オンラインでも仲間と一緒にいる感覚を得る!子供たちが安心して自信を取り戻す学びの場
まなビバ!シリウス代表 安楽岡(やすらおか) 優子氏
「まなビバ!シリウス」は、「すべてのこどもたちが人と人のつながりを感じながら安心して自分らしくいきいきと生きていける」ことを目指して作られた、学校ではない子供たちの第3の居場所です。蔵を改装した対面で集まれる「蔵のがっこう」と、オンラインで全国の子供たちがつながり合う「風のがっこう」、そして群馬県の委託事業「オリナスオンライン」などを設けています。
そして、子供たちが安心してコミュニケーションを取ったり学んだりできるよう、2021年からスクールタクトを活用しています。子供たちが安心できる場づくりへの思いやスクールタクト活用への期待について、「まなビバ!シリウス」代表の安楽岡(やすらおか) 優子さんにお話を聞きました。
「まなビバ!シリウス」は学校ではない第3の居場所
―「まなビバ!シリウス」の概要を教えてください。
安楽岡:まなビバ!シリウス」は一般的にはフリースクールという定義になるのでしょうが、もう少し広い意味で「学び場」という表現を使っています。小学生と中学生が自分らしくいられることを大事したいという思いを軸にした、学校ではない第3の居場所です。
現在、合計47人と関わらせていただいています。内訳としては築100年の蔵を改装し対面で集まれる「蔵のがっこう」に8人、オンラインで関東・関西・九州など全国の子供がつながり合う「風のがっこう」に14人、さらにシリウスパークというSNSでの交流に3人が参画してくださっています。また、群馬県の委託事業「オリナスオンライン」に16人が登録してくださっています。加えて、「オープンシリウス」という、どなたでも参加できるイベントにも6人ほどが参加しています。
―どういったお子さんが通っているのですか。
安楽岡:「蔵のがっこう」は、学校が合わず、「行けない」「行きたくない」という思いを持っている子が多いです。また、小学校から中学校に上がるタイミングでオルタナティブスクールを探して「まなビバ!シリウス」に辿り着いてくださった子もいます。
「風のがっこう」は学校が合わない子が半分で、コロナ禍で自主休校を続けてきている子が半分という構成になっています。
蔵のがっこうでの様子
―子供たちが在籍している小中学校とは連携なさっていますか。
安楽岡:先生たちから「出席扱いにしたいので、様子を教えてください」というご連絡をいただき、レポートをお送りすることがあります。それにより、校長先生の判断で出席扱いになるケースも多いです。
ただ、ここでやっと居場所を見つけて自分らしくいられた子も少なくないので、学校の先生に様子を知られたくないという意向を持っている場合もあります。そのため、学校にレポートをする前には必ず子供とご家庭に許諾をいただきます。
全国の子供たちがオンラインでつながる「風のがっこう」の仕組みとは?
―主にスクールタクトを活用している「風のがっこう」のタイムスケジュールを教えてください。
安楽岡:子供たちは自宅のパソコンやタブレットでそれぞれ参加します。10時から朝の会をして、ここで各自「朝ノート」を書く際にスクールタクトを使っています。10:10から学習タイムがスタートします。ここでは、子供たちが自分で学習する内容を決めて取り組みます。子供たちが自主的に打ち込む時間なので、スタッフは見守ったり質問に答えたりします。自主学習の際には、静かに勉強したい子もいれば、わいわい話しながら取り組みたい子もいるので、Zoomで「静か部屋」と「わいわい部屋」の2パターンでブレイクアウトルームを作って、それぞれの子供が学習に集中できるようにしています。
10:45から「アクティビティ」の時間になります。毎回違うことを行うのですが、ダンスをやったりクッキングをしたり実験をしたりしています。
風のがっこうのタイムスケジュール
アクティビティの時間の様子
―「風のがっこう」はどのような経緯でスタートしたのですか。
安楽岡:もともと「おしゃべり哲学」という哲学対話をオンラインで実施していたので、Zoomを活用したつながりの創出は行っていました。その後、コロナ禍で全国的に一斉休校期間があった時に、無料で子供たちがつながり合える場をオンラインで設けました。SNSなどでも拡散していただき、全国から子供たちが集う現在の「風のがっこう」が作られていきました。
リアルタイムで子供たちの書いた内容を確認できる魅力
―スクールタクトを活用するきっかけを教えてください。
安楽岡:2021年に「風のがっこう」を作った際、書いている内容をインタラクティブに共有できるようなツールを探していました。さまざま調べている中で、スクールタクトを見つけました。私がスクールタクトが素晴らしいと思ったのは、リアルタイムで子供たちの書いている内容を確認できることです。「蔵のがっこう」は少人数で子供たちが取り組んでいる様子がすぐにわかるので目で確認すればいいのですが、オンラインではそれができません。
例えば、みんなと交流することが苦手だったり様子見で参加したりしている子供たちの中には、画面をオフにしてミュートで参加するようなケースがあります。こうした子たちについては、画面の向こうの様子がわかりません。そうすると私たちがサポートのしようがないのです。しかし、スクールタクトであれば、こうした子供たちが今何に取り組んでいるのかがわかります。これにより、スタッフ側が適切な声かけやサポートができるようになると考えました。
毎日の気持ちの共有や探究学習などに活用
―実際にスクールタクトをどのように活用しているのでしょうか。
安楽岡:年度をスタートする際には、スクールタクトを使って、自己紹介を行います。全国に散らばっている子供たちなので、自分の地域のことをみんなに伝えるように促しました。
スクールタクトでの自己紹介
さらに、毎日の「朝ノート」でスクールタクトを使っています。「朝ノート」には、「今日の天気」「今の気持ち」「ひとこと」について書きます。「ひとこと」には、今日の「風のがっこう」で楽しみにしていることや頑張りたいことを書きます。子供たちは、文字や絵などで自由に表現しています。
スクールタクトを活用した朝ノート
また、「朝ノート」は共同閲覧モードにして、スタッフだけでなく、子供たち同士でも見られるようにしています。これにより互いに口頭でのコミュニケーションが生まれています。時間の制約でコメントや「いいね」機能はスタッフが中心に活用しています。
共同閲覧モードを活用することで、口頭のコミュニケーションにも発展
―他にはどのようなことに使っていますか。
安楽岡:いわゆる探究学習のような時間を年に1回から2回ほど設けています。そこでは、スクールタクトを活用しています。例えば、「水」をテーマに取り上げた際には、その不思議に目を向けたり問いを立てたりすることに挑戦しました。最初は、「水」から連想する言葉をマッピングしたりイメージを絵を描いたりしました。その後、最終的にはそれぞれの考察を発表し、コメントや「いいね」機能を活用して交流しました。なお、この「水」の探究を契機に、毛細管現象の実験にもつなげていきました。
今年度は「バケツ稲」をテーマに取り組みました。JAの協力でバケツ稲を提供してもらい、栽培したいという子には配ってそれぞれの家庭で観察に取り組んでいます。スタート時には、バケツ稲の芽が出るために必要だと思うものを3つ挙げました。「日光」「水」などの答えもありながら、「愛」などのユニークな回答もあり、大いに盛り上がりました。
その後、バケツ稲の成長記録を写真などで紹介する時間も設けました。また、バケツ稲の配布を希望しなかった子供も「今はこんな状態になっていると思う」という想像を書き込んで参加しています。
―「アクティビティ」の時間にも活用しているのでしょうか。
安楽岡:そうですね。「アクティビティ」の時間で、月に1回程「ことばプログラム」を実施しています。これは、大学生のボランティアスタッフが大学での学びも交えてプログラムを作成してくれました。子供たちは、「なぜ、コミュニケーションの難しさに差が出るのかな? その理由を考えてみよう」といったワークに取り組んでいきました。いつも画面オフの子がしっかり自分の考えを書く様子が見られ、自分について表現することが苦手なように見える子も、こうした時間を通じて自分につながる機会になったのではないかと感じました。
これは内面を吐露するようなワークだったので、共同閲覧モードはオフにしていました。紹介する時は、スタッフが子供に許可をもらって読み上げるようにしました。たとえ、書いていない子にもそれぞれ思いがあるはずです。アウトプットができなかったとしても、そうした子供たちの心の動きを大事にしたいと常に感じています。
―「風のがっこう」以外でスクールタクトを活用することはありますか。
安楽岡:群馬県からの委託事業で県内の不登校の子供たちが参加する「オリナスオンライン」での活用でも検討を進めています。特にこちらでは「学びの時間」でも使っていきたいと考えています。自習の準備をしていない子に向けて、スクールタクトでクイズ形式で問題を出題していくような活動をしたいと考えています。
オンラインでも子供たちが「一緒にいる感覚」を味わえる
―子供たちを見取るためにどんなことを意識していますか。
安楽岡:何よりも大事にしているのは、子供たちの心理的安全性を築き、安心して自分を表現できるような場とすることです。そのために、Zoomに映る表情やスクールタクトに書く内容、シリウスパークというクローズドなSNSで何を呟いているかなどから随時子供たちの状況を把握して、コメントをするようにしています。また、コメントだけでなくZoomで声をかけることも大事にしています。スクールタクトのコメントを確認していなそうな子に対しては、Zoomのチャット機能で話しかけることもあります。さまざまな方法で、子供たちにメッセージを発信し、きちんと見守っていることを伝えたいと考えています。
画面オフかつミュートで参加していて、声をかけても反応がないと、「あれ、いないのかな?」と思うこともあります。しかし問いを発すると、スクールタクトには書いて取り組んでいる。そうした子については多めにコメントを寄せるなどを意識して、それぞれの子供に合った支援をすることを大切にしたいと考えています。
また、「風のがっこう」終了後には、スタッフ同士で「あの子はこんな感じだったね」「今日は元気そうだったね」と子供たちについて話し合います。さらに、シリウスパークで子供たちがアップしている内容も確認して、コメントをします。このようにスタッフは、常時、個々の子供たちの理解に注力しています。
日々スタッフ同士で話し合い、子供たちの理解を深める
―スクールタクトを活用した取り組みを続ける中で、子供たちにどのような変化が起きてきていますか。
安楽岡:「しっかり見ているよ」「きちんと読んでいるよ」ということを手を振ったりメッセージで伝え続けたりすることで、少しずつ子供たちが変わっていくように感じています。コミュニケーションが増えていく中で、昨年度まで画面オフだった子が、今年度から画面をオンにするなどの挑戦が見られるようになります。子供たち一人ひとりがそうした葛藤と挑戦の変遷を辿っているんです。
スクールタクトは、子供同士でもリアルタイムで見ることができます。例えば、絵を描いている友達の様子を見て、「わ!猫描いていたんだ!」といった内容でその場で盛り上がることができます。オンラインですが、同じ場所に一緒にいるような感覚を持てることがスクールタクトの魅力です。
―これからスクールタクトをどう活用していきたいと考えていますか。
安楽岡:今後、子供たちが学校に戻りたいと思った時に、「まなビバ!シリウス」が間に入って橋渡しをできるようになるといいなと考えています。その際に、子供が在籍している小中学校の担任の先生が「まなビバ!シリウス」で使っているスクールタクトを閲覧できるようにしたら、よりスムーズな連携ができるようになるのではないでしょうか。例えば、担任の先生もその子の書いた内容にコメントできるようになっていれば、ゆるやかに 学校ともつながっていくことができると思うのです。もちろん、子供の気持ちの尊重が大前提ですが、その子も希望し、先生も希望している場合には、そういった活用もできるのではないかと期待しています。
このようにスクールタクトにはまだまだ活用の可能性があると感じています。機能の拡大も活かしながら、これからも、誰一人取り残さず、つぶさに様子を見とり、安心安全の場を作っていきたいと思っています。
まなビバ!シリウス
まなビバ!シリウスは、学校外のもうひとつの学び場(オルタナティブスクール/フリースクール)で、境目のない学びの場づくりを目指しています。理念は「いきいき自分自身を生きる」「ともに生きる」「Design your day, Create your life」。
令和5年度までの5年間で対面フリースクールではのべ1,400名ほど、オンラインではのべ2,200名ほどの子供たちをサポートしています。
Webサイト:https://www.manavivasirius.com/
学校全体でスクールタクトを活用!共同閲覧モードを活用した自然な学び合いが実現
東京都・私立淑徳小学校では2020年11月に児童一人に1台ずつiPadを導入し、日常の学習で使用を開始しました。2021年4月にはNTTコミュニケーションズが提供するクラウド型プラットフォーム「まなびポケット」経由でスクールタクトを導入しました。スクールタクト導入2年目の活用状況について、ICT担当の新井麻規子先生に学校全体の活用状況について、そしてそれぞれの授業での活用について川鍋航平先生(3年生学級担任)、中嶋亜佐子先生(図工専科教員)、田村裕子先生(情報専科教員)にお話を伺いました。
自由度の高い導入方針により各教員が自発的に活用
―淑徳小学校でのICT導入の経緯を教えてください。
新井:本校は建学の精神である共生の理念を実践するために、「感謝する心」「いつくしみの心」「創造する心」の3つを大切にしています。6年間でこの3つの心を育むために、勉学はもちろん、体験的な活動にも力を入れています。こうした体験的な学びをサポートするツールとしてICTがあると考えています。子どもたちはiPadを一人一台持ち、自宅でも使用します。またすべての教室に電子黒板と書画カメラを配備しています。
ICT担当の新井麻規子先生と淑徳小学校の児童のみなさん
―スクールタクト導入の経緯を教えてください。
新井:iPad導入時、学習の土台となるプラットフォームが必要であるという議論がなされました。本校では、3年生から「情報」の授業を設けているのですが、その授業をサポートし、放課後クラブ「淑徳アルファ」でも授業を担当してくださっているフューチャーインスティテュートの為田裕行さんに相談したところ、「子どもが学んでいる過程が見られる」「インターフェースが子どもにやさしい」とスクールタクトを勧められ、導入を決断しました。
導入に際しては、学校全体で使っていこうと方針を定めました。ただし、使い方は個々の教員に任せています。自由度を高くしたことで、個々の教員が工夫をし、活用が浸透していきました。
―導入直後、先生たちの間で活用を進めるために何をしましたか?
新井:導入時にオンライン研修を2回実施しました。その後も手厚くサポートいただき、夏休みのオーダメイド研修や活用についてのアドバイスをいただきました。また継続的に先生方がスクールタクトについて学べるよう、スクールタクトサイトに掲載されたセミナー情報を校内のグループウェアで紹介したり職員室に掲示をしたりしていました。
―先生間でノウハウを共有するようなことはありますか。
川鍋:月に1回若手の教員が集まる勉強会を開催しています。そこでの議題はICTだけではありませんが、よくスクールタクトについて「こういう使い方してますよ」「そんな使い方があるんですね」といった会話が交わされます。そこで「おもしろいな」と思った活用方法をそれぞれの教員が授業で試しています。
子ども同士の「対話的な学び」を促すツール
―川鍋先生の授業での活用方法を教えてください。
3年生学級担任の川鍋航平先生
川鍋:私は3年生の担任で、さまざまな場面でスクールタクトを活用しています。国語の授業で取り上げる『ちいちゃんのかげおくり』という物語文では、「あなたは、この物語はハッピーエンドだと思いますか。」という発問をします。これまでは、子どもたちの意見を一通りチェックした後に、教員が何名かを指名して、ノートに書いたものを発表させたり黒板に書かせたりしていました。しかし、こうしたステップではどうしても授業のテンポが悪くなってしまいます。
そこでスクールタクトを用いて、子どもたちに「ハッピーエンドだと思うなら○」を「バッドエンドだと思うなら×」を書いてもらい、その意見を記述して、その場で私がiPadでチェックをしました。これにより、効率よく子どもたちに意見をどんどん発表してもらうことができました。
―他教科でもスクールタクトは活用していますか。
川鍋:学力差があるので算数では課題が終わった子の手が空いてしまうようなことがあります。しかし、スクールタクトであれば、「次はこれ」「終わったらこの問題」とどんどん配信していくことができます。一方で、共同閲覧モードにしているので、手が止まってしまう子には「他のクラスメイトの解き方を見て学んでいいよ」と伝えます。そうすることで、ヒントを得て、前向きに取り組んでいことができます。スクールタクトは、個別最適化の学習を支援するツールであるとも実感しています。
また、コロナ禍でオンライン授業になった際にもスクールタクトを活用しました。算数の問題を解いていったのですが、オンラインでは教員がそれぞれのノートをチェックすることができません。そこでノートに書いた内容をiPadで撮影して、スクールタクトで提出させることとしました。教室外でもリアルタイムに教員が子どもたちの活動を確認できることはとても大きなメリットです。
―学級経営においてもスクールタクトを活用していますか。
川鍋:コロナ禍でもあり、欠席が長引いてしまう児童がいます。その際に、連絡ツールとしてスクールタクトを活用しました。保護者の方から「休んでいる間の学習の進度が気になる」というお声もいただいたので、授業の内容も伝えていきました。また、学級通信などのお便りも送っています。登校できなくても、教員のメッセージを子どもに直接伝えられる機会となっています。
また、夏季休暇の際には暑中見舞いをクラスの子どもたちに配信しました。これまではハガキを書いていましたが、今年はスクールタクトで送ってみたんです。長期休暇の際のコミュニケーションツールとしても活用の可能性があると感じています。
―スクールタクトを用いることで、子どもたちの学びに変化はありましたか。
川鍋:解答や意見を書く際には共同閲覧モードにして、「友達の意見を見ていいよ」と促すことで手が止まっている子が書き進めることができています。「他の人の考えを見るのも学びだからね」「見て気付くことも大事だよ」と声かけを続けていたら、最近では友達同士でお互いの書いたものを自然に確認するようになりました。「対話的な学び」というと、机をつけて話し合うようなイメージがありますが、iPadの画面上でもそれは十分に可能だと実感しています。
川鍋航平先生の授業風景
また、クラスにはすごくよい意見を書いているけれど、手を挙げる勇気がない子もいます。これまでは、教員が机間指導をしてなるべく「この意見、とてもよいから発表してね」と声かけをしてきましたが、よいものを持っているのに発表できず、そのため賞賛される機会を逃してしまっているケースは多々あったように思います。しかし、スクールタクトであれば教員がiPadの画面でクラス全員分をパッと確認でき、「○○さん、発表してね」と声かけができます。加えて、ピックアップして電子黒板に投影することもできる。スクールタクトを使うことで、これまであまり注目される経験を積めなかった子にも光が当たると感じています。
【図工】作品を展示・共有するツールとして活用
―図工の授業での活用方法を教えてください。
図工専科教員の中嶋亜佐子先生
中嶋:私は1、4、6年生の図工を担当しています。図工は基本的に手を使って作ったり描いたりすることがメインなので、スクールタクトではでき上がった作品を写真に撮ってクラス全体に共有する際に活用しています。
例えば、6年生では写生会で描いた絵に感想を添えて1人ずつ提出させました。共同閲覧モードでクラスメイトも見られますし、私も「見ているよ」という意味を込めて「Good!」など簡単なコメントを書き込んでいます。
―他の学年でも活用なさっていますか。
中嶋:4年生では、スルメイカを観察し、インクをつけた割り箸ペンで、イカを描く活動をし、でき上がった作品をスクールタクトで発表しました。2ヶ月くらいかけて行う取り組みなので、どうしても子どもたちの進度にバラツキが出てきます。そこで、イカの絵を描き終わった子どもには、2ページ目に「自分の描いたイカを自由に使って表現していいよ」と伝えました。すると、スクールタクトの切り取り機能を使って、色々な素材を集めたコラージュを作る子が出てきたり、気に入った友達の絵があれば話し合ってコラボレーションさせたりと、とても楽しい作品ができあがりました。子どもたちの進度に合わせて自由に取り組めるのも、スクールタクトのおもしろいところだと思っています。
―スクールタクトを用いることで、子どもたちの学びに変化はありましたか。
中嶋:授業中はスクールタクトで提出された内容を電子黒板に投影して、子どもたちの作品をシェアしています。この時間は、それぞれの作品を見合い、認め合う機会になっているようです。
また、1週間程共同閲覧モードのままにしておき、自由に子どもたちで閲覧できるような期間も設けています。その中で、自然に他の作品へ「いいね」を押す子どもも出てきているようです。図工ではたくさんの「いいね」をもらうことを目指す活動ではないと考えているので、特に教員から促しているわけではないですが、自発的にクラスメイトを賞賛し合う雰囲気が生まれているようです。
―今後、スクールタクトをこんなふうに活用したいと考えていることはありますか。
中嶋:子どもたちが自身の作品の写真を撮りためて、自分の成長を実感できるようなポートフォリオ機能として活用してみたいです。スクールタクト上で、担当教員が変わっても子どもの成長を見取るようにしていきたいと考えています。
中嶋亜佐子先生の授業風景
【情報】クラスで考えさせる問いを配信し学び合う
―情報の授業での活用方法を教えてください。
情報専科教員の田村裕子先生
田村:本校では3年生から情報の授業を行います。1学期はタイピングの練習をしますが、2学期からは情報モラルや情報リテラシーなどの内容に入っていきます。その学習の際に、スクールタクトを活用しました。授業の中では、「タブレットの使いすぎ」という課題を考えていきました。「主人公が保護者のいない間に、盗み見たパスワードでサインインし、タブレットで動画をたくさん観てしまう」という動画を観た後に、「なぜ、主人公は見続けてしまったのか」を問いかけます。それに対して、子どもたちは「楽しいから」「自分に負けたから」などの意見を書いていきます。
続いて、授業を振り返りながら「『これを追加したら、もっと自制心を持ってタブレットを使うことができる』というルールを作りましょう」という課題を設定しました。この記述も共同閲覧モードで見合う予定です。
―スクールタクトの他の機能も活用していますか。
田村:スクールタクトの○×で回答できる機能を使って、子どもたちが設問に解答していく取り組みをしました。例えば、「自分のパソコンのパスワードはきちんと管理できている」「自分のGoogleアカウントのメールアドレスとパスワードはもう覚えた」など、IDやパスワードに関する設問を用意しました。いいことと悪いことを覚えさせるというよりは、みんなで対話しながら考えてほしいというねらいから、こうした設問としました。○×方式で回答するクイズ形式にしたことで、子どもたちが楽しく考えるきっかけになったと思います。
―スクールタクトを用いることで、子どもたちの学びに変化はありましたか。
田村:共同閲覧モードに切り替えて、友達の意見を参考にしながら加筆できるような時間を設けています。全員の画面が見えたときには、「ああ、そうなんだ!」と気づきが生まれているのを感じます。クラス全体で対話的に考えるときのツールとしてとても便利です。子どもたちの学び合いを促す方法の一つとして、これからも活用していきたいと考えています。
田村裕子先生の授業風景
教員の働き方改革や保護者との連絡ツールとしての活用も視野に
―これまでの活用例をお聞きしていくと、先生方が工夫をされ柔軟に活用いただけているようですね。
新井:私自身も、試行錯誤しながら英語の授業でスクールタクトを活用しています。英語では、授業の中でよく音読をさせます。音読の発表をする際には、どうしても活発な子たちが挙手をするので、そうした子たちが目立つ機会が増えます。そうした課題意識から、自分で音読を録音してスクールタクトで提出させるような取り組みを実施しました。授業中は発言が少ない子の音読も確認できますし、中には「僕の音読どうでしたか?」とコメントをしてきた子もいて、私と子どもの間でコミュニケーションも生まれました。このように各教員が工夫をし、それぞれが効果を実感しているのが、本校のスクールタクト活用の状況といえます。
―スクールタクトが日常に浸透している中、今後の展望をお聞かせください。
川鍋:スクールタクトを「授業の実践に使う」ことは、ある程度果たされました。今後は、これまで教員の手間がかかっていた作業を解消するような働き方改革に貢献させた活用をしたり、保護者との連絡ツールとしての利用方法を模索したりしたいと、考えています。
淑徳小学校
大乗仏教精神にもとづく児童の育成を志して昭和24年に設立された私立の小学校。大乗仏教精神にもとづく「共に生きて、共に生かしあう」という「共生の心」を土台に、「感謝する心」「いつくしみの心」「創造する心」の育成を目指している。6年間でこの3つの心を育むために、勉学だけでなく体験的な活動にも力を入れている。
Webサイト:https://www.es.shukutoku.ac.jp/
共同閲覧モードを活用し、学級経営や児童の学び合いに効果を実感
5年生担任の五十嵐太一先生(左)と長嶋まどか先生(右)
宇都宮市では2021年にすべての小中学校で児童生徒に端末が行き渡りました。それと同時にNTTコミュニケーションズが提供するクラウド型プラットフォーム「まなびポケット」と端末管理ツールをパッケージ化した「GIGAスクールパック」、「GIGAスクールパック」のコンテンツの一つであるスクールタクトが導入されています。栃木県宇都宮市立豊郷中央小学校でも利用がスタートしましたが、同校内で一気に取り組みが広がることはなかったといいます。5年生担任の五十嵐太一先生と長嶋まどか先生に、どのようにスクールタクトの活用が広がっていったのか、そして具体的な取り組み内容とその成果について聞きました。
授業参観の機会を生かし学年の先生方の活用を促進
―五十嵐先生が豊郷中央小学校に赴任した当初のICT活用状況を教えてください。
五十嵐:本校は1学年4〜5クラスあり、全校児童が800人ほどの大規模校です。子供たちのパソコンを扱うスキルは全体的に高め。一方で、人数が多いために学校全体で方針を決めて、ICT活用に臨むのはなかなか難しい状況でした。私が赴任した2022年4月当初は、朝の時間にパソコンを使ってゲームをしている子もいました。子供にとって「勉強する道具」という意識があまり浸透していなかったように思います。
長嶋:私は昨年、1年生の担任でしたが、クラスによっては見よう見まねでスクールタクトを使っているという状況でした。活用度合いは先生によってかなり差がありました。私は五十嵐先生の前任校である陽東小学校の実践発表を見学した先生から活用方法を教わり、使い始めたという経緯があります。
―陽東小学校ではどのように活用していたのですか。
五十嵐:私が昨年まで在校した陽東小学校では、GIGAスクール推進担当をしていました。コロナ禍による休校期間中にスクールタクトを導入し、2021年4月から全校で本格的に活用をスタート。多くの先生が日常的に使うようになっていきました。最初に触った時からスクールタクトは操作性が高く、子供たちも馴染みやすいツールであると感じていました。そこで、今年度赴任した豊郷中央小学校でもスクールタクトの活用を広げていこうと考えました。
スクールタクトを使って授業を行う五十嵐太一先生
―具体的にどのように広げていったのでしょうか。
五十嵐:現任校では特にICTの担当ではなかったので、私が関われるのはまず自分の学年の先生に興味を持ってもらうことだと考えました。管理職の先生に相談をしたところ、「私は疎いけれど、大切なことなのでどんどんやってみて」と勧められました。
そこで、学年の先生方と活用ポリシーの相談・共有をスタート。子供たちの使い方について問題意識を持っていた先生からは、「授業の時だけに、パソコンの使用を制限してはどうか」という提案もなされました。しかし、日常の生活の中で使っているからこそ、学習でも自然に活用できるようになるもの。宇都宮市ではアクセスサイトの制限をかけていますから、大きなトラブルが起こるようなことは考えにくいです。そこで、学年では厳しい使用制限は設けずに、児童が使える場面を増やし、それを見守ろうと決めました。
―学年の先生にはどのように活用を促していきましたか。
五十嵐:同学年の先生方からは、「使いたいけれど、自分と児童のICTスキルが不安」という声があがっていました。そこで、授業参観の機会を一つの目標にして、そこでスクールタクトを使った授業をみんなでしてみようと呼びかけました。実際にスクールタクトを使ってみた先生からは、「こんなに簡単なんですね!」「子供たちの表現活動に使えますね」といった感想が聞かれ、今ではそれぞれがどんどん活用の幅を広げていっています。
児童間でノートのまとめ方を学び合う
―現在、スクールタクトをどのように活用していますか。
長嶋:2022年度から教科担任制が本格的に導入され、私は社会科の担当となりました。スクールタクトを使って、授業の中でワークシートを配信し、それに児童が取り組んで、共同閲覧モードで相互に見合うといった活動を行なっています。すぐに自分の考えを出すことが苦手な子が、友達の表現を見て参考にしている姿が見て取れるようになりました。また、耳からの情報が入りにくい子は、スクールタクトの画面を見ながら友達の発表を聞くことができるので、これまでよりも理解が深まっているようでした。
さらに、「ノートまとめ」の確認においても、スクールタクトは効果的だと感じています。友達のノートを見て、「こんなふうにまとめればいいんだ」と参考にする子が多く、クラス全体でどんどんまとめ方が上手になっています。
―ノートまとめはスクールタクト上で行なっているのでしょうか。
長嶋:ほとんどの児童がスクールタクトでまとめています。ただ、中には紙のノートに手書きをしたいという子もいます。そうした子は、ノートのページを写真で撮影し、それをスクールタクトにアップロードするように伝えています。それぞれの子供に合った学習法を採りつつ、教員の管理も煩雑化せずにいられるメリットは大きいと感じています。
―業務の効率化にはつながりましたか。
長嶋:学年分のノートが一気に集まると、その数は100冊以上になります。子供たちは次の授業にはまたノートを使いますから、それまでに全員分をチェックして、戻さなければいけません。
これまでは大量のノートを持って移動しなければいけませんでしたが、スクールタクトならばパソコン一つで確認できます。さらに、子供たちからの課題やノートの提出状況は、名簿と照らし合わせながらチェックマークを入れていました。スクールタクトでは名前順に並び替えができ、提出済みと未提出とで色が異なるので一目で確認ができます。時間を有効に活用することができるようになったと感じています。
授業を行う長嶋まどか先生
児童ひとりひとりを把握する学級経営に活用
―五十嵐先生はスクールタクトをどのように活用していますか。
五十嵐:担任をしている学級に、「朝ノート」をスクールタクトで配信しています。今日の体調や体温、昨日の学習時間、それに対する自己評価、そしてハッピー・サンキュー・ナイスなどの気持ちとコメントを書き入れています。子供の場合、気分や体調が学習にも大きな影響を与えますから、担任として個々の子供たちをきちんと把握するツールとして役立っています。ちなみに、「昨日の学習」は多ければよいというものではないということをあらかじめ伝えています。競争ではなく、「友達が頑張っているから自分も頑張ろう」と意欲につなげてほしいと考えています。
「朝ノート」画面では子供たちの状態を確認
―五十嵐先生以外に他の先生が朝ノートを見ることはありますか?
五十嵐:特別支援学級の先生に「今日の予定」をご覧いただき子供たちの予定を共有するという使い方もしています。これまでは口頭での擦り合わせが必須でしたが、スクールタクトを用いてからは「図工で絵の具を持たせる」といったことをすぐに連携できるようになり、足並みを揃えやすくなりました。
他の先生との情報共有でも朝ノートを活用
―他にも学級経営で活用していますか。
五十嵐:学級活動の一環でクラス会議を実施しています。クラス会議は、子供たちで輪になり、互いの悩みを聞き合って、解決策を考えていくという活動です。このクラス会議の事前に「悩み相談カード」を配信し、子供たちに話し合いたい内容を記述してもらっています。カードには「緊急度」なども記してもらい、どの内容を取り上げるかの目安にしています。これも共同閲覧モードで子供たちが相互に確認できるようにしているので、それぞれの子がどのようなことに悩んでいるのかがわかるようになっています。
―教科の授業でもスクールタクトを用いていますか。
五十嵐:私は学年の体育を担当しているので、校庭や体育館に出る前にシートを配信し、鉄棒の連続技を枠内に並べる取り組みなどにスクールタクトを用いています。ワークシートの枠外にある鉄棒技のイラストを該当箇所にスライドして、実践の前にイメージを掴みます。マット運動の単元などでもこうした活用方法があります。
―業務の効率化にはつながりましたか。
五十嵐:スクールタクトはワークシートの複製や修正が非常に楽ですし、もちろんペーパレスにもつながっています。印刷室に行ってプリントを揃える時間がなくなったことは、ほとんどの先生方が実感している効率化ではないでしょうか。
また、教科担任制になったので自分の担当外の教科で、子供たちがどう取り組んでいるかを把握できるという意味でもスクールタクトは有効です。教科指導の向上という側面でも、「○○先生が使っているこのワークシートいいな」と刺激を受けられることはとてもありがたい機会となっています。
学年、そして学校全体に、活用を広げていきたい
―活用の成果や今後の展望はありますか。
長嶋:活用方法でわからないことがあると、放課後に五十嵐先生に確認して、次のタイミングで実践してみるなど試行錯誤しながら使っています。そのため、活用の幅がどんどん広がっているような感覚を持っています。子供たちもパソコンに対して勉強やコミュニケーションに必須のツールなのだと認識するようになり、自宅に忘れてくるケースは少なくなりました。学年全体としてよい方向に向かっていると感じます。
五十嵐:私はスクールタクトを活用している先生方が集うFacebookグループ※に入れていただいていおり、そこで情報を収集し、新たな取り組みに活かしています。今後もそこで刺激をいただききながら、子供たちの学びにつながる活用を深めていきたいと思っています。
今後は、学年全体でのスクールタクトの実践を一層充実させていきたいと考えています。宿泊合宿でしおりを配信するといった活用方法もおもしろいかもしれませんね。また、学校全体でも、学年の縦割り活動でスクールタクトを用いるなどのアプローチも考えています。これからも、新たな挑戦を続けていきたいと思っています。
※Facebook上で運用しているオンラインコミュニティ「スクールタクト研究会(参加無料)」のこと。グループ内でスクールタクトの活用方法や先生方のお悩みの共有などの情報交換を行うことができる。
宇都宮市立豊郷中央小学校
栃木県宇都宮市関堀町にある公立の小学校。全校児童が800人ほどの大規模校で、1学年4〜5クラスある。一年生から六年生までの縦割り班による活動も活発で、朝の学習にも力を入れています。
Webサイト:http://www.ueis.ed.jp/school/toyosato-c/
授業中の学習量が増加!発達段階に合わせた活用や学級経営の向上にも貢献
導入前の課題 | |
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1 | 一斉課題で各自がどこまで理解できているのか把握しにくい |
2 | 発言する生徒だけでなく、発言をしない生徒も含めたクラス全体の思いを可視化することが難しい |
導入後の効果 | |
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1 | 生徒一人一人の理解度を一括画面で把握でき、すぐにフォローできるようになった |
2 | ワードクラウドにより抽象概念を可視化、学級経営の向上に効果があった |
静岡県沼津市にある私立・加藤学園暁秀初等学校では「子どもたちにどう学んでもらいたいのか」を軸に、先生たちが授業を設計しています。そのため先生が教材を自作することも多く、やりたい授業を実現できると感じたのがスクールタクトでした。「スクールタクトのおかげで、授業準備の時間が大幅に削減でき、授業内の学習量も増えた」という活用方法を、コンピューター科の中原悟先生と1年生の担任の加藤祐也先生に伺いました。
子どもたちの主体的な学びをつくる学校方針とスクールタクトがマッチ!
ースクールタクトを導入するきっかけを教えてください。
中原:2019年にイベントでスクールタクトを知り、授業での活用事例を見て、「これは本校の教育に合う授業支援クラウドだ。ぜひ取り入れてみたい」と思ったのが最初でした。そのポイントは大きく3つ。
1つ目は、本校では子どもたちが、より楽しく、さらに理解を深めることができるようにと考えて先生が教材を自作しています。そうした教材や授業自体のデザインに最適だと思ったこと。
2つ目は、子ども同士でコミュニケーションが取れることです。互いの取り組みが見られたり、コメントを書き合えたりできることで、互いに気づきが生まれます。
3つ目は、子どもの思いや学びが可視化できることです。これはワードクラウドの機能が特に長けていると思います。子どもたちの中には、話すのが得意な子もいれば、書く方が気持ちを伝えられる子もいます。ワードクラウドを活用することによって、話すことが得意な子だけではなく、クラス全体としての思いを可視化することができます。子どもたちの間に共感が生まれ、学級経営にも良い影響が出ると感じたからです。
コンピューター科での授業の様子
そうしたポイントが素晴らしいと思い、4年生のコンピューター科の授業から導入を始め、徐々に学年を広げていった時に起きたのが、コロナによる一斉休校でした。
オンライン授業もインストール不要ですぐに対応!
―2020年2月末に一斉休校となった時は、どのように対応されましたか?
中原:休校以前からコンピューター科の授業を中心に全学年でICTを用いた授業を行っており、スクールタクトも使い始めていました。
休校が通達されたのは2月末でしたが、子どもたちがIT機器に慣れていたこともあり、各家庭の端末を使ったオンライン授業を3月には始めることができました。授業はZoomで行い、先生が教材を配布したり、子どもたちが作品や課題を共有したりするプラットフォームとしてスクールタクトを活用しました。ここから先生たちの中での活用度も一気に増えましたね。
スクールタクトはブラウザで使えるので、アプリをインストールする手間も必要なく、各家庭の端末からすぐにアクセスしてもらえました。これは、休校中の授業のベストソリューションでした。
―新1年生は入学後一度も登校することなくオンライン授業が始まったということですが、どのようにスクールタクトを活用していただいたのでしょうか?
加藤:スクールタクトの魅力の1つは、キーボードを使わなくても自分の考えが表現できるところです。まだ字を書いたりタイピングをすることができない1年生でも、スクールタクトなら「ムーブパーツ」という機能を使って画面上のものを動かして学ぶことができます。
本校では、「具体操作活動」と言って、子どもたちが体や物を動かすことで、実感を伴った理解ができる授業を行っています。算数ではおはじきなどを使うことが多いですが、スクールタクトでもイラストを指で動かして数えるなど同様の操作ができるのです。休校中の4・5月の新1年生には、ものを動かして考える機能が非常に合っていました。
※「ムーブパーツ」機能を用いた加藤先生の小学校1年生算数の実践事例はこちらからご覧いただけます。
さらに、本校の授業で大切にしている個人で考える時間、友達との話し合いの時間、その両方をオンラインでも実施できるのがスクールタクトでした。例えば「枠の中に書かれた数だけキリンを入れてみよう」と言ったような課題を作成し、前半20分は全体での活動を話し合いを行いながら進め、後半20分は各自問題に取り組むという形で、教室でやっていることに近い授業が、そのままオンラインでできました。
オンライン授業でのキリンの課題では、オフラインと近い内容で取り組むことができた。
生徒一人一人の理解度や悩んでいる様子を、一括画面で把握
加藤:スクールタクトは、対面授業に戻ってからも有効なソフトの1つだと感じています。全員一斉に課題に取り組んでいると、各自がどこまで理解できているのかが把握しづらいことが現場の課題でした。しかし、スクールタクトだと課題を解いている最中の子どもたちの動きまで見えるので、一人一人の理解度を簡単に把握できます。それを見て、勘違いしている子や手が止まっている子には、席まで行って相談に乗るなどすぐに手が打てるのもいいところですね。
対面授業の課題だった生徒の一人一人の理解度を把握できるようになった。
ペーパーレスで授業時間内の子どもたちの学習量が増えた
―現在は、授業ではどのようにスクールタクトを活用されていますか?
加藤:本校では、授業を通して「子どもたちにどう感じてもらいたいか、子どもたちに学びをどう楽しんでもらうか」ということを軸に置いて、各先生が授業を設計しています。スクールタクトはそれにぴったりだと感じています。例えば「7はどうやって作れるか」という算数の問題に、「ムーブパーツ」機能を使って各自が丸を動かし、数字を書き入れてスクールタクト上で答えられる教材を作りました。すると、「4と3で7」と答える子もいるし「2と5で7」という回答もあります。カードを印刷して切って、それを配布する方法で行っていた時と比べ、授業の準備時間がかなり削減されました。子どもたちにとっても教材の管理がしやすいので、授業内の同じ時間での学習量が増えていると感じます。
ムーブパーツを使った算数の授業。生徒は楽しみながらも学習量が増えた。
それに、これまで子どもたちは回答後のチェックのために先生のところに並ぶ必要がありましたが、スクールタクトなら問題を解き終わった子が先生の画面上で分かるので、すぐに丸をつけてあげられます。自分が解いたものにすぐ丸がついて、子どもたちはパッと顔が明るくなります。最初の数問は、理解の定着のためにみんなで取り組み、慣れたらあとは自分の進度で解けるように問題を用意しておくと、子どもたちはどんどん解いていくことを楽しむようになりました。スクールタクトのおかげで「45分の中で結構勉強しているな」という感覚を持っています。
様々な答えが考えられる課題は、共同閲覧モードをオンにして私のiPadからプロジェクターに映しています。すると「そういう考え方もあったのか」と互いの刺激になるようです。また、操作に慣れた子は、手書きを加えたり、コピー&ペーストしたりと回答の仕方もアレンジしてくれるので、授業内容の学習だけでなくiPadやスクールタクトの操作も全て説明しなくても互いに見て使い方を広げてくれるのもいいですね。
操作に慣れた生徒は自身で使い方を広げていくことも。
発達段階や学年の特性に合わせた多様な使い分けができる
中原:加藤先生からは低学年での使い方をお話ししましたが、私が担当している高学年ではまた違った使い方を考えています。例えば国語の授業では、説明文を段落や要旨ごとに分けた文章構成図(文章の設計図)を子どもたちと一緒に作成してみようと企画中です。同じ「ムーブパーツ」機能を使い、段落ごとにブロックに分けた説明文を動かして、線で繋いだり、要旨やキーワードをでつないで、1枚の文章構成図や関係図として表現する内容です。また、小学校のプログラミング授業でも、子どもたちの思考を可視化するフローチャート図としても活用してみたいです。このように、スクールタクトは教材作りの自由度も高い点が魅力ですね。
低学年には手を使ったり物を使ったりした取り組み方、高学年には言葉や図などを活用して抽象概念を可視化していく取り組み方、というようにそれぞれの学年の発達段階に合わせて活用できる授業支援クラウドであることは、本当に優れていると感じています。
クラスの士気を高め、学級経営にも効果あり
―学級経営では、どのように活用されていますか?
加藤:4年生を担任している時に、長縄跳びのチャレンジに取り組んでいました。学習発表会という目標を定め、それに向けて回数を伸ばしていきましたが、うまくいかないこともありました。そこで、「どうして今回はうまくいかなかったのか?」「回数を増やすためにはどんなことが必要だと思うか?」という議論のために、スクールタクト上に子どもたち一人一人の考えを記入してもらったのです。その言葉をワードクラウドにして、スクリーンに映し出すと子どもたちから「おー!」と声が上がりました。
一人一人の思いが可視化できたことによって「協力が必要だね」「やっぱりみんな昼休みに練習した方がいいと思ってるね」ということを改めて互いに認識し、士気が上がりましたね。
4年生の長縄跳びの取り組みでは、ワードクラウドを使い一人一人の思いを可視化。
中原:今の例はまさに、抽象的な言葉・概念を可視化し共有できる高学年ならではの使い方ですよね。ワードクラウドやコメント・いいねなど、思考や感情の可視化、気持ちの共有ができることは他社にはないスクールタクトの魅力だと思っています。
導入当初に5年生がMinecraft(マインクラフト)*で街づくりに取り組んだ際にもスクールタクトを使い、話し合いの場として活用しました。ネットワーク上でどういう街を作りたいかを書いて、ワードクラウドを使って表示をし、みんなで街のテーマを決めていく。また各チームの作業の連絡手段に使うと、互いの作った街に「もっとこうするといいよ」「こんな建物も必要だね」などとフィードバックが始まりました。
※3Dブロックで構成された仮想空間の中で、ものづくりや冒険が楽しめるゲーム。通称“マイクラ”と呼ばれ、教育的な効果も得られると注目されている。
5年生はワードクラウドの活用し、みんなでマインクラフトのテーマを決めていった。
「いいね」が押せるというのも子供たちは喜びましたね。SNSに近いということと、ポジティブな反応が嬉しかったのでしょう。多感な高学年のコミュニケーションにも適しています。「先生も“いいね”押してよ」とよく言われます(笑)。
実現したい授業像に合わせて自由度の高いスクールタクトを活用していきたい
―今後はどのような教育活動をしていきたいと考えられていますか?
加藤:ツールありきで考えるのではなく、まずは「子どもたちにどうなってもらいたいか」「どんな経験をさせたいか」「どんな気持ちになってもらいたいか」からスタートすることは引き続き大事にしていきたいと思っています。その上で、実践したい授業を実現するにはどうすべきかと考えたときに、スクールタクトは選択肢の1つとして活用が増えていくと思っています。
中原:教材作成の自由度が高いスクールタクトを、実現したい授業づくりのために有効なツールとして広めていきたいと思っています。
生徒の発言の頻度や生徒間の関係性が発言から見えてくる発言マップ機能も先生からの評判がよく、先生同士で情報交換をしながら、子どもたちの「声にあがらない感想や思い」を汲み取って、学級経営やオンラインも含む授業づくり、評価などに、どんどん応用していきたいですね。
左:加藤祐也教諭 右:中原悟教諭
加藤学園暁秀初等学校
静岡県沼津市にある加藤学園暁秀初等学校は、日本で初めて教室を区切る壁のないオープン・プラン・スクール。壁がないことで学習や活動に合わせて自由な学習活動を可能にすると共に、先生と生徒同士の心の距離が近いあたたかな学校です。机上だけでなく体を使ったり、端末や具象を使ったりしながら、子どもたちが体感しながら学べる授業を先生たちがデザインしています。
スクールタクトを通じて子どもの授業参加と学び合いが活発に!
啓明学園について
啓明学園は、東京都昭島市にある私立学校で、幼稚園、初等学校、中学校、高等学校があります。様々な国からの帰国生や外国籍の児童・生徒が在籍する環境で、「広い視野のもと、豊かな人間性と独自の見識を持ち、世界を心に入れた人を育てる」ことを教育理念とし、最長15年間の一貫教育を通じて、多文化共生が可能な「世界市民」の育成を目指しています。
今回お話を伺った啓明学園初等学校では、3万坪という広大で自然豊かな敷地のなかで、子どもたちがのびのびと過ごしながら、「しなやかに共に生きることのできる力」を育むことを目指しています。体と心をたくさん使い、考え、伝え合い、互いの学びを共有し、尊重し合える「学び合う授業」を大切にしています。また、2020年度より、全学年の児童にiPadを1人1台導入し、日々の学習に活用しています。今回は、理科とICT担当の杉山健太郎教諭にオンラインでお話を伺いました。
真の「学び合い」実現のためにスクールタクトを導入
-啓明学園初等学校が目指す理想の教育と、スクールタクト導入前の課題について教えてください。
杉山:本校の教育目標である「創造的な学び」のなかには、「学び合い」という一つの柱があります。子どもたちが授業のなかで、お互いに意見を交換することで考えを深めていって学習内容を修得し、活用できるようにするというものです。
ところが、実際の授業で意見を出し合う際に声を出して発言するのは一部の児童に偏ってしまっているという状況があり、いかに意見交換を活発にしていくかということが課題になっていました。
-スクールタクトとはどのように出会ったのですか?
杉山:授業支援システムの比較検討を進めるなかで、株式会社コードタクト(以下、コードタクト)の営業さんからスクールタクトを紹介していただく機会がありました。話を聞いて、スクールタクトが大切にされていることと、私の考える子どもたちの理想像が重なっているように感じられました。コードタクトさんと協力して、スクールタクトを一緒に進化させていくことができれば、本校にとってもメリットになると思ったのを覚えています。最終的には、きめ細やかなフォローがあったこと、開拓精神を持って本校と共に進んでもらえるパートナーだと感じられたことが、導入の決め手となり、当時はまず一部の先生方と「スクールタクトでやってみよう」と合意した形でスタートしました。
児童がスクールタクトに書き込む様子
休校期間のオンライン授業がスクールタクトの利用を後押し
-スクールタクトの導入はどのように進められたのでしょうか?
杉山:2019年のスクールタクト導入当初は、学校全体に対してiPadが40台程度と端末の数に限りがありました。そのため、まずは私含め数名の先生でスクールタクトの利用を開始しました。目指す授業に対して、どうスクールタクトを組み合わせるのかという部分から手探りという状態だったと思います。2020年4月の1人1台導入に向けて段階的にiPadを調達していく中で、他の先生方のスクールタクトの利用も進んでいきました。2020年春、子どもたちのスクールタクトのアカウントの用意もでき、後はiPadを配るだけという段階で、新型コロナによる休校要請が出されたんです。
結局、保護者の方に車で校舎前まで来ていただき、ドライブスルー方式でのお渡しを実施しました。学校に来るのが難しい方には郵送でも対応し、5月の連休明けに配布を完了することができました。ただ、iPadに慣れていない保護者の方も多く、配布直後は毎日10件以上の電話問い合わせがあり、その対応はなかなか大変でした。それでも2、3週間すると、問い合わせの数が減ってきたので、保護者の方々も子どもたちもiPadに慣れていったのだと感じました。
オンライン授業は「お互いが元気にしているかを見合おう」と、Zoomを使ったホームルームから開始しました。授業全てをZoomを使ったリアルタイム形式で実施するというやり方もあると思うのですが、子どもたちが疲れてしまうことを懸念しました。そのため、午前中はZoomを使ったリアルタイムでの授業、午後はスクールタクトで配布した課題に取り組んでもらうようにしました。本校では、6月初めに入学式をオンラインで行い、6月末から学年を分けて段階的に登校する形に移行しました。7月の全学年の通常登校までは、登校学年とオンライン授業学年が混在している状況でした。
iPadはSIMモデルを採用し、各家庭の通信環境の差を気にすることなく自宅でも利用もできるようになっています。従来は紙で配布していた保護者向けの連絡プリントは、スクールタクトで配信するようになりました。保護者の方も日常的に子どものiPadを使用するので、ルール違反の使い方をしないための抑止力にもなっているようです。
スクールタクトを活用した授業の様子
科目を問わず、日々の授業でスクールタクトを活用
-登校が再開してからしばらく経ちますが、最近の授業ではどのようにスクールタクトを活用されているのでしょうか?
杉山:現在は全ての授業で、何らかの形でスクールタクトが活用されている状態です。授業のねらいによっては、紙と鉛筆を使いたいというケースもあるので、ハイブリッド、いいとこ取りをしていこうという共通認識があります。
実際のスクールタクトの画面もご紹介します。
理科の実験では、ほんの一瞬しか見えない現象を見逃してしまう児童もいます。実験の様子をiPadで撮影しておけば、後から見直したり、スロー再生することで、さらに理解を深めることができます。小学校5年生のふりこの実験でそのような使い方をしました。スクールタクトのコメント欄に撮影した動画を共有すると、それぞれの班の実験の様子がわかり、比較することもできます。まとめの作業では、スクールタクト上で実験の画像に自分で色をつけたり、画像をフローチャートのように配置したり、それぞれの工夫が見られます。
ふりこの実験結果まとめの様子
小学校6年生の授業では、iPadを屋外に持ち出して学園敷地内の崖の地層を観察、写真を撮影し、教室に戻ってからスクールタクトでまとめをするという使い方もしました。記録係の児童が、他の児童に動画や画像を共有するためにスクールタクトのコメント機能を活用している例もありました。私から指示したわけでもないのに、「先生こうしていいですか」と子どもたちが率先してスクールタクトの機能を活用している様子に驚かされました。
iPadを使って屋外観察の記録をする様子
スクールタクトを使ったプレゼンテーションも行っています。小学校5年生の授業では、「台風」をテーマに、それぞれ自分の資料を作り、プレゼンテーションを行いました。みんな思い思いのまとめ方をしています。コメント欄に動画を貼って、発表に活用している子もいました。
プレゼンを聞いてる側も、感想やよかった点などについてコメント機能でリアクションをします。クイズ形式の発表を行った児童のコメント欄の盛り上がりはすごかったですね。子どもたちはもらえたコメントの数にはなかなか執着しているようです。ただ、中身がないコメントなども結構あったりします(笑)
台風に関する資料を作成し、プレゼンテーションを実施する授業
発表を聞いている子どもたちはコメント欄で活発にリアクションする
-コメント機能で子どもたち同士の意見交換を促しているとのことですが、具体的にはどのように活用いただいているのでしょうか?
杉山:コメント機能の使い方については教員間でもよく話題になっていて、試行錯誤しているところです。コメント機能を使うと、子どもたちが自分の意見を発信する際の心理的なハードルが下がるというメリットがあります。短い文章でも気軽に送ることができるのが良いようです。コメントを送られた方も嬉しい気持ちになって、授業に前向きになれるといった効果があり、子ども同士の気持ちを結びつけるのにもとても役に立っていると思っています。一方で、意図しない使い方をされてしまうこともあります。たとえば、他の人の回答へのコメントが終わって手持ち無沙汰になると、絵文字や画像をバンバン送り合ってしまう、などです。このように、本来こちらがやらせたいことからずれてしまう部分についてはうまくコントロールする必要があります。私が実践しているのは以下の3つです。
1.お互いの回答を「見る時間」と「コメントする時間」を分ける
2.お互いが気持ち良くなる言葉を書くように指導する
3.「すごいね」「がんばっているね」だけではなく、その理由を具体的に書くよう指導する
ときにはロック機能も活用しながら、今も試行錯誤しています。
スクールタクトでクラスの意見交換が活発に
-スクールタクト導入前後では、授業の様子や児童の皆さんにどのような変化がありましたか?
杉山:スクールタクトを導入後は、短時間で活発なやりとりができるようになりました。例えば理科の授業では、スクールタクト上で個人で予想を立てたあと、共同閲覧モードに切り替え、他の人がどのような予想を立てているかを把握してから、話し合いをします。個人作業と話し合いの間に、共同閲覧モードで他の人の予想を見る時間を挟むことによって、話し合いの時間に子どもたちが安心して発言しているように思います。スクールタクト上で自分の意見が先に共有されている状態だと発言がしやすいようです。元々出たがりの子が多い学校ですが、スクールタクト導入前と比べると、いつも同じ子ばかりが発言するということがなくなり、とても多く手が挙がるようになりました。
また、これまであまり授業についてこられなかった子たちが、スクールタクトで友だちの考えに触れて学ぶということもできています。スクールタクト上で書き込みのない真っ白なキャンバスを友だちに見られるのが嫌なので、頑張って書いてみるという子も少なくないと思います。
スクールタクトを使っている子供たちの声を紹介します。
児童W「紙じゃないことにより、色を変えたりする時間が短縮され、課題に集中できます。また、外で観察などをする時、テキストを打てたりするので楽だし、テキストを打った時、何文字目かがわかるようになっていて「1200文字から1500文字で書きなさい」などの問題に活用できます。また、他の児童の意見や予想を見られる共同閲覧モードや、それにコメントできたりするので学習の楽しみも広がってきます。」
児童K「字が書きやすいし、相手の言いたいことなどがすぐに見られる。あと、相手と共感しやすい。例えば、コメントで「確かにここはこうだよね。」とか「こういう考えもあっていいね😊」っていうコメントで共感ができると思いました。あと、コロナで近くに行って話ができないけど、共同閲覧で近くに行かなくても意見を聞くことができる。」
児童S「スペルの入力は、ローマ字の練習になったし、教科書やノートみたいに幅を取らないし、鉛筆みたいに折れないし、とても使いやすい。それに画像を使って説明が詳しくできました。そして指一本でできることからも、ストレスが少なくなる。鉛筆は、使った後に手を見てみると汚くなっていてストレスがある。」
児童T「今はコロナがあるから、相談をなるべく少なくしているせいで、みんなの意見がわからないけど、共同閲覧をすることでみんなの意見が見られて、コメントもできるから、お互いの意見がわかり合えて良いと思いました。」
スクールタクトでの個人活動の様子
先生同士のチームワークも発展
-スクールタクト導入後、先生方にはどのような変化があったのでしょうか?
杉山:新型コロナウィルスによる休校以前は、スクールタクトの導入に後ろ向きな先生もいらっしゃいました。しかし、休校期間に「スクールタクトを使うほかない」という状況になったことで、自然とチームワークができていったと思います。先生同士で教え合ったり協力し合う場面がたくさんありました。
本校では年に1度、外部の教育関係者に参加してもらう「公開授業研究会」を開催しており、今年度も「オンライン実践報告会」という形で研究・発表を継続しています。「スクールタクトを活用してどう授業づくりをしていくか」というテーマでの発表も実施しました。発表準備の過程で先生方がお互いに意見交換を行うので、ここでも学び合いが生まれています。
啓明学園初等学校 第1回オンライン授業実践報告会(2020年7月23日)
啓明学園初等学校 第2回オンライン授業実践報告会(2020年10月3日)
教員向けの研修も実施しています。スクールタクトの活用を進めるにあたっては、活用が進んでいる教員の授業での活用例紹介や、ワークショップ等を含む教員研修を実施していました。
本校では、子どもたちに「学び合い」を促す一方で、教員間ではそれがあまり形になっていませんでした。休校期間の体験を通して先生方がつながり合うことができ、教員間でも「学び合い」を行い、それを子どもたちに還元していくという流れができてきていると思います。
スクールタクトを導入したことで、教員の働き方にも変化がありました。児童の課題への取り組み状況が時間と場所を問わずにリアルタイムに確認できるようになったことで、子どもたち一人一人に対して個別に対応しやすくなったからです。これまではノートやプリントを回収して初めて、児童の取り組みを確認できるという状況でしたが、スクールタクトを導入したことで、本当に簡単に確認できるようになりました。そこからさらにコメント機能などで、それぞれの子どもにフォローをすることもできます。便利になった一方で、先生によっては自宅でも仕事をしてしまうというケースもありました。この辺りは、それぞれの先生が徐々に良いバランスを見つけていっているように思います。
保護者からはICT導入を評価する声
-1人1台のiPadやスクールタクト導入にあたり、保護者の方々からはどのような反応がありましたか?
杉山:新型コロナウイルス感染拡大以前に保護者の方々へ「今後iPadは1人1台になる予定です」とお知らせした際には、反対意見もありました。保護者の方が一番懸念されていたのは、本校が掲げる「体験学習」がないがしろにされてしまうのではないかということでした。本校の学園内には広い農園や雑木林があり、子どもたちはその中で自然との関わりや食の大切さを学んでいきます。ICTを取り入れることによってより、小学生時代の自然豊かなキャンパス体験が失われてしまうことを心配されていました。
実際にiPadを導入した際には、休校の時期が重なったこともあり、オンライン授業の実施と併せて、多くの保護者の方が取り組みを評価してくださいました。
啓明学園の自然豊かなキャンパスで学ぶ子どもたち
以下、保護者の方の声をご紹介します。
「これからを生きる子どもたちには、デジタルにもアナログにも対応でき、様々な情報をもとに自分の意見を持ち、明るい未来を切り開いていってほしいと願っています」
「子どもたちの発言の機会が平等になったこと、それぞれが発言するようになったことは、保護者として大変喜ばしい変化であると同時に、ICTにそのような良い作用があるとは想像していませんでした」
「ICT教育のメリットをたくさん知ることができました。子どもたちがこれまで以上に積極的に勉強に取り組めていることもわかりました」
目指す子どもの姿と重なるスクールタクトのコンセプト
-スクールタクトをはじめとする教育現場でのICT活用を通じて、子どもたちにどう成長していってほしいか、さらに今後の展望について教えてください。
杉山:私の個人的な考えを述べさせていただきます。
多様な考えに触れ、その考えの良さや特徴を受けとめられる子ども
スクールタクトを使用することによって、短時間で多くの友だちの考え方に触れることが可能になりました。頭の柔らかい小学生時代に幅広い考えに触れながら成長することで、社会に出て他者と共存していくために必要な素養を養うことができると考えています。
受け取った情報を自己の成長につなげられる子ども
現代は誰でもインターネットから簡単に情報を得ることができます。これからの時代を生きる子どもたちには、情報を得るだけにとどまらず、自己の成長につなげるために活用する力を養って欲しいと考えています。
他者と協力し合える子ども
何かを作る、計画を進めるという時に、最初から最後までを一人でやり通すことは、難しい時代になっていると思います。小学校段階からスクールタクトを通じて共同作業に取り組むなどの経験が、重要になってくると考えています。
これらの子どもたちの理想像と、スクールタクトのコンセプトは重なり合っているように感じています。
私は本年度の理科で、iPadだけの授業にチャレンジしていきたいと思っています。今後、アナログとデジタルのいいとこどりをしていくにあたって、フルデジタルでどこまでできるのか知っておいた方がいいと考えたからです。フルデジタルの授業をしてみて思うのは、やはりデジタルが合う子もいれば、合わない子もいるということです。今後はデジタルとアナログのバランスについて考えていきたいと思っています。
iPadを使ってグループで撮影を行う様子
スクールタクト導入をきっかけに、授業は「子ども主体」に変化
福島県相馬郡にある、新地町立新地小学校でのスクールタクト導入の経緯や活用方法についてお話を伺いました。
「21世紀を生き抜く力を育てたい」という想いからスクールタクトを導入
新地町教育委員会 指導主任 伊藤 寛
伊藤:これまで新地町では、「学びの質を高めていこう」とデジタル教科書や電子黒板を導入してきました。ただし、まだ道具としてICTを使い切れてはおらず、授業とICT機器の融和は不完全なものでした。
また、私たちには子どもたちの21世紀を生き抜く力を育てたい、という想いがあります。これは次の学習指導要領にも含まれている内容ですが、「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」、我々がどうコーディネートして、学びとしてプロデュースできるかと考えた時に、このスクールタクトという授業支援システムにたどり着きました。
スクールタクトを導入して変わったこと
伊藤:先生方の指導方法が変わったと思います。これまでは「電子黒板を使わなければ」とか「デジタル教科書を使わなければ」などと、新地町はICT活用教育が盛んだからという思いが先行したような授業も見受けられました。
ところがスクールタクトでは、子どもたちが目をキラキラさせながら話し合いを実施している。そして自分の思考を「見える化」している。その見える化した思考を整理して、話し合い活動が充実して活性化されている。
そういった変化を先生方が実感するに伴って、指導方法が教育者主体から子ども主体に大きく転換してきたと思っています。
スクールタクトで子どもたちが交流し合う時間を
新地小学校 鴨田 伸一教頭
鴨田:授業を考える際に我々教師が一番悩むのは、生徒が自分で問題解決する時間をしっかり確保したい、その上でその考えをもとに友達と交流する時間も確保したいというジレンマです。スクールタクトがあると、授業時間をコンパクトに保ちながら、交流の時間をより効果的に膨らませることが可能だと思います。
先生方のスクールタクト活用法と学びの変化
橘 理沙教諭
橘:スクールタクト上で課題を出し、子どもたちには宿題として、家庭で課題の解決方法を入力してもらっています。授業ではその考えを子どもたち同士が共有しあって、その中でより良い解決方法を探していくという反転授業に活用しています。
従来の紙のワークシートでは、生徒同士が全員のワークシートを見合うことは難しかったのですが、スクールタクトがあれば、一瞬にして全員の考えを共有することができます。例えば普段あまり喋らないお友達のところに行って、「これはどういう考えなの?」などと聞き合う姿が見られるようになりました。
木村 真理子教諭
木村:学びの『深め方』が変わりました。スクールタクトを使うまでは、生徒の交流というと、どうしてもノートを持ち歩いて自分の考えを伝え合うスタイルだったんですね。あちらこちらで交流しているのを全部把握することは不可能なので、教師側として見取ることができる範囲が限られていました。
スクールタクトだと、一覧で各生徒の考えを把握することができるので、一人ひとりがどういう考えを持っていて、さらにどう学習が深まったのか、というところまで見取ることができるようになりました。
小野 あき教諭
小野:総合的な学習の時間でプレゼン資料を作っている時、生徒が色々な写真や動画を撮ってきたんですが、スクールタクトで「これ使いたい、あれ使いたい」って選んでいる時は、すごくイキイキしてましたね。
「こっちの写真の方が、みんなを惹きつけるんじゃないか」とか、今まで使えなかったツールが使えるようになって、それを使ってみんなに知らせたいという気持ちとマッチした結果、あんな表情が生まれたのかなと思います。
児童たちのスクールタクトの評価
小学3年生の声
- 夏休みに調べた魚班の発表を、スクールタクトの画面に写真を貼り付けたり、字を書いて発表したりするのが楽しかったです。
- 使っているときは、いろんなことが学べるし、友達とも協力できる。
- 協力もできるし、いっぱい仲良くなれるから良いです。
小学6年生の声
- スクールタクトがあると、みんなの考えを一斉に見れるのでそれが楽です。
- 今まで一つの考えしか持てなかったんですけど、いろんな道が見えてきて他の考えも生まれます。様々な方向から物事を捉えることができるようになりました。勉強には欠かせない存在です。
スクールタクトへの想い
新地町教育委員会 指導主任 伊藤 寛
伊藤:協働学習支援ツールは様々あります。私も今頭の中で数社の名前がすぐ浮かびますが、その中でもスクールタクトの大きな違いは、先生の授業をサポートするということだと思います。
自分の授業が子どもたちにとってどんな効果があったのか、端的に言うと、この授業で子どもたちはわかったのかわからなかったのか、そういう視点で振り返れるのがスクールタクトでした。
共有するとか、話し合いの活動に利用するという機能以上のものが、スクールタクトには含まれていたので、選んで間違いなかったと思います。
新地町教育委員会 教育長 佐々木 孝司
佐々木:スクールタクトを活用した授業を実際見に行ってみると、今後の新学習指導要領に沿った、情報収集する力、それをまとめる力、それを発表できる力、それをお互いにディスカッションする力、そういったものが一つにまとまった画期的なヒットツールだなというふうに思ったんですね。
私は常々、先生方もあるレイヤーまで到達したら「きらめいた発想方法をしてください」と言うんですが、このきらめいた発想方法の一つが、スクールタクトではないかと思っています。
※所属・役職は全てインタビュー当時のものです。
動画で見る福島県新地町立新地小学校導入事例
導入事例
授業風景