や4択の形式で問いを投げかけ、投票結果をグラフで示して共有しています。手を挙げてもらうよりも生徒が参加しやすく、楽しめるようです。
スクールタクトの4択投票機能を利用した診断的評価
物理の授業は、スクールタクトに私が書き込みをして解説しながら進めていきます。これまで板書していたものがスクールタクト上に置き換わったイメージですが、図や問の文章などはあらかじめスクールタクト上に記載しておけるので便利です。
手書き部分は授業の川北先生の書き込み
生物の授業では、「オリジナルの細胞小器官を考えよう」という課題で、架空の器官の機能や名称を生徒に考えてもらいました。スクールタクトの共同閲覧モードを使ってお互いのキャンバスを見合ってもらい、自分が良いと思った生徒の回答に「いいね」をつけるという取り組みも行いました。
スクールタクトを使った授業を始めてから、意見交換の時間など、生徒同士の交流が活発になったように感じています。スクールタクトで回答を共有すると、近くの席の人だけでなく、クラス全員の考えを知ることができ、議論が深まる場面が多くなっていますね。
オリジナル細胞を考える課題では共同閲覧モードで互いの作品を見合い「いいね」をつける
また、授業の最後には振り返りを行い、その日の授業でわからなかったことなどをスクールタクトに記載してもらっています。
机間巡視の時間が増加 端末と合わせて生徒の様子を把握
伊藤:英語の授業ではpdf化したプリントをスクールタクトで配布して進めていきます。全員分の回答を確認できることで、私からの説明が必要なところとそうでない部分が明確化されたことで、授業時間を有効に使えるようになりました。クラスによって間違いの傾向が違うこともあり、重点的に説明が必要な問題をその場で判断できるのはありがたいです。
さらに、スクールタクトを導入してからは、板書のために生徒に背を向けている時間がほとんどなくなりました。生徒の方を向きながら、あるいは机間巡視しながら授業をする時間が増え、生徒の様子がよくわかります。スクールタクトの「わかった」「わからない」スタンプも役立っています。「わからない」を押してくる子がいるとつまづきに気づけますし、反対に「わかった」を連打されるとうれしくなります。
発表者の当て方も大きく変わりました。私の手元で生徒の回答を確認した上で、正解している生徒、良い間違いやよくある間違いをしている生徒を選んで当てることができます。生徒側もそれを分かっているので、自信を持って答えてくれるようになりました。
英語の授業風景
英語が苦手な生徒も楽しんで取り組めるワークを実施
伊藤:また、生徒に関心を持って取り組んでもらうために色んなやり方を試しています。例えば、英文の内容を絵で表現するという取り組みです。文字で書くよりも個性が出るので、共有すると教室全体が盛り上がります。普段は英語に苦手意識を持っている生徒も楽しんでくれました。
英文をイラストで表現する課題
英文の要約を書かせ、共同閲覧モードで生徒同士が3つずついいねを付けあって、「ベストサマリー」を決めるという取り組みも実施しました。いいねが多かった回答を取り上げて、プロジェクターに映しながら解説をしていきます。このような取り組みは、教室が盛り上がるだけでなく、生徒の自己肯定感やモチベーションの向上にもつながっていると感じます。
顔を合わせられない夏休みも生徒同士が学び合う
―夏休み中の取り組みについて教えてください。
川北:夏休み中もスクールタクトを活用しました。決まった回数のオンライン英会話クラスを受講するという課題で、毎回の振り返りをスクールタクトに記録してもらいました。途中から共同閲覧モードに変更したのですが、それが生徒同士の刺激になったようです。私から特に声かけなどは行わなかったのですが、お互いのキャンバスを見られるように設定した後の方が、全体の記入量が増えました。
夏休みのオンライン英会話受講の記録
また、進路指導の場面でもスクールタクトを活用しました。2年生を対象に、自分の志望校と試験内容を調べ書いてもらいます。紙で実施していたときよりも管理が楽になりました。
志望校に関する情報をまとめて記入
―最後に、今後どのように活用されていきたいかについて教えてください。
川北:生徒たちには、既存のものに対する思い込み、決めつけのようなものに囚われないでほしいと願っています。今回、スクールタクトを授業に取り入れた経験は、まさに「学校の授業とはこういうもの」というスタンダードが変わった経験になりました。今後は教員間でのシェアなどにも力を入れていきたいです。
伊藤:今後も自己肯定感やモチベーションの向上を意識した活用ができるといいなと思います。ICTが苦手な私ですが、なんとか使いこなそうと頑張っている姿を生徒が認めてくれたことがすごく嬉しかったんです。これからも、生徒と一緒に新しいことに挑戦していきたいと思っています。
三浦学苑高等学校
2021年に創立91年を迎える三浦学苑高等学校。2020年からはIB(国際バカロレア)コースを新設し、「個性と自主性を持った国際人の育成」を目指して、ワールドスクールとしてのあゆみを始めました。部活動がさかんな学校としても有名です。
板書時間を6割以上削減!「頭を使う授業」の実現へ
導入前の課題 | |
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1 | 授業中の板書時間や先生が話す時間を減らし、「生徒が主体的に活動する時間」を増やしたかった |
2 | 課題を「白紙提出」するなど、学習から外れてしまう生徒の存在 |
導入後の効果 | |
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1 | 板書時間を6割削減 Google Classroom との併用による反転授業の実践も |
2 | 生徒同士の「つながり」が生まれ、協働的・主体的に課題に取り組むようになった |
奈良県立国際高等学校は、2020年4月に開校しました。生徒1人1台のiPadを配布するなど、先進環境も整っています。さらに、授業資料の作成サポート、ファイル共有や相互コミュニケーションまでワンストップで行える授業支援クラウド「スクールタクト」を導入。スクールタクトの活用した実際の授業の流れや、 Google Classroom との使い分け、生徒さんの声など、水本祐之先生(理科)・今中和宏先生(現代社会)にお話を伺いました。
授業中の板書時間を6割以上削減、「頭を使う授業」へ
―まず、スクールタクト導入時に抱いた期待をお聞かせください。
水本:「今までやりたかったことが実現できる!」と思いました。具体的には「双方向性のある授業」「資料の配信・回収のデジタル化」です。生徒それぞれの学びの成果を、生徒と教員、あるいは生徒同士で、しかもリアルタイムにシェアできる授業をやりたいとずっと思っていたんです。
奈良県立国際高等学校 水本祐之教諭
今中:私が担当する現代社会は、板書+解説が基本とされてきた教科です。板書量がどうしても多くなってしまい、授業中の生徒たちは黒板をノートに書き写す作業で精いっぱいでした。もっと頭を使う時間を増やす良い方法はないかと模索する中でスクールタクトと出会い「使い方次第でいろんな可能性がありそうだ」と感じて授業で活用しはじめました。
奈良県立国際高等学校 今中和宏教諭
―スクールタクトを導入され、どれくらい板書の時間が減ったのでしょうか?
今中:授業で使用するスライドをスクールタクトで生徒に配布し、そこに直接書き込んでもらう方式に変えたところ、板書時間を6割以上削減することができました。これにより、生徒同士の意見の共有やグループワーク、プレゼンテーションなどを実施する時間を捻出できました。どのような使い方をすると最も効果が高いのかという検証はもちろん必要ですが、板書やプリント以外の選択肢が生まれてきたのはとてもありがたいことだと思っています。
生徒が自ら書き込んだ、ノートを兼ねたスライド
生徒が作成した資料
教室内を自由に移動しながら学び、その成果を学年全体でシェア
―水本先生の理科の授業の流れについて教えてください。
水本:私が担当する理科の授業では、最初の10~15分を講義形式で進めたのち、スクールタクトで課題を配布し、生徒たちに解答を作成してもらいます。授業の最後に解答を一覧で共有し、私から簡単な解説をするという構成にしました。解答を作成するにあたり、生徒には以下の3点を伝えています。
①教室内を自由に移動して良い
②グループで取り組んでも一人で取り組んでも良い
③誰が見ても理解できる解答を作る
座り込んでやろうが、歩き回ろうが、友達と一緒にやろうが、一人で集中してやろうが、すべて自由なのが特徴です。解答はスクールタクト上でのシェアを前提に、わかりやすさを重視します。手書きのノートで取り組みたい生徒は、ノートの写真をスクールタクトにアップして提出します。
この方法を取ると、生徒同士で対話しながら、協働的かつ主体的に、さらに楽しみながら課題に取り組んでくれます。みんなでワイワイやるのが得意でない生徒も、他の生徒がスクールタクトで共有した資料を参考にしながら進めることができます。作業自体は一人で黙々とやっているように見えても、実は協働的な学びが実現できているんです。
また、このシェアはクラスだけでなく、学年全体で行っています。そもそも解答をシェアする目的は、自分にとって分かりやすい解説を見つけることです。リソースは、多ければ多いほどいいですからね。
授業中の生徒たち
解答は学年全体でシェアされる
―まさに、新学習指導要領で示された三要素「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」を網羅していることになりますね。
水本:そうかもしれません。以前は、単独作業が好きな生徒には、教員が横についてアドバイスするしかありませんでした。もちろん今もそれは適宜行いますが、より全体に目を配りつつ、かつ学びの個別最適化も実現できているように思います。
Google Classroom とスクールタクト双方の強みを活かす

― Google Classroom とスクールタクトはどう使い分けをされていますか?
水本:私の場合は、授業中にスクールタクトを使い、授業前後の活動や授業準備では Google Classroom などを使っています。スクールタクトは課題に取り組む生徒全員の様子をリアルタイムで一覧把握でき、生徒同士でシェアできる点が優れています。生徒が学校に来られない場合でも、手元に端末があれば授業と同じ情報を提供でき、自宅から課題に取り組むことが可能です。スライドに授業音声を合わせたものを Google Classroom で共有し、スクールタクトで課題に取り組む方法です。課題は教室の生徒と同様にシェアされていますから、学校を休んだ生徒も、協働に参加できますね。
水本:以前は生徒が活動する時間は授業全体の25%程度、残りは私が話す時間という構成で授業を設計していました。Google Classroom やスクールタクトを用いる授業に切り替えたことで、生徒が活動する時間を70%程度まで増やすことができました。45分の授業の中で私が話す時間は最大で15分程度です。また、現在の2年生の授業では、Google Classroom での動画配信を用いた反転授業を実施しています。生徒はあらかじめ家庭で授業内容の動画を視聴してくるか、授業中の生徒同士の学び合いの過程で学習動画を視聴しています。そのため、授業時間は100%、生徒の主体的な学びにあてることができます。
作業時間が短縮され、授業研究に時間が使えるように
―スクールタクトの活用で、先生方の業務にどのような変化が生まれましたか?
今中:ペーパーレス化が進んで作業時間が短縮され、授業研究にしっかり時間を投じられるようになりました。以前は授業で示すスライドとは別に、プリント用にレイアウトしなおしたものを印刷することがよくありました。スライドをそのまま印刷する場合、スライド数が多いと印刷量が増えてしまいますし、かといって縮小すると小さすぎて文字や画像がよく見えなくなってしまうからです。現在は授業用スライドをそのままスクールタクトで配布しています。今後は反転授業なども取り入れ、より生徒が能動的に動ける時間を増やしたいと思います。
スクールタクトで生徒の「つながり」が広がる
他者との「つながり方」を学ぶ場としての教室
―生徒さんの変容はいかがでしょう?
水本:やはりシェアによる「つながり」が生まれたことに尽きるでしょう。まず、孤立して学習を進められない生徒が格段に減少しました。以前はクラスに1~2名だったのが、学年で1~2名ほどまで減った印象です。
それと、授業に取り組む姿勢も良くなりました。教員だけでなく友達にも「見られている」ことが、ほど良い緊張感と承認欲求を満たすのだと思います。学習内容の理解が早い生徒が、率先して友達に教える姿も見られますね。まさに協働的に「学び合う」環境です。ルーブリックの分析からも、こうした「先生の話は短く、アクティブな時間は多い」授業のほうが、理解度が高いことも分かりました。
生徒の声を紹介します。
生徒A「自分は、みんなで協力して解決することが苦手だった。だけど回数を重ねるごとに苦手な人とでも話せて、課題の解決に貢献できるようになってきた。」
生徒B「本当にわからないことはわからないと言わないと、誰も助けてくれないし、後悔するだけなので、しっかり自分の言葉で言う事が大事だと思います。それと、楽しみながら勉強するのが結果的にもいいと思います。」
生徒C「自分で考えて行動したり課題を解決していくことも大切だけど、人と話し合って課題を解決していくことも大切なんだという事が分かる授業です。」
ほとんどの生徒はこのようなポジティブな感想を書いてくれました。勉強をするうえでの仲間の大切さ、自分から行動することの大切さ、他の人と話し合い課題を解決することの大切さを学び取ってくれたようです。一方、少数ではありますが、以下のような意見もありました。
生徒D「先生が説明せずに、課題の中で自分で理解しようというのがあったけれど、そうではなく私はちゃんと授業内で一つ一つ説明してもらいたいなと思った。」
生徒E「教科書をもう少し使った授業を受けたいと思いました。」
教科書の内容を先生がもっと説明してほしいというものです。1年間を通して、主体的に学ぶことや他の人と話して課題を解決することは、社会に出てから必ず必要になる能力であること、そして、みんなにはその能力を身につけ、これからの人生の力にしてほしい、ということを繰り返し伝えてきました。まだまだ、私の思いが伝わっていなかったと反省しています。また、私が話す内容をもっと的確にするように教材研究を進めて、授業の改善も行う必要があると感じています。
―では最後に先生方、そして生徒さんにとって「スクールタクト」とは何でしょう?
今中:「新しい選択肢の一つ」だと思っています。板書・プリント・ノート以外の選択肢出てきたことに非常にわくわくしています。この新たな選択肢の使い方次第で、いろんな可能性が広がってくると思います。今後も「得た知識をいかに展開できるか」という視点を持って授業をしていきたいです。例えば「歴史のような(実社会で直接的な有用性がない)科目を学んで何になるの?」というシニカルな意見はよくありますが、それをどう活かすかを自分で考えてみるという、リベラルアーツの発想です。
水本:私にとっては「つながりを増やすツール」でしょうか。それは教員から生徒というベクトルだけでなく、生徒から教員へ、あるいは生徒同士も含みます。そもそも学校という“器”の価値って、教員・生徒が「そこに集っていること」だと思うんです。知識や情報の伝達だけならオンラインで十分可能なこの時代に、それでも学校に通い、集う意義。それが「つながり」であり「つながり方」を学ぶことではないでしょうか。スクールタクトは、それを広げてくれるんです。
関連URL
奈良県立国際高等学校
http://www.e-net.nara.jp/hs/kokusai/
Google スライド 、および Google スプレッドシートは、Google LLC の商標です。
奈良県立国際高等学校
2020年4月開校。「世界とつながる高校」をキャッチフレーズに、これからのグローバル社会で活躍できる真の国際人の育成を目指し、生徒の主体的な学習に重点を置いています。
脱ペーパー・脱板書で授業進度アップ!生徒の積極性も向上
導入前の課題 | |
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1 | 机間巡視のみでクラス全員の取り組み状況を把握するのが困難 |
2 | 板書をノートを書き写すことばかりに必死になっている生徒が多かった |
導入後の効果 | |
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1 | 生徒の理解度をリアルタイムに把握しながらの授業進行が可能になった |
2 | 授業中の板書量を削減 生徒はより先生の説明に集中できるようになり、授業進度もアップ |
白金高輪というアクセス抜群の立地に地上6階、地下3階の校舎を構える東海大学付属高輪台高等学校・中等部。高校・大学7年間の一貫教育を実践しており、ICT教育にも力を入れています。今回はICT導入を牽引する立場である高橋光太先生(教頭補佐・教務主任)と、宮田和舞先生(担当科目:化学)、數馬大介先生(担当科目:国語)にお話を伺いました。
※東海大学付属高輪台高等学校・中等部様でご利用いただいているサービスの名称はClassiNOTEです。ClassiNOTEは、Classiユーザー用に提供しているスクールタクトの別名称です。システム上の違いはありません。
机間巡視の効率化とペーパーレス化を同時に実現
―まずはスクールタクト導入のきっかけを教えてください。
高橋:本校では、ICTを通じて解決したい課題が2つありました。
1つ目は机間巡視の効率化です。クラスの人数によっては生徒一人ひとりの取り組み状況を机間巡視で把握することに限界を感じていました。そのため、ICT導入に際してはクラス全員の様子をリアルタイムで簡単に把握できることを期待していました。
2つ目はペーパーレス化です。紙をあまり使わないようにという学校長の方針もあり、プリントやノートの代わりにタブレット上で生徒や先生が書き込めるものを探していました。
さらに、生徒が板書をノートに写すことばかりに必死になっている状況を変えたいとも思っていました。板書が減らせれば生徒はより授業に集中でき、授業効率が上がるのではないかと考えていたからです。
高橋光太教頭補佐・教務主任
―スクールタクトを導入してよかったと思うことはなんですか?
高橋:教員の端末で生徒の回答の様子がリアルタイムに把握できるので、誰がどこでつまずいているのかがすぐに分かるのが良いと思います。
宮田:授業中、自分から手を上げることはないけれど、興味深い意見を持っている生徒を見つけやすくなりました。生徒の回答をクラス全体で共有するのも簡単です。
プリントの印刷や保管の手間がかなり減ったのもよかったです。生徒がプリントをなくす心配もありません。課題の提出・未提出もすぐ分かるので、集計作業の負担も減りました。
宮田和舞教諭、數馬大介教諭
脱板書で授業のスピードアップ、生徒の積極性も向上
―授業では具体的にどのように活用されていますか?
宮田:スクールタクト導入前の授業は、ワークシートを印刷して生徒に配布してから授業を進める形でしたが、今はスクールタクトで事前にワークシートを配布しています。自分の考えをスクールタクトに書かせることも多いです。例えば浸透圧の授業の導入で「ナメクジに塩をかけるとどうなる?」という問いかけを行い、生徒にはスクールタクトに自分の考えを書いてもらいます。その場で生徒たちの理解度を把握した上で授業を進行できるのがいいですね。
スクールタクトで授業導入時の問いかけを実施、先生の手元で生徒全員の理解度がすぐに分かる
數馬:小論文の授業では参考資料やワークシートをスクールタクトで配信しました。スクールタクト上に文章を書かせることもあります。授業中に生徒たちが板書を写す作業がなくなったことで、授業の展開が速くなりました。これにより、今までは時間が足りずになかなかできなかったペアワークなどができるようになりました。私の場合、手書きよりタイピングの方が圧倒的に速いので、生徒の回答にコメントを書くときも便利です。
自分の考えがびっしりと書かれたキャンバス 青字は數馬先生のコメント
―スクールタクト導入後、生徒にはどのような変化がありましたか?
高橋:お陰様で生徒数が例年よりも増えているにもかかわらず、タブレット導入済みの1・2年生は全体的に落ち着いて授業に臨んでいる印象です。授業で使う資料は事前にスクールタクトで配布しているので生徒は教員の説明に集中できますし、板書の量が減ったことで、ノートに書き写すスピードが遅いために授業についていけなくなるケースが少なくなりました。
宮田:自分の意見を書く習慣がついてきたことで、課題に対してこれまで以上に積極的に取り組む姿勢が見られるようになりました。
―試験対策ではどのように活用されていますか?
宮田:試験が近づいてくると、スクールタクトを見ながら問題集を開いたりしている生徒も見受けられます。従来のワークシートやノートと同じ位置づけで使っているようです。
「タブレット世代」だから、みんなでやってみよう
―どのような段階を踏んでスクールタクトを導入されましたか?
宮田:まずはスクールタクトで感想や意見を書いてもらうことから始め、前期の中間テストが終わったあたりから、日常的にスクールタクトを使っていくスタイルになりました。当時は、生徒たちがどんな反応をするだろうかと不安だったのを覚えています。
―不安がありつつも、スクールタクトメインの授業に切り替えることができた理由は何ですか?
宮田:今までのやり方をあまり変えないでやっていこうと意識していました。例えば、これまでのワークシートを使うという個人的な方針もその一つです。あとは、生徒たちがスクールタクトに対して難しいと感じないように気をつけました。まずは穴埋めしていくだけ、意見を述べるだけというように。
數馬:時代の流れというか、先生も変化していくから、みんなも変化していこうというスタンスでした。導入当初は「紙がいい」という生徒もいましたが、「君たちはタブレット世代だから!」と根気よく繰り返してきました。今はずいぶん慣れてきたように思います。
―先生の授業準備に変化はありましたか?
宮田:スクールタクトを使って初めて実施する授業の準備は例年より時間がかかります。ただ、課題の使い回しができ、画像の差し替え等の修正にかかる手間も少ないので、一度準備してしまえばその後はかなり楽になりそうです。
―スクールタクト導入に際して、学校からは何か方針が示されましたか?
數馬:スクールタクトの使用を強制されるということはなく、「使えるときに使ってもられえば」という方針だったと思います。若い先生は特に活用に積極的で、席が近い先生や同じ教科の先生同士で「どういう風に使ってるの?」と聞き合ったり、ワークシートを共有したりしています。普段から先生同士の仲が良いことも影響しているかもしれませんね。
―最後に、今後スクールタクトを使って実現したいことを教えてください。
高橋:私が作ったプリントを卒業後も持っていてくれる生徒がいるんですが、紙は劣化してしまうし、かさばります。スクールタクトならPDF化して残しておけるのがいいと思います。生徒たちが将来必要になったタイミングで、高校時代の取り組みを見返すこともできますよね。今後は、完全にタブレット1つで授業が完結できるようになるといいなと考えています。
関連URL
東海大学付属高輪台高等学校・中等部
https://www.takanawadai.tokai.ed.jp/
東海大学付属高輪台高等学校・中等部
東海大学の建学の精神の理念に基づいた教育方針で、高校・大学7年間の一貫教育を実践する東海大学付属高輪台高等学校・中等部。人生の基盤となる正しいものの見方と考え方を養い、文系・理系をバランスよく学習する文理融合教育を展開しています。
東海大学付属高輪台高等学校・中等部
ボタンひとつで相互に学び合う環境が作れ、生徒主体の授業を実現
導入前の課題 | |
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1 | 生徒数が多く、授業で使用するプリントを印刷するだけで大変 |
2 | 生徒同士の学び合いが必要だが、お互いの学びを共有する方法に課題を感じていた |
導入後の効果 | |
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1 | 課題を一括配布できるようになり、授業準備時間を削減できた |
2 | 生徒の様子をリアルタイムに把握した上で、生徒同士の学び合いを促す授業展開ができるようになった |
大阪府豊中市にある私立高校 箕面自由学園高等学校の新庄秀臣先生(情報部副部長・担当科目:英語)とマキシム・ブラッド先生(担当科目:英語)に、2019年度より導入いただいたスクールタクトの利活用状況について伺いました。
※箕面自由学園高等学校でご利用いただいているサービスの名称はClassiNOTEです。ClassiNOTEは、Classiユーザー用に提供しているスクールタクトの別名称です。システム上の違いはありません。
課題の一括配布でペーパーレスを実現、授業準備も楽に
―導入以前はどのような課題感をお持ちでしたか。
マキシム:本校は生徒数が多く、私が担当している英会話クラスは15クラスあります。英会話にはテキストがないためプリントを作っており、以前はそれを印刷するだけでも大変でした。
それが、スクールタクトで課題を作成し一括配布できるようになったので非常に楽です。忙しい時は授業5分前まで準備していても、教室に入ってピッと送れるんです。授業中に参考資料を配信することもあります。
マキシム・ブラッド教諭
生徒の様子をリアルタイムに把握し、授業を展開できる
―授業準備の時間が削減できたのですね。新庄先生は導入前どんな課題感を持っていましたか。
新庄:以前から生徒同士の学び合いが必要だと感じていましたが、学びをどのように「共有」するかが課題でした。
例えば、ある問題に対する生徒の回答を、板書や発表などで共有するとします。その回答が不正解だった場合、間違いやすいポイントを解説することができますよね。ところが、発表した生徒があっさり正解してしまうとそのチャンスがなくなってしまいます。教員が予想もしない回答も大きな学びになる可能性があります。導入前の学習環境ではその点を偶然に頼るしかなく、生徒たちの学びの可能性を狭めてしまっていると感じていました。
新庄秀臣教諭
―導入後はその点はどう変化しましたか。
新庄:生徒の回答状況をリアルタイムで確認できる回答一覧機能を活用しています。教員が発問する際には「こんな間違いがあるから気をつけてほしい」という意図があるものです。前もって生徒たちの回答一覧からそのようなエラーを見つけ、解説の際にピックアップすることができるようになりました。
※こちらの実践事例で、「あるあるエラーの共有」として具体的な授業での活用例をご紹介いただいています。
先生が解説したい「あるあるエラー」をピックアップ
一斉授業でも簡単にクラス全員の考えを共有でき、相互に学び合える環境に
―初めてスクールタクトを知った時から今のような活用イメージをされていたのでしょうか。
新庄:初めてスクールタクトを知った時に、クラス全員の回答を瞬時に一覧で把握できるのを見て、授業での活用シーンが次々に思い浮かびました。「こんな時代が来たのか」と震えました。今ではスクールタクトは私にとってなくてはならないものになり、ほぼ全ての授業で活用しています。
スクールタクトを活用した授業の様子
マキシム:私が最初に感じたのは、ボタンひとつで生徒の回答をピックアップし、その場でフィードバックすることができるので、生徒は自分の回答が紹介されるのが楽しみになるのではないかということです。また共同閲覧モードにしてお互いの取り組み状況を見えるようにすることで、各自が紙で課題に取り組んでいた時と比べ「一人じゃない」という感覚を持てるのではないかと考えました。英会話はコミュニケーションなので、その点でも絶対使いたいと思ったことを覚えています。
生徒の回答画面を一覧で表示
取り組み状況がリアルタイムで更新される
紹介したい生徒の回答をピックアップして表示
―毎回の授業で活用いただくようになった理由は何でしょうか。
マキシム:一番は紙を使わないで済むということです。地球にやさしいですからね。
もちろんそれだけではなく、300人分の生徒のノートを持って帰らなくてもiPad一台あればどこでも採点ができる点も大きいです。生徒の状況がリアルタイムで反映されるので、困っていそうな生徒には直接アドバイスもできます。それができるのはスクールタクトだけです。
―その他、導入してよかった点を教えてください。
新庄:紙との比較でいうと、紙の課題は提出すると生徒の手元に残すことはできませんが、スクールタクトだと提出後もいつでも参照できるところが良いと感じます。
また全く別の観点ですが、スクールタクトの営業担当者から色々な情報を共有してもらえる距離の近さや、私たち教員の要望を聞いて機能改善につなげてもらえる点もありがたいです。
マキシム:スクールタクトはブラウザで動くため、ブラウザの設定を英語にするとスクールタクトも英語表記になります。私たち外国人教員にとって非常に助かるポイントです。
ブラウザを英語に設定するとスクールタクトも英語で表示される
先生主体ではなく、生徒主体となる授業展開を実現
―では、実際に授業でどのように使っているか教えてください。
新庄:手を替え品を替えさまざまな使い方を試していますが、ある単元についてのまとめノートをつくる課題を例にお話しします。
考査に向けて、例えば助動詞(can, will, must, may, shouldなど)を担当分けし各自まとめノートを作成します。共同閲覧モードでお互いのノートを見て、「いいねボタン」で良いと思うノートに投票してもらい、評価が高いノートをKeynoteに集め、クラスの「最強の助動詞ノート」としてスクールタクトで共有しています。学習した大切なポイントを生徒たち同士で共有することができれば、教員が伝えるよりもよほど効果的ではないかと考えています。
※こちらの実践事例で詳しくご覧いただけます。
「最強のノート」
―生徒さん同士で「最強のノート」を作るんですね。スクールタクト導入前後で先生の授業スタイルに変化はありましたか。
新庄:私が話す時間をできる限り少なくし、生徒たちの活動が主となる授業を展開できるようになりました。
板書の時間を削減するためにKeynoteで作った資料をスクールタクトで配布、講義部分ではそれを電子黒板に映しながら説明し、生徒はスクールタクトで各自のキャンバスに書き込むというやり方で、私が話す時間をなるべく短縮しています。先ほどの例もそうですが、高校で初めて触れる内容以外は、生徒たちが主体となって学習する形を採っています。
お互いの画面を見せ合いながら話し合う様子
マキシム:私の場合は、生徒の書き込みがリアルタイムに反映され、生徒の状況を確認するためにかかっていた時間が削減できるようになりました。それにより、45分の授業時間の中でやりたかったことをより多く取り入れられるようになりました。
宿題に責任を持ち、授業にも積極的に参加するように
―生徒さんに変化はありましたか。
マキシム:生徒たちが取り組んだ宿題を、授業では共同閲覧モードで全員が見られるようにしています。宿題をやっていない生徒がいるとキャンバスが白紙なので一目でわかります。高校生なので特にそれを咎めることはしませんが、それでも生徒たちは自ら「宿題をする」ことに責任を持つようになりました。
それだけではありません。自分が取り組んだ課題をクラスで発表するのは生徒にとって気持ちの良いことだと思います。手を挙げるなどの授業への参加度合いが評価につながることを伝えていることもあり、授業にも積極的になったと感じます。
授業にも積極的になったという生徒たち
―今後、スクールタクトを使ってやってみたいことはありますか。
新庄:コロナ禍を経て、いつでもどこでも学校のようなクオリティで学ぶことができる環境を作りたいと考えるようになりました。生徒や先生の繋がりがあり、学びの場があるのが学校の良さです。スクールタクトやビデオ会議システムがあれば、学校で学ぶのと近いことがどこでも実現できると考えています。スクールタクトはその可能性を示してくれるサービスです。
※記事内でご紹介した以外の新庄先生の実践事例はこちらでご覧いただけます。
英語・時制の授業をしよう
カンニングペーパーをつくる
箕面自由学園高等学校
緑豊かな敷地で幼稚園から高校までの児童生徒が学び、高校には1800人の生徒が在籍しています。「豊かな自然環境を基盤に、体験と実践をとおして、伸び伸びと個性を発揮できる、教養高い社会人を育成する」という建学の精神のもと、「極めて上質な普通の学校」を目指しています。
箕面自由学園高等学校
考査の振り返りに活用。生徒自身が解説し学び合う姿勢を醸成
さいたま市立大宮北高等学校は、普通科・理数科を併設し、1学年8クラスから成る高等学校です。埼玉県の市立高校としては初めてSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定され、高度で幅広い教育を実践しています。生徒全員がタブレットを所有し、2019年度からスクールタクトを導入いただいています。
GIGAスクール構想でICTを導入する機運が全国的に高まる中、ICT導入成功の鍵を紐解くべく、実際にスクールタクトを授業に活用されている瀧澤千歳教諭(生物)、野間瑞乃教諭(英語)にお話を伺いました。
※さいたま市立大宮北高等学校でご利用いただいているサービスの名称はClassiNOTEです。ClassiNOTEは、Classiユーザー用に提供しているスクールタクトの別名称です。システム上の違いはありません。
瀧澤千歳教諭、野間瑞乃教諭
「先進的な環境をいかさなければ」という試行錯誤
―貴校のICT環境の特長をお聞かせください。
瀧澤:おそらく公立高校の中ではトップクラスの環境だと思います。1人1台のiPadはもちろん、全教室にプロジェクタも整備されています。他校から異動して来た教員は、前任校との違いの大きさに最初は戸惑うほどです。
野間:私は本校が初任地でしたので先入観なく入っていけましたが、教育実習時のことを思い起こすとやはり全く違いますね。板書中心の授業でしたから、いま思えば、あの時間がいかにもったいないものだったかよく分かります。
授業中の教室の様子
―それほどの先進的な環境が整っているということは、何らかの強い利用目的があったのでしょうか?
瀧澤:本校はICT化を促進している学校なので、ICTにせよスクールタクトにせよ、特定の課題を解決するためのツールというよりは「それがあること」を本校の特徴として活用していこうという考えがスタートでした。この環境を活かし、スクールタクトの利用方法を各教員が研究していくという姿勢も強いんです。
野間:情報管理の先生やICTに詳しい先生が他の先生に声をかけたり、教員間の勉強会があり、私が入った頃には「使うのが基本だよね」という雰囲気がありました。
―それはすごいですね。うまく利活用が進んでいる理由はなんでしょうか。
瀧澤:「使ってみたら思った以上に良かった」だから広がったというのが大きいでしょうね。例えばスマホがなかった時代、「スマホがあれば便利なのに」なんて思わなかったじゃないですか?
野間:先ほど申し上げた板書にしても、実際にICTやスクールタクトを活用して初めて、「ああ、あの時間は無駄だったんだな」と気付く感じです。
スクールタクトを活用した授業風景
―使う人の意識しだいでICT導入が加速する素晴らしい事例ですね。
瀧澤:始まりは「学校として推進しているのだから使わなければいけない」でしたが、学びのアクティブラーニング化が進む今、講義型の一斉授業ばかりというわけにはいきません。そのためにも有効なツールだと思います。
野間:私も、紙ベースの授業は減っていくだろうと思います。一方で、紙のほうがやりやすい場面もあるでしょうし、うまく併用していきたいです。
個人の課題やワークを共有する学習と、抜群の相性
―「使ってみたら良かった」とのことですが、どのような点にそれを感じましたか?
瀧澤:生徒全員のノートを共有できるのがスクールタクトの強みだと思いますが、本校の場合は「それをどう使うか」から考える必要がありました。現在も試行錯誤しているところですが、手応えを感じているのは「一人ひとりが何を書いているかすぐ分かる機能を活かす」こと。中でも「できる子」のノートです。その共有は良い学び合いになりますし、定期考査前は特に効果的ですね。
野間:英語の授業ではT-F問題(正誤問題)やディクテーションも行いますが、紙を利用した方法では、各生徒の答えを教員がすぐには把握することができません。その点、スクールタクトは瞬時に全員の答えと傾向が分かります。そこに時間がかからないぶん、すぐに正解を教えてしまうのではなく、対話を重ねながら正解に「導く」指導ができるようになりました。
生徒が取り組んだT-F(正誤)問題の回答を一覧で瞬時に把握できる
音源を共有し、ディクテーションも実施
―LHRでもスクールタクトを活用していただいていると伺いました。
瀧澤:修学旅行先について調べ学習を行ったり、気になった新聞記事を貼り付けて、それに対する意見を述べてみたり、いろいろ試しています。その中で感じるのは、「各自が調べて書いたものを共有する」学習にスクールタクトがとても向いていることです。今までは「紙に答えを書いて提出→教員がチェックして戻す」という、宿題のような閉じられたルーティンでしたが、スクールタクトは同じ工程で全員がそれを共有することもできますから。
野間:課題との相性が非常に良いですね。未提出になっている生徒のチェックもしやすいですし、課題を配信し、調べ学習をするには教員側もとにかく楽です。
新聞記事に対して意見を述べる課題
定期考査の解説を生徒自身が行って共有
―試行錯誤しながら「とにかく使ってみる」姿勢が大事なのですね。では、その試みの中から良い活用方法は見つかりましたか?
瀧澤:考査の振り返りです。答案返却後に、難しく感じた問題を選んで再挑戦し、解法をまとめたものをスクールタクトにアップしてもらいます。共同閲覧モードにし、特に良かった解説を「問1はAくんのを見て」「問2はBさんのが分かりやすいよ」と指示しておくのです。
―指名された生徒は嬉しいでしょうね!
瀧澤:そうですね。以前は私が解説していましたが、解き直しを指示してもやらない生徒が多いのが実情でした。でも、この形だとやってくるんですよ。他の生徒も、やはり友達が作った解説は積極的に聞こうとします。
単に「良い解説」を求めるのであれば、参考書があります。そこをあえて生徒が作ることに大きな意義があると思うんです。この解説のデキが成績評価に反映されることはないのですが、それでもしっかりやってくる生徒が多いのは、やはり楽しいのでしょうね。自分の解説を代表に選んでもらうために、あえて難しい問題を選んで解説しようという雰囲気さえあります。
―まさしく理想的な「主体的な学び」ですよね。野間先生はいかがでしょう?
野間:授業中に課題を課したとき、その進捗状況がすぐ分かるのが良いと感じています。例えば遅れが見られる生徒には個別に声掛けをしたり、全体の進捗が遅いと判断したら制限時間を伸ばしてみたり。そうした授業の進行管理にも役立てています。
生徒同士がスクールタクトで問題の解法を解説する
先生もコメントを添えている
スクールタクトが「当たり前」になる学校の日常
―スクールタクト導入で、授業や生徒さんにどんな変化が生まれましたか?
瀧澤:そもそも以前は私の中に「ノートを共有する」という概念がありませんでしたが、スクールタクト導入でそこが変わったのは大きいです。生徒もペーパーレスに慣れ、「なぜ紙で提出物を出さなければいけないのか」という意識になってきました。
野間:自分が高校生だったころと比べても、授業の常識は覆りましたよね。授業では、教員よりも(課題の共有によって)生徒同士が喋ってくれるのが理想だと思うようになりました。生徒からは「友達の意見を聞いて『そうだったんだ!』という新しい知識との出会いになる」という声も聞かれ、教員よりも友達の意見や解説を頼りにしているように感じます。そのほうが、私自身も授業をしていて楽しいです。
瀧澤:生徒たちもスクールタクトを使うのが当たり前になり、あえて「これっていいよね!」と意識しなくなっていると感じます。先ほどのスマホの話と逆のイメージです。これからもどんどん使って、新しい発見をしていきたいです。
iPadを片手にグループで話し合う様子
国公⽴大入試にも必要な、主体的に考え論理的に表現する力を育む
広島県の東部に位置する近畿⼤学附属広島⾼等学校・中学校 福⼭校は、中学校1年⽣〜⾼校3年⽣まで約1000⼈の⽣徒が在籍する中⾼⼀貫校です。2020年度からスクールタクトを導⼊した経緯や授業での利活用について、高校の日本史や倫理などを担当する梅村隆継教諭にお話を伺いました。
中学校3学年主任 梅村隆継 教諭
教室全体に生徒間の考えをシェアしたい
―梅村先生の担当科目を教えてください。
梅村:現在、中学3年生の学年主任です。科目は、⾼校1年⽣の⽇本史A、⾼校の倫理、中学の社会を担当しています。
―スクールタクト導入前はどのような状況でしたか?
梅村:2015年から教員によって徐々にアクティブラーニングを取り入れた授業をはじめていましたが、教員と⽣徒のやり取りがメインで、⽣徒間での考えの共有はそれほど多くありませんでした。私が担当した学年では、ノート⼤のホワイトボードを使ってグループで話し合った意見を共有するという工夫をしていました。ただ、グループの代表者が発言するだけでは教室全体の考えをシェアすることができませんでした。
また、調べ学習では図書室、情報処理教室、ITルームを使用していましたが、情報の授業での利用が優先となるため、中高6学年での時間割調整が⼤変というハード面の課題もありました。
当校は2020年度に⾼校の新入⽣に1⼈1台iPadを導⼊しています。その⽣徒たちにスクールタクトを使わせたいと学校に提案し、同年度からスクールタクトを導入してもらいました。2021年度は高3以外、2022年度は全校導入を予定しています。
グループ学習の様子
―スクールタクト導入当初はどのような印象でしたか?
梅村:5年前に⼤阪の附属校にいた時に紹介されたのがスクールタクトとの出会いです。多くの生徒が使っている言葉を視覚的に確認することができるワードクラウド機能がとても印象深く、社会科では生徒のいろいろな考えを⼀気に共有できるところが魅力だと感じました。元々ホワイトボードを使って何とか生徒の考えを共有していましたが、瞬時に教室全体の考えを共有することができるようになります。学習活動にかかる時間が短縮でき、すぐにでも使えるなと感じました。
―現在はどの程度の頻度で活用されていますか?
梅村:⾼校の⽇本史と倫理はスクールタクトを毎⽇使っています。
スクールタクト導入前は、生徒全員の考えを共有するには、回答を回収し、集計したものを人数分印刷してから次の授業以降に扱うというやり方でした。それだと次の授業までに間が空いてしまい、中には前の授業での記憶があまりないという⽣徒もいました。スクールタクトなら、⾃分以外の意⾒やマイノリティの意⾒もリアルタイムで知ることができるのですごく良いと感じます。
高校1年生の日本史の授業を3つ持っているので、1つ課題を作っておけば次の時間はその課題を配信し直せば良いというのも利点です。
グリーンの背景で黒板をイメージした日本史の課題
生徒がアウトプットする時間が増え、理想的な授業展開を実現
―スクールタクトを活用した授業の流れを教えてください
梅村:はじめに20分ほどインプットを行った後、残り30分ほどでスクールタクトで課題を配信しアウトプットしてもらいます。
その日の説明資料は、Google Workspace(旧G Suite)に各クラスのClassroomを作り、事前に配信します。授業では解答を空欄にした印刷物を配り、Google Workspaceで配信した解答が穴埋めされたPDFを投影しながら説明していきます。生徒は手元のプリントにメモしながら聞いています。
解答が穴埋めされたPDFの画面
板書だと書ききれなくなると消す必要がありますが、データで配信すれば「板書を消されてしまったので授業についていけない」ということがないのも利点です。
板書しながら説明する時間が省けるので、私からの説明はさらっと終わらせた後、単元に関する課題をスクールタクトで配信します。調べれば答えが出るものから⾃分が当事者だったらどのような選択をするかなどの考えさせる問いまで、一つの授業で複数の課題を扱うことができるようになりました。
日本史で配布された「考えさせる」課題
課題に対する回答一覧画面
アウトプットの時間は、最初は他の人の回答は見えない状態とし、回答が出揃ってきたら共同閲覧モードにします。難しい課題では自分の考えを書けない生徒も、他の生徒の考えを参考にすると回答できるようになることがあるためです。ワードクラウド機能を利用するため、タイピングで入力するよう指⽰していますが、生徒もだいぶ慣れてきました。
ワードクラウド画面
授業から発展した自発的な活動
―スクールタクトでの課題が、授業外の活動へと繋がった例があると伺いました。
梅村:高校生に、火事になった⾸⾥城について今⾃分たちに何ができるのかをスクールタクトを使って考えさせました。修学旅行先が沖縄だったので、旅行までに学校内で募⾦を呼びかけて、寄付活動までしてくれました。授業の中だけの学びではなく、実際の活動に繋げてくれたのは良かったです。
首里城の現状を考える学習の画面
芸術科目でも、教科特性に合わせた活用で個性を伸ばす
―他の教科ではどんな風に活用されていますか?
梅村:受験の主要科⽬だけではなく、書道でも活用されていて嬉しく思っています。最初に見本を見ながらスクールタクトに手書きで文字を書き、その後筆を使って書いた文字を写真でスクールタクトにアップロードする使い方です。
書道でもスクールタクトを活用
思考・判断・表現できる力がつく
―スクールタクト導入後、生徒さんに変化はありましたか?
梅村:従来の授業では、語句や出来事の意味、年代など知識のインプットを行ってきましたが、印象に残る授業にするには知識のインプットだけでは充分でないと感じていました。
正しい答えを知るだけではなく多様な考えに触れることができるスクールタクトは、生徒にとって色々な思考ができるツールになったと感じています。生徒たちは、思考・判断・表現することが当たり前にできるようになってきました。
学期の最初に評価点の基準をルーブリックで示しているのですが、⾃分の意⾒を⽀える理由を3つ書くようにと提示し、基準に満たない場合は評価点で満点をもらえないという共通認識を持つようにしたところ、1学期より2学期さらに3学期と成⻑が見られました。例えば、解答に単語のみ使っていた生徒が、理由を含めて文章で論理的に表現するようになりました。
⽂章での表現は、国公⽴大を希望するのであれば必要な能⼒です。⼊試だけではなく、⾃分の考えをわかってもらうには論理的に考えて発⾔することが必要です。自分の考えを表現する力がついてきた一方、他の人の意⾒に対して突っ込んでいく感じはまだないので、今後はスクールタクトのコメント欄などを使って他者に意⾒を伝えていけるようになると良いと思っています。
スクールタクトに自分の考えを入力する
前面にはクラスの回答画面を一覧で投影
―入試のお話が出ましたが、テストの方法や結果について何か変化がありましたか?
梅村:iPadを一人一台持っている高校1年生の⽇本史のテストでは必ず記述問題を入れるようになりました。また、定期テストの100点満点を7割に圧縮して、普段スクールタクトを使って行っている課題での評価点を3割つけるようにしています。テスト⾃体は以前からそれほど変わっていませんが、知識はテストで見て、書く⼒は評価点で見るという形を取っています。
日本史の課題に対して生徒が考えを述べた回答一覧画面
地域社会に貢献できる生徒の育成を目指す
―今後スクールタクトを使ってどんなことを実現していきたいですか。
梅村:将来は地元に戻り、地元を活性化したいという希望を持っている⽣徒もいます。社会科を教える中でさまざまな問いかけを通じて考える⼒を養いたいと考えています。それに有効なツールがスクールタクトです。地域の諸問題に対して、考えやアイディアを共有・昇華して、新しい条例の制定や改良につなげたり、住みよい地域社会づくりに貢献できたり、スクールタクトを活用してそうした力を育成していきたいと考えています。
「考える力」を養い、学習意欲を引き出すスクールタクト
女性の自立を促す白梅学園高等学校の特色
1964年に東京都小平市に設立された白梅(しらうめ)学園高等学校は、約750名の生徒が在籍する女子校です。生徒一人ひとりの人格を尊重し、きめ細かく、ゆきとどいた教育の推進と、人間味豊かな心情の育成を目指しています。学力と進路目標に合わせた3コース6クラスのコース制を整備し、1年次から女性の自立を目指すキャリア教育を体系的に実施しています。
建学の精神に基づいた新しい学びを追求すべく、従来の枠組みにとらわれない学びを生徒とともに作り上げている点は同校の特徴のひとつです。校内のICT環境の整備にも積極的で、2020年度の入学生からはiPadを導入し、5月からはスクールタクトをご活用いただいています。
今回はタブレット導入の責任者である教育研究部の石松満之先生(担当科目:日本史)と、市川梓先生(担当科目:物理・化学)にお話を伺いました。
左から石松満之先生(担当科目:日本史)、市川梓先生(担当科目:物理・化学)
コロナ禍のオンライン授業もスクールタクトでスムーズに
―貴校は2020年からiPadやスクールタクトを導入し、ICT教育に取り組み始めたと伺っていますが、それまでの経緯を教えてください。
石松:「新しい教育を作っていきたい」という校長の理念のもと、教育研究部が発足しました。そこではSDGsや海外研修のプログラムなどに取り組み、最先端の研究に触れる機会を考案しています。ICTの導入もその取り組みのひとつです。スクールタクト導入の前年度に電子ボードとネットワーク環境を全教室で導入し、教師から生徒に物事を伝える環境は整いました。しかし、それだけでは生徒からの反応を受け取るという点がまだ不十分でした。生徒の考えを吸収し、授業や行事など生徒のさまざまな取り組みを体系的に蓄積するツールの必要性を感じていたことが、スクールタクト導入へ繋がりました。
あとはやはり、コロナ禍の影響も大きかったですね。現在、1年生は全員iPadですが、2・3年生は生徒個人が所有するスマホやタブレットを利用する体制です。ですので、オンライン授業の実現には異なる端末に対応する必要がありました。その点、端末の種類を問わずにブラウザで使えるのはスクールタクトのいいところですね。
―他社サービスとも比較されたかと思いますが、スクールタクトの印象を教えていただけますか。
石松:他社サービスと比較すると、ブラウザで動くためOSのアップデートの影響もなく、教員側の管理が非常に楽だと感じます。生徒がパスワードを忘れた際に対応する程度で、普段は「管理」ということを意識することなく使えています。
元々の計画では、今年度はまず1年生のみiPadをを導入する予定でした。ところが、コロナ禍で休校が決まり、急遽上級生にスクールタクトを導入することになったのです。そのときにはすでに生徒に直接ログイン方法や使い方を説明することができる状況ではありませんでしたが、特に混乱もなく使い始めることができました。シンプルで使いやすく、生徒によって差がなく使えるところはスクールタクトならではの良さだと感じています。
授業の様子。生徒は教科書やノートと一緒にスマホを並べ授業に臨む
―休校期間中はスクールタクトをどのように活用されていましたか。
石松:ほぼ毎日、担任が朝と帰りのホームルームで生徒の状況をリアルタイムにチェックしていました。授業では教師が時間割に基づいて、通常プリントで配布していた課題や資料をスクールタクトで配信し、それを受け取った生徒が解答をスクールタクトに記入する方式です。スクールタクトで解答を作成する際は、文字入力・手書き入力・ノートの画像アップロードの3通りから選べるので、生徒に好きな方法を選んでもらいました。
最初は動画などで顔を見ないと生徒の様子がわからないものかと思い、とりあえずつながるだけでもと始めてみましたが、文字を見るだけでも十分に生徒の表情を感じ取れるとわかり、大きな収穫を得ましたね。
市川:私もノート感覚でスクールタクトを利用して生徒とやりとりをしていました。生徒たちはお互いに会えないことがストレスになっているようでしたが、課題を「共同閲覧」モードにすることでコメント欄で会えたという感覚だったようです。また、課題の提出時間によって生徒の生活リズムを把握できるため、個別に声をかけるようにもしていました。
休校期間中はスクールタクトへの生徒の書き込みで状況を把握
教科によって異なるスクールタクトの活用事例
―今は休校措置もなく、通常授業に戻っているかと思いますが、どのような場面でスクールタクトを使われていますか?
石松:休校期間にスクールタクトでの健康チェックやオンライン授業を実施していたので、通常授業になってからもスムーズに移行できたと感じています。教師によってばらつきはありますが、私は現在ほぼすべての授業でスクールタクトを使っています。
市川:私の授業では、事前に自宅学習で取り組む課題をスクールタクトで配布しています。これまでは黒板に図を描く、資料を配る、クラスの意見を集める、などに時間がかかっていたのですが、その時間が短縮されたため、授業では発展的な内容から取り組めるようになり、進度が上がりました。また、以前は授業内で質問の時間を取ることができず、生徒が自発的に質問に来る機会も多くありませんでしたが、今はスクールタクトで質問する生徒も少なくありません。
その他にも、担任を持っているクラスでは、生徒が作成した卒業研究の発表資料の共有や、クラス全体へのお知らせにもスクールタクトを活用しています。
研究発表資料に対し、クラスメイトから55件ものコメントが集まる
―石松先生、市川先生のお二人が実際の授業で、どのようにスクールタクトを活用されているのか教えていただけますか。
石松:私が担当している日本史の授業では、スクールタクトと電子ボードを使用しています。電子ボードで表示する資料と同じものを全てスクールタクトで配布することで、手元に残せたり、書き込みができたりするので、学びやすいと感じる生徒が多いようです。授業の前半はPowerPointを用いた講義形式、後半は生徒が予習で取り組んだ課題の解説をするのが基本的な流れです。
予習では自分の考えを述べる「問い」を投げかけ、生徒全員に提出してもらっています。「問い」を先に見せることで、生徒たちにその問いに解答できるように授業を聞くという姿勢が生まれます。
その上で、スクールタクトを「共同閲覧」モードに設定し、お互いの解答を見て優れた解答をしたと思う生徒に「いいね」をあげるように伝えています。「発言マップ」の機能を活用すれば、クラスの中で注目度の高い意見を一目で確認できるため、参考にしながら一つひとつ生徒の解答を取り上げ解説していきます。授業時間内になるべく多くの生徒の解答を提示し、添削や確認ができるように心がけています。
先生から投げかけられる「問い」に対してスクールタクトで回答する(日本史)
市川:私も予習から授業中、復習までスクールタクトをフル活用しています。講義内容の動画をスクールタクトで視聴し、プリントの穴埋めと簡単な問題演習に取り組み提出してもらうのが予習です。課題の提出期限までは「共同閲覧」をオフにし、期限が来たら出していない生徒がいても「共同閲覧」モードに設定します。提出していない生徒も、他の子の意見や解答を参考に、自分なりの考えを書けるようになることもあるためです。
私が担当している物理は選択制の少人数授業ですので、これまでの授業でも生徒同士で解答を交換し合って考えさせる時間を取り入れていました。コロナ禍で今年度は対面でそのような授業を行うのは難しい状況にありましたので、スクールタクトに活躍してもらいました。「共同閲覧」モードで生徒がお互いの解答を見合うことができるので、休校時や分散登校時にも活発なやりとりができて助かりました。
スクールタクト上で問題演習に取り組む
-今期はコロナ禍で冬期講習をオンラインで行ったと伺っていますが、いかがでしたでしょうか。
石松:最初は希望する教科、先生のみで実施する方向でしたが、結果的に多くの先生に協力いただき5教科すべてでオンラインでの講習を実施できました。講習はYouTubeとZoomを併用し、動画で配信できるようにしました。
まず、生徒たちはYouTubeで動画を見ながら課題に取り組み、提出します。課題の提出状況で出席確認を行いました。リアルタイムの授業にはZoomを使い、スクールタクトを板書代わりに使っていましたね。
新しい取り組みのためZoomとYouTubeの使い分けに迷うところもありましたが、課題を小分けにしてスクールタクトで生徒に配布することで講習期間中は教員側のペースで授業を進めることができました。生徒からも「いつもの授業のように受けられて、楽しかった」という反応があり、やって良かったと感じています。春期講習もオンラインで対応予定です。
オンラインで冬期講習を行う石松先生
オンライン冬期講習の回答一覧画面。各自が手元で解いたものを撮影しアップロードして提出する
スクールタクトの活用で生徒の学習意欲にも変化が
―お二人ともそれぞれのスタイルで、スクールタクトをご活用いただいているのですね。スクールタクト導入から9か月ほどになりますが、生徒さんや授業、また先生自身に訪れた変化がありましたら教えてください。
石松:これまで黒板に書いていたような内容は全て授業前にスクールタクトで配布しているので、授業中に板書をする必要がなくなり、効率的に授業を進められるようになりました。前に映して見えなかったら手元で確認するようにと伝えています。細かい文字は各自の画面で拡大できるので、視力が低い生徒にも役立っています。日本史は写真などカラーで見せたい資料も多いですが、全て生徒の手元にあるので復習にも活用できます。
印刷資料が減ったことで授業準備の時間も大幅に削減できました。これまではプリントを印刷するだけで多くの時間を取られてしまっていましたが、今はスクールタクトによって削減された時間でプラスアルファのことを準備できます。
また、スクールタクトを活用することで講義形式の時間を短縮できた代わりに、自分の考えを深め文章にまとめる時間を多く取れるようになったことも大きいですね。これまで「日本史=暗記科目」のイメージを持っていた生徒たちの意識は確実に変わったと思います。試験範囲のことだけを考えるのではなく、考えを深めていく中で全時代的な視点が持てるようになりました。資料に載っていないことなど、私が答えに困るような質問も増えたんです(笑)。
スクールタクトで事前課題を提出しなければならないため、予習をして授業に臨むことにより意欲が増した生徒も多いのではと考えています。
スクールタクトで全ての資料を配布することで、細かい文字も生徒が手元で確認でき、授業後に見直すことも可能
市川:「授業は生徒が主役であり、遠慮せずにどんどん発言したり質問したりして良いのだ」という意識を生徒が持ってくれたように感じています。スクールタクトは先生に対して個人的に質問する感覚でコメントできるようで、これまであまり積極的に発言しなかった生徒も、物怖じせずに発言してくれてるようになりました。「この子、こんなこと考えていたのだな」と気づかされることも多々あります。これまで以上に生徒一人ひとりとじっくり向き合えるようになったことで取りこぼしが少なくなりました。
石松:本校の理念にもなっている「きめ細かく、ゆきとどいた教育」ということが実現できるようになってきたかなと感じますね。
スクールタクト上に用意された「質問部屋」のコメント欄に先生が回答を書き込む
―生徒や保護者の反応はいかがですか?
石松:おおむね好意的な意見が寄せられています。具体的には、
「自分の持っている知識の中から必要なものを取り出し、組み合わせて、人に伝える能力が少し上がった気がします。 また、問題作成者がどんな答えを求めているか考える力がつきました」
「先生に見られるから、字を綺麗に書いたり、真剣に考えるようになった」
「意見交流ができる」
「授業で聞き取れなかったことを見返せる」
「自分以外の人の解答を見ることができる。 先生から配信された課題を、自宅で印刷することができる」
などの声がありました。
求められるのは「覚える」ではなく「考える」授業
―あらゆる面から変化が見られるのですね。最後の質問になりますが、スクールタクトを活用して実現したい理想の生徒の姿を教えてください。
石松:生徒が自分の考えや調べたことを、自由に表現できるように成長していって欲しいですね。大学入試も変化し、マークシート方式ではなく記述式の問題も増えてきています。ただ暗記するのではなく、なぜそうなるのか説明できるようになり、最終的には生徒自身が授業できるレベルに成長できたら最高ですね。
スクールタクトは生徒がさまざまな意見を交換し合えるので、ただ暗記するだけではなく、なぜそうなるのか考えられるツールだと思います。
実は導入前、「黒板を写させる時間が無駄だな」と感じていました。確かに板書をきれいにノートに写し、それを覚えることで、定期テストやセンター試験には対応できていましたが、「本当に暗記するだけの勉強でいいのかな?」と疑問に思っていました。ところがスクールタクトを使い始めたことで、徐々に生徒たちに考える力が身につき、今では定期試験でも大問ひとつ文章を書くような問題にもしっかり解答できるようになっています。結果として、変化する大学入試にも対応できるような手応えを感じています。そのためにはスクールタクトを使って課題への取り組みや講義の視聴は効率的に家庭で済ませ、授業では探求の時間に専念できるようにしていきたいと考えています。
スクールタクトを使い始めてから生徒たちに考える力が身についたと話す石松先生
生徒の小さな変化を捉えながら主体性を育む授業を実現
「Boys,Be Ambitious!」で知られるクラーク博士の精神を教育理念に受け継ぐ唯一の教育機関として1992年に開校した、クラーク記念国際高等学校。北海道深川市に本校を設置し、全国50を超えるキャンパスで1万人以上が学んでいます。通信制でありながら全日制と同様に毎日制服を着て通学して学ぶ「全日型教育」という新たな学びのスタイルを開発・導入していることも大きな特徴。カリキュラムの柔軟性を生かし、生徒のニーズに合わせたさまざまな特徴ある授業を展開しています。
毎年、海外大学や国公立、有名私立大学などへの進学者も多数輩出しているクラーク記念国際高等学校では、2017年4月よりスクールタクトが導入されています。今回は、スクールタクトの導入に尽力された細窪大吾先生、牛込紘太先生、現場でスクールタクトを活用しているという横山栄悟先生、笹原圭一郎先生に、導入の経緯や活用方法を伺いました。
上段左から:細窪先生、笹原先生、下段左から:横山先生、牛込先生
リアルタイムで考えが共有できる面白さに惹かれ、スクールタクト導入を決意
生徒が書き込んだ考えがリアルタイムで反映される
ーはじめに、スクールタクトを導入したきっかけを教えてください。
細窪:きっかけは、2015年の年末、松田孝さんという有名な校長先生(当時)のセミナー内で紹介され、興味を持ったことです。サービス内容はもちろん、教員自身の授業の幅が広がるように思いました。そして何よりもWEBブラウザがあれば利用できるため端末を選ばないところにも魅力を感じ、学校に持ち帰って「導入したい!」と話を持ちかけました。
ー他には、スクールタクトのどのようなところに魅力を感じたのでしょうか?
細窪:即時性と共有性に魅力を感じました。スクールタクトには「共同閲覧」「共同編集」のモードがあり、課題に対する他の人の意見を閲覧したり、それに対して「いいね」やコメントをし合うことができます。教員の画面にもそれがリアルタイムで反映され、生徒の回答を一覧で確認することもできます。そのため普段はあまり積極的に発言をしないような生徒にもスポットを当てられるところもいいなと思いました。
私が最初に見たのは小学生の国語の授業でした。「鳥獣戯画」を見てセリフを書いていこうという授業で、私たちも端末を使って参加させていただいたのですが、自分の書いた回答が他の人の画面で見えること、前の画面に写し出されていることはもちろん、それに先生役の方がコメントをくれたときに「クイズ番組のようで面白い!」とビビッときました。
私は、知識を詰め込むためだけの授業ではなく、学ぶ理由が見つかる授業が生徒たちには必要だとずっと思ってきました。発問することで生徒が自発的に授業参加できる賑やかな授業が理想なので、スクールタクトは理想的なツールでした。
ー牛込先生は、最初にスクールタクトを知ったとき、どのような印象を受けましたか?
牛込:私がスクールタクトを知ったのは、ちょうど個人・グループワークを織り交ぜたキャリア学習の授業を検討していたときでした。「やってみて」とデモアカウントをいただいて試したのが始まりでした。そのときは、学内のICT化も進んでいない段階だったので、革新的で衝撃を受けました。
ー最初はキャリア学習の中でスクールタクトを活用されていたのでしょうか?
牛込:「協働学習中心」というコンセプトでのキャリア学習を検討していく中で、「これはICTを使わないと活性化しないだろう」と感じており、スクールタクトを活用することにしました。次第に、それは「教科学習にもいかせるのではないか」という動きになっていきました。
細窪:私たちが実現したかったキャリア学習とスクールタクトとの親和性が高かったことで、結果としてキャリア学習の中にふんだんにスクールタクトを入れる形になりました。それと同時に、活用方法を限定するわけではなく、全教科での活用をイメージして進めていました。
キャリア学習での生徒の回答一覧画面
ーそもそも、スクールタクトを導入することでどんな課題を解決したいとお考えでしたか?
細窪:私は生徒が主体性を持たない限り、学びはうまくいかないと考えています。そのため、これまでも授業内で生徒に質問を多く投げかけていたのですが、実は積極的に参加している生徒は限られているという課題がありました。一斉講義型の授業では、双方向の対話はなかなか上手くいきづらいのですが、発問することで授業に参加させるような自分の理想とする授業がスクールタクトでできるかもしれないと思っていました。
それぞれの活用方法とは
授業でスクールタクトを活用している様子
ー現状はどのような場面で活用いただいているのでしょうか?
細窪:私は授業に緩急をつけるためにスクールタクトを活用しています。講義形式の時間が続いた後には、スクールタクトで質問を出して脳を切り替えるという使い方です。例えば、歴史上の人物がなぜその行動をとったと思うかと問いかけます。私は社会科を担当していますが、社会科は暗記科目と思われることがとても残念なんです。「なぜ?」を考えることで自分ごととして考え、初めて自分の知識になると考えています。考える機会を創出し、知識と出会ってもらうためにスクールタクトを活用していますね。
あとは、テスト対策にも活用しています。授業ではノートをとるのではなく話を聞くことに集中してもらい、まとめをスクールタクトで配布するようにしています。そのまとめを穴埋め形式にした小テストを定期的に行なっています。
ー笹原先生は実際にスクールタクトを使ってみていかがでしたか?
笹原:私は入職してまだ3年目なので、着任したときには既にスクールタクトが導入されている状況でした。そのため実は黒板を使った授業を体験していません。正直なところ、スクールタクトがないと授業をするのが難しいと感じるくらいです。
ースクールタクトネイティブですね!どのように授業で活用されていますか?
笹原:プリント類をPDFにしてスクールタクトにアップロードして「この問題を解いてね」と生徒に配布し、生徒の回答を確認するという使い方をされている先生も多いですが、私は入ったばかりだったので元々準備しているプリントなどの教材はありませんでした。そのため、プレゼンテーションをイメージして、スクールタクトのキャンバスに1枚ずつスライドを作って授業を進める使い方をしています。授業1回あたりのキャンバスの枚数は、他の教員と比べて多いかもしれません。
生徒はそこに私が話した内容や自分の調べたことを書いていきます。手書きでの文字入力もできるので生徒にとっては入力しやすいようで、スクールタクトに情報が蓄積されています。このような使い方で、スクールタクトはポートフォリオにもなると感じています。例えば1年前の授業のことが会話に出てきた際には、生徒が簡単にスクールタクトで見返すことができるようになりました。
先生が用意したシートに生徒が各自書き込みを行う
ー横山先生はどのように活用していただいていますか?
横山:私は社会科を担当していますが、資料の絵や写真、地図などを生徒に見せる際にスクールタクトが活躍してくれています。以前はA3サイズで印刷したものを黒板に貼って見せていました。今は一人ひとりが手元のスクールタクト上で確認できるようになったので、今までの授業では気づかなかったような細かなディテールに生徒が気付くようになり、授業に深みが出ました。その点は特に社会科を教える身として画期的だと感じています。
また、私自身、スクールタクトによって、「生徒が考える時間のある授業」が容易にできるようになり、授業の構成も変化しました。まずは生徒の反応を見るために質問を投げてみようという発想になり、以前より発問の回数が増え、生徒とのキャッチボールが多い授業、対話が多い授業を作れるようになりました。
スクールタクトを使った世界史の授業。世界地図も各自の手元で確認できる
授業への参加度が上昇。生徒たちの小さな変化にも気づけるように
スクールタクトを使って課題に対する回答を書き込む様子
ー導入後、どのような変化がありましたか?
細窪:授業中にはどうしても集中力が切れてしまう生徒が出てきますが、スクールタクトを使って手を動かすという行動によって、授業に能動的に参加する生徒が増えたように思います。
もちろん中には「スクールタクトに書いて」と言ってもすぐには書けない生徒もいますが、私は書けないことも許容しています。スクールタクトは生徒が課題を開いたことが教員画面で確認できる仕組みになっているので、参加していることが確認できていれば、「その生徒なりに考えている最中なのだろう」と、こちら側が状況判断しやすいところも良い点だと思っています。授業内では、いいコメントはピックアップして褒めることは意識しています。
ピックアップする意見を選択し、大きく表示することが可能
笹原:私も、生徒が主体的に授業に参加していることをとても感じています。
細窪先生は書かないことも許容していると仰っていましたが、私は書いていない生徒がいることをスクールタクトで確認すると「その生徒は何の情報がほしいのか」と考えるようにしています。そして、その生徒だけではなく全体にヒントを投げかけてみる。すると、書けなかった生徒も少しずつ書けるようになることがあるのです。生徒たちのそのような変化がリアルタイムで分かるところが、スクールタクトのいいところだと感じています。
横山:書けるようになったことを褒めることで生徒の自己肯定感が上がり、次回も書くようになります。そこは、スクールタクトを導入してからの生徒たちの大きな変化だったのではないかと思います。
今の3年生はスクールタクトを3年間継続して活用した学年なのですが、回答の質が向上したことを感じます。当初見られたWikipediaのコピーのような回答から、自分の意見や考えを述べられるようになりました。また、相手のことを思いやった建設的な批判も交えながら回答できるようになっています。
複数のキャンパスでスクールタクトを活用
ー先生方は横浜、所沢、秋葉原と異なるキャンパスで教員をされていますが、キャンパスを越えてスクールタクトをご活用いただいているんですね。
細窪:最初は首都圏に設置するキャンパスのみでスタートし、パイロット運用として10キャンパスで使用しました。
牛込:スクールタクトは操作がわかりやすく、すぐにワークに入ることができたんです。ストレスなく使い始めることができて、それが当たり前になっていきました。試験的にスタートした後、来年度のICTをどうするかという判断をする際に、全キャンパスが「スクールタクトは外さない」という結論を出しました。
教員よりも生徒の方が慣れるのも早く、自発的にいろいろな使い方を見つけていったのですが、そのような生徒の主体的な行動がまさに実現したかったことだと感じます。
横山:私はスクールタクトのテンプレートの機能をよく利用しています。私の所属する所沢キャンパスには、社会科の教員は私一人しか在籍していません。そのため、授業を作る際に行き詰まると、他のキャンパスの社会科の先生が登録したテンプレートを見てみることにしています。こういう切り口で発問している先生がいるのかと参考になるんです。スクールタクトにより、キャンパスを越えてアイディアを交換し、授業をブラッシュアップすることができています。
各教員が登録し、校内で共有されている課題テンプレート一覧
今後の展望
ー今後は、スクールタクトを活用してどのようなことを実現したいとお考えですか?
横山:自分に自信を付ける1つのツールとして生徒に活用してほしいと思っています。スクールタクトを利用した生徒が将来、どんどん発言をして自分の能力を認められ、評価されていくと嬉しいですね。
牛込:私はスクールタクトが生徒の3年間の学びのまとめになるような使い方をしていきたいと考えています。学びを可視化することは大切だと思っていますが、ノートだと3年分の学びを一つにまとめることは難しいです。デジタルにすることで一つにまとめることができます。スクールタクトは生徒の取り組んだ課題をPDFでダウンロードできるので、卒業の際には1冊の本のように、「学びの財産」として生徒に渡せたらいいなと思っています。
ー最後にスクールタクトにメッセージを!
細窪:スクールタクトは私たち教員の声をもとに常にアップデートされていくので、教員にとってのストレスも日々解消されていき、痒いところに手が届く開発をしてもらえていると感じています。こうしてほしいというアイディアは常に伝えています。
牛込:どんどん使いやすくなっているのはありがたいですね。
ー本日は貴重なお話、ありがとうございました!
※記事内の所属等は全てインタビュー当時のものです。
スクールタクト導入で生徒同士のコミュニケーションや振り返りが評価可能に
※仙台育英学園高等学校秀光コース・秀光中学校様にご興味のある方はこちらをご確認ください。
※取材は2019年11月に行いました。記事内の授業風景は新型コロナウィルス拡大抑制を目的とする休校要請以前に撮影したものです。
仙台育英学園高等学校秀光コース・秀光中学校の特色
仙台育英学園高等学校秀光コース・秀光中学校は、2018年に国際バカロレア(IB)の中等教育プログラム(MYP)を提供する東北初のIB校として認定されました。6年間の中高一貫教育、学習方法としてのIB教育、教育の軸としての“Language, Music & Science”によって、高度な学力・豊かな感性・生涯学習者としての自覚を持ち、持続可能な社会の構築に“至誠”によって貢献するグローバルシティズンを育成することを教育目標としています。
IBに沿った生徒の評価手法がスクールタクト導入の背景
仙台育英学園高等学校秀光コース・秀光中学校では、1人1台のPC環境を整備し、IBのレポート課題や効果的な授業実践を目指していました。スクールタクト導入目的は、教員が生徒の評価をより効果的に行うことにありました。東北で初のMYPを提供する国際バカロレア認定校である本校は、その教育手法の特性から生徒の適切な評価手法を模索していました。
授業によって習得した知識のテストによる評価手法だけではなく、生徒同士の授業中のコミュニケーションや振り返り、実生活への応用などをルーブリックに基づいてテストと同様に評価する必要がありました。もちろんレポート提出による評価も行っていますが、授業中の様々な活動を記録しておく必要性を認識していました。
従来は、無料で使えるGoogle関連のソフトウェアを使用していましたが、本校に最適なツールを検討する中でスクールタクトにたどり着き、利用を開始しました。様々な教科に汎用的に対応していること、プレゼンテーション機能があること、生徒同士が相互にコミュニケーションを取りながら学習や振り返りを行えることなどが、本校の求める要件に合致していたため「まずは試しに使ってみよう」という気持ちで使い始めました。授業効率の向上とMYPの単元計画に基づく授業設計、特に観点別評価において発表やグループワークが必須な点などを考慮した結果、スクールタクトの導入を決めました。
スクールタクト導入前準備とハードウェア選定
本校は2017年に、全校舎に無線LANの整備、各教室にプロジェクターの整備を行い、翌2018年に全教室への設置を完了しました。授業で本格的にICTを使用する前に、生徒へのClassiアンケート調査も行いました。1日あたりのインターネット利用時間、保護者の制限の有無などをあらかじめ調査することによって、ICTを利用する上での問題点を洗い出しました。
(※仙台育英学園高等学校秀光コース・秀光中学校でご利用いただいているサービスの名称は「ClassiNOTE」です。ClassiNOTEは、Classiユーザー向けに提供しているスクールタクトの別名称です。名称が異なるだけでシステム上の違いはありません。)
アンケートの結果をもとに、ハードウェアの選定においては、生徒の資料作成能力を高める必要があると判断し、iPad等のタブレット端末ではなく、キーボードが付いている端末を要件としました。また、スクールタクトを直感的に活用するためのタッチパネルがあること、インカメラが使えること、データがクラウドに保存され消失しにくいなどの条件から、中学生にあたる前期課程ではChromebookを選定しました。高校生にあたる後期課程では、プレゼンテーションソフトやウィルス対策ソフトの要件を満たすPCを利用するBYODを実施し、1人1台のPCを利用する「Own PC制度」を実現しました。
IBの授業特性にも最適だったスクールタクト
本校では、従来から様々なICTツールを使用していましたが、スクールタクト導入後には多くの変化がありました。教員の変化としてまず挙げられるのは、教員間での情報共有が盛んになったことです。スクールタクトの使い方やノウハウ共有にとどまらず、その他のICTツールの利用においても共有が活性化しました。また、各授業の特性に応じて柔軟にツールを切り替えられるようになり、同時に、生徒の側も授業の特性に応じてツールを使い分けるようになりました。生徒は、ICTに苦手意識を持つこともなく、楽しみながら使うようになってくれました。
国際バカロレアの授業特性にも最適で、生徒同士の授業中のコミュニケーションや振り返り、実生活への応用などを評価することができるようになりました。
スクールタクトによる先生方の変化
以前にもまして授業での創意工夫や改善をするようになりました。また授業の中でも流れに変化をもたせようとすることで、生徒自身はもちろん、自分自身の授業に対するモチベーションも更に向上しました。本時の振り返りを熱心にやるようになりました。
はじめは、ICTは難しいのではないかという気持ちがありましたが、使ううちに自分の意識が変わってきました。授業以外の時間でも生徒の解答や意見が確認でき、次の授業での改善につなげることができます。生徒の指摘やコメントをまとめて見ることで、苦手な部分や得意なところを発見でき、今後の指導に役立ちます。
授業が効率よく進むようになりました。そのため自分自身が精神的に疲れないということが大きな効果ですね。また、発表が得意ではない生徒の発表では、あらかじめ回答を見た上で、「いい意見だね!じゃあ発表してごらん」と自信を持たせてあげられるようになりました。
生徒が、パソコンやタブレットを勉強のための道具として使えるようになりました。スクールタクトを使うと他の生徒の考えも見られるので、勉強を自分の中だけで完結させないようにする意識が芽生えたと思います。また、生徒が家にいる間の学習の様子も見られるようになったことで、課題を細かく出してチェックできるようになりました。
今までは問題集の問題をただ解かせるだけでしたが、生徒同士のコメントやフィードバックを増やすことを意識した課題づくりができるようになりました。画面上で生徒の回答がリアルタイムで確認できるため、各生徒の理解度やつまづいているポイントの把握がしやすくなりました。
生徒たちが使ってみて感じたスクールタクトの良いところ
グループワークで、グループ内で話し合って内容を打ち込めるし、他のグループ同士で様々な意見を見ることができ、「こういう捉え方もあるんだな」とか「こういう表現の使い方があるんだな」といろいろ考えることができるのでいいと思います。
課題の提出などが時間的に効率化したし、グループワークで一人ひとりが授業に対して積極的に参加できるようになりました。先生に聞くほどでもない簡単な質問でも仲間内では聞けるし、どのような言葉を使えばより明確に伝わるかなど、みんなで話し合ってからパソコンに打ち込むので、より発展的な意見を言い合えると感じています。
紙やノートに書いて一人ずつ発表しなくても、全員の意見を一つずつ見ていけるので、それを見た上で自分の意見をまとめることができるのはとてもいいところだと思います。特にキーワードによってみんなが一番考えていることや多く使われている言葉を見ることができるので、それによって自分の焦点があっているか、自分の考えが正しいかどうかも確認することができます。
自分の考えが他の人と合っていないと不安になりますが、他の人の考えを取り入れることにもなるし、自分もまた新たに成長できると思っています。そういった意味で、スクールタクトを使うことで授業が効率化されている点は大きいです。今まではノートに書き写すのが大変で、自分の意見と照らし合わせる時間も足りませんでしたが、今では大きな違いや共通点を見つけることが簡単になりました。
紙の授業より効率的になったと思います。先生の授業中の負担が軽くなったり、他の友達の解答を見ることができるようになりました。紙を使っていたときは先生が動き回っていて大変そうでした。また、他の友達の解答から新たな気づきを得ることができるようになりました。また、苦手だったタイピングの練習になるので、TとFの位置がわかったり、以前より速く打てるようになりました。
夏休みの宿題も、今までは提出から採点まで1カ月待たないといけませんでしたが、今は先生がすぐに採点してくれるようになりました。解答をクラスメイトと共有することが簡単で、スクールタクトにデータが残るので、復習が簡単になりました。中学校1年生のときのデータも残っています。また、スマホでログインできるので、電車の中でもノートを広げることなく簡単に確認することができます。
単純に機械に慣れることが良い点だと思います。また、解答を簡単に共有することができるのはすごく良いです。今まではホワイトボードに代表の人が解答を書き、みんながそれを見ても会話が生まれなかったし、そもそも時間がかかっていました。でも、今は他の生徒の解答が見えるので、生徒同士の会話が増えました。例えば、「この計算式が違うのでは? もっとこうすればより簡単にできるのでは?」などの会話が生まれています。
今後どのようにスクールタクトを活用していくか
学校全体ではグランドデザインの方針に基づき、各学年・教員の状況に応じて柔軟な活用をしています。例えば、1年生であればPCを学校で保管し、授業での教員監督下で利用してもらったり、3年生は自宅に持ち帰って課題に取り組んでもらうなど、各学年・教員同士が上手く声がけすることでフレキシブルに運用しています。個人的には、今後このような関係性がICTを使った教育において重要になると考えています。一方で、SNSの利用やインターネットのフィルタリングについては現在も最適な対応を模索しています。
本校は、生徒が双方向に取り組むIB型の授業をテーマとしています。そのため、MYPの前提となる環境整備に注力したいと考えています。例えば、教員全員が参加するミーティングが毎週あるの
で、そこでスクールタクトを使った効果的な授業方法を教員間で共有し、学校全体の授業のクオリティ向上を実現していきたいです。また、年度の更新によって教員が入れ替わった際に研修会を行うこと、教員同士が使い方を共有し合う時間を設けること、教員同士の授業研究など、スクールタクトに限らずICT全般の知識を共有し研究していきたいです。
スクールタクト導入後の活用状況については、以下の実践事例をご参照ください。
- 中1 学級活動 文化祭の振り返り
- 中2 社会(地理) 近畿地方(歴史的景観の保全)
- 中3 数学 関数 y=ax²
- 高1 物理基礎 波と媒質の運動
- 高3 英語表現Ⅱ 英文理解を深めるための和訳